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ナイトマーケット③

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 俺は作戦を考えた。

 これはハンスの前ではやりたくないな。


「ハンス、ちょっと向こう、いや、かなり遠くに行って待っててくれ」

「どうしてだ? 俺は護衛を――」

「いいから! 可愛い弟のためなんだよっ!!」


 ハンスが見えなくなったのを確認し、俺は作戦を開始した。

「ねーえ? 今、これだけしか持ってないのぉ」

 紙幣を4枚ピラピラさせた。


「ホホホ、これじゃ足りないねぇ。お嬢さんの頼みでも40,000ポルクじゃ売れない」

 やはり足りなかった。

 そういう分岐だったら、ハンスを遠ざけたのは正解だった。


 俺は前屈みになり、胸当てに人差し指を引っ掛けた。

「この中のお宝で払ったらダメぇ?」

 店主は眉を上下させて、何とか見ようと頑張っている。


「ねぇ、見たくないの?」

 なんとまあ、滑稽な。

 店主はスケベ心と商売の間で揺れている。

 
 隠されると見たくなるのが人間。

 しかも俺を女だと思っているようだし、これは時間の問題だな。


 俺は店主に熟考する余裕を与えない。

「そっかぁ、残念。もっと色んなところも……ね?」

 わざとらしくケツをフリフリさせた。


「じゃ、バイバーイ!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!! 分かった、40,000でいいから、店の裏の茂みにでも……」


 俺は店主からもぎ取るように、ハンカチと40,000を交換し

「いや、別にここでいいよ」

 思い切り胸当てを上にずらした。

 ちょっと乳首がふっくらし過ぎているが……どうだ、この男の胸部は!!

 
 頭が混乱した店主は、男の胸を凝視している。

 店主だけじゃない。

 周りの店員や客までもが、俺を露出狂扱いだ。


「なんなら下も見せるけど?」

「い、いや。遠慮しとくよ……。毎度あり……」


 俺は服装を整えて、優雅にハンスの元へと向かった。

 客たちは俺をジロジロ見ながら、通り道を作っている。

 まあ、俺にかかればこんなもんよ。

 店主のあの物悲しそうな顔は傑作だな!!

 
 通り道が途絶え、人混みをかき分けて進む頃、ハンスを発見した。

「ハンスー! ハンカチ買ってきたぞー。特別に安くしてもらえた」

「そうか、良かった。それより向こうで何かあったのか? 客が騒いでいたが……」


 多分それは俺のこと。

 でもハンスに見られてないから問題ナシ!


 ハンスは占いの店の前にいた。

「ハンスはこういうの好きなの?」

「星詠みは人類の英知だからな」


 占いって娯楽の一種じゃないの?

 この世界では科学に匹敵するジャンルなんだな。


 店先の看板には1回10,000ポルクと書かれている。

 ちょうど手持ちに残っている。

 
 ハンスは喜ぶかな。

「入ってみないか?」

 ハンスの表情が明るくなった。

 割とすぐ表情が出るタイプなのか!?


 俺たちは中へと入った。
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