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弓術大会
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弓術大会当日。
競技が行われるグラウンドの周囲を観客席が囲う。
多くの貴族が遠くからの観戦を余儀なくされるほどの客数だ。
今回は矢を放つ関係で、観客席の片側しか座ることができないのも、席の奪い合いの原因となっている。
グラウンドには等間隔に的が置かれている。
参加者と的までの距離は30mといったところか。
ハンスの言う通り、俺たち妾には特別席が用意されていた。
参加者を間近で見られる場所で、臨場感を楽しめそうだ。
本来はオーケルマンを応援するために集められたが、俺の視線がどこを向いているかなど、この際どうでも良いだろ。
妾は全員引っ張り出されたようだから、この中に新しいお気に入りもいるはずだ。
本当にご愁傷様だ。
弓を持ったオーケルマンが妾たちに
「ワシの勇姿を目に焼き付けるのだぞ!」
と威勢の良いことを言っている。
弓術に自信があるのだろう。
オーケルマンがこっちへ歩いて来る。
でも目当ては俺じゃない。
俺の隣に座っていた妾だ。
「アイシャ~。ワシ頑張るから今夜も頼むよぉ」
こいつがアイシャだったのか。
エキゾチックな顔立ちで、俺とは正反対。
小麦色に焼けた肌は、どこかオーケルマンが妾にしようとしていたあの姉思いの青年に似ている。
オーケルマンは諦めてなかったんだな。
かねてから気色悪いオッサンだと思っていたが、幼児退行してないか?
そんなことは不可能と思いながらも、できるだけ他人のフリをしたくて2人のやり取りから目を逸らした。
こっちを睨むノシュテット夫人を目が合った。
人目をはばからずイチャつくオーケルマンを睨んでいるのか?
それとも俺か?
俺が視線に気付いたのを察したノシュテット夫人は、扇子で顔を隠してしまった。
大会責任者の高らかな宣誓と共に弓術大会が始まった。
参加者は5名。
王様から最も近い位置にオーケルマンが陣取り、ハンスは3番目、真ん中にいる。
一番奥の参加者なんて、王様から見えるのか?
観客より一段も二段も高いところで見下ろす王様視点では、ハンスもギリギリ見えなさそうだ。
これだとオーケルマンが有利に王様へアピールできるな……。
マントをなびかせ、剣の代わりに弓を持ったハンスも新鮮でいいものだ。
凛々しい姿に、俺まで誇らしい気分になる。
ちらりと目が合って、ハンスの口元が緩んだような気がする。
ハンスが立つ付近の席には、フレデリクをはじめとしたソール騎士団が陣取っている。
それぞれの参加者にはサポーターがいて、皆、一番近くで応援しているんだ。
ハンスは参加者の中で飛び切り女性人気が高い。
黄色い声援に参加できないのが残念だ。
大会のルールは事前にジュンから聞いている。
王様に近い参加者から順番に的を目掛けて矢を射る。
中心に近いほど得点が高くなる。
直立で矢を射るのを4回行った後、最後の第5投目は駆ける馬上から射るらしい。
特に最後は、不安定な馬上から、5つの的を連続で射抜けると、観客は大盛り上がりすると聞いた。
ロマーリア王国でも那須与一は優れた弓使いとして重宝されるだろう。
ハンスは馬に乗り慣れている。
だからきっとミラクルプレーを見せてくれるはずだ。
「始め!」の号令が会場に響いた。
競技が行われるグラウンドの周囲を観客席が囲う。
多くの貴族が遠くからの観戦を余儀なくされるほどの客数だ。
今回は矢を放つ関係で、観客席の片側しか座ることができないのも、席の奪い合いの原因となっている。
グラウンドには等間隔に的が置かれている。
参加者と的までの距離は30mといったところか。
ハンスの言う通り、俺たち妾には特別席が用意されていた。
参加者を間近で見られる場所で、臨場感を楽しめそうだ。
本来はオーケルマンを応援するために集められたが、俺の視線がどこを向いているかなど、この際どうでも良いだろ。
妾は全員引っ張り出されたようだから、この中に新しいお気に入りもいるはずだ。
本当にご愁傷様だ。
弓を持ったオーケルマンが妾たちに
「ワシの勇姿を目に焼き付けるのだぞ!」
と威勢の良いことを言っている。
弓術に自信があるのだろう。
オーケルマンがこっちへ歩いて来る。
でも目当ては俺じゃない。
俺の隣に座っていた妾だ。
「アイシャ~。ワシ頑張るから今夜も頼むよぉ」
こいつがアイシャだったのか。
エキゾチックな顔立ちで、俺とは正反対。
小麦色に焼けた肌は、どこかオーケルマンが妾にしようとしていたあの姉思いの青年に似ている。
オーケルマンは諦めてなかったんだな。
かねてから気色悪いオッサンだと思っていたが、幼児退行してないか?
そんなことは不可能と思いながらも、できるだけ他人のフリをしたくて2人のやり取りから目を逸らした。
こっちを睨むノシュテット夫人を目が合った。
人目をはばからずイチャつくオーケルマンを睨んでいるのか?
それとも俺か?
俺が視線に気付いたのを察したノシュテット夫人は、扇子で顔を隠してしまった。
大会責任者の高らかな宣誓と共に弓術大会が始まった。
参加者は5名。
王様から最も近い位置にオーケルマンが陣取り、ハンスは3番目、真ん中にいる。
一番奥の参加者なんて、王様から見えるのか?
観客より一段も二段も高いところで見下ろす王様視点では、ハンスもギリギリ見えなさそうだ。
これだとオーケルマンが有利に王様へアピールできるな……。
マントをなびかせ、剣の代わりに弓を持ったハンスも新鮮でいいものだ。
凛々しい姿に、俺まで誇らしい気分になる。
ちらりと目が合って、ハンスの口元が緩んだような気がする。
ハンスが立つ付近の席には、フレデリクをはじめとしたソール騎士団が陣取っている。
それぞれの参加者にはサポーターがいて、皆、一番近くで応援しているんだ。
ハンスは参加者の中で飛び切り女性人気が高い。
黄色い声援に参加できないのが残念だ。
大会のルールは事前にジュンから聞いている。
王様に近い参加者から順番に的を目掛けて矢を射る。
中心に近いほど得点が高くなる。
直立で矢を射るのを4回行った後、最後の第5投目は駆ける馬上から射るらしい。
特に最後は、不安定な馬上から、5つの的を連続で射抜けると、観客は大盛り上がりすると聞いた。
ロマーリア王国でも那須与一は優れた弓使いとして重宝されるだろう。
ハンスは馬に乗り慣れている。
だからきっとミラクルプレーを見せてくれるはずだ。
「始め!」の号令が会場に響いた。
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