74 / 77
決戦間近
しおりを挟む
衝撃的な処刑を終え、俺たちは各自部屋で休むことにした。
俺は精神的には落ち着いたものの、肉体的な疲労がどっと押し寄せていた。
久しぶりの部屋。
俺にこの部屋を与えた人間がいなくなったのに使い続けても良いだろうか?
新王による統治が整い次第、部屋もグレードダウンか?
しばらく仮眠を取り、ノックの音で目を覚ました。
「どうぞ」
入ってきたのはジュンだった。
「ジュン! 久しぶりだな! 元気にしてたか?」
「はい!マヤっ、えっと……」
そうか、もう俺はマヤじゃなくなったんだ。
「えーっと、実は俺も純なんだよね……。良い名前だと思って……ハハハ」
どんだけ自分の名前が好きなんだ俺は!!
「えへへ、純様と同じ名前で光栄ですよ!」
様を付けられるとくすぐったい気持ちになる。
「王宮を追い出されてジュンに会えなくなるところだったよ。俺の立場は変わるみたいだけど、これからもよろしくな!」
「純様がどこにお仕えしても、私はお話ができればそれで良いです」
久しぶりのジュンで疲れが一気に消し飛んだ。
「すっかり知れ渡ったことだと思うけど、実は――」
俺は北の台地での平穏な生活を話した。
そのお礼に、ジュンは俺がいない間の王宮を教えてくれた。
宰相は捕まるわ、王様は変わるわで、王宮内は一時パニックになったらしい。
それを周辺国に悟られぬよう、平静を装えと指示されたのが最も困ったそうだ。
指示を出した大臣たちの顔面蒼白っぷりを見てみたかったなー。
「そういえば、ハンスからハンカチを返してもらった?」
ジュンの顔がハッとした。
まだ返ってきてないみたいだ。
血が付いてたから、洗ってから返すのか。
「ハンスは必ず返すって言ってたけど、それは後日になるかな」
「もちろん、ユーホルト様のことですから、心配していません。それより私がここへ来たのは、ユーホルト様からの伝言を預かっているからです。純様との再会を懐かしんで、忘れていました!」
ハンスから伝言?
部屋に戻る時に言い忘れたことでもあったのか?
「ハンスは何て?」
「純様に『約束を覚えているか?』と」
約束――。
ずっと前、まだ罪人として裁判にかけられるより前にした約束だ。
「……純様? お顔が赤いですよ? 医師をお呼びしますか?」
「へっ!? ああ、これは大丈夫。別に俺は元気だから……」
今夜するってことだよな?
そう思うと、心臓がバクバクする。
一度は腹を括ったが、またふりだしに戻ったようだ。
「では、私はまだ仕事が残っていますので」
ジュンが帰り、独りとなった部屋で、俺は何度も深呼吸した。
ハンスは今、何を思ってるんだろう。
こんなことを考えるのは、遠い北の台地にいるからだと思っていた。
だが、すぐ会える距離にいても同じみたいだ。
気付かないうちに、ハンスは俺の人生の中心にいるんだ。
俺は精神的には落ち着いたものの、肉体的な疲労がどっと押し寄せていた。
久しぶりの部屋。
俺にこの部屋を与えた人間がいなくなったのに使い続けても良いだろうか?
新王による統治が整い次第、部屋もグレードダウンか?
しばらく仮眠を取り、ノックの音で目を覚ました。
「どうぞ」
入ってきたのはジュンだった。
「ジュン! 久しぶりだな! 元気にしてたか?」
「はい!マヤっ、えっと……」
そうか、もう俺はマヤじゃなくなったんだ。
「えーっと、実は俺も純なんだよね……。良い名前だと思って……ハハハ」
どんだけ自分の名前が好きなんだ俺は!!
「えへへ、純様と同じ名前で光栄ですよ!」
様を付けられるとくすぐったい気持ちになる。
「王宮を追い出されてジュンに会えなくなるところだったよ。俺の立場は変わるみたいだけど、これからもよろしくな!」
「純様がどこにお仕えしても、私はお話ができればそれで良いです」
久しぶりのジュンで疲れが一気に消し飛んだ。
「すっかり知れ渡ったことだと思うけど、実は――」
俺は北の台地での平穏な生活を話した。
そのお礼に、ジュンは俺がいない間の王宮を教えてくれた。
宰相は捕まるわ、王様は変わるわで、王宮内は一時パニックになったらしい。
それを周辺国に悟られぬよう、平静を装えと指示されたのが最も困ったそうだ。
指示を出した大臣たちの顔面蒼白っぷりを見てみたかったなー。
「そういえば、ハンスからハンカチを返してもらった?」
ジュンの顔がハッとした。
まだ返ってきてないみたいだ。
血が付いてたから、洗ってから返すのか。
「ハンスは必ず返すって言ってたけど、それは後日になるかな」
「もちろん、ユーホルト様のことですから、心配していません。それより私がここへ来たのは、ユーホルト様からの伝言を預かっているからです。純様との再会を懐かしんで、忘れていました!」
ハンスから伝言?
部屋に戻る時に言い忘れたことでもあったのか?
「ハンスは何て?」
「純様に『約束を覚えているか?』と」
約束――。
ずっと前、まだ罪人として裁判にかけられるより前にした約束だ。
「……純様? お顔が赤いですよ? 医師をお呼びしますか?」
「へっ!? ああ、これは大丈夫。別に俺は元気だから……」
今夜するってことだよな?
そう思うと、心臓がバクバクする。
一度は腹を括ったが、またふりだしに戻ったようだ。
「では、私はまだ仕事が残っていますので」
ジュンが帰り、独りとなった部屋で、俺は何度も深呼吸した。
ハンスは今、何を思ってるんだろう。
こんなことを考えるのは、遠い北の台地にいるからだと思っていた。
だが、すぐ会える距離にいても同じみたいだ。
気付かないうちに、ハンスは俺の人生の中心にいるんだ。
0
お気に入りに追加
79
あなたにおすすめの小説
【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】
彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。
「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」
王子様のご帰還です
小都
BL
目が覚めたらそこは、知らない国だった。
平凡に日々を過ごし無事高校3年間を終えた翌日、何もかもが違う場所で目が覚めた。
そして言われる。「おかえりなさい、王子」と・・・。
何も知らない僕に皆が強引に王子と言い、迎えに来た強引な婚約者は・・・男!?
異世界転移 王子×王子・・・?
こちらは個人サイトからの再録になります。
十年以上前の作品をそのまま移してますので変だったらすみません。
子悪党令息の息子として生まれました
菟圃(うさぎはたけ)
BL
悪役に好かれていますがどうやって逃げられますか!?
ネヴィレントとラグザンドの間に生まれたホロとイディのお話。
「お父様とお母様本当に仲がいいね」
「良すぎて目の毒だ」
ーーーーーーーーーーー
「僕達の子ども達本当に可愛い!!」
「ゆっくりと見守って上げよう」
偶にネヴィレントとラグザンドも出てきます。
帝国皇子のお婿さんになりました
クリム
BL
帝国の皇太子エリファス・ロータスとの婚姻を神殿で誓った瞬間、ハルシオン・アスターは自分の前世を思い出す。普通の日本人主婦だったことを。
そして『白い結婚』だったはずの婚姻後、皇太子の寝室に呼ばれることになり、ハルシオンはひた隠しにして来た事実に直面する。王族の姫が19歳まで独身を貫いたこと、その真実が暴かれると、出自の小王国は滅ぼされかねない。
「それなら皇太子殿下に一服盛りますかね、主様」
「そうだね、クーちゃん。ついでに血袋で寝台を汚してなんちゃって既成事実を」
「では、盛って服を乱して、血を……主様、これ……いや、まさかやる気ですか?」
「うん、クーちゃん」
「クーちゃんではありません、クー・チャンです。あ、主様、やめてください!」
これは隣国の帝国皇太子に嫁いだ小王国の『姫君』のお話。
護衛騎士をやめたら軟禁されました。
海月さん
BL
護衛騎士である【ルドルフ】は子爵の後継者であり麗しき美貌の持ち主である【アーロ】に想いを寄せてしまう。
けれども男であり護衛騎士の身分である為、それに耐えきれず逃げるかのように護衛騎士を退職することに。
しかしアーロによって塔に軟禁されてしまう。
メンヘラ攻め×歳上受けです。ほぼエロですがご了承ください。
国王様は新米騎士を溺愛する
あいえだ
BL
俺はリアン18歳。記憶によると大貴族に再婚した母親の連れ子だった俺は5歳で母に死なれて家を追い出された。その後複雑な生い立ちを経て、たまたま適当に受けた騎士試験に受かってしまう。死んだ母親は貴族でなく実は前国王と結婚していたらしく、俺は国王の弟だったというのだ。そして、国王陛下の俺への寵愛がとまらなくて?
R18です。性描写に★をつけてますので苦手な方は回避願います。
ジュリアン編は「騎士団長は天使の俺と恋をする」とのコラボになっています。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる