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人類の英知……なのか?②

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 次は俺の番だ。

「お主の星は乱れている。世界の理から外れている」

 俺が異世界から来たから?

 爺さんの目を見ていると、全てを見透かされている気分だ。


「その理由はお主がよくわかっているはず。乱れた星の周りに、1つ、2つ、星が見える。1つは弱々しく、いずれ消えてしまうだろう。もう片方は強く輝き……お主の軌道に立ち塞がっている」

「それってどういうことですか?」

 爺さんは首をかしげた。

「分からん」

 分からんのかーい!


「ワシが言えることは、星が辿る軌道は正道ということ。それを妨げんとする星は、お主の人生を根本から覆すものだ」

 それってオーケルマンのことか?

 やっぱりアイツは俺の人生の障害物だ。


「あの、俺はどういう風にその星から逃げれば良いんでしょう?」

「そうさなぁ。人間には定められた運命がある。お主は運命から逃れることはできん。そのようなことをしようものなら、肉体と精神がバラバラになってしまう」

 ということは、俺はずっとオーケルマンの妾ですか?

 醜い性獣の言いなりになる運命を課せられるほど、俺、悪いことしたの?

 爺さんよ、インチキ占い師であれ!

 
 爺さんは続けた。

「お主を翻弄するのは数字の3。良くも悪くも、お主の日々を狂わすだろう」

 何で俺だけラッキーカラーみたいなポップなアドバイスじゃないんだよ!

 因縁の数字なんて知りたくなかった……。


「まあまあ、安心しなさい。運命で人の心は支配できない。運命が気に食わぬというなら、生涯をかけて抗い迎える最期を受け入れなさい。だが、運命と人の心がひとつになる時、お主は本当に手に入れたい物を掴み取ることができる」

 この爺さん、俺が男だって分かってたんだ。

 手に入れたい物って言ったよな?


 俺はお礼を言って、店を後にする時に最後の質問をした。

「俺が欲しい物はいつになったら手に入る?」


 爺さんは目をカッと見開いた。

 俺はびっくりして、ハンスに肩が当たった。


「それは動産のことか? それとも……」

 ドウサンって何だ?

「一方は厚き壁の向こうにあり、一方は取るに足らぬ物。どちらを選ぶかはお主次第」


 どういうことだ?

 真実の愛は2つあるってことか?

 厚き壁ってのは盗みそびれた国宝として、もう1つは偽物?


 いつっていう質問には答えてくれないし。

 爺さんは目を閉じてしまって、もう占いは終わりといった雰囲気を漂わせている。


 俺たちは店を出る他なかった。


「占いどうだった?」

「実に考えさせられるものだった。強い精神と誇りは騎士にとって不可欠。あのご老人はそれを見抜いておられた」

 ……そういう解釈もできるのか。

 ハンスが満足そうで俺も満足だ。


 服のヒラヒラ部分を引っ張られた。

 ボロボロの服を着た少女。

 肌ツヤがあまり良くない。


「どうしたの?」

 俺、お母さんじゃないよ?

「あなたたちは旅の人?」

 俺とハンスは顔を見合わせた。

「……そうだけど」


 夜に一人でいるなんて危険だ。

 親が近くにいなければ迷子だけど、土地勘もないのに親のところに連れて行けるだろうか。


 少女が口にしたのは驚きの内容だった。

「お金ちょうだい。この前食べ物を盗んだら、次は腕を切り落とすって言われたの。だから食べ物を買うお金をちょうだい」

 ハンスは少女に聞こえないように耳打ちした。

「ラムハリ王国は貧富の差が激しいという。この子供は貧民街から来たのだろう」


 俺は王宮内で出された大量の料理を思い出した。

 こんなに煌びやかで物が溢れた国で、子供1人お腹いっぱいにさせられない……。

 惨状を知ってしまったら、助けるしかないじゃないか。


 俺は貧富の差を無くすことはできない。

 だから今、この子が生き延びることだけを考えよう。


 困ったことに俺には手持ちの金がなかった。

 ジュンへの土産とさっきの占いで使い切ってしまった。

 オーケルマンめ、もっと小遣いを寄越せ!!


 そうだ!

 ないなら作ればいい。

「ちょっと、待ってて。ハンス、この子と一緒にいてあげて」


 俺は宝飾品を扱う店で指輪を買い取ってもらった。

 オーケルマンからもらった指輪が役に立った。


「はい、これで大丈夫かな?」

 84,000ポルク。

 何日分の食事になるか分からないけど。

 少女は一切返事をしないで、奪うようにお金を取り走り去ってしまった。


「金はどう用意したんだ?」

「指輪を売ったんだよ。文句の付け所がない金額を用意できて良かったよ」

 俺は肩をすくめて自虐した。


「ロマーリア王国の民として立派な行いだ」

 ハンスに褒められ俺の鼻も高いぜ!

「俺もわずかだが、以前訪れた際の余りを持っている。飲み物でも買って来よう。ここで待て」


 遠慮する俺に

「気にするな、占いの礼だ」

 と飲み物を買いに人混みの中へ消えてしまった。


 俺も付いてけば良かったなあ。

 でもご褒美にジュースって、子供かよ。

 ニヤニヤしながら待っていると、後頭部に強い衝撃が走った――。
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