壺の中にはご馳走を

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寝たきりの祖母③

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「婆さんは俺の前に立つと、糸が切れたように脱力し覆いかぶさってきた。

『まあ! 虎太郎ちゃんが次の当主!! 皆に伝えな!!』

 叔母が大声で家中を走り回っている最中、婆さんの体はボロボロに崩れ始めた。

 押し退けようと体に触れれば、手にはぎっしりと灰が付いた。


 親戚連中が部屋に集合し、ほとんどは入りきれず外で騒がしくしていたが、俺は祝福の言葉をかけられまくった。

 酒を持った爺さんが、人をかき分けズカズカと入ってくると、酒を飲むよう差し出した。

 俺は酒があまり強くないし、警戒心が解けていなかったから断った。


 爺さんは露骨に不機嫌な顔をして、他の年寄りに俺を押さえるように命じた。

 そして最初は抵抗できたが、腕や足に噛み付かれて意識を逸らしてしまった瞬間に、一気に劣勢となり無理やり酒を口の中に入れられた。

 そこで意識を失った。


 次に目を開けた時、見覚えがある部屋にいた。

 カーテンが全くないから外の光が入り放題のかび臭い部屋。

 当主が寝ていた部屋だ。



『虎太郎ちゃん、おめでとう。寿命がもらえるんは1週間後やけん、それまでここで大人しくしてよ~』

 ベッドシーツを取り替えないまま寝かされたようで、年寄り特有のニオイが鼻を付いた。


 叔母は常にベッドで俺が横になっていることを監視していた。

 食事は皆で一緒に、入浴は爺さん4人に囲まれ、排泄も誰かしらトイレの前で待っていた。

 親戚連中は俺が逃げないか心配だったんだ。


 そんなわけで、監視されながら年を越してしまった。

 大晦日までに帰る予定だったが、正月も過ごすはめになった。

 普通親戚の集まりっていうのは正月を祝うものだろ?

 普通じゃなかったから、あいつらは俺が当主に選ばれたことを何日もかけて祝った。


 叔母は適当な嘘でオヤジに連絡したらしく、俺が軟禁されていることは誰にも伝わらない日々。

 しかし1月3日、つまり昨日。

 ついに監視が緩んだ。

 俺があまりにも従順な態度を示すものだから、トイレだけは自由に行って良いことになった」
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