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第28話 【ダイナス恐怖の10日間】~初日午後の部その2~

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「おいハジメ!俺に恨みでも有るのか!?」

「無い無い全く無い!偶然アーシュラさんが召喚しちゃっただけだって!」

先程ミリンダが始末した兵士の死体から鎧を剥がしながら始が文句を言ってきたのでハジメもわざとやっていないと反論する。並の冒険者では始の肌を傷付ける事は不可能だが全裸の状態で戦えば傍から見れば変態さんにしか見えない、なので仕方なく始は他人の身に着けていた下着を付ける趣味は無いけど防具だけでも着込んで大事な部分を隠そうとしているのだ。

もう一方のセレスは裸甲冑なんていうジャンルを新たに確立出来るほど筋力も無いので、アーシュラさんが近くの家の窓を割ってカーテンを破りそれで見られたくない部分を隠している状況だ。



「それじゃあ、何か?お前が王都に呼び出されたのは魔族との停戦交渉の功績を自分達の物にしたかった国王達による暗殺目的だったとでも言うのか?」

「これまでの状況から推察するとそうなるんだよな」

始の視界にはアーシュラさんによって破壊された城壁も入っているが、そこはスルーされている。

「お前のとばっちり喰らって、俺やセレスは大勢の前で裸を見られる恥を晒す羽目になったのか!?」

「でもセレスさん、凄く綺麗だったよ。思わず見惚れそうになった」

ハジメがうっかり失言した為、始から凶悪な殺気が湧き上がった。

「ハジメ、こいつらの前にお前を殺してもいいか?」

「許してください、失言でしたすいません」

「でもセレスの裸を見た事実を消す事は出来ないだろうが?」

『そうね・・・私もあなたのアレを味見した時の感想を今更オブラートに包み直す事は出来ないわね』

何時の間にかアーシュラさんに背後を取られた始は耳元で何かを囁かれると、殺気は消えうせたがその場で体育座りを始め戦力外と化してしまう。

「あらら、婿殿を助けようとしたつもりだったんだけど彼しばらく使い物になりそうもないわね」

「あんた何の為に始を召喚したんだよ!!」

自分で召喚した相手をいきなり戦力外に落とす様子を見ていたギルド本部前の冒険者達は目の前で行われた漫才に呆然としている・・・。



「ねえ婿殿、さっきのプラズマボールは何発位連続で放つ事が出来るかしら?」

「さっき初めて試したばかりだけど、そんなに疲れを感じないから連続で投げつける位は出来ると思うよ」

「私から手出しするとマズイから婿殿の手でこの場は何とか切り抜けましょう」

アーシュラさんによると、冒険者達の集団の中に高レベルの人間が所々に混ざっているらしい。雑魚の間に混ざる事で油断を誘っているみたいだが、それはミリンダも気付いている様で乱戦状態に持ち込まれる事を警戒していた。

「でも彼らはまだ私達に気付かれていないと思っている様だから、この隙に婿殿のプラズマボールで先に炭に変えて始末しちゃいましょう♪」

(大人しく殺される訳にもいかないから仕方ないか・・・)

ハジメはセシリアに危険が及ばない様に本部所属の冒険者を倒す事を選んだ、間違い無くこの国の軍隊と冒険者達を敵に回す事になるがセシリアの命と比べれば大した問題とも思えなかった。

「プラズマボール、プラズマボール、プラズマボール、プラズマボール!」

半分ヤケで4発を連続して作り、アーシュラに指示された場所に投げ入れる。雑魚に紛れて近付こうとしていた高レベルの冒険者は身動きが取れずにプラズマの餌食となり周囲の者達と共にこの世の舞台から退場した。

「まだ、他にも混ざっていそう?」

「とりあえずは大丈夫そうだけど本部の中に居る幹部連中は一筋縄ではいかないわよ」

ギルド本部の連中が最初からこちらを殺すつもりでいる以上、ここから先の和解や妥協など有り得ない。ならば、こちらの本気を見せ付けるのも相手の戦意を削ぐ意味でも有効だろう。ハジメは本部に直接攻撃を仕掛ける事にした。

「中途半端な攻撃してたら生き残った連中が後で刺客になりかねないから、ミリンダは目の前に居る連中を全員始末して貰って良いか?」

「全員・・・始末して良いのですか?」

「良いよ、その間に俺は本部を直接攻撃するからさ」

「分かりました!ここら一帯の冒険者全員、私が責任を持って皆殺しに致します。つきましては・・・後でご褒美を頂戴したいのですが?」

「予定変更してダイナスに9泊する事になったから、その内の一晩でミリンダが望むだけの褒美を与えてやるよ」

途端に目をキラキラさせて冒険者に向かい走り出したミリンダ、両手を左右に振る度に周囲の冒険者の首が落ちその返り血を浴びながら尚も前進していく。同業者を殺す事に対する罪悪感よりもハジメから与えられる褒美の方が勝った結果だが数分も掛からない内にギルド本部前は大量の死体とで血で溢れかえっていた。



「ミリンダのお陰で見晴らしも良くなったから、そろそろ俺の番だな」

ハジメは本部の建物に向け両手を前に出すと、左右の手から交互にフレイムキャノンを撃ち出し始めた!

ギルド本部は堅牢な作りとなっていたが手加減無しに次々と撃ち込まれる炎の砲弾に耐えられる物では無かった。1ヶ所穴が開くとそこに集中的に追加の攻撃が加えられ建物の中はあっという間に火の海と化し中から様子を伺っていた幹部の一部は逃げ遅れて焼死する末路を辿る・・・。

「ちきしょう!こいつら狂ってやがる、冒険者の仲間を皆殺しにしたあげくに本部の建物まで破壊するなんて!?」

「蜘蛛縛り」

建物から運良く脱出してきた幹部の1人が悪態をついてきたので、ハジメは糸で縛り上げ逃げられなくした。

「確かに俺達は狂って見えるかもしれないがな、こうなったのは俺達を騙して王都に呼び出したお前ら自身が原因だ」

「我々は王の命令に従っただけだ、貴様らを騙すつもりなど無かった」

「ほう、さっき俺達の前で口上を述べた奴は偉く流暢に話せていたじゃないか?負けた場合の言い訳まで考えていたのか?」

「ここまでの事をしたんだ、もうこの国に貴様らを庇う様な物好きは現れないぞ」

「本部に頼ろうとなんて考えていない、ルピナス支部は本日を持ってギルドから独立し独自の冒険者集団として活動を始める」

「ふざけるな!そんな事許される訳が「フレイムキャノン」

最後まで言い終わる前に幹部はハジメの手で処分される、それから生き残って周辺で隠れていた冒険者達もミリンダに追われ全員が狩られた。ハジメ達がダイナスに来た初日に冒険者ギルドは壊滅状態となり、ミリンダから各支部長宛に送られた今回の事件の経緯の報告とギルド長の辞任申請を読んだ各街の支部は独立もしくは隣接する支部と合併して大小様々な組織を作る事となる。



冒険者ギルド本部の崩壊と所属冒険者達の全滅の知らせはすぐに王城に居る国王ジェラールの耳に届いた。

「馬鹿な!?王都の本部に所属している選りすぐりの冒険者はそれこそ数百人と居るのだぞ、それが全滅?私は恐ろしい化け物を王都に招き入れてしまったのだろうか?」

そして王都に更なる不運が襲い掛かろうとしていた。

「陛下、緊急事態が発生しました!!」

「一体何事だ!冒険者ギルドの壊滅と同じ位の非常事態なのか!?」

「ダイナスの北20kmの場所に在る村を突如オークとゴブリンを中心とした集団が襲い村は壊滅、集団は尚も南進を続けており数日以内に王都に達する見込みです!」

「何だと!?」

「そ、それからこれはまだ未確認の情報なのですが・・・」

使いの者が国王に追い討ちを掛けた。

「集団の中にミノタウロスの姿が在ったと」

ジェラールの脳裏を絶望が支配した。王都の中にはギルドを崩壊させるハジメを筆頭として2世代の勇者まで居る非常識な化け物達、王都の外からはミノタウロスを含むモンスターの集団。内と外から王都が破壊しつくされようとしている、ジェラールは己の首と引き替えにする覚悟でハジメ達に交渉を申し込む事にした。都に住む者を守る為に・・・。
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