真実の愛は体を売って手に入れる所存

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星は聞いている

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 日が落ちた頃、俺たちは砂漠の真ん中にいた。

 馬車の外からハンス・ユーホルトの声。

「あそこにオアシスがあります。今夜はそこで休みましょう」


 馬車は小規模な池を木々が囲うオアシスの近くに停まった。

 ラムハリ王国までは1日ではたどり着けなかった。

 休むということは、ここで野宿するのか……。

 寝床はどうするんだ?


 俺たちの食事は空腹を満たすのに十分な量であった。

 日中に買い込んだおかげだ。

 直火焼きの肉は味付けをしなくとも味が濃い。

 パンに果物も付いて、ここが砂漠でなければ贅沢な気分になるだろう。


 砂漠の夜が冷えるというのは本当だった。

 俺とオーケルマンは焚き火の近くで食事をしている。

 ハンス・ユーホルトと御者は少し離れた場所にいる。

 あそこじゃ火の温もりは感じられないだろうな。


 2人が離れているのは、ジュンが前に言っていた身分が違うと同じテーブルで食事できないというのと関係がありそうだ。

 ハンス・ユーホルトは騎士団長なのに、そういうのを気にしないといけない立場なのか?

 王様に謁見できるんだから、高い地位にあるはずだけど。

 単純にオーケルマンと仲が悪いから、一緒に食べたくないだけだったりして。


 まあ、俺もオーケルマンとの食事は不快感でいっぱいだ。

 今まで一緒に食事をとったことがなかったから知らなかったが、オーケルマンは行儀が良いとは言えない。

 貴族ってのはお上品に食べるんじゃないのか?

 周囲へ何の配慮もない咀嚼音は、ハンス・ユーホルトと御者にも届いていてもおかしくない。


 そのくらいオーケルマンの咀嚼音はひどかったし、俺たちは沈黙の中で食事をしていた。

 ここはこの中で一番ムードメーカーっぽい俺が盛り上げてやろうじゃないか!


「旦那様、ラムハリ王国はどのような国なのですか?」

 オーケルマンは指をちゃぷちゃぷ舐めて

「そんな事を聞いてどうする? 行けば分かる」

 俺たちに共通する唯一の話題は、これで終了した。


「ワシとマヤは馬車で寝るとしよう」

 と言って、俺をいやらしく舐めるように見て早々と馬車に戻った。

 食事の用意をしたハンス・ユーホルトや御者に、「ありがとう」も「ごちそうさま」も言わない。

 貴族が聞いて呆れるぜ。


 俺はゆっくりと食事を堪能した。

 急いで食べても楽しいキャンプファイヤーは開催されないからな。

「ごちそうさまでした」

 両手を合わせてその場を後にした。


 馬車の窓には内側に布が取り付けられていた。

 朝日で眠りを妨げないようにと、食事前に御者がやってくれたものだ。

 
 中には見慣れた性欲モンスターが

「遅かったじゃないか。待ちくたびれたぞ」

 と布から漏れた月の光に照らされている。

 俺はこのために呼ばれたんだ。

 仕事モードにスイッチを切り替える。


「昼間はお預けを食らったからのう」

 何回か体位を変えた後で、俺は窓に向かって四つん這いの体勢になった。


 オーケルマンは背後から挿入し

「マヤの可愛い声をユーホルトに聞かせてやれ。あやつはワシを護衛するため、この馬車のすぐ近くにいるはずだ」

 と耳打ちした。


 俺の動きがピタリと止んだ。

 そんなことは聞いてないぞ。

 よりによってハンス・ユーホルトには、聞かれたくない。


 思わず素の自分に帰ってしまったが、どうしたものか。

 このままマグロを決め込めば、今までのが演技だとバレてしまう。

 声を出せば、ハンス・ユーホルトに……。


「どうした? いつもと違う環境で緊張しておるのか?」

 俺は抑え気味に感じているフリをした。

「あっ、あん、うぅ、ん」



「もっと自らを解放せいっ! ……この布が悪いんだな!!」

 オーケルマンは布をもぎ取ってしまった。

 俺の視点から夜空が広がっている。



「これで声も出るだろう」

 オーケルマンは俺の腕を引っ張って、上半身を思い切り反らせた。

 俺が自力で体勢をキープできると分かるやいなや、腕から手を離し乳首をつねり始めた。

 そしてこれでもかという力で、肌と肌と叩きつけた。


 オッサンにパンパンされて、俺の頭はおかしくなった。

 ……もう、どうにでもなれ。

 ハンス・ユーホルトにどう思われても良いというヤケクソ精神は、俺をどこまでも有能で、都合の良い男娼にした――。
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