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囚われし者
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……ここはどこだ?
ぴちゃん、と水滴が落ちる音が反響する天井が近い空間。
ここは洞窟か?
「目が覚めたようね」
庶民的な男性服を着ているが、ベリーショートの女だ。
全うな人生を歩んできた人間なら、後ろ手に縛って俺の自由を奪うことはしない。
「アンタは?」
女は俺にナイフを向けた。
「口の利き方がなってないね。お前は人質なんだよ!」
人質になった時のマニュアルなんて知らん。
洞窟内には他に20人くらい男がいた。
こいつら賊か?
この女は俺が逃げ出さないように見張ってるってことか。
後頭部が痛む。
きっと何かで殴られて、そのまま拉致されたんだ。
明るいナイトマーケットの裏では、こういう事件が発生しやすいのかもな。
「お前はオーケルマンのツレだろ?」
何でそれを知ってるんだ?
俺が人質になってる理由にオーケルマンが関係しているということか。
「オーケルマンとお前たちが王宮へ入っていくのを、アタシの部下が見てたんだよ」
「アンタは何でこんなことを? バレたら罪に問われるんじゃないの?」
賊に語りかけたって無意味だが、俺は少しでも長く時間を稼ぐ必要がある。
今頃ハンスは俺を探しているだろう。
捜索しやすいように、できるだけ同じ場所にいよう。
俺の問いに女はゲラゲラと笑った。
そして俺の至近距離まで近付いて、ギョロリと目をひん剥いた。
そんなに怒っちゃって……。
せっかくの美人が台無しだ。
「アタシがあの男、オーケルマンの娘だからだよ!」
オーケルマンの娘!?
まずは母親に似て良かったってのが素直な感想。
オーケルマンに妻や娘がいたとは驚いた。
今も王宮内にいるのか?
「アタシのママは盗賊だった。王国に捕らえられたが、当時外部大臣だったオーケルマンに見初められた。無罪放免を条件に妻になることを受け入れた」
オーケルマンの権力はその時から影響力があったんだな。
「ママは王国で最も美しい人だった。私を産んでも子育てより恋愛に没頭するくらいにね。ママは私を愛する代わりに、美しく若い王宮の男たちを魅了した」
……嫌な予感がするな。
「ある時、オーケルマンは見てしまった。自分の妻が2人の男と快楽に耽っているところを。それであの男は何をしたと思う?」
オーケルマンのことだからなあ、穏便には済まないだろう。
「アンタの母親に罰を与えた?」
「そうだ!! あの男はママを絞首刑にした!! それだけじゃない。男たちは男娼にさせられ、オーケルマンの慰みものとなった」
オーケルマンが男を妾にする理由。
裏切られたトラウマと妻への復讐。
「オーケルマンは、残されたアタシをラムハリ王国で生きていくように手引きした。アタシはそんなことがあったことも知らず、13歳まで王宮内で大人しく貴族の教育を受けてきた! ママは病気で死に、パパは遠い友好国の偉大な為政者であると信じてね!!」
で、いかなる者も真実からは逃れられないと。
「いつも優しかった男爵夫人たちが、話をしているのを聞いてしまった。問い詰めたアタシに、あいつらはこう言った! 『薄汚くて哀れな子』 だからアタシは王宮を出たんだ!」
お嬢様が賊になるとは、もったいないことするなあ。
賊になったところで、オーケルマンの娘であることは変わらないじゃないか。
「ここでの生活は奪うか奪われるかの世界。でも、アタシはあんな場所で飼い殺さるよりずっとマシ」
黙って聞いていた俺も、そろそろ反論したくなってきた。
だって、オーケルマンが憎いならオーケルマンをさらえば良い。
俺が選ばれた理由としては納得できない!
ぴちゃん、と水滴が落ちる音が反響する天井が近い空間。
ここは洞窟か?
「目が覚めたようね」
庶民的な男性服を着ているが、ベリーショートの女だ。
全うな人生を歩んできた人間なら、後ろ手に縛って俺の自由を奪うことはしない。
「アンタは?」
女は俺にナイフを向けた。
「口の利き方がなってないね。お前は人質なんだよ!」
人質になった時のマニュアルなんて知らん。
洞窟内には他に20人くらい男がいた。
こいつら賊か?
この女は俺が逃げ出さないように見張ってるってことか。
後頭部が痛む。
きっと何かで殴られて、そのまま拉致されたんだ。
明るいナイトマーケットの裏では、こういう事件が発生しやすいのかもな。
「お前はオーケルマンのツレだろ?」
何でそれを知ってるんだ?
俺が人質になってる理由にオーケルマンが関係しているということか。
「オーケルマンとお前たちが王宮へ入っていくのを、アタシの部下が見てたんだよ」
「アンタは何でこんなことを? バレたら罪に問われるんじゃないの?」
賊に語りかけたって無意味だが、俺は少しでも長く時間を稼ぐ必要がある。
今頃ハンスは俺を探しているだろう。
捜索しやすいように、できるだけ同じ場所にいよう。
俺の問いに女はゲラゲラと笑った。
そして俺の至近距離まで近付いて、ギョロリと目をひん剥いた。
そんなに怒っちゃって……。
せっかくの美人が台無しだ。
「アタシがあの男、オーケルマンの娘だからだよ!」
オーケルマンの娘!?
まずは母親に似て良かったってのが素直な感想。
オーケルマンに妻や娘がいたとは驚いた。
今も王宮内にいるのか?
「アタシのママは盗賊だった。王国に捕らえられたが、当時外部大臣だったオーケルマンに見初められた。無罪放免を条件に妻になることを受け入れた」
オーケルマンの権力はその時から影響力があったんだな。
「ママは王国で最も美しい人だった。私を産んでも子育てより恋愛に没頭するくらいにね。ママは私を愛する代わりに、美しく若い王宮の男たちを魅了した」
……嫌な予感がするな。
「ある時、オーケルマンは見てしまった。自分の妻が2人の男と快楽に耽っているところを。それであの男は何をしたと思う?」
オーケルマンのことだからなあ、穏便には済まないだろう。
「アンタの母親に罰を与えた?」
「そうだ!! あの男はママを絞首刑にした!! それだけじゃない。男たちは男娼にさせられ、オーケルマンの慰みものとなった」
オーケルマンが男を妾にする理由。
裏切られたトラウマと妻への復讐。
「オーケルマンは、残されたアタシをラムハリ王国で生きていくように手引きした。アタシはそんなことがあったことも知らず、13歳まで王宮内で大人しく貴族の教育を受けてきた! ママは病気で死に、パパは遠い友好国の偉大な為政者であると信じてね!!」
で、いかなる者も真実からは逃れられないと。
「いつも優しかった男爵夫人たちが、話をしているのを聞いてしまった。問い詰めたアタシに、あいつらはこう言った! 『薄汚くて哀れな子』 だからアタシは王宮を出たんだ!」
お嬢様が賊になるとは、もったいないことするなあ。
賊になったところで、オーケルマンの娘であることは変わらないじゃないか。
「ここでの生活は奪うか奪われるかの世界。でも、アタシはあんな場所で飼い殺さるよりずっとマシ」
黙って聞いていた俺も、そろそろ反論したくなってきた。
だって、オーケルマンが憎いならオーケルマンをさらえば良い。
俺が選ばれた理由としては納得できない!
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