スキルメーカー ~運命を変えた非常識なスキル~

いけお

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第27話 称号【迷宮規則の壊し屋】

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ドラゴニュート LV75 HP12000/12000

本来、倒す筈だったダンジョンボスはこんな方です。しかし、現在ウィルはまた正座させられております。

「誰も来ていなければ、何をしても良いって訳じゃないだろ?サイクロプスの奴が涙目になりながら、他のダンジョンに連絡を取っている姿を想像した事有るかお前は?」

一つ目の巨大な鬼が涙を流す事などウィルとリーンは想像も付かなかった、しかも他のダンジョンにもウィルが迷惑を掛けない様に予め対策を教えていたのに当の本人がルールを壊してしまった。

「お前らがこの最下層に来るまでの間に、他のダンジョンのボス達と急遽対策会議を行って現在営業中のダンジョンでは今後ゴーレムと使役した魔物や分身等をダンジョン内で使用不可とする事となった。たった2回でお前は多くのゴーレム使いや魔物使いのダンジョン挑戦の機会を奪ってしまったんだ。今度こそ反省しろ」

「あのドラゴニュートさん、1つ聞いても宜しいですか?」

リーンがドラゴニュートに何か気付いた事が有る様で質問を投げかけた。

「現在営業中のダンジョンではって事ですが、今後新しいダンジョンを作る予定が有るって事でしょうか?」

「ほほ~中々良い所に気付くな娘よ、その通りだ。今回の件で活躍の場を失ったゴーレム使いや魔物使いの為のダンジョンを建設する事が決まった。しかし、ウィルお前の出入り禁止だけは既に決定事項だから中には入れないぞ」

「くそ~モンスターはそこまでして、俺を困らせるのか!?」

スパァァァン! 再びウィルの頭にハリセンが振り下ろされる。

「お前の方が俺達を困らせているんだろが!?これ以上、ダンジョンのルールを壊されちゃこっちも困るから今後お前が入れるダンジョンはここだけとなった」

「え~っ!!わざわざここまで来なくちゃいけないの!?」

「それに関しては心配する必要は無い。何故なら監視役として俺がお前に同行するからな」

え!?今、何て言いました?

「これから、俺もお前の仲間として付いていくと言ったのだ。どこか適当な場所でも見付けた時に言ってくれれば何時でもダンジョンを作れるぞ」

【ウィルは持ち運び可能なダンジョンを1つ手に入れた】

「俺は基本的にダンジョン内の魔力を糧に生きているから水や食料は必要としない。だが、折角外を歩ける様になったのだから時々は市場で地酒やつまみを買って貰えると有り難い」

「付いてくるのは確定ですか?」

「それじゃあ、逆に聞くが今後はルールを破らずにダンジョンに挑戦しますと約束出来るか?」

「無理ですね、よろしくお願いします」

ウィルはドラゴニュートに頭を下げる、アークブランドの歴史の中でおそらく初となるダンジョンボスを仲間にした冒険者がここに誕生した。



名前 タツト(竜人)

種族 ドラゴニュート

職業 ダンジョンボス

年齢 不詳

LV 75               

HP 12000/12000            

MP 5000/5000

力  8000

魔力 6000

素早さ 5500

体力 6500

物理防御 6500

魔法防御 1500

(数値最小0、最大65535)

スキル 迷宮管理者



「竜の人と書いて、タツトと読む。他のボス達からタツと呼ばれたりもするな」

タツトが簡単な自己紹介をしてくれた、スキルの迷宮管理者は好きな場所にダンジョンを作り出す事が可能でその際にダンジョン内のルールも組み込めるらしく、タツトのLVよりも低いモンスターであればある程度の種類を配置する事も出来るそうだ。

「ダンジョン内でドロップするお金や装備等は、この世界中を流れる魔力の奔流【魔脈】の力を使って作り出しているから無限に産み出せると言っても過言じゃないな」

「は~い、タツトさんに質問」

ウィルが手をあげると、何故かタツトとリーンは嫌な予感がした。

「とりあえず聞いておこうか、どんな質問があると言うのだ?」

「ダンジョンでドロップする装備類を食料に変更して貰う事は可能ですか?」

「はい?」

「あと、ダンジョン内にトイレや寝室と風呂場も設置して貰う事は出来ますか?」

「もしも~し、急に何を言い出しているのかな?」

「今、俺とリーンは国から追われている状態だからいざとなったらダンジョン内に立て篭もろうと思ってね」

(うわあ、きっと入ると絶対に生きて出られないダンジョンと化すんだろうな)

タツトとリーンは次にウィルが言うであろう言葉も予想が付いている。

「1層~5層まで俺の分身を各階6553体ずつ配置しておけばしばらく侵入者は来れないだろうから、それより下の階で食料をドロップするモンスターを置いておけば自給自足も可能となる」

「多分、最初の層でまず侵入者は全滅すると思うわよ」

リーンのツッコミにタツトも同意して頷いた。

「そうあって欲しいけどね、イスタブのダンジョンに行く前に1度だけ攻撃を避けられた事が有るから一応念には念を入れておかないと」

「あなたの攻撃を避けた人が居るの!?」

「その女の人はレーメルと名乗って、闇の女王の操り人形の1つだと言っていた。シェルナーグにオークの軍勢5000を召喚したのも自分だったともね」

「オークを5000も召喚出来る者が居るのか?」

リーンとタツトは不審そうな目を向けてくる。

「自分の分身を6553体呼べるのが目の前に居るってのに?」

「「ああっ!?」」

リーンとタツトが納得した様子で頷いた。

「そんな訳で、タツトに居住性能を持たせたダンジョンが作れるのか聞いたんだよ」

「それならあなた達2人しか入れないルールのダンジョンにするだけで十分だ」

「え?」

「そうすると1層は飲み水や酒・ジュース類をドロップするモンスターを配置して、2層は肉や魚と鶏に穀物類をドロップするモンスター、3層を居住用の場所としてトイレと風呂に寝室更に食堂を設置して、4層は修行用の階として希望のLV帯のモンスターを数体呼び出せる様にしておこう。まあ、呼べると言ってもLV74までのモンスターになるがな」

何その快適な自給自足可能のダンジョンは!?

「風呂は普段は地熱を利用して水を温めて、近くに温泉の水脈があればそこから引き込む様にするが良いか?」

「タツトも結構やり過ぎてない?」

「ダンジョンを完全に破壊されると、俺も死んでしまうからな。ダンジョンが完全に破壊されない限りはこの身がたとえ死んでもしばらくすれば蘇るから、ダンジョンの完全破壊だけはされない様に注意してくれよ」

タツトがそう言いながら何度か俺の頭を叩くのに使っていたハリセンをリーンに手渡した。

「これは?」

「それはツッコミハリセンと言って、振り下ろすと必ず狙う相手の頭に命中する優れ物だ。相手にダメージを与える事は出来ないがお前さんには今後必需品となりそうだからな」

(もしかして、ツッコミ担当を押し付けられたのかしら?)

「それとウィル、お前には称号が与えられる事となった。称号の名は【迷宮規則の壊し屋】、何度もダンジョンのルールを壊してきたんだこれ位我慢しろ」

ウィルは称号を、リーンはツッコミハリセンをそれぞれ手に入れた。何だか割に合ってない気がする・・・。

「それとこのダンジョンのクリア報酬を渡そうと思うのだが、1つは魔獣使いの指輪だ。お前よりもこの娘に使わせた方が良いだろう。それともう1つはこの娘だけに与える情報という名の報酬だ」

情報が報酬?一体どんな情報がダンジョンクリアの報酬になるのだろうか?

「詳しい場所を教える事はまだ出来ないが・・・娘よ、お前の処刑されたと言われている母親は匿われていて無事だ。しかし、王に気付かれるのも時間の問題となっている。救い出したければ急いだ方が良い」

「母さんが生きている!?それで誰が母さんを匿ってくれているの?」

「リーデガルド前大公夫妻だ、それとニナという主教も匿う際に協力したらしい。3人が捕らえられる前に首都を目指せ」

時間的な猶予があまり残されていない事を告げられたウィルとリーンは、ダンジョンの出口を森の外まで繋げてもらうと首都へ急ぎ向かう事にしたのだった。
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