真実の愛は体を売って手に入れる所存

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ナイトマーケット

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 もう食べられない~。

 目の前にはたくさんの食べ物が俺を待っている。

 耳元で何か喚くヤツがいる。

 あ、何だ、オーケルマンか。


 俺は飽食を満喫してるの。

 だから空気読めないヤツはこうだ!

 俺は勢い良く右ストレートを食らわしてやった。


 へへっ、どうだ!

 参ったか、オーケルマンめ。


 ……右手が痛いぞ?

 あれ、俺は何をやって――。


 そこで俺は目が覚めた。

 そして、俺の右ストレートを片手で受け止めるハンスと目があった。


「随分と寝相が良いな」

 ベッドに腰掛けているハンスは、意地悪く俺に目覚めの挨拶をした。

 何で、ハンスがいるわけ!?


「あ、えっ?」

「使用人がお前の返事がないと心配するので来てみれば……」

 ラムハリ王国の男性服をまとったハンスの目線が、俺の剥き出しの腹に向かった。


 俺が体を起こした反動で、少しベッドが跳ねた。

「あっ、これは使用人にこんなのしか渡されなかったんだ。好きで着たわけじゃないぞ!!」

 ハンスはクスクスと笑った。

 笑った顔を見たのは初めてで、俺はますます動揺しベッドが跳ねる。


「この国の女を見たか?」

 王宮へ入る前に何人も見た。

 それが何か?

「この国の女は、力強く開放的に生きている。故に、家庭を守る母性の象徴である、美しい髪を短くする女も多いようだ。お前、その格好だと女に間違えられるぞ」


「はあ!? 俺、全然嬉しくないんだけどー!」

 そうだった。

 俺はこの世界ではかなり優れた美貌の持ち主だった。

 中性的なイケメンが女装すると、マジで可愛くて付き合いたくなる、あの現象が起こっているのか……。


「恥ずかしがることはない。似合ってる」

 ハンスにそう言われるだけで、自分の性別とか周りの目とか、そういう俺を取り巻く全てのことがどうでも良くなってしまう。

「べ、別に嬉しくないし。あ、でも心配して来てくれたんだっけ。ありがとう。俺はこの通り元気だよ」


 このまま話を続けていたいところだが、そうもいかないようだ。

「宰相が王宮の入口で待っている。今すぐ準備しろ」



 王宮の入口ではオーケルマンとロレンソがゲラゲラと盛り上がっていた。

 王様への謁見は終わったんだろうか。

 っていうか酒飲んでない!?


「おーい!」

 ご機嫌なオーケルマン。

 やっぱり酒を飲んでるな。


「マヤ、ワシらは今から出かけてくるからの。お前は王宮内で休むか? それともラムハリ名物ナイトマーケットでも行ってくるか?」

 ナイトマーケット!?

 さっき寝たから元気だけは有り余ってる。


「ナイトマーケットに行きたいです」

「ならこれを」

 オーケルマンは俺の胸元にラムハリ王国の紙幣をねじ込んだ。

 この衣装、こいつが仕組んだのか?


「ユーホルト、マヤを頼んだぞ。さ、それでは行きましょうかね」

 オーケルマンとロレンソは鼻の下を伸ばして、仲良く街へと繰り出していった。


「ラムハリ王国は売春業が盛んだといわれている。もちろん男娼の数も多い」

 ああ、なるほど。

 だから俺はこんな格好をさせられても、オーケルマンの例の視線を感じなかったのか。

 あの2人、似たような見た目で性的嗜好も似てるって、どんだけ気が合えば済むんだ?

 
 それはさておき、俺たちはナイトマーケットに赴く権利を得た!

 一体どんな楽しいことが待ってるんだろう。
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