壺の中にはご馳走を

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一心同体④

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「ここまでで分かると思うけど、2人が見たのは廃墟にいたヤツだ。

 そして、俺もヤツに襲われた。

 俺、親の影響でキャンプとかアウトドアが好きなんだけど、実家の屋上でプチキャンプすることがあるんだよ。

 この前も日が暮れてからテントとアウトドア用の椅子を並べて、俺だけのキャンプを満喫してた。

 
 1階まで酒を取りに行こうと椅子から立ち上がった時、突風が吹いた。

 その日の天候からして、突風が吹くのは考えられない。

 しかも風は断続的に吹いて、まるで台風だった。


 屋上のアウトドアグッズは風に飛ばされ、転落しないように高めに作られた塀にへばりついていた。

 俺は踏ん張るんだけど、風に押されて息をすることすら上手くできない。

 風はますます強くなり、俺の体が塀まで押し込まれた。

 風に巻き上げられて、体が宙に浮いた。


 家は2階建てで、庭には石畳やレンガがあるから、塀から落下したら最悪の場合死んでしまう。

 あと数cmで体が塀より高く浮くと思った時、騒がしい音を聞いて心配した母親が屋上のドアを開けた。

 そこで風がピタリと止んで俺は地面に叩き付けられた。

 塀には、絶対に乗り越えまいと爪をギリギリと立てた俺の血が流れていた。

 母親は散乱した屋上を見て質問攻めしたが、とにかくしばらくは屋上に行かないで欲しいとしか伝えることができなかった。


 そんなことがあったものだから、俺たちは神社でお祓いを受けざるを得なくなった。

 お祓い当日、神主に

『君たちは、死ぬまで嫌がらせを続けられるかもしれない。早いに越したことはない』

 と言われ、その場で祈祷してもらった。


 その最中、田中は何度か嘔吐した。

 俺と前園は汚してしまった地面に気を取られたが、祈祷は続けられた。

 祈祷が終わり、俺たちは田中を家に送った。


 薬が効いて調子が良いのか、祈祷のお陰か。

 田中の精神が安定していたので、部屋でまったりと過ごした。

 俺のスマホに着信があった。

 何かあったら連絡しなさいと言ってくれた神主だった。


『君たち、臥龍くんから聞いたんだが』

 臥龍ってのは、俺たちに神社を紹介してくれた霊能者。

『3人か!? 神社へは3人で来たのか!?』

『はい。そうですけど……』


『私は4人見たぞ。今、どこにいる? 今すぐ、神じ――』

 話の途中でプープーと電話が切れた。


 俺の青ざめた顔に、2人も気づいた。

『今の誰や?』

『何かあった……?』

『あのさ、神社にさ、4人で来てたんだって。俺たちの他に、もう1人見たって神主が……』


 空気が凍り、また田中の精神が不安定になった。

『なんでっ!? お祓い受けたし、もうええやろ!? 見えてない見えてない見えてない』

 しきりに見えてないと繰り返し、半狂乱になった。

 田中の母親がこの騒ぎを聞き付けて

『あんたたち何やっとんや!! 出て行け!!』

 と俺たちは追い出されてしまった」
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