スキルメーカー ~運命を変えた非常識なスキル~

いけお

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第47話 外遊の再開と珍しい人物からの招待状

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「大事な事を忘れてた、ちょっとシェルナーグに寄っていっても良いかな?」

母親のミラとの別れを済ませたウィルは、他の皆に確認を取った。

「別に構いませんが、どちらに向かわれるのですか?」

「孤児院のリスティーの所だよ」

「まさかすぐに顔を出すとは思ってもいない筈だから驚かせそうですね」

妹とまた会えるのでレーメルからは異論は出なかった、また他の面々からもOKが出たので早速シェルナーグの孤児院へ向かう。

「こんにちわ、リスティーは居ますか?」

「何か忘れ物でもしたのか?リスティーなら、ほれ奥の調理場で子供達にあげるクッキーを焼いている所だが今は邪魔をすべきではないからしばらく待っておれ」

「邪魔をすべきではない?」

ウィル達は出迎えた闇の女王の言葉に少し違和感を覚えたが、その理由はすぐに分かった。

「ちょっとジェイクさん、そんなに1度に持ったら折角焼いたクッキーが地面に落ちてしまいます」

「この位平気だって、それに何度も往復していたら子供達も待ちきれなくなって先に食べる奴も出るかもしれないだろ?リスティーさんの焼いたクッキーはとても美味しいってえらく評判みたいじゃないか」

「そ、そんな事無いですから」

和気藹々としたムードで調理場からやってきたリスティーとジェイクは微笑みながら迎えたウィル達と闇の女王を見て固まっていた。

「忘れ物が有って届けに来たんだが、ジェイクってそこまで女性に優しかったっけ?」

ウィルはわざとらしく聞いてみた。

「俺はいつでも女性には優しく接しているぞ、それに孤児院の運営に何か困った事でも起きたら心配だから時々様子を見に来ているだけだ」

「ウィルよ、その男は適当な理由を付けては毎日顔を出しておる。このまま温かく見守ってやってくれ」

闇の女王がリスティーを見つめる瞳が母親の様な柔らかい物になっていた、リスティー達の行く末を見届けるまでは死のうと考える事も無いだろう。

「ところで今日は一体何しに来たのかしら?」

リスティーは子供達にクッキーを配り終えると、足早にやってきた。

「外遊に戻る前にこれを渡しておこうと思ってね」

ウィルはリスティーに小さなバッグの様な物を手渡した。

「これって一体何?」

「それは携帯保管庫といって、99個までのアイテムを保管出来るんだ。子供達が闇の女王の作るダンジョンで手に入れた水や食料を入れておけば腐らせずに保存出来るよ」

これまでの旅の間にウィルの携帯保管庫のスキルLVも更に上がっていて、1つを誰かに譲渡する事が可能になっていた。しかし、サチやリーン達は今後もウィルと一緒に行動を共にするので保管庫を渡す必要は無い為孤児院の運営に少しでも貢献出来る様にリスティーに渡す事にしたのだ。

「これが有れば腐らせて無駄にしてしまう食料を無くせるわ、非常識なアイテムだけど凄く助かる。大事に使わせてもらうわね」

「外遊を終えて、別の世界に行く前にもう1度だけ様子を見に来るよ。しばらく会えなくなるだろうから数日位姉妹で過ごしても神様だって文句は言わない筈だよ」

「ええ、楽しみに待っているわ」

孤児院を出るとウィル達は外遊を再開させる為にシャイカの離宮に戻る事にした、離宮に戻ると侍女の1人がアリアにエガリアから戻り次第宮殿に来るようにと伝言が有った事が伝えられた。

「兄上が一体何の用でしょう?」

色々な事が有ったがシャイカにはかなりの間滞在していたので、エガリア帝王にお礼を言ってから出立するべきだとレーメルも言うのでウィル達はすぐに宮殿に向かった。

「兄上、ただいま戻りました。それで一体どのようなご用件でしょうか?」

「お~アリアにウィル殿よく戻られた。実は先日ウィル殿宛てに書状が届いたのだ」

「俺宛に書状が?」

「うむ、書状の送り主は読んでみて頂ければ分かるが我が国としても無視する事は出来ない。内容を確認次第、次の目的地として向かって欲しいと思う」

シャイカの様な大国でさえ無視出来ない相手とは一体誰なのだろうか?ウィルは書状の裏の封蝋に施されている紋章を見てみたが生憎と見覚えは無かった。

「そ、その紋章は!?」

ウィルの横から封蝋の紋章を見たアリアが急に狼狽しだした、相手が凄く気になってきたのでアリアに一体誰なのか聞いてみる事にした。

「なあアリア、この書状は一体誰からの物なのかな?」

「この書状は・・・魔王からです」

え、今なんて?

「もう1度聞きたいんだけど、一体誰からの書状なの?」

「だから・・・魔王直筆の書状です。何も見ずに捨てたりしたら、魔族と人族が全面戦争になりかねないのですぐにお読みください」

アリアに急かされる様にウィルは書状の中身を確認した、リーンやレーメルも気になって横から覗きこんでいる。

【拝啓ウィル殿、我が眷属の者が迷惑を掛けてしまった様で申し訳無いと思う。ついては眷属に生きる気持ちを取り戻させてくれたお礼を兼ねて国賓として招待したい。この書状を国境に居る衛兵に見せれば城まで案内する手筈を既に整えてある、眷属の義娘の1人も連れて外遊再開の最初の訪問地としてぜひお越しください】

「これ・・・どう見ても絶対に行かないとならなそうだね」

「そうですね、レーメルの事まで知られているみたいですし」

「お母様の事を眷属って呼ぶって事は、お母様って実は魔王直系の血筋だったの!?」

「もしくは魔王自らが作り出した、影武者だったって可能性も有るぞ」

「いずれにせよ、魔王からの招待を断る事だけは絶対にしないで欲しいウィル。生まれ故郷のシャイカが滅ぶ姿は見たくない」

(まあ1度位は会っておきたい存在だし、戦う訳じゃないから深く考えなくても良いか)

ウィルは今回の招待を受ける事にした。

「じゃあ準備が出来次第、魔王に会いに行きますか」

「主よ、アリア殿も加わり魔動馬では少し力不足になるやもしれぬ」

「そうか、かなり人数も増えてきたしな。何か良い方法でも有るかなタツト?」

「我がダンジョンをクリアした時に渡した指輪が有っただろう?それで馬車を引くのに丁度良い魔獣を呼び出すのはどうだ?」

「それは良いアイデアだよタツト、早速呼び出してみよう」

ウィルは携帯保管庫の中から魔獣使いの指輪を取り出して使おうとしたが、ふとある事を思いついてリーンに近寄った。

「リーン、ちょっと良いかな?」

ウィルはリーンの左手を握ると、薬指に魔獣使いの指輪を嵌めた。

「貰った時にタツトがリーンに使わせた方が良いと言っていたし、少し早いけど婚約指輪の代わりにして欲しい。本物の結婚指輪はどこかで手に入れるよ」

リーンはしばらくの間愛しそうに指輪に触れていたが、気持ちを切り替えると指輪の力で魔獣を呼び出す事にした。

「それでは呼び出します、我が呼びかけに応え魔獣よ出でよ!」

リーンが叫ぶと目の前に魔方陣が現れた、そして魔方陣の中央から2頭の魔獣が姿を現したのだが皇太女が呼び出したと知れるとあまり評判がよろしくないものだった。

「これは、バイコーンですね」

「うむ、バイコーンのようだ」

「バイコーンの馬車で移動する、皇太女。ユニコーンだったらさぞかし高い評価を受けただろうに・・・残念だ」

バイコーンとは二本角をした馬でユニコーンの亜種といわれる。またユニコーンは純潔を司るのに対し、バイコーンは不純を司るとされる。これまでのご乱行を省みれば当然の結果なのかもしれない。
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