雑文エッセイ

越川千太郎

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21、紅葉

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もみじの色の、年による変化、美しさの当たりはずれは、春の花より激しいように思う。
花にも早いおそいはあるが、咲かない春はない。同じ山のもみじで、照り輝くばかりな年と、ねむいパステル画のような年があり、色づくより早く枯れてしまう年もある。
もみじの発色の濃淡、鮮明度をきめる条件が、それだけ花より複雑だからだろう。 秋に日照が多く、夜の冷え込みが強い年ほど、もみじは一般に美しいという。そして日照や冷え込み時期の大切さは、木の種類によって違う。尾根のもみじと、谷のもみじとで、また違う。
散りぎわの二、三日が特に色の深いもみじがある。かなり日数をこらえて、一気に散り果てるもみじがある。色づきながら散り急ぐもみじがある。白い葉裏をみせて、くるっくるっと回転しながら散るのがあり、ゆったりと舞い、滑空飛行して散るのもある。
よく晴れて、とりどりのもみじのトンネルが林の奥の奥まで澄んで見え、ひと風ごとに、かわいた音をたてて、全山一文が騒ぎだすかのような落ち葉が続いていた。
もみじは、はらはら降り、どんぐりは、からから直線的に落ちてきた。かちっ、ぱしっ、といった勢いで枯れ枝に命中して宙にはね返り、枯れ葉のじゅうたんを貫いて、めり込んでいく。どんぐり時雨という言葉があるかどうか、屋根をたたく音のすごさで、夜中に目を覚ましたりした。
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