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第51話 一時帰国
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魔王ファーナのお仕置きからあっという間に時は流れ、一時帰国の日を迎えた。魔王がウィルの手によって散々な目に遭わされた事でこれまで魔王による出歯亀の被害を受けていた国々から歓迎され外遊は途中ではあるが大成功と呼べる内容に変わりつつある。外遊直後の騒動で周囲の注目を集め、魔王のお仕置きで株を上げた形だ。
「アルストリアに戻るのも本当に久しぶりだな」
非常識な外遊の主な原因で有るウィルがどこか感慨深げに呟いた。
「まあ、シェルナーグやカサッポでは色々な場所に行きましたけどアルストリアは王城には寄らずに教会本部だけでしたからね」
「そうだった、今回も王城より先に向かうのは教会本部だけどね」
本来ならば王城に真っ直ぐ向かい国王に途中報告をすべきだが、この非常識な面々はそれを無視してサチが待っている筈の教会本部へ向かった。
「ようやく来たのねウィル、この子と一緒に首を長くして待っていたわよ」
総大主教の執務室で久しぶりに再会したサチの腕の中では1人の赤子が寝息を立てている。早産だったそうだが母子共に健康らしい。
「これが俺の子か、名前はなんて付けた?」
「フク、私とこの子の2人であなたの幸福になりましょうって願いを込めたの」
フク・・・これがウィルとサチの間で生まれた子供の名であり、産まれる前の時点で神様が恐れを抱いた人物である。
「ねえ、ウィル。異世界にはこの子も一緒に連れていくの?」
「いや、流石に何が起きるか分からない世界に大切な子を連れて行けないよ。カサッポの母ちゃんに預けておこうと思う」
「お前達にはその子供を連れて異世界に旅立って欲しい、それがお前の母親の命を守る事にも繋がる」
急に声が割り込んだかと思うと、神様がウィル達の前に現れた。
「あれ?神様久しぶり」
「神様?この御方が神様なのですか!?」
総大主教フィリアは目の前に突如現れた人物が神様だと知るとパニックになりそうになった。
「君がフィリアか、幾つか話しておきたい事が有るけど今はこちらが最優先だ。ウィル・サチ、お前達の子供は産まれる前から非常識な存在だから一緒に異世界に連れて行って欲しい」
「ちょっと待ってくれ、何で俺達の子が産まれる前から非常識だって言うんだよ!」
よく見ると、神様の額に脂汗が浮いている。一体何が有ったというのだ?
「ウィル、お前が魔王ファーナにお仕置きしてから全員でレベルを1に戻してダンジョンでLV上げをしステータスを更に上げたよね?しかも何度も繰り返して」
ウィル達には心当たりが有り過ぎた、何回レベルを1に戻したのか覚えていないがリーン・タツト・アリアの3人が平均ステータス1500万前後、レーメルが平均3000万でウィルに至っては平均ステータスが1億の大台になっていた。
「すっかり忘れていると思うけど、サチに与えたスキルは未だ健在だ。そのお陰でサチの平均ステータスは何もしていなかったのに6000万まで上がってしまった」
(それってズルくね?)
リーン・レーメル・アリア・タツトの4人は思わず心の声を口に出してしまいそうになった。ウィルに付き合わされる形で何度も何度もレベルを1に下げてダンジョンで特訓していたのに、サチは何もしないで自分達よりも遥か上の力を手に入れていたのだ。
「そしてここからが本題だ、そのフクだが現時点の平均ステータスは2000万だ」
「・・・・・・」
もう何も言えなくなってしまった、この世界に住むほとんどの人間やモンスターが1才に満たない赤ん坊よりも弱いと神様から教えられてしまったのだから・・・。
「産まれるまでの間、心配で天から見ていたのだけど見る度に冷や汗が出たよ。『この子ったら、またお腹を蹴って・・・』なんて微笑ましい姿をサチは見せていたけどその状況をテロップで流すとこんな感じなんだよ」
【胎児は母体に10万のダメージを与えた】
「ここまで言えば分かってくれると思う、この子が軽く手を振るだけで母親は肉片になってしまうんだ。お前達とレーメルしか現時点で触れられる存在は居ない。しかも数年も成長すればレーメルも抜き去るだろう」
産まれた瞬間から非常識な赤ん坊、今後の成長次第で破壊神と呼ばれる息子となるのだろうか?
「母ちゃんを死なせる訳にはいかないから、仕方ないけど連れて行くよ。あと折角姿を見せたのだから、俺達の結婚式にも参加してくれないかな?」
「分かった、どうせ断ったとしても何らかの方法で呼び出すだろうしね。式の日取りが決まり次第教えてくれ」
「ささやかだけど、大勢の人が参列すると思うよ。リーンやアリアの関係者だけで王族も来るし」
「主よ、参列者に神様が混ざる事自体非常識だと思うのだが?」
「まあ非常識に慣れてしまったから多少の事は気にしない様にしようよ、その方が気が楽だ」
(お前にだけは言われたくないわ!!)
ウィルを除くこの場に居た全員が心の中でツッコミを入れていた。
サチを連れて教会本部を出た一行はようやく王城へ向かった。既にアルストリアに到着していると衛兵から連絡が来ているのに顔を出そうともしない皇太女達に国王夫妻は呆れながらも、こんな非常識な面々だからこそ魔王をお仕置き出来たと理解していた。
「・・・・・そういう訳で近日中にリーンを妻に迎え、外遊を終えた後でここに居るメンバー全員で異世界に渡る事になりました」
1年の外遊の途中経過の報告と共に次々と頭を悩ませる報告を繰り出すウィルに国王はこれからの国の行く末に不安を抱いてしまった。
「もうここまで事が進んでしまった以上、秘密にしておくのは難しいだろう。アリア姫との婚姻も含め国民に公表だけはしておいて結婚式や披露宴については最低限の人数だけ呼んで内々で済ませたいのだがどうだろうか?」
「良かった、俺も近親者のみで行いたかったので助かりました。とはいえ、アリアの親族も王族だからサチの家族が直接会った時にショックで気を失わないか心配だな」
ウィルのそんな言葉を聞きながら国王は別の事を思い浮かべていた。
(王族と会うショックよりも、この男に大切な娘を本当に嫁がせて良いものかの心配の方が大きい様な気がする)
数日後、国王の名で皇太女リーンと自由騎士ウィルの婚約を正式に発表した。またシャイカのアリア姫・護衛騎士レーメル・教会の司祭サチとの重婚については読めるかどうかの小さな文字で文書の隅に書いてあったそうである。
「アルストリアに戻るのも本当に久しぶりだな」
非常識な外遊の主な原因で有るウィルがどこか感慨深げに呟いた。
「まあ、シェルナーグやカサッポでは色々な場所に行きましたけどアルストリアは王城には寄らずに教会本部だけでしたからね」
「そうだった、今回も王城より先に向かうのは教会本部だけどね」
本来ならば王城に真っ直ぐ向かい国王に途中報告をすべきだが、この非常識な面々はそれを無視してサチが待っている筈の教会本部へ向かった。
「ようやく来たのねウィル、この子と一緒に首を長くして待っていたわよ」
総大主教の執務室で久しぶりに再会したサチの腕の中では1人の赤子が寝息を立てている。早産だったそうだが母子共に健康らしい。
「これが俺の子か、名前はなんて付けた?」
「フク、私とこの子の2人であなたの幸福になりましょうって願いを込めたの」
フク・・・これがウィルとサチの間で生まれた子供の名であり、産まれる前の時点で神様が恐れを抱いた人物である。
「ねえ、ウィル。異世界にはこの子も一緒に連れていくの?」
「いや、流石に何が起きるか分からない世界に大切な子を連れて行けないよ。カサッポの母ちゃんに預けておこうと思う」
「お前達にはその子供を連れて異世界に旅立って欲しい、それがお前の母親の命を守る事にも繋がる」
急に声が割り込んだかと思うと、神様がウィル達の前に現れた。
「あれ?神様久しぶり」
「神様?この御方が神様なのですか!?」
総大主教フィリアは目の前に突如現れた人物が神様だと知るとパニックになりそうになった。
「君がフィリアか、幾つか話しておきたい事が有るけど今はこちらが最優先だ。ウィル・サチ、お前達の子供は産まれる前から非常識な存在だから一緒に異世界に連れて行って欲しい」
「ちょっと待ってくれ、何で俺達の子が産まれる前から非常識だって言うんだよ!」
よく見ると、神様の額に脂汗が浮いている。一体何が有ったというのだ?
「ウィル、お前が魔王ファーナにお仕置きしてから全員でレベルを1に戻してダンジョンでLV上げをしステータスを更に上げたよね?しかも何度も繰り返して」
ウィル達には心当たりが有り過ぎた、何回レベルを1に戻したのか覚えていないがリーン・タツト・アリアの3人が平均ステータス1500万前後、レーメルが平均3000万でウィルに至っては平均ステータスが1億の大台になっていた。
「すっかり忘れていると思うけど、サチに与えたスキルは未だ健在だ。そのお陰でサチの平均ステータスは何もしていなかったのに6000万まで上がってしまった」
(それってズルくね?)
リーン・レーメル・アリア・タツトの4人は思わず心の声を口に出してしまいそうになった。ウィルに付き合わされる形で何度も何度もレベルを1に下げてダンジョンで特訓していたのに、サチは何もしないで自分達よりも遥か上の力を手に入れていたのだ。
「そしてここからが本題だ、そのフクだが現時点の平均ステータスは2000万だ」
「・・・・・・」
もう何も言えなくなってしまった、この世界に住むほとんどの人間やモンスターが1才に満たない赤ん坊よりも弱いと神様から教えられてしまったのだから・・・。
「産まれるまでの間、心配で天から見ていたのだけど見る度に冷や汗が出たよ。『この子ったら、またお腹を蹴って・・・』なんて微笑ましい姿をサチは見せていたけどその状況をテロップで流すとこんな感じなんだよ」
【胎児は母体に10万のダメージを与えた】
「ここまで言えば分かってくれると思う、この子が軽く手を振るだけで母親は肉片になってしまうんだ。お前達とレーメルしか現時点で触れられる存在は居ない。しかも数年も成長すればレーメルも抜き去るだろう」
産まれた瞬間から非常識な赤ん坊、今後の成長次第で破壊神と呼ばれる息子となるのだろうか?
「母ちゃんを死なせる訳にはいかないから、仕方ないけど連れて行くよ。あと折角姿を見せたのだから、俺達の結婚式にも参加してくれないかな?」
「分かった、どうせ断ったとしても何らかの方法で呼び出すだろうしね。式の日取りが決まり次第教えてくれ」
「ささやかだけど、大勢の人が参列すると思うよ。リーンやアリアの関係者だけで王族も来るし」
「主よ、参列者に神様が混ざる事自体非常識だと思うのだが?」
「まあ非常識に慣れてしまったから多少の事は気にしない様にしようよ、その方が気が楽だ」
(お前にだけは言われたくないわ!!)
ウィルを除くこの場に居た全員が心の中でツッコミを入れていた。
サチを連れて教会本部を出た一行はようやく王城へ向かった。既にアルストリアに到着していると衛兵から連絡が来ているのに顔を出そうともしない皇太女達に国王夫妻は呆れながらも、こんな非常識な面々だからこそ魔王をお仕置き出来たと理解していた。
「・・・・・そういう訳で近日中にリーンを妻に迎え、外遊を終えた後でここに居るメンバー全員で異世界に渡る事になりました」
1年の外遊の途中経過の報告と共に次々と頭を悩ませる報告を繰り出すウィルに国王はこれからの国の行く末に不安を抱いてしまった。
「もうここまで事が進んでしまった以上、秘密にしておくのは難しいだろう。アリア姫との婚姻も含め国民に公表だけはしておいて結婚式や披露宴については最低限の人数だけ呼んで内々で済ませたいのだがどうだろうか?」
「良かった、俺も近親者のみで行いたかったので助かりました。とはいえ、アリアの親族も王族だからサチの家族が直接会った時にショックで気を失わないか心配だな」
ウィルのそんな言葉を聞きながら国王は別の事を思い浮かべていた。
(王族と会うショックよりも、この男に大切な娘を本当に嫁がせて良いものかの心配の方が大きい様な気がする)
数日後、国王の名で皇太女リーンと自由騎士ウィルの婚約を正式に発表した。またシャイカのアリア姫・護衛騎士レーメル・教会の司祭サチとの重婚については読めるかどうかの小さな文字で文書の隅に書いてあったそうである。
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