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アツモリ、地上の女神に出会う
第40話 第1王女殿下の招待
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さすがに夜の食堂は結構な人で賑わっていた。
セレナ王女の使いを名乗る執事は食堂の奥の方にある小さな丸テーブルでエポの父、セルボとティーカップを片手に談笑していたが、敦盛たちの姿を見た途端、ティーカップをテーブルに置いてサッと立ち上がった。
「・・・ドルチェガッバーナ王国第1王女、セレナ王女殿下専属の執事をしておりますセフィーロと申します」
その執事、セフィーロは年齢を感じさせない動きで白い手袋をはめた右手を軽く左胸にあてながら深々と頭を下げた。
敦盛の右にいたエミーナは少し興奮気味に
「・・・間違いないく、あの執事の上着に刺繍されているのはセレナ王女の紋章だ」
「本当か?」
「誰かが『幻影』の魔法で姿を変えている可能性もあったけど、魔術の波動は感じない。上着を無断で着用してるなら別だけど、そんな事があったら王宮の恥を晒す事になるから絶対にあり得ない。となれば、本物のセレナ王女の執事としか考えられない」
エミーナは小声ながら興奮気味に敦盛に耳打ちしたけど、セフィーロはゆっくりと上体を起こした時にはニコッとした表情をしていた。
「・・・あなたがアツモリ殿でしょうか?」
セフィーロは敦盛にそう質問したけど、敦盛は首を縦に振った。
「おお、お噂通りで御座いますな。水色の変わった服を着た、2本の剣を持った大陸東方系の大柄な男。シエナ殿に10年ぶりに土をつけた男として、『サムライ』の名は王宮でも知らない者はいない程に噂は広まっております」
「本当ですかあ?」
敦盛はセフィーロの言葉に思わず間抜けな顔をしてしまったが、そのセフィーロの言葉をフォローするかのようにセルボも口を挟んだ。
「おいおいー、肝心な本人は全然知らないんだなあ。オレもアツモリさんの噂は街でウンザリする程聞いてるから、その勇者様がうちの宿を使ってくれてるんだから、オーナーとしてお礼を言いたいくらいだ」
セルボは酒でも入ってるんじゃあないかという位に饒舌だけど敦盛は正直困惑している。
そんな敦盛の困惑ぶりを知ってか知らずか、セフィーロはニコニコ顔から急に真面目な顔に変わった。
「・・・王女殿下は、アツモリ殿を明日の午前のティータイムに招待したいと申しております」
「俺に?」
「左様で御座います。王女殿下は御公務が立て込んでおられますが、明日はアルマーニ教団のファウナ教会の高司祭様たちとの会食が急にキャンセルになったので、午前の公務が入っておりません。アツモリ殿さえ問題ないのなら、ティータイムどころか朝食を食べながらでも構わないからお話をしたいとお望みで御座います。もちろん、アツモリ殿の御都合が悪いようなら、別の日のティータイムもしくは昼食をしながらでも構いません」
セフィーロはそう言って敦盛の返事を待った。
さすがの敦盛も返事に困った。王女様からの正式な招待なのだから個人的には即答でOKしたいのだが、ホントにそれでいいのか?という迷いがあるのも事実だ。
でもその時、敦盛の右にいたエミーナが一歩前へ出てセフィーロと向き合う形になった。
「・・・ボクの名はエミーナ、魔術師エミーナだ」
「エミーナ殿で御座いますね、自分に何か御用でしょうか?」
「セレナ王女はアツモリだけを招待したのか?それとも、アツモリのパーティメンバーを招待したのか?どっちなんだ?」
「正直に申しますが、王女殿下の口から出てきた言葉はアツモリ殿一人で御座います。ですが、アツモリ殿の盟友とも言うべき方々を御招待しないのは失礼だというエミーナ殿のお考えは自分も理解できますが、自分は王女殿下のお言葉を伝えに来ただけであります。ただ、アツモリ殿がお望みであれば、全員を御招待する形を取るのは一向に構いません。自分が責任を持って王女殿下にお伝えいたします」
「なら、答えは簡単だ。魔術師はパーティの参謀であり要であり守り手だ。我らの使命はアツモリの剣となり盾となり頭脳となる事であり、たとえ相手がセレナ王女であったとしても譲れない」
「その意見はごもっともで御座います。アツモリ殿もエミーナ殿と同じ考えであらせるのなら、自分が責任を持って王女殿下にお伝えするのを約束しますので、全員で構いません」
「お心遣い、感謝致します」
「いえ、これもバレンティノ神のお導きと思われます」
セフィーロは再び白い手袋をはめた右手を軽く左胸にあてながら深々と頭を下げたけど、今度は最初からニコッと微笑んだままだったし、エミーナもニコッとしながら軽く会釈した。
敦盛は今でも迷っているけど、エミーナは目で「サッサと決めろ」と言わんばかりだ。
「・・・本当に俺のような者を余所者でも構わないのですか?」
「アツモリ殿、あなた様は今やドルチェガッバー王国の国民から見たら『勇者』であり『英雄』であり『救世主』なのです。そのようなお方が『余所者』などという言葉を使うとは想像もしてなかったです」
「もし俺がニセ者だったら、と考えた事はなかったですか?」
「正義の至高神バレンティノの神官であるルシーダ殿がアツモリ殿の従者をされているという事は、アツモリ殿が正しき行いをしていると宣言しているに等しいのです。たしかに昨日も『オレはサムライだ』などと詐称する者がファウナの街に現れたのは事実ですが、アツモリ殿の名を騙ることは出来ても、バレンティノ教の神官や司祭を騙るのをバレンティノ神が許す事は絶対にありません。ましてやルシーダ殿はコペン高司祭の身内で御座います。そのルシーダ殿がここにいる以上、あなた様が本物のアツモリ殿であるのは間違い御座いません。王女殿下は本物のアツモリ殿を探しておられるのです」
「・・・分かりました。3人で構わないと約束して頂けるなら、お受け致します」
「有難うございます。それでは、ティータイムと御朝食のどちらにいたしましょうか?」
敦盛は最初、「ティータイム」と答えたのだが、エミーナとルシーダが「朝食だ!」と言って譲る気配がなく、セフィーロも「朝食で構いませんよ」と言ったので、最終的に敦盛も「朝食で」と同意した。
「それでは明日の朝、自分が王女殿下専用の馬車で迎えに上がりますので、その馬車で王宮へお越しください。3人分の朝食を用意しておく事をお約束致します」
「それと、俺たち、王女様に会うと言っても正装は持ってないですよ」
「一向に構いません。今は世界中が緊急事態です。礼儀作法も大切かもしれませんが、細かい事を気にしているより、1日も早く魔王を倒し、この地上界の災いの目を摘み取る事の方が優先で御座います。むしろ、その服でお越し頂いた方が王女殿下はお喜びになる筈です」
セフィーロはそう言うと再び深々と頭を下げた。そのままセフィーロは残りの紅茶を飲み干し、セルボと2言、3言、言葉を交わして店を出て行った。
セフィーロが帰った後、エポは「エミーナさんとルシーダさんはセレナ王女に招待されたのに、わたしが招待されないのはズルいー」と散々文句を言ったほどだ。
エミーナとルシーダは笑って誤魔化すしかなかったけど、さすがのエポも最後には「宿屋の娘だから勇者御一行様にカウントされないのは仕方ないよねー」と無理矢理自分を納得させて引き下がったけど、最初から最後まで悔しそうな顔をしながら二人にブーブー言ってたのには敦盛も笑えた。まあ、その気持ちが分からない事もないけどね。
そのまま明日の朝になった。
セフィーロは約束通り馬車で迎えに来たから、その馬車に敦盛たち3人は乗り込んだ。エポとセルボ、それとエポの母親のフロンテが見送りする中、馬車は王宮に向けて出発した。
その馬車に乗って暫くした時、エミーナがニコニコ顔から急に真面目な顔になって話し始めた。
「・・・この馬車からは魔術の波動は感じないから、誰かが会話を聞いてる事もないし、こちらから窓を開けない限り執事には絶対に聞かれないから、アツモリにはセレナ王女に会う前に情報として伝えておく事を今から話す」
敦盛はエミーナの急変ぶりに戸惑ったのは事実だけど、これは重要な話だと直感したから、エミーナの方を向いた。それはルシーダも同じだ。
セレナ王女の使いを名乗る執事は食堂の奥の方にある小さな丸テーブルでエポの父、セルボとティーカップを片手に談笑していたが、敦盛たちの姿を見た途端、ティーカップをテーブルに置いてサッと立ち上がった。
「・・・ドルチェガッバーナ王国第1王女、セレナ王女殿下専属の執事をしておりますセフィーロと申します」
その執事、セフィーロは年齢を感じさせない動きで白い手袋をはめた右手を軽く左胸にあてながら深々と頭を下げた。
敦盛の右にいたエミーナは少し興奮気味に
「・・・間違いないく、あの執事の上着に刺繍されているのはセレナ王女の紋章だ」
「本当か?」
「誰かが『幻影』の魔法で姿を変えている可能性もあったけど、魔術の波動は感じない。上着を無断で着用してるなら別だけど、そんな事があったら王宮の恥を晒す事になるから絶対にあり得ない。となれば、本物のセレナ王女の執事としか考えられない」
エミーナは小声ながら興奮気味に敦盛に耳打ちしたけど、セフィーロはゆっくりと上体を起こした時にはニコッとした表情をしていた。
「・・・あなたがアツモリ殿でしょうか?」
セフィーロは敦盛にそう質問したけど、敦盛は首を縦に振った。
「おお、お噂通りで御座いますな。水色の変わった服を着た、2本の剣を持った大陸東方系の大柄な男。シエナ殿に10年ぶりに土をつけた男として、『サムライ』の名は王宮でも知らない者はいない程に噂は広まっております」
「本当ですかあ?」
敦盛はセフィーロの言葉に思わず間抜けな顔をしてしまったが、そのセフィーロの言葉をフォローするかのようにセルボも口を挟んだ。
「おいおいー、肝心な本人は全然知らないんだなあ。オレもアツモリさんの噂は街でウンザリする程聞いてるから、その勇者様がうちの宿を使ってくれてるんだから、オーナーとしてお礼を言いたいくらいだ」
セルボは酒でも入ってるんじゃあないかという位に饒舌だけど敦盛は正直困惑している。
そんな敦盛の困惑ぶりを知ってか知らずか、セフィーロはニコニコ顔から急に真面目な顔に変わった。
「・・・王女殿下は、アツモリ殿を明日の午前のティータイムに招待したいと申しております」
「俺に?」
「左様で御座います。王女殿下は御公務が立て込んでおられますが、明日はアルマーニ教団のファウナ教会の高司祭様たちとの会食が急にキャンセルになったので、午前の公務が入っておりません。アツモリ殿さえ問題ないのなら、ティータイムどころか朝食を食べながらでも構わないからお話をしたいとお望みで御座います。もちろん、アツモリ殿の御都合が悪いようなら、別の日のティータイムもしくは昼食をしながらでも構いません」
セフィーロはそう言って敦盛の返事を待った。
さすがの敦盛も返事に困った。王女様からの正式な招待なのだから個人的には即答でOKしたいのだが、ホントにそれでいいのか?という迷いがあるのも事実だ。
でもその時、敦盛の右にいたエミーナが一歩前へ出てセフィーロと向き合う形になった。
「・・・ボクの名はエミーナ、魔術師エミーナだ」
「エミーナ殿で御座いますね、自分に何か御用でしょうか?」
「セレナ王女はアツモリだけを招待したのか?それとも、アツモリのパーティメンバーを招待したのか?どっちなんだ?」
「正直に申しますが、王女殿下の口から出てきた言葉はアツモリ殿一人で御座います。ですが、アツモリ殿の盟友とも言うべき方々を御招待しないのは失礼だというエミーナ殿のお考えは自分も理解できますが、自分は王女殿下のお言葉を伝えに来ただけであります。ただ、アツモリ殿がお望みであれば、全員を御招待する形を取るのは一向に構いません。自分が責任を持って王女殿下にお伝えいたします」
「なら、答えは簡単だ。魔術師はパーティの参謀であり要であり守り手だ。我らの使命はアツモリの剣となり盾となり頭脳となる事であり、たとえ相手がセレナ王女であったとしても譲れない」
「その意見はごもっともで御座います。アツモリ殿もエミーナ殿と同じ考えであらせるのなら、自分が責任を持って王女殿下にお伝えするのを約束しますので、全員で構いません」
「お心遣い、感謝致します」
「いえ、これもバレンティノ神のお導きと思われます」
セフィーロは再び白い手袋をはめた右手を軽く左胸にあてながら深々と頭を下げたけど、今度は最初からニコッと微笑んだままだったし、エミーナもニコッとしながら軽く会釈した。
敦盛は今でも迷っているけど、エミーナは目で「サッサと決めろ」と言わんばかりだ。
「・・・本当に俺のような者を余所者でも構わないのですか?」
「アツモリ殿、あなた様は今やドルチェガッバー王国の国民から見たら『勇者』であり『英雄』であり『救世主』なのです。そのようなお方が『余所者』などという言葉を使うとは想像もしてなかったです」
「もし俺がニセ者だったら、と考えた事はなかったですか?」
「正義の至高神バレンティノの神官であるルシーダ殿がアツモリ殿の従者をされているという事は、アツモリ殿が正しき行いをしていると宣言しているに等しいのです。たしかに昨日も『オレはサムライだ』などと詐称する者がファウナの街に現れたのは事実ですが、アツモリ殿の名を騙ることは出来ても、バレンティノ教の神官や司祭を騙るのをバレンティノ神が許す事は絶対にありません。ましてやルシーダ殿はコペン高司祭の身内で御座います。そのルシーダ殿がここにいる以上、あなた様が本物のアツモリ殿であるのは間違い御座いません。王女殿下は本物のアツモリ殿を探しておられるのです」
「・・・分かりました。3人で構わないと約束して頂けるなら、お受け致します」
「有難うございます。それでは、ティータイムと御朝食のどちらにいたしましょうか?」
敦盛は最初、「ティータイム」と答えたのだが、エミーナとルシーダが「朝食だ!」と言って譲る気配がなく、セフィーロも「朝食で構いませんよ」と言ったので、最終的に敦盛も「朝食で」と同意した。
「それでは明日の朝、自分が王女殿下専用の馬車で迎えに上がりますので、その馬車で王宮へお越しください。3人分の朝食を用意しておく事をお約束致します」
「それと、俺たち、王女様に会うと言っても正装は持ってないですよ」
「一向に構いません。今は世界中が緊急事態です。礼儀作法も大切かもしれませんが、細かい事を気にしているより、1日も早く魔王を倒し、この地上界の災いの目を摘み取る事の方が優先で御座います。むしろ、その服でお越し頂いた方が王女殿下はお喜びになる筈です」
セフィーロはそう言うと再び深々と頭を下げた。そのままセフィーロは残りの紅茶を飲み干し、セルボと2言、3言、言葉を交わして店を出て行った。
セフィーロが帰った後、エポは「エミーナさんとルシーダさんはセレナ王女に招待されたのに、わたしが招待されないのはズルいー」と散々文句を言ったほどだ。
エミーナとルシーダは笑って誤魔化すしかなかったけど、さすがのエポも最後には「宿屋の娘だから勇者御一行様にカウントされないのは仕方ないよねー」と無理矢理自分を納得させて引き下がったけど、最初から最後まで悔しそうな顔をしながら二人にブーブー言ってたのには敦盛も笑えた。まあ、その気持ちが分からない事もないけどね。
そのまま明日の朝になった。
セフィーロは約束通り馬車で迎えに来たから、その馬車に敦盛たち3人は乗り込んだ。エポとセルボ、それとエポの母親のフロンテが見送りする中、馬車は王宮に向けて出発した。
その馬車に乗って暫くした時、エミーナがニコニコ顔から急に真面目な顔になって話し始めた。
「・・・この馬車からは魔術の波動は感じないから、誰かが会話を聞いてる事もないし、こちらから窓を開けない限り執事には絶対に聞かれないから、アツモリにはセレナ王女に会う前に情報として伝えておく事を今から話す」
敦盛はエミーナの急変ぶりに戸惑ったのは事実だけど、これは重要な話だと直感したから、エミーナの方を向いた。それはルシーダも同じだ。
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