47 / 77
握った手がやけに温かくて
しおりを挟む
「ハンスはやっぱりかっこいいな。ヘヘッ、俺にお似合いの良い男だ!!」
ハンスは再び俺の頭を撫で始める。
猫になった気分だ。
そしてハンスの親指は俺の唇をなぞり、俺はくすぐったくて唇をキュッと結んだ。
「宰相は恐ろしい人物だ。際限ない欲望を満たすために手段を選ばない。一度、騎士団員のひとりを宰相の妾にすると通達されたことがあった。拒否するなら騎士団は解散、団員は僻地で農夫として一生を過ごさせると、脅し文句まで付けてきた」
権力と性欲だけは有り余っているオーケルマンがやりそうな手口だ。
「俺は部下を犠牲にできず、王に直訴した。あの時宰相を止めてくださらなければ……」
オーケルマンは男娼をバカにするが、その実、男娼に依存し支配されている。
男娼の苦しい立場を知っているハンスが、部下を差し出すわけがない。
「宝物庫で俺はお前を侮辱した。かつての自分と重ねたのだ。傲慢にも己の力を過信して王宮に乗り込み、抗うことすらできなかった愚かさを、お前の中に見たような気がした」
うんうん、確かにあの時はカンジ悪かったよな!
俺もオーケルマンを騙す気マンマンで、ケツを掘られたんだけどね……。
「お前は俺とは違う。檻がどれほど厳重でも、そこから抜け出そうと、もがいている。逆境を乗り越えられる強き者だ」
強さ――。
従順さが求められる妾には必要ないとされるものだ。
でも、王宮で逞しくやっていくには絶対に持ってなきゃいけない。
ハンスの強さは初めから備わってたものじゃないんだな。
「当たり前だろ? 俺は王国で最もタフな男なんだ!」
もっと強くなって、ハンスを守れるようになりたい。
守られてるだけじゃ癪だからな!
それにハンスが笑ってくれるだけで、世界が明るくなるんだ。
「俺がこの話をしたのは、今回の件について理解してもらうため、そしてお前に選択肢を与えるためだ」
選択肢?
オーケルマンを今すぐ殴りに行くか、行かないか、とか?
「俺は決して正道を歩んできた人間ではない。お前にはもっと――」
「何だよそれ!? 俺はそんなこと言われるために、ここに来たんじゃ」
カッとなった俺の言葉が遮られた。
「俺はお前を手放す気など毛頭ない。だから選べ。逆境を乗り越え他の者と幸せを掴むか、諦めて俺の手を握るか――」
俺は迷わずハンスの手を握った。
「はぁ~何だよそれ? 選択肢なんて最初からないじゃん。ハンスから逃げるなんて無理無理。それに逆境って何だよ。異世界から来た俺にとっては順境も逆境もないから、自分がやりたいことをやるんだよ。で、ハンスの過去を知ったって、俺の気持ちは変わんないわけ」
ハンスから逃げようものなら、馬で追いかけて来そうだ。
「そうか。なら安心して傷を癒せそうだ」
「ハンスのためになったなら何より。俺は何度も助けられてきたんだ。少しは俺も役に立っとかなくちゃな!」
自分の額とハンスの額をくっつけた。
「熱が上がったんじゃないか?」
辛い内容だったし、話すのにエネルギーを使ったようだ。
「今はちゃんと寝てなきゃダメだ。ほら、氷のうを載せて……」
「回復したらまた会いに行く」
ハンスは目を閉じた。
綺麗な顔だな。
俺だけしか見られないのがもったいないくらいだ。
……そういえば、今日は一度もやってなかったな。
俺はハンスにキスをしようと顔を近づけた。
いやいや!
相手は病人だ。
寝込みを襲うなんて武士の恥!
顔を離した時、ハンスが目を開けた。
「何だ? しないのか?」
「す、す、するわけないだろ! ハンスのスケベっ! 俺はもう帰るから、ちゃんと休めっ!!」
俺が欲深くなったのは、絶対にハンスのせいだ。
ハンスは再び俺の頭を撫で始める。
猫になった気分だ。
そしてハンスの親指は俺の唇をなぞり、俺はくすぐったくて唇をキュッと結んだ。
「宰相は恐ろしい人物だ。際限ない欲望を満たすために手段を選ばない。一度、騎士団員のひとりを宰相の妾にすると通達されたことがあった。拒否するなら騎士団は解散、団員は僻地で農夫として一生を過ごさせると、脅し文句まで付けてきた」
権力と性欲だけは有り余っているオーケルマンがやりそうな手口だ。
「俺は部下を犠牲にできず、王に直訴した。あの時宰相を止めてくださらなければ……」
オーケルマンは男娼をバカにするが、その実、男娼に依存し支配されている。
男娼の苦しい立場を知っているハンスが、部下を差し出すわけがない。
「宝物庫で俺はお前を侮辱した。かつての自分と重ねたのだ。傲慢にも己の力を過信して王宮に乗り込み、抗うことすらできなかった愚かさを、お前の中に見たような気がした」
うんうん、確かにあの時はカンジ悪かったよな!
俺もオーケルマンを騙す気マンマンで、ケツを掘られたんだけどね……。
「お前は俺とは違う。檻がどれほど厳重でも、そこから抜け出そうと、もがいている。逆境を乗り越えられる強き者だ」
強さ――。
従順さが求められる妾には必要ないとされるものだ。
でも、王宮で逞しくやっていくには絶対に持ってなきゃいけない。
ハンスの強さは初めから備わってたものじゃないんだな。
「当たり前だろ? 俺は王国で最もタフな男なんだ!」
もっと強くなって、ハンスを守れるようになりたい。
守られてるだけじゃ癪だからな!
それにハンスが笑ってくれるだけで、世界が明るくなるんだ。
「俺がこの話をしたのは、今回の件について理解してもらうため、そしてお前に選択肢を与えるためだ」
選択肢?
オーケルマンを今すぐ殴りに行くか、行かないか、とか?
「俺は決して正道を歩んできた人間ではない。お前にはもっと――」
「何だよそれ!? 俺はそんなこと言われるために、ここに来たんじゃ」
カッとなった俺の言葉が遮られた。
「俺はお前を手放す気など毛頭ない。だから選べ。逆境を乗り越え他の者と幸せを掴むか、諦めて俺の手を握るか――」
俺は迷わずハンスの手を握った。
「はぁ~何だよそれ? 選択肢なんて最初からないじゃん。ハンスから逃げるなんて無理無理。それに逆境って何だよ。異世界から来た俺にとっては順境も逆境もないから、自分がやりたいことをやるんだよ。で、ハンスの過去を知ったって、俺の気持ちは変わんないわけ」
ハンスから逃げようものなら、馬で追いかけて来そうだ。
「そうか。なら安心して傷を癒せそうだ」
「ハンスのためになったなら何より。俺は何度も助けられてきたんだ。少しは俺も役に立っとかなくちゃな!」
自分の額とハンスの額をくっつけた。
「熱が上がったんじゃないか?」
辛い内容だったし、話すのにエネルギーを使ったようだ。
「今はちゃんと寝てなきゃダメだ。ほら、氷のうを載せて……」
「回復したらまた会いに行く」
ハンスは目を閉じた。
綺麗な顔だな。
俺だけしか見られないのがもったいないくらいだ。
……そういえば、今日は一度もやってなかったな。
俺はハンスにキスをしようと顔を近づけた。
いやいや!
相手は病人だ。
寝込みを襲うなんて武士の恥!
顔を離した時、ハンスが目を開けた。
「何だ? しないのか?」
「す、す、するわけないだろ! ハンスのスケベっ! 俺はもう帰るから、ちゃんと休めっ!!」
俺が欲深くなったのは、絶対にハンスのせいだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
76
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる