62 / 72
真珠
しおりを挟む
「ティサは年末年始も営業するんですね」
「そうだ。年の瀬だろうと、よほどの理由がない限りウチは客を受け入れる」
茉美はハッとした顔で、真也に年末年始の休暇をちらつかせた。
「アタシは気が利かなかったねぇ。真也は用事があるんじゃないのか? アタシ1人で店を開いてもいいんだぞ?」
真也はキョトンとしてから、笑顔になった。
「いえ! 僕は年末年始も休みませんよ! 茉美さんは命の恩人ですから!!」
祓いを受け救われた人々を送り出すのが楽しい今日この頃。
人々が慌ただしく行き交うこんな時にも、客は訪れる。
「小川珠理です。これを見てください」
小川珠理は高級ブランドバッグから、たくさんの真珠をテーブルに散乱させた。
その豪華さに驚く真也に対し、茉美の表情は変わらない。
予想外の反応に小川珠理は、茉美の顔色を伺いながら話し始めた。
「これは私の口から出たものです。
1ヶ月前、私は口から真珠を吐き出しま――」
そこで小川珠理の口からポロっと一粒の真珠が落ちた。
「あっ、こんな風にです。
大小さまざま、色は全部白です。
喉を通った感覚がないので、口の中で作られていると思います。
私は病気を疑って検査を受けました。
結果はどこも異常なし。
最初は今ほど頻繁に起こらなかったので、お医者さんに実演して見せることができませんでした。
ネットで調べても、こんな症状を抱える人はいません。
きっと病気ではないんです。
私はこの通り元気ですし。
原因を突き止められないまま、あることに気付きました。
それは出てくるタイミングです。
ピノキオは嘘を吐くと鼻が伸びますよね?
そんな感じで、私にもきっかけがあるんです。
それは甘い物を口にすることです。
必ずではありませんが、高確率で5分以内に真珠を出すことができます。
さっきはタルトを食べたでしょう?
とても甘くて美味しかったので、実際に真珠が出るところをお見せすることができたんです。
訳も分からず出てくる真珠……。
売ることも捨てることもはばかられました。
こちらに持ってきたのは、ほんの一部なんです。
毎日真珠とにらめっこするだけだったある日、道端でおじさんに声をかけられました」
「そうだ。年の瀬だろうと、よほどの理由がない限りウチは客を受け入れる」
茉美はハッとした顔で、真也に年末年始の休暇をちらつかせた。
「アタシは気が利かなかったねぇ。真也は用事があるんじゃないのか? アタシ1人で店を開いてもいいんだぞ?」
真也はキョトンとしてから、笑顔になった。
「いえ! 僕は年末年始も休みませんよ! 茉美さんは命の恩人ですから!!」
祓いを受け救われた人々を送り出すのが楽しい今日この頃。
人々が慌ただしく行き交うこんな時にも、客は訪れる。
「小川珠理です。これを見てください」
小川珠理は高級ブランドバッグから、たくさんの真珠をテーブルに散乱させた。
その豪華さに驚く真也に対し、茉美の表情は変わらない。
予想外の反応に小川珠理は、茉美の顔色を伺いながら話し始めた。
「これは私の口から出たものです。
1ヶ月前、私は口から真珠を吐き出しま――」
そこで小川珠理の口からポロっと一粒の真珠が落ちた。
「あっ、こんな風にです。
大小さまざま、色は全部白です。
喉を通った感覚がないので、口の中で作られていると思います。
私は病気を疑って検査を受けました。
結果はどこも異常なし。
最初は今ほど頻繁に起こらなかったので、お医者さんに実演して見せることができませんでした。
ネットで調べても、こんな症状を抱える人はいません。
きっと病気ではないんです。
私はこの通り元気ですし。
原因を突き止められないまま、あることに気付きました。
それは出てくるタイミングです。
ピノキオは嘘を吐くと鼻が伸びますよね?
そんな感じで、私にもきっかけがあるんです。
それは甘い物を口にすることです。
必ずではありませんが、高確率で5分以内に真珠を出すことができます。
さっきはタルトを食べたでしょう?
とても甘くて美味しかったので、実際に真珠が出るところをお見せすることができたんです。
訳も分からず出てくる真珠……。
売ることも捨てることもはばかられました。
こちらに持ってきたのは、ほんの一部なんです。
毎日真珠とにらめっこするだけだったある日、道端でおじさんに声をかけられました」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説



ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる