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ハーフハーフバースデー②
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葉っぱと豆ばかりだが、たくさんの料理が並んでいる。
この中から好きな物を食べて良いって言われると、好物じゃなくても食指が動くものだ。
ナタリーは俺とアリスを食べ盛りの子供のように扱う。
「アンタたちはいっぱい食べないといけないからね!」
「そうだぞ! 次の赤ん坊はお前らの血を引くかもしれねぇんだ!!」
俺たちは世にも珍しい男女の友情を成立させた若者だ。
だが、若者同士をすぐにくっつけたがるお節介なオッサンオバハンたちには、そう見えないらしい。
「ちょっと!! 違うって言ってるでしょ!!」
アリスがムキになって反論するから、それが可愛くてわざとやってるオッサンもいるだろうな。
「お前がいちいち突っかかるから――」
「うるさい! アンタは黙ってて!!」
「まあまあ、そんなに喧嘩しないで。仲が良ければどっちでも良いじゃない」
ナタリーが大皿をドンッと俺たちの前に置いた。
「作って食べて寝て、起きたらまた作って食べる。これもペトロネッラ様のご加護のおかげだよ。肉はないけど、野菜ならたくさんあるよ。ちゃんと野菜を食べやさいってね!」
「あらやだ、アタシ、ちょっと若者ぶっちゃったかしら~」
「あなたは、まだまだ若いんだから大丈夫よっ!!」
「ふふ、ナタリーさんって面白ろ……、っ! アンタどうしたの!?」
俺は泣いていた。
「……ごめん。……不意を突かれたっていうか、……ハハハ……こんな楽しい日に泣くとか、意味分かんないよな」
ナタリーたちは俺の異変に気付くと、すぐに愉快な談笑を止めて心配し始めた。
それは遠くの大人たちにも伝播し、場の空気が静まり返り、イヴの笑い声だけが響いている。
あのつまらないダジャレは本当に流行ってたんだな。
あの時ハンスは俺のために先回りして守ってくれてたんだな。
冤罪が判明した後も、俺を心配して来てくれた。
俺はそういうのを全然知らずに、ハンスとの時間を楽しんでただけだった。
いつになったら迎えに来るんだよ?
今、何をしてるんだ?
やっぱり俺は何も知らなくて、もう星に想いを託すだけじゃ気持ちが溢れてしまう。
「大丈夫かい? アタシが変なことを言っちゃったからかね~」
ナタリーは自分のせいで泣かしたと罪悪感を抱いている。
違うよ、俺は独占欲とか執着とか、己の中のドロドロした部分に負けてしまったんだ。
「皆、少し話したいことがあるんだ」
俺は全てを話した。
元々王宮にいた人間で、皆に嫌われたくなくて隠してたこと。
王宮では宰相付きの男娼マヤであったこと。
ソール騎士団長ハンス・ユーホルトと恋に落ちたこと。
宰相に見つかり、身に覚えのない罪まで着せられ重罪人になったこと。
俺はハンスの迎えを待っていること。
話し終えると鼻をすする音がした。
「ジューンがあたしたちとは違う身分だってのは何となく分かってたんだけど、大変だったのねぇ」
ブルーノは腕を組みふんぞり返っている。
「泣いたって腹の足しにはなりゃしねぇ。ここで泣いていいのは赤子だけだ。とっとと涙を拭けバカ野郎」
「そう言うけど、あんただってこの間泣いてたじゃねぇか。『ジューンが元々何をしてようが、家族なんだから気にすんな』って言ってやりゃあいいのに」
「うるせぇ! 俺はそんなこと一言も言ってねぇぞ!」
少しずつ場の雰囲気が軽くなった。
俺も話せて良かったと思う。
皆の話を聞くばかりで、自分の過去は話せていなかった。
ようやく対等な関係になれたような気がして、胸のつっかえが取れた。
アリスは
「ナタリーさん、さっきのスープ残ってる? ジューンはもっと栄養が必要みたいだから飲ませてあげてよ」
と俺のサプライズな行動に、ほんのちょっとの意地悪で返した。
「まだ残ってるかもしれないから見てくるわねー」
ナタリーは律儀にもアリスのお願いに応えた。
「アンタは私たちと一緒だよ。ここにいるみーんな罪人で、元の身分とか関係ないの。だから胸張りなよ!」
アリスに背中をバンと叩かれ、グフっと空気が漏れた。
「止めろって。さっきのスープが出るだろ!」
「ふふ、あともう1杯飲めるんだから、感謝しなさいよ」
ハンスを想って欠けてしまった部分はハンスにしか戻せない。
だが、欠けた部分の周りは家族によってどんどん温かくなってくる。
真ん中は冷たくてそれを自覚するたびに苦しくなるけど、傍に感じる温もりが俺を微睡みの中へと誘う。
俺は今まで人との繋がりをぞんざいにしてきたのかもしれない。
アレもコレも大切だって、今更気付いたんだから。
ワイワイと騒がしさを取り戻した中。
「きゃあーーーーーーーーーーーーーーー!!」
とナタリーの叫び声が響いた――。
この中から好きな物を食べて良いって言われると、好物じゃなくても食指が動くものだ。
ナタリーは俺とアリスを食べ盛りの子供のように扱う。
「アンタたちはいっぱい食べないといけないからね!」
「そうだぞ! 次の赤ん坊はお前らの血を引くかもしれねぇんだ!!」
俺たちは世にも珍しい男女の友情を成立させた若者だ。
だが、若者同士をすぐにくっつけたがるお節介なオッサンオバハンたちには、そう見えないらしい。
「ちょっと!! 違うって言ってるでしょ!!」
アリスがムキになって反論するから、それが可愛くてわざとやってるオッサンもいるだろうな。
「お前がいちいち突っかかるから――」
「うるさい! アンタは黙ってて!!」
「まあまあ、そんなに喧嘩しないで。仲が良ければどっちでも良いじゃない」
ナタリーが大皿をドンッと俺たちの前に置いた。
「作って食べて寝て、起きたらまた作って食べる。これもペトロネッラ様のご加護のおかげだよ。肉はないけど、野菜ならたくさんあるよ。ちゃんと野菜を食べやさいってね!」
「あらやだ、アタシ、ちょっと若者ぶっちゃったかしら~」
「あなたは、まだまだ若いんだから大丈夫よっ!!」
「ふふ、ナタリーさんって面白ろ……、っ! アンタどうしたの!?」
俺は泣いていた。
「……ごめん。……不意を突かれたっていうか、……ハハハ……こんな楽しい日に泣くとか、意味分かんないよな」
ナタリーたちは俺の異変に気付くと、すぐに愉快な談笑を止めて心配し始めた。
それは遠くの大人たちにも伝播し、場の空気が静まり返り、イヴの笑い声だけが響いている。
あのつまらないダジャレは本当に流行ってたんだな。
あの時ハンスは俺のために先回りして守ってくれてたんだな。
冤罪が判明した後も、俺を心配して来てくれた。
俺はそういうのを全然知らずに、ハンスとの時間を楽しんでただけだった。
いつになったら迎えに来るんだよ?
今、何をしてるんだ?
やっぱり俺は何も知らなくて、もう星に想いを託すだけじゃ気持ちが溢れてしまう。
「大丈夫かい? アタシが変なことを言っちゃったからかね~」
ナタリーは自分のせいで泣かしたと罪悪感を抱いている。
違うよ、俺は独占欲とか執着とか、己の中のドロドロした部分に負けてしまったんだ。
「皆、少し話したいことがあるんだ」
俺は全てを話した。
元々王宮にいた人間で、皆に嫌われたくなくて隠してたこと。
王宮では宰相付きの男娼マヤであったこと。
ソール騎士団長ハンス・ユーホルトと恋に落ちたこと。
宰相に見つかり、身に覚えのない罪まで着せられ重罪人になったこと。
俺はハンスの迎えを待っていること。
話し終えると鼻をすする音がした。
「ジューンがあたしたちとは違う身分だってのは何となく分かってたんだけど、大変だったのねぇ」
ブルーノは腕を組みふんぞり返っている。
「泣いたって腹の足しにはなりゃしねぇ。ここで泣いていいのは赤子だけだ。とっとと涙を拭けバカ野郎」
「そう言うけど、あんただってこの間泣いてたじゃねぇか。『ジューンが元々何をしてようが、家族なんだから気にすんな』って言ってやりゃあいいのに」
「うるせぇ! 俺はそんなこと一言も言ってねぇぞ!」
少しずつ場の雰囲気が軽くなった。
俺も話せて良かったと思う。
皆の話を聞くばかりで、自分の過去は話せていなかった。
ようやく対等な関係になれたような気がして、胸のつっかえが取れた。
アリスは
「ナタリーさん、さっきのスープ残ってる? ジューンはもっと栄養が必要みたいだから飲ませてあげてよ」
と俺のサプライズな行動に、ほんのちょっとの意地悪で返した。
「まだ残ってるかもしれないから見てくるわねー」
ナタリーは律儀にもアリスのお願いに応えた。
「アンタは私たちと一緒だよ。ここにいるみーんな罪人で、元の身分とか関係ないの。だから胸張りなよ!」
アリスに背中をバンと叩かれ、グフっと空気が漏れた。
「止めろって。さっきのスープが出るだろ!」
「ふふ、あともう1杯飲めるんだから、感謝しなさいよ」
ハンスを想って欠けてしまった部分はハンスにしか戻せない。
だが、欠けた部分の周りは家族によってどんどん温かくなってくる。
真ん中は冷たくてそれを自覚するたびに苦しくなるけど、傍に感じる温もりが俺を微睡みの中へと誘う。
俺は今まで人との繋がりをぞんざいにしてきたのかもしれない。
アレもコレも大切だって、今更気付いたんだから。
ワイワイと騒がしさを取り戻した中。
「きゃあーーーーーーーーーーーーーーー!!」
とナタリーの叫び声が響いた――。
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