魔術師見習い、ニッポンの侍の末裔を召喚する(?)

三毛猫 ポチ

文字の大きさ
上 下
83 / 127
アツモリ、地獄の養成所へ行く

第83話 ゴーストと新型ゴースト(?)

しおりを挟む
 ココアは先頭に立って階段を歩いているが、その歩みは遅い。トラップがあるかもしれないから、全神経を足に集中しているとしか思えない歩き方だ。でも、何もトラップが仕掛けられてなく、階段を上がって最初の部屋の扉の前に来た。
 この扉は開いてない。
 でも、閉まっているという事は、魔法のロックが掛かってないか、物理的な罠があるのか、内側から鍵をかけているかの3つだ。
 ココアが扉をノックしたり触れたりしてるが、そのココアが首を縦に振った。トラップが無いという事は手で開けられるという事だ。
 敦盛が大太刀を抜くと全員が下がった。敦盛は不死生物アンデッドが待ち構えている可能性を考え、扉を壊す気だ!

「阿佐揚羽流『刺突』!」

 敦盛が右手を突き出した瞬間、扉が粉々に壊れた!
 でも・・・敦盛の心配した通り、中には不死生物アンデッドが2体いた!人間の形をしてるが、体が半透明だ!!

「な、何だありゃあ!?」
「何よこれ!何かの映像トリックなのお!?」
 敦盛と満里奈は部屋の中で立っていた半透明の物体を見て騒ぎ出した!
「落ち着け!あれは幽霊ゴーストだ!」
 エミーナはそう叫んだけど、敦盛と満里奈は「嘘だあ!」と再び絶叫した!
「ご、ゴーストと言えば、へんてこりんな三角帽子を被った風船みたいばオバケに決まってるぞ!」
「そうよ!舌をベローンと出して、ちょっと人を小馬鹿にしたような表情をしているから足なんか絶対に無いわよ!!」

” ボカッ! ”
” ボカッ! ”

 いきなりエミーナが敦盛と満里奈の二人の頭をグーで殴りつけた!
「お前らあ!いい加減に世間の現実を理解しろ!!おとぎ話のようなアホ物語と現実とゴチャ混ぜにするなあ!」
 エミーナは鬼のような形相で敦盛と満里奈を睨んでるが、それでも敦盛と満里奈はブーブー文句を言ってる!
「とーにーかーく、昨日も言ったが幽霊ゴーストは魂だけの存在だから半透明なのは当たり前だあ!肉体的なダメージは受けないけど、こいつに触れられると精神力を持って行かれる!最悪、精神力を全部持って行かれて、それこそ『生けるしかばね』になって思考できない人間になり果てるぞ!」
「「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」」
「大丈夫だ!動きは鈍いし、それこそ1時間くらい幽霊ゴーストに触られない限り『生けるしかばね』にならないから、それまでに勝負をつけろー!!」

 そう言うとエミーナは敦盛と満里奈のお尻を『ドン!』とばかりに足で蹴とばしたから、二人は押し出されるようにして室内に入った。
 二人が室内に入った事で幽霊ゴーストが動き出した!でも、たしかに動きは緩慢だ!
 満里奈は左手に持っていたデュランダルを両手に持ち替えた!

「はあああああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 満里奈が右側の幽霊ゴーストに向かってデュランダルを一閃すると、その幽霊ゴーストはアッサリ倒れた。勝負は一瞬のうちについたのだ!

「おりゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 敦盛は大太刀を両手で構えて、左側の幽霊ゴーストを一閃した!
 が、幽霊ゴーストは倒れないどころか、敦盛に向かって手を伸ばしてくる!
「おい!どうして俺の刀ではダメージが与えられないんだあ!!」
 敦盛は絶叫したが、それに気付いた満里奈が咄嗟に敦盛の前に立ってデュランダルを一閃した!
 幽霊ゴーストはデュランダルの一撃で倒れ、その場に崩れた。

  ・
  ・
  ・
  ・

「・・・というと、実体を伴わない幽霊ゴースト生霊レイスは、何らかの魔法が付与されてないとダメージを与えれられないという事かあ?」
「らしいわよー。普通の剣は一時的に何かの魔法をかけないとダメージを与える事が出来ないけど、最初から魔法を付与されている剣なら全然問題ないから、ココアちゃんが持ってる短剣ショートソードでもダメージを与える事が出来るんだって」
「ふーん」
「デュランダルは聖剣という位だから強力な聖属性の魔法がかけられてるけど、お兄ちゃんの大太刀『大蛇丸おろちまる』は神の剣の資格を失ってるから、この世界では何も魔法が付与されてない超硬い武器の扱いねー。『草薙剣くさなぎのつるぎ』は今でも神の剣だから、次からは『草薙剣くさなぎのつるぎ』を使ってねー」
「はーー・・・『刺突』は『大蛇丸おろちまる』でしか出来ない技だから、使い分けが面倒だなー」
「文句を言わないの!」
「はいはい・・・」
 敦盛と満里奈は幽霊ゴーストに聖水をかけながらボヤいたけど、後ろではルシーダがちょっと怒った顔でエミーナに怒鳴っている!
「だいたいさあ、アツモリのカタナに魔法が付与されてない事を忘れてたでしょ!」
「そ、それはボクもウッカリしてたけど、まさかアツモリがクサなんとかではなくカタナで斬りかかるとは思っても無かったからさあ」
「マリナちゃんが咄嗟にアツモリの前に立ちはだかってくれたから良かったものを、下手をしたらアツモリがダメージを受けてたのよ!」
「はいはい、失礼しましたあ」
 エミーナは平身低頭でルシーダに謝ったから、ようやくルシーダも機嫌を直してくれたが、そんな4人のやり取りを見てバネットたちは笑っていた。

 でも・・・

 敦盛も満里奈も、さっきから気になっている事があるのだ。
 それは・・・

「・・・あのさあ、お兄ちゃん」
「ん?」
「あそこ、ほら、窓際にいるのは、魔物モンスターだよねえ・・・」
「ああ、それしか考えられない・・・」
 そう言って二人が指差した方向には・・・
 エミーナたち6人は、敦盛と満里奈が指差した方向を一斉に向いたが、そこには・・・

「「「「「「ええええええええええええええええええええええええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」」」」」」

 6人が絶叫したもの無理ない!
 へんてこりんな三角帽子を被って、風船みたいに宙に浮かんでいて、舌をベローンと出して、ちょっと人を小馬鹿にしたような表情をしている、足のない生き物がフワフワと宙に浮いていたのだ!しかも「ベロベロバー」とか小声で揶揄っているのも聞こえる!!

「ちょ、ちょっと待って!私はあんな生き物、知らないわよ!エミーナは知ってるの!?」
 ルシーダはパニックになってエミーナの方を振り向いたけど、エミーナも目が点になっている!
「ボクだってあんなの知らないぞ!というか、あんなのが動いてるというのは信じれられない!何か新型の魔法生物としか思えないぞ!」
「わたしも知らないわよ!冒険者生活5年目にして初めて見たわよ!」
「『深層の森』にもあんな生き物はいません!178年の生涯で初めて見る生き物としか言いようがなーい!!」
「わたくしも知りません!モコは知ってるんですか!?」
「バネットが知らないのにあたしが知ってる訳ないでしょ!」
 6人は完全にパニックになってるけど、そんな6人を見ながら敦盛と満里奈は逆に唖然とした表情だ。

「「おーい、あれがゴーストだよ」」
「「「「「「 嘘だろー!! 」」」」」」

 敦盛と満里奈は再度右手で指さしながら呑気でいるけど、エミーナたちは目を擦りながら絶叫している!
「あ、あんなのが幽霊ゴーストだなんで、私は信じたくありません!」
「も、もしかして幽霊ゴーストが進化した?」
「い、いや、ボクだって信じたくないけど新型かあ?」
「勘弁してよー」
「ま、魔王ウーノがこの世界に連れてきた魔物モンスターとしか思えません!どんな特殊攻撃を仕掛けてくるか全然分からないし、だいたいエミーナ様の呪文が通用するかも分かりません!」
「いやだー!あたしは帰りたーい!!」
 エミーナたちはワーワー言ってるだけで全然攻撃をしようとしない。仕方ないから敦盛「はーー」とため息をついて大太刀を鞘から抜いた。
「アツモリ!何をする気なの!」
 ルシーダは敦盛に絶叫したけど、敦盛はただ一言「あいつを倒す」とだけ言ってスタスタを歩き出した。
「ちょ、ちょっとアツモリ!幽霊ゴーストにカナタは効かないわよ!さっき実際にそうだったでしょ!!」
 ルシーダは再び敦盛に絶叫したけど、敦盛はそんな声を無視して歩き続けた。ゴーストは敦盛目掛けて飛び掛かってきたけど、それを敦盛は右手の大太刀で一閃した!

” バチーーーーーーーーーーーーーーーン ”

 ゴム風船が割れたかのような音がしてゴーストが真っ二つになって床に落ちたかと思ったら、たちまち蒸発して魔石が現れた。その大きさは、スライムよりほんのちょっと大きいだけだ。
「・・・俺が知ってるゴーストは、どんな武器でも倒せるし、どんな攻撃呪文でも倒せるし、初心者でも倒せるし、特殊攻撃なんかしないぞ。ついでに言えば、真昼間の炎天下の草原や森の中でも現れる。だよな、満里奈」
「そうだよー。スライムよりほんのちょーっとだけ強い程度の敵だから、その気になれば素手でも倒せるよー」
「「「「「「 ・・・・・ 」」」」」」
「それに、こいつを『可愛い』とか言う奴もいるし、店でを売ってるくらいなんだぜ、だよなー」
「そうだよー。ウチ、持ってるよー」
 満里奈はそう言うとニコッと微笑んだし、敦盛は「はーー」と短くため息をつきながら床に落ちていた魔石を拾いあげたけど、そんな敦盛たちを見てエミーナたち6人は顔を見合わせた。
「アツモリの常識が役に立った!」
「そんな事があってもいいの!?」
「ぜーったいに何かの間違いです!!」
「わたくしも信じたくなーい!!」
「あたしも信じたく無ーい」
「いやだあ!」

 因みに、その隣の部屋にもゴーストがいたけど・・・エミーナたちはそれでも新型ゴースト(?)の存在を認めようとはしなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ゲーム内転移ー俺だけログアウト可能!?ゲームと現実がごちゃ混ぜになった世界で成り上がる!ー

びーぜろ@転移世界のアウトサイダー発売中
ファンタジー
ブラック企業『アメイジング・コーポレーション㈱』で働く経理部員、高橋翔23歳。 理不尽に会社をクビになってしまった翔だが、慎ましい生活を送れば一年位なら何とかなるかと、以前よりハマっていたフルダイブ型VRMMO『Different World』にダイブした。 今日は待ちに待った大規模イベント情報解禁日。その日から高橋翔の世界が一変する。 ゲーム世界と現実を好きに行き来出来る主人公が織り成す『ハイパーざまぁ!ストーリー。』 計画的に?無自覚に?怒涛の『ざまぁw!』がここに有る! この物語はフィクションです。 ※ノベルピア様にて3話先行配信しておりましたが、昨日、突然ログインできなくなってしまったため、ノベルピア様での配信を中止しております。

外れスキル?だが最強だ ~不人気な土属性でも地球の知識で無双する~

海道一人
ファンタジー
俺は地球という異世界に転移し、六年後に元の世界へと戻ってきた。 地球は魔法が使えないかわりに科学という知識が発展していた。 俺が元の世界に戻ってきた時に身につけた特殊スキルはよりにもよって一番不人気の土属性だった。 だけど悔しくはない。 何故なら地球にいた六年間の間に身につけた知識がある。 そしてあらゆる物質を操れる土属性こそが最強だと知っているからだ。 ひょんなことから小さな村を襲ってきた山賊を土属性の力と地球の知識で討伐した俺はフィルド王国の調査隊長をしているアマーリアという女騎士と知り合うことになった。 アマーリアの協力もあってフィルド王国の首都ゴルドで暮らせるようになった俺は王国の陰で蠢く陰謀に巻き込まれていく。 フィルド王国を守るための俺の戦いが始まろうとしていた。 ※この小説は小説家になろうとカクヨムにも投稿しています

小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします

藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です  2024年6月中旬に第一巻が発売されます  2024年6月16日出荷、19日販売となります  発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」 中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。 数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。 また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています 戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています そんな世界の田舎で、男の子は産まれました 男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました 男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります 絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて…… この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです 各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております

前代未聞のダンジョンメーカー

黛 ちまた
ファンタジー
七歳になったアシュリーが神から授けられたスキルは"テイマー"、"魔法"、"料理"、"ダンジョンメーカー"。 けれどどれも魔力が少ない為、イマイチ。 というか、"ダンジョンメーカー"って何ですか?え?亜空間を作り出せる能力?でも弱くて使えない? そんなアシュリーがかろうじて使える料理で自立しようとする、のんびりお料理話です。 小説家になろうでも掲載しております。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

レディース異世界満喫禄

日の丸
ファンタジー
〇城県のレディース輝夜の総長篠原連は18才で死んでしまう。 その死に方があまりな死に方だったので運命神の1人に異世界におくられることに。 その世界で出会う仲間と様々な体験をたのしむ!!

伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です

カタナヅキ
ファンタジー
※弟子「究極魔法とかいいので収納魔法だけ教えて」師匠「Σ(゚Д゚)エー」 数十年前に異世界から召喚された人間が存在した。その人間は世界中のあらゆる魔法を習得し、伝説の魔術師と謳われた。だが、彼は全ての魔法を覚えた途端に人々の前から姿を消す。 ある日に一人の少年が山奥に暮らす老人の元に尋ねた。この老人こそが伝説の魔術師その人であり、少年は彼に弟子入りを志願する。老人は寿命を終える前に自分が覚えた魔法を少年に託し、伝説の魔術師の称号を彼に受け継いでほしいと思った。 「よし、収納魔法はちゃんと覚えたな?では、次の魔法を……」 「あ、そういうのいいんで」 「えっ!?」 異空間に物体を取り込む「収納魔法」を覚えると、魔術師の弟子は師の元から離れて旅立つ―― ――後にこの少年は「収納魔導士」なる渾名を付けられることになる。

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...