真実の愛は体を売って手に入れる所存

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明らかになった陰謀

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 王宮までの帰り道。

 俺がいない間、王宮で何があったかを知った。


 フレデリクは俺を北の台地まで連れて行った後、旅芸人を装って各国を転々とした。

 目的は情報収集。

 庶民から貴族まで、女に気に入られるのはフレデリクにとって他愛もないことだ。

 順調に情報網を構築し、ロマーリア王国と周辺国の情報を仕入れた。


 そこで判明したのが、ロマーリア王国からの使者を名乗る者が頻発していること。

 しかしその時期にロマーリア王国から正式に使者を送ったのは2件のみ。

 つまり使者のほとんどが偽者であり、彼らは共通して奇妙なことを述べたという。


「ロマーリア王国は、じき王政を廃止する――」


 王国内で王制廃止論が浮上したことはない。

 では誰がそんな嘘を流しているのか?


「情報を出処を辿っていくと、大パウガル共和国だったんだ」

 そこにたどり着くまでに、フレデリクは何人の女を渡り歩いたんだろうか?

 大パウガル共和国ってどこかで聞いたような気もするな。


「宰相は自分の妾を使って、ロマーリア王国が周辺国から襲われるよう仕向けた」

 周辺国はロマーリア王国の情勢が不安定だと判断し、それに乗じて攻め込もうって考えるだろう。

「少し前、国境付近で妙な動きがあったのは、即座に対応できる兵を確認する目的もあったのだな」

 そういえばハンスは、裏で何かが起こっていると怪しんでいた。


「どうしてそんなことを? ロマーリアが戦争に負ければ、オーケルマンも宰相の地位が危ぶまれるんじゃ……?」

「普通ならそうだよね。でも、宰相は自らが主導して周辺国を唆したんだ。戦争責任を王のせいにするためにね」

 宰相の地位を剥奪される前に、王政の正当性を問うってことか?

 上手くいけば、王政廃止の嘘を本当にできる。


「ソルジュアからは直ちに王政を廃止しなければ強硬な手段も視野に入れると、脅し文句を突きつけられた。王政ってのは王の御心で国の在り方が変わるから、周辺国にとっては常に脅威なのさ」

 王政廃止を望む国は多いんだ。

「王政を廃止したらロマーリアはどうなるんですか? まさかオーケルマンが!」

「そう、やっぱりキミは賢いね! 宰相は自らを新たな国の指導者にするため、ロマーリアの平和を売ろうとしていたんだ」


「このことを知った王は、もうカンカンで! 宰相とその妾は勅令で死刑が決まったよ。何人かの特権階級たちも加担してて、全員貴族の地位を剥奪された。そして王宮が腐敗した原因は自らにあるとして、クリストフェル殿下に譲位するんだって」

 オーケルマンが死刑!?

 俺とハンスが無罪放免になったのは、全てが明らかになったってことか?

 ちょっと王宮から離れているうちに、目まぐるしく変わりすぎだろ!

 

「じゃあ、俺たちの潔白は証明されたんですね!」

 宰相の妾でありながら逢引きしたのは事実だが……。

「そういうこと。団長はこうなることを予想して、オレに任務を?」

「裁判の際、一連の不穏な動きの背後に宰相がいると気付いたが、まさか、ここまで野心に溺れていたとは」


「ロマーリアは今、どうなってるんですか? 戦争は絶対に避けないと!!」

「それは大丈夫だよ。王国はそんなにヤワじゃないから。ただ今何をしてるのかは、オレにも分からないんだー。なんせ牢から出るやいなや、早馬に乗って出て行っちゃった人がいるんだから。今は戴冠式が終わった頃かな?」

 フレデリクはハンスをチラリと見た。

 ハンスはすぐに迎えに来てくれたんだ。


 ハンスはバツが悪そうにしている。

 ふとハンスの腕にハンカチが巻かれているのに気付いた。

「そのハンカチ、血が滲んでるけど大丈夫か?」

「これは使用人の……、ジュンが巻いてくれたものだ。大切な物だから必ず返してくれと言われた」


 それって、俺が買ったラムハリのお土産か!

 ジュンはハンスに生きて帰ってこいって言いたかったんだろう。

 所々色落ちし、紫っぽくなっている。

 気に入って使ってくれてたんだ。


「あ! あと聖剣!! やっぱりハンスは聖剣に相応しい人間だったんだな!」

 聖剣は鞘に収まっていても、その神秘的な光が漏れ出ている。

「あの時、お前に会いたいと心から願った。そのためには何があってもお前を守る力が欲しかった。これを扱うことが許されたのは、お前がいたからだ」

「俺は何にもしてないよ。ハンスの実力だろ!」

 ハンスのストレートな言葉選びに顔が熱くなる。


 百戦錬磨のフレデリクからすれば、俺たちのやり取りは滑稽なようで

「アレ~? 賊を連行するって大事な任務の最中にいちゃついちゃって、オレのこと言えないよねぇ? そういうのは二人っきりの時にやってくださいよ」

 と茶化された。


「す、すまない……。ラムハリの早馬なら、王宮への帰途も短く感じるだろう。そうすれば――」

「あ! ブルーノさんにミズレタスの種を蒔いたって言うの忘れてた! 気付かないで別の野菜植えるかも~」

「フッ、本当に北の台地での生活が楽しかったのだな。俺も体験してみたいものだ」


 王宮まであともう少し――。
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