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第43話 【ダイナス恐怖の10日間】~6日目午前の部~
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その日、ラーセッツは普段よりも早く目が覚めた。一目見て心を奪われた人族の女性サリーネ、彼女を自分の物にする事が出来る喜びで高揚しているのだろう。特に気にしなかった。
自分の1番戦いやすい服装に着替えて外に出ようとした時、ラーセッツは宿の外に幾つかの気配がするのに気が付いた。
(待ち伏せ?こんな早朝に一体誰が・・・って、そんな事をするのはハジメ義兄さんしかいないか)
サリーネは僕と出会うのが少し遅かったばかりに義兄さんの毒牙にかかり、義兄の許に嫁ぐ事が決まっていた。彼女を妻に迎え本当に幸せに出来るのは自分だけだ、そう考えた僕は正しい未来に戻すべく義兄さんに決闘を挑んでいた訳だが・・・。
(1、2、3・・同じ気配が徐々に増えている?身体を分裂か何かさせているのか!?)
宿の外に感じるハジメ義兄さんの気配が時間が経つ毎に増えていた、分身とは違う分かれ方。ある意味、全てが分体で全てが本体と言えるかもしれない。
「やるね義兄さん、でも気配を隠しきれていない時点で僕の勝ちだ!」
ラーセッツは勢いを付けて宿の外に出ようとした、義兄さんからの攻撃が始まる前に1体だけ残して残る全ての分体に炎弾を叩き込む。場合によっては残った本体も爆風で吹き飛ばされてしまうかもしれないが、決闘である以上命を奪う事になるのも仕方ない。
駆け出したラーセッツが宿の外に飛び出そうとした瞬間、足に何かが絡まり勢い良く転んでしまった。
「な、何だ!?」
足元を見ると、両足に糸が巻かれている。攻撃の気配は感じなかったのに誰が一体何時の間に!?すると今度は耳元で声が聞こえた。
「蜘蛛縛り」
今度は両手を後ろ手に縛られ身動きを取れなくされると更に周囲の分体も糸を出して首から下を糸で拘束して簀巻き状態にされた。
「卑怯だぞ、僕を放せ!そして正々堂々と勝負しろ!!」
宿の外が騒がしいので、セシリアやミリンダにサリーネの3人が出てきた。糸で巻かれてカイコの繭から頭だけ出した状態のラーセッツを見て3人は率直な感想を伝える。
「どうやら、ハジメにしてやられたみたいですね」
「ハジメ様に正攻法で挑もうとするのがそもそも間違いなのです」
「結果はどうあれ、これであなたに私がハジメさんの妻となる事に文句を言う資格は無くなりましたね」
「ま、待ってくれサリーネ!こんな卑怯な真似をする奴の方が僕よりも良いと言うのか!?」
「サリーネ?何時、私はあなたに呼び捨てで呼ばれる間柄になったというのですか?自惚れるのもいい加減になさい!魔王の子息といえども、これ以上の狼藉は容赦しませんよ」
サリーネはラーセッツに対する嫌悪感を露骨に見せていた、今まで母親同様に好き勝手にしてきたドラ息子は一目惚れした女性の心を掴む機会を永遠に失う事となった。
「ラーセッツ、今回は婿殿の勝ちよ。あなたは自分の力に過信した挙句、戦った相手を侮辱した。若いからといって決して許される事では無いわ」
「でも母さん!決闘の場所と日時をこちらが指定したのに、それを守らないのは男らしく有りません!」
最後まで納得がいかない様子のラーセッツ、アーシュラさんはそんな息子を優しく諭す。
「ラーセッツ、あなたは婿殿が分身を使い出す前から既に敗北していたのよ。それにまだ気付けないの?」
「それはどういう意味ですか?」
「婿殿!いい加減、この馬鹿息子にずっとくっ付いたままでいるのに疲れたでしょう?そろそろ離れない?」
「そうするよ、あ~しんどかった!」
ハジメの声が自分の顔の表面からしたので驚くラーセッツ、すると顔の皮膚がいきなりペリペリと剥がれるとジェル状の物質に変わり徐々に人型に変わると元のハジメの姿に戻った。
「これが答えよ、婿殿はあなたが寝ている間にあなたが気付けない程薄い膜に身体を変化させて全身を覆っていたの。その気になれば何時でも命を奪えたのにそれをしなかった、宿の外の分身というか分体はあなたの目を誤魔化す囮に過ぎなかったのよ」
ラーセッツも流石に敗北を認めざるしかないと思い始めていたが、次期魔王候補筆頭としてのプライドが最後の邪魔をする。そのプライドを粉々に打ち砕いたのはアーシュラとハジメの次のやり取りだった。
「それにしても婿殿、よく今までラーセッツの全身を覆っていられたわね。もしかして、そっちの方面も得意分野なのかしら?」
「冗談じゃない!誰が好き好んで男の裸に纏わりつく真似などするか!?触りたくも無い物にまで触る羽目になったんだぞ!」
(うげっ!?僕、義兄さんに大事な所まで覆われていたの?)
これは精神的にかなりのダメージを受けた、ハジメも正直言いたくは無かった筈だ。しかしラーセッツが頑なに負けを認めようとしない為に言うしかなかったのである。
「義兄さん、僕の負けです。僕はサリーネさんに相応しい男では有りませんでした」
「相応しいかどうかはサリーネ自身が決める事だ。それにな、もしサリーネがお前を選んでいたらその時は俺が引き下がるつもりだったぞ。サリーネ自身が選んだ男に嫁いだ方が絶対に幸せになれる筈だからな」
年不相応な笑い方をする義兄にラーセッツは今度こそ敗北を認めた、本当はこんな戦い方をしたくは無かった筈だ。しかし負ければサリーネが望まぬ相手の物となってしまう、手段を選ぶ余裕を与えなかった自分自身の強さへの驕りと彼女を強引にでも手に入れたい焦りが招いた結果なのだった。
「ラーセッツも負けを認めてくれたみたいだから、急いで南西の谷に在るという洞窟に向かおう。そこにミリンダが過ごした組織の拠点が在って奥には秘宝が眠っている」
「ハジメ、どこでそんな情報を手に入れたのですか?」
「詳しい話は後だ!急がないと、組織の犠牲者となった女の子が甦るチャンスを失って完全なマミーとして過ごす羽目になってしまう」
「マミーですって!?詳しく教えてください、ハジメ様!」
「話は後だと言っているだろうが!それに最奥にはヤヴァい相手も居るらしいから、気を抜くと皆死ぬかもしれないから注意しろ」
セシリア、ミリンダ、サリーネの3人を連れてダイナスを発とうしたハジメはアーシュラ親子に頭を下げた。
「出来るだけ早く帰るつもりだけど、それまでの間街の守りは任せます!」
「任せておきなさい、婿殿」
「分かりました、義兄さん」
ハジメ達は近衛騎士から馬を借りると目的の洞窟に向けダイナスを後にした、慣れない馬の扱いに苦労しながらも昼前には何とか洞窟近くまで辿り着いた。軽く食事を済ませると、4人は洞窟に足を踏み入れたのだった。
自分の1番戦いやすい服装に着替えて外に出ようとした時、ラーセッツは宿の外に幾つかの気配がするのに気が付いた。
(待ち伏せ?こんな早朝に一体誰が・・・って、そんな事をするのはハジメ義兄さんしかいないか)
サリーネは僕と出会うのが少し遅かったばかりに義兄さんの毒牙にかかり、義兄の許に嫁ぐ事が決まっていた。彼女を妻に迎え本当に幸せに出来るのは自分だけだ、そう考えた僕は正しい未来に戻すべく義兄さんに決闘を挑んでいた訳だが・・・。
(1、2、3・・同じ気配が徐々に増えている?身体を分裂か何かさせているのか!?)
宿の外に感じるハジメ義兄さんの気配が時間が経つ毎に増えていた、分身とは違う分かれ方。ある意味、全てが分体で全てが本体と言えるかもしれない。
「やるね義兄さん、でも気配を隠しきれていない時点で僕の勝ちだ!」
ラーセッツは勢いを付けて宿の外に出ようとした、義兄さんからの攻撃が始まる前に1体だけ残して残る全ての分体に炎弾を叩き込む。場合によっては残った本体も爆風で吹き飛ばされてしまうかもしれないが、決闘である以上命を奪う事になるのも仕方ない。
駆け出したラーセッツが宿の外に飛び出そうとした瞬間、足に何かが絡まり勢い良く転んでしまった。
「な、何だ!?」
足元を見ると、両足に糸が巻かれている。攻撃の気配は感じなかったのに誰が一体何時の間に!?すると今度は耳元で声が聞こえた。
「蜘蛛縛り」
今度は両手を後ろ手に縛られ身動きを取れなくされると更に周囲の分体も糸を出して首から下を糸で拘束して簀巻き状態にされた。
「卑怯だぞ、僕を放せ!そして正々堂々と勝負しろ!!」
宿の外が騒がしいので、セシリアやミリンダにサリーネの3人が出てきた。糸で巻かれてカイコの繭から頭だけ出した状態のラーセッツを見て3人は率直な感想を伝える。
「どうやら、ハジメにしてやられたみたいですね」
「ハジメ様に正攻法で挑もうとするのがそもそも間違いなのです」
「結果はどうあれ、これであなたに私がハジメさんの妻となる事に文句を言う資格は無くなりましたね」
「ま、待ってくれサリーネ!こんな卑怯な真似をする奴の方が僕よりも良いと言うのか!?」
「サリーネ?何時、私はあなたに呼び捨てで呼ばれる間柄になったというのですか?自惚れるのもいい加減になさい!魔王の子息といえども、これ以上の狼藉は容赦しませんよ」
サリーネはラーセッツに対する嫌悪感を露骨に見せていた、今まで母親同様に好き勝手にしてきたドラ息子は一目惚れした女性の心を掴む機会を永遠に失う事となった。
「ラーセッツ、今回は婿殿の勝ちよ。あなたは自分の力に過信した挙句、戦った相手を侮辱した。若いからといって決して許される事では無いわ」
「でも母さん!決闘の場所と日時をこちらが指定したのに、それを守らないのは男らしく有りません!」
最後まで納得がいかない様子のラーセッツ、アーシュラさんはそんな息子を優しく諭す。
「ラーセッツ、あなたは婿殿が分身を使い出す前から既に敗北していたのよ。それにまだ気付けないの?」
「それはどういう意味ですか?」
「婿殿!いい加減、この馬鹿息子にずっとくっ付いたままでいるのに疲れたでしょう?そろそろ離れない?」
「そうするよ、あ~しんどかった!」
ハジメの声が自分の顔の表面からしたので驚くラーセッツ、すると顔の皮膚がいきなりペリペリと剥がれるとジェル状の物質に変わり徐々に人型に変わると元のハジメの姿に戻った。
「これが答えよ、婿殿はあなたが寝ている間にあなたが気付けない程薄い膜に身体を変化させて全身を覆っていたの。その気になれば何時でも命を奪えたのにそれをしなかった、宿の外の分身というか分体はあなたの目を誤魔化す囮に過ぎなかったのよ」
ラーセッツも流石に敗北を認めざるしかないと思い始めていたが、次期魔王候補筆頭としてのプライドが最後の邪魔をする。そのプライドを粉々に打ち砕いたのはアーシュラとハジメの次のやり取りだった。
「それにしても婿殿、よく今までラーセッツの全身を覆っていられたわね。もしかして、そっちの方面も得意分野なのかしら?」
「冗談じゃない!誰が好き好んで男の裸に纏わりつく真似などするか!?触りたくも無い物にまで触る羽目になったんだぞ!」
(うげっ!?僕、義兄さんに大事な所まで覆われていたの?)
これは精神的にかなりのダメージを受けた、ハジメも正直言いたくは無かった筈だ。しかしラーセッツが頑なに負けを認めようとしない為に言うしかなかったのである。
「義兄さん、僕の負けです。僕はサリーネさんに相応しい男では有りませんでした」
「相応しいかどうかはサリーネ自身が決める事だ。それにな、もしサリーネがお前を選んでいたらその時は俺が引き下がるつもりだったぞ。サリーネ自身が選んだ男に嫁いだ方が絶対に幸せになれる筈だからな」
年不相応な笑い方をする義兄にラーセッツは今度こそ敗北を認めた、本当はこんな戦い方をしたくは無かった筈だ。しかし負ければサリーネが望まぬ相手の物となってしまう、手段を選ぶ余裕を与えなかった自分自身の強さへの驕りと彼女を強引にでも手に入れたい焦りが招いた結果なのだった。
「ラーセッツも負けを認めてくれたみたいだから、急いで南西の谷に在るという洞窟に向かおう。そこにミリンダが過ごした組織の拠点が在って奥には秘宝が眠っている」
「ハジメ、どこでそんな情報を手に入れたのですか?」
「詳しい話は後だ!急がないと、組織の犠牲者となった女の子が甦るチャンスを失って完全なマミーとして過ごす羽目になってしまう」
「マミーですって!?詳しく教えてください、ハジメ様!」
「話は後だと言っているだろうが!それに最奥にはヤヴァい相手も居るらしいから、気を抜くと皆死ぬかもしれないから注意しろ」
セシリア、ミリンダ、サリーネの3人を連れてダイナスを発とうしたハジメはアーシュラ親子に頭を下げた。
「出来るだけ早く帰るつもりだけど、それまでの間街の守りは任せます!」
「任せておきなさい、婿殿」
「分かりました、義兄さん」
ハジメ達は近衛騎士から馬を借りると目的の洞窟に向けダイナスを後にした、慣れない馬の扱いに苦労しながらも昼前には何とか洞窟近くまで辿り着いた。軽く食事を済ませると、4人は洞窟に足を踏み入れたのだった。
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