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弓術大会②
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1投目――。
オーケルマンはやや右にズレた。
会場は沸かなかったが、俺たちは空気を読み拍手で盛り上げる。
中には
「頑張ってください!」
と健気に声をかける妾までいる。
そんな応援を受けても、オーケルマンの表情は浮かない。
調子が悪いみたいだ。
2人目の参加者イェスタの矢は真ん中に刺さった。
会場が沸き、歓声と拍手に包まれた。
ハンスも負けじと真ん中へ。
大歓声が沸き起こる。
ハンスの苦手は当てにならないな。
俺は心を込めて精一杯の拍手を贈った。
4人目の参加者ベンヤミンは俺の方からはあまり見えない。
観客たちが口惜しがっているので、的中はできなかったようだ。
最後、5人目の参加者ラルフは弓を射る前から盛り上がっている。
この大会で最も期待された人物のようだ。
ラルフの矢は真ん中に刺さったことは、大歓声から分かった。
「うぉおおおおおおお!」
ラルフの雄叫びが響く。
2投目はイェスタ以外が的中。
続く3投目は全員が的中させ、観客のボルテージが上がった。
4投目はオーケルマン以外的中。
やった!
ハンスは全部真ん中を射抜いた!
この時点でオーケルマンとイェスタ、ベンヤミンの3人は敗退となった。
5投目はラルフとの全面対決だ。
ハンスとラルフは馬が運ばれる間、それぞれのやり方で精神統一を図っている。
ラルフは観客を煽って一体感を増している。
ハンスは静かに呼吸を整えていた。
俺はハンスに
(頑張れっ!!)
と念を送った。
念が通じたのか、ハンスがこっちを見た。
(応援してるぞ!!)
コクりと頷いたハンスには、きっと俺の応援が届いたはず。
観客の興味から外れたオーケルマンは、不機嫌を極めていた。
俺たちにデカイことを言っておきながら、不甲斐ない結果を残したんだ。
オーケルマンがどんなに王様に贔屓されていても、この時点で敗退したのだから良い順位は与えられないだろう。
お前は負けたんだよ、バーカ。
そして最終局面の5投目。
先ほどまでラルフがいた奥の方から、王様や俺たちのいる方に馬は駆ける。
5つ並んだ的にどれだけ命中させられるかが勝敗の分かれ目だ。
先攻はハンス。
遠くからで見えないが、号令で馬が駆け出す。
まず1つ、奥の方で大歓声が上がった。
2つ目も同様で、ハンスはとても良い成績を残しているようだ。
3つ目、俺はハンスの姿をはっきり見ることができた。
己の筋力だけで上体を安定させ、弓を構えている。
行けっ!
頑張れ!!
ハンスが放った矢は3つ目の的のど真ん中に刺さった!
俺も手を叩いて喜ぶ。
残り2つも上手くいけば、ラルフに大きなプレッシャーを与えられる。
突如、ハンスが落馬した――。
俺は思わず立ち上がった。
ハンスは脇腹から血を流している。
……あれ、矢が刺さってないか?
ソール騎士団がグラウンドに入り、ハンスの救護を行う。
会場内をザワつきと不安が包む。
しばらくしてフレデリクが大声で
「安心してください! ハンス・ユーホルトは負傷していますが、致命傷ではありません!!」
と言ったから、会場内が安堵の声で溢れた。
ハンスはフレデリクたちに介抱されて退場した。
致命傷じゃないからって、不安なのは変わらない。
あんなに調子が良かったのに、なぜ突然?
俺だって駆け寄りたいけど、それは許されない。
バクバクする心臓を押さえながら、席に座った。
アイシャが独り言みたく、でも確実に俺に伝えるために言った。
「僕、旦那様が矢を放ったのを見た……。アレは絶対狙ってやったんだ――」
驚いて横を見たが、アイシャは何事もなかったように前だけを見ていた。
耳を疑いたくなる。
だが、オーケルマンなら……。
弓術大会はハンスが途中退場した後も続けられた。
結果はラルフが首席で、ベンヤミン、イェスタ、オーケルマンと続いた。
ラルフは直前のアクシデントに影響されず、最高のパフォーマンスで王様を楽しませた。
観客がラルフへの祝福で盛り上がる中、俺はオーケルマンへの怒りと、ハンスの怪我の具合が気になって仕方なかった。
オーケルマンはやや右にズレた。
会場は沸かなかったが、俺たちは空気を読み拍手で盛り上げる。
中には
「頑張ってください!」
と健気に声をかける妾までいる。
そんな応援を受けても、オーケルマンの表情は浮かない。
調子が悪いみたいだ。
2人目の参加者イェスタの矢は真ん中に刺さった。
会場が沸き、歓声と拍手に包まれた。
ハンスも負けじと真ん中へ。
大歓声が沸き起こる。
ハンスの苦手は当てにならないな。
俺は心を込めて精一杯の拍手を贈った。
4人目の参加者ベンヤミンは俺の方からはあまり見えない。
観客たちが口惜しがっているので、的中はできなかったようだ。
最後、5人目の参加者ラルフは弓を射る前から盛り上がっている。
この大会で最も期待された人物のようだ。
ラルフの矢は真ん中に刺さったことは、大歓声から分かった。
「うぉおおおおおおお!」
ラルフの雄叫びが響く。
2投目はイェスタ以外が的中。
続く3投目は全員が的中させ、観客のボルテージが上がった。
4投目はオーケルマン以外的中。
やった!
ハンスは全部真ん中を射抜いた!
この時点でオーケルマンとイェスタ、ベンヤミンの3人は敗退となった。
5投目はラルフとの全面対決だ。
ハンスとラルフは馬が運ばれる間、それぞれのやり方で精神統一を図っている。
ラルフは観客を煽って一体感を増している。
ハンスは静かに呼吸を整えていた。
俺はハンスに
(頑張れっ!!)
と念を送った。
念が通じたのか、ハンスがこっちを見た。
(応援してるぞ!!)
コクりと頷いたハンスには、きっと俺の応援が届いたはず。
観客の興味から外れたオーケルマンは、不機嫌を極めていた。
俺たちにデカイことを言っておきながら、不甲斐ない結果を残したんだ。
オーケルマンがどんなに王様に贔屓されていても、この時点で敗退したのだから良い順位は与えられないだろう。
お前は負けたんだよ、バーカ。
そして最終局面の5投目。
先ほどまでラルフがいた奥の方から、王様や俺たちのいる方に馬は駆ける。
5つ並んだ的にどれだけ命中させられるかが勝敗の分かれ目だ。
先攻はハンス。
遠くからで見えないが、号令で馬が駆け出す。
まず1つ、奥の方で大歓声が上がった。
2つ目も同様で、ハンスはとても良い成績を残しているようだ。
3つ目、俺はハンスの姿をはっきり見ることができた。
己の筋力だけで上体を安定させ、弓を構えている。
行けっ!
頑張れ!!
ハンスが放った矢は3つ目の的のど真ん中に刺さった!
俺も手を叩いて喜ぶ。
残り2つも上手くいけば、ラルフに大きなプレッシャーを与えられる。
突如、ハンスが落馬した――。
俺は思わず立ち上がった。
ハンスは脇腹から血を流している。
……あれ、矢が刺さってないか?
ソール騎士団がグラウンドに入り、ハンスの救護を行う。
会場内をザワつきと不安が包む。
しばらくしてフレデリクが大声で
「安心してください! ハンス・ユーホルトは負傷していますが、致命傷ではありません!!」
と言ったから、会場内が安堵の声で溢れた。
ハンスはフレデリクたちに介抱されて退場した。
致命傷じゃないからって、不安なのは変わらない。
あんなに調子が良かったのに、なぜ突然?
俺だって駆け寄りたいけど、それは許されない。
バクバクする心臓を押さえながら、席に座った。
アイシャが独り言みたく、でも確実に俺に伝えるために言った。
「僕、旦那様が矢を放ったのを見た……。アレは絶対狙ってやったんだ――」
驚いて横を見たが、アイシャは何事もなかったように前だけを見ていた。
耳を疑いたくなる。
だが、オーケルマンなら……。
弓術大会はハンスが途中退場した後も続けられた。
結果はラルフが首席で、ベンヤミン、イェスタ、オーケルマンと続いた。
ラルフは直前のアクシデントに影響されず、最高のパフォーマンスで王様を楽しませた。
観客がラルフへの祝福で盛り上がる中、俺はオーケルマンへの怒りと、ハンスの怪我の具合が気になって仕方なかった。
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