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ラムハリ王国

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 ようやくたどり着いたラムハリ王国は、砂漠が大部分を占める国だった。

 昨晩はラムハリ王国の領土内で寝泊りしていたわけだ。

 都はもっと大きなオアシスを中心に形成されている。

 ロマーリア王国より気温が高く、人々もエネルギッシュだ。


 王宮内は壁や床が水晶で作られている。

「お待ちしておりました、オーケルマン殿」

 出迎えたのは、オーケルマンに似た小太りのオッサン。


「久しぶりですなあ、ロレンソ公爵。何でも新王は御年71歳だとか。いやはや、いつまでも現役でいたいものですなあ」

 オーケルマンとロレンソは知り合いのようだ。


 ロレンソは俺とハンスには全く興味を示さない。

 召使いだと思ってるのか?


「ワシは今からラムハリ王に拝謁してくる。お前たちは……」

「私どもが用意したお部屋がございます」

「ああ、いつも寛大なご配慮、頭が下がります」


 2人は楽しそうにつまらない会話をしている。

 これも外交には必要なことなんだ。


 俺たちは使用人に連れられて、それぞれ別の部屋に通された。

 俺の部屋はロマーリア王国に引けを取らない豪華さだ。

 これほどの水晶をどこで集めたんだろう。

 蒸し暑さを忘れさせてくれる涼やかな内装だ。


「失礼します。衣装をお持ちしました」

 使用人から嬉しいサプライズ!

 俺の荷物にも衣装は入っていたけれど、正直、この国では暑くてかなわない。


 それにロマーリア王国の男性の正装は、格式張っていて息苦しいこともある。

 まあ、街中をネグリジェで歩くよりはマシなんだけど。

 旅先くらいは、開放的な服装をしたいものだね!


 だが、俺は思わず使用人に確かめてしまった。

「本当に、これを着るんですか?」

 戸惑った顔の使用人。

「は、はい……。ロレンソ公爵から指示された通りでございます……。お好きな物をお選びください」


 使用人が持ってきたのは、赤やピンク、紫など色鮮やかなヒラヒラした布。

 しかもよく見ると、ブラジャーみたいな胸当てがある。
 
 これって女物じゃないか!!


 俺は街で見た、メンズ白ゆるコーデがしたかったんだ!!

 ヘソを出してる場合じゃない。

 開放的っていうのは、そういうことじゃないんだよぉ。

 好きな物を選べと言われても、本当に俺に与えられた選択肢はこれなのか……?


 でも彼女に文句を言っても、困らせるだけだ。

 使用人が客人を怒らせたと、問題になるかもしれない。


 俺は仕方なく水色を選び、着てみた。

 これならちょっとはボーイッシュに。

 ってこんなセクシーな格好じゃ女性にしか見えない!!


 しばらく悶々とする俺のところに、また使用人が訪れた。

 食事のサービス付きだったようだ。


 衣装にはガッカリしたが、食べ物はアタリだ!

 豚の丸焼きやハーブで香り付けした鳥の手羽焼き、よく分からない野菜をカリカリに焼いたもの――。

 ラムハリ王国の料理はなかなかにワイルドだ!


 10人分くらいある料理に、俺は舌鼓を打った。

 食べ切れない量でもてなすのは、ラムハリ王国流のマナーなのか?

 着替えていなかったら、すぐにお腹が苦しくなっていたところだ。

 お腹が丸出しの衣装だったのは、不幸中の幸いだな!


 俺は食べてすぐに寝たら牛になるという教えに逆らい、ベッドに大の字になった。

 旅の疲れが癒される~。


 ハンスは今、何やってるんだろ。

 俺みたいに満腹になって、腹をぽっこりさせてんのかな。

 想像しただけで笑える。

 最初はすげぇかっこいいと思って、でもちょっと怖い嫌なヤツで、だけど本当は……。


 満たされた俺は、いつの間にか眠ってしまった。
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