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第14話 お米の入手と陽気な家族
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サチを見送った後、ウィルは当初の目的だった米の入手の為再度リンザに向かう事にした。シェルナーグを出てから2日目の夕方頃リンザに到着すると、先日助けた娘の1人が居てウィルに気付くと手を振りながら近づいてきた。
「あの、ウィル様先日は盗賊から助けて頂いてどうも有難うございました!こうして何事も無い生活に戻れたのに満足に御礼を言えずじまいだったので、やっと願いが叶いました」
「そう言って貰えると、俺も助けた甲斐が有ったよ。前回リンザに来た時はそのままシェルナーグに引き返す事になったけど、今日は当初の目的だったリンザで採れる美味しいお米を手に入れようと思ってきたんだ」
「お米ですか?どれ位買われる予定でしたか?」
「そうだな、40kg位買おうと思ってる。腐らせずに持ち運べる方法が有るからこれからの旅で自炊するのに少し多目に買っておくつもりなんだ」
ウィルの言葉を聞いて娘が目を輝かせた。
「でしたら、助けて頂いたお礼に今年収穫した我が家の米を持って行ってください!」
「ええ!? 40kgといえば結構な量と金額になるけどいいの?」
「もちろんです、助けて頂いたお礼には程遠いですがそれくらいはさせて下さい」
「断るのもかえって失礼だしそれじゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな?」
ウィルが快諾すると、娘は嬉しそうに笑顔を見せてくれた。
「では早速、家に行きましょう。そういえば、今晩の宿はもうお決まりですか?」
「いや、今着いたばかりだったからこれから探す所だけど」
「なら空いている部屋も有るので、米を受け取るついでに泊まっていってください。我が家秘蔵の米から作ったお酒もお出ししますよ」
ウィルは聞いただけで口から涎が出そうになった、リンザのお米の味も確かに有名なのだが収穫された米から作られたお酒もまた絶品なのは言うまでも無い。娘に手を引かれ、家まで連れてこられた。娘は明るい声で命の恩人を家族に紹介する。
「ただいま~!今日は1人大切なお客様を連れてきたよ。ウィル様といって、先日私を盗賊から助けてくださった方よ」
娘がウィルを紹介すると、家の中に居た両親が近寄りお礼を言ってきた。
「あなた様が大切な我が娘アイーラを助けてくださったのですね、心より感謝いたします」
「うちの娘を助けてくれた冒険者がどんな奴か興味が有ったんだが、人が良さそうな若者じゃねえか!アイーラを助けてくれてどうも有難うよ」
明るい家族の様だ、ウィルは見ているだけで楽しい気持ちになれた。
「それで父さん母さん。ウィル様が今日リンザの村に来たのはね、これからの旅で自炊するのに美味しいリンザの米を食べたいから40kg程買うのが目的だそうなのよ」
「なら40kgと言わず50kg渡してやりな!うちの娘の命の恩人に出来る限りの御礼をしなきゃいけねえからよ」
「うん、わかった!それから、ウィル様は今日の宿をまだ決められていなかったそうだから空いている部屋に泊まって頂いても良いよね?」
「もちろんよ、そうして頂きなさい。今日は久々に腕を振るわないといけないわね」
「お~ウィルさんよ、料理が出来るまで我が家秘蔵の酒を一緒に飲もうじゃないか!?」
親父さんから酒をグラス一杯に注がれ、まずは一口飲んでみた。
(美味い!それにこのフルーティーな香りがたまらない)
「お?どうやら、この酒の香りを気に入ってくれた様だな。我が家の酒はな、米を半分近くまで削って香りを引き立たせているのさ。他の家の酒よりも数段美味いって自信が有るぞ」
「本当に美味しいよこのお酒、これを飲んでしまったらカサッポの酒場の安い酒なんか金輪際飲めなくなるよ」
「なんだ、家で親父と酒を酌み交わしたりしなかったのか?」
ウィルは一瞬だけ悲しい顔になったが、それを隠す様に明るい声で答えを返した。
「父ちゃんも冒険者だったんだけど、俺が酒を飲める様になる前にモンスターに挑んで死んじゃった。だから、親父さんと飲むと父ちゃんと飲んでいる様な気分になって何だかとても嬉しいよ」
「嫌な事思い出させちまった様で済まなかったな」
「折角、こんな美味い酒を飲んでいるのに辛気臭い話は止しましょうよ。ほら、親父さんもさっきみたいに笑ってください」
ウィルが気にしない様に言うが、親父さんは申し訳無さそうな顔のままだった。しかし、見るに見かねたアイーラのお袋さんが間に入ってきてくれた。
「ウィルさんの言う通り、辛気臭い話はもうお終いになさい!あなたがその顔のままじゃ折角作ったご馳走の味まで落ちてしまいますよ?」
お袋さんに諭される様に言われ、親父さんはグラスの酒をしばらく眺めていたが手を伸ばし一気にそれを飲み干すと吹っ切れた様にウィルに向けてこう言った。
「よ~し、ウィルさん今日は飲むぞ!そして米と一緒に我が家の酒も何本か持っていってくれ」
「え、いいのですか!?」
「重い空気にさせちまった詫びと、来年以降もこの村に来て貰えるようにこの酒の虜にしないといけないからな!」
「それじゃあ、来年はきちんとお米とお酒を買わせて頂きますね」
「金など要るか!?アイーラの命の価値はこんなもんじゃねえぞ、お前が死ぬまで毎年村に来る度に米と酒を渡すから忘れずに取りに来るんだぞ!」
「なら、その時は一緒に夜通し飲んでくださいね。約束ですよ?」
親父さんと握手を交わし、来年以降も毎年この村を訪れる事を約束した。それからお袋さんが腕によりを掛けて作った料理の数々を頂いて夜遅くまで笑い声が絶える事は無かった。
そして翌日、お米50kgと酒の1升ビンを10本貰いリンザの村を後にした。来年ここを訪れる際はどんなお土産を持参して行こうかと既に考え始めている気の早いウィルであった。
「あの、ウィル様先日は盗賊から助けて頂いてどうも有難うございました!こうして何事も無い生活に戻れたのに満足に御礼を言えずじまいだったので、やっと願いが叶いました」
「そう言って貰えると、俺も助けた甲斐が有ったよ。前回リンザに来た時はそのままシェルナーグに引き返す事になったけど、今日は当初の目的だったリンザで採れる美味しいお米を手に入れようと思ってきたんだ」
「お米ですか?どれ位買われる予定でしたか?」
「そうだな、40kg位買おうと思ってる。腐らせずに持ち運べる方法が有るからこれからの旅で自炊するのに少し多目に買っておくつもりなんだ」
ウィルの言葉を聞いて娘が目を輝かせた。
「でしたら、助けて頂いたお礼に今年収穫した我が家の米を持って行ってください!」
「ええ!? 40kgといえば結構な量と金額になるけどいいの?」
「もちろんです、助けて頂いたお礼には程遠いですがそれくらいはさせて下さい」
「断るのもかえって失礼だしそれじゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかな?」
ウィルが快諾すると、娘は嬉しそうに笑顔を見せてくれた。
「では早速、家に行きましょう。そういえば、今晩の宿はもうお決まりですか?」
「いや、今着いたばかりだったからこれから探す所だけど」
「なら空いている部屋も有るので、米を受け取るついでに泊まっていってください。我が家秘蔵の米から作ったお酒もお出ししますよ」
ウィルは聞いただけで口から涎が出そうになった、リンザのお米の味も確かに有名なのだが収穫された米から作られたお酒もまた絶品なのは言うまでも無い。娘に手を引かれ、家まで連れてこられた。娘は明るい声で命の恩人を家族に紹介する。
「ただいま~!今日は1人大切なお客様を連れてきたよ。ウィル様といって、先日私を盗賊から助けてくださった方よ」
娘がウィルを紹介すると、家の中に居た両親が近寄りお礼を言ってきた。
「あなた様が大切な我が娘アイーラを助けてくださったのですね、心より感謝いたします」
「うちの娘を助けてくれた冒険者がどんな奴か興味が有ったんだが、人が良さそうな若者じゃねえか!アイーラを助けてくれてどうも有難うよ」
明るい家族の様だ、ウィルは見ているだけで楽しい気持ちになれた。
「それで父さん母さん。ウィル様が今日リンザの村に来たのはね、これからの旅で自炊するのに美味しいリンザの米を食べたいから40kg程買うのが目的だそうなのよ」
「なら40kgと言わず50kg渡してやりな!うちの娘の命の恩人に出来る限りの御礼をしなきゃいけねえからよ」
「うん、わかった!それから、ウィル様は今日の宿をまだ決められていなかったそうだから空いている部屋に泊まって頂いても良いよね?」
「もちろんよ、そうして頂きなさい。今日は久々に腕を振るわないといけないわね」
「お~ウィルさんよ、料理が出来るまで我が家秘蔵の酒を一緒に飲もうじゃないか!?」
親父さんから酒をグラス一杯に注がれ、まずは一口飲んでみた。
(美味い!それにこのフルーティーな香りがたまらない)
「お?どうやら、この酒の香りを気に入ってくれた様だな。我が家の酒はな、米を半分近くまで削って香りを引き立たせているのさ。他の家の酒よりも数段美味いって自信が有るぞ」
「本当に美味しいよこのお酒、これを飲んでしまったらカサッポの酒場の安い酒なんか金輪際飲めなくなるよ」
「なんだ、家で親父と酒を酌み交わしたりしなかったのか?」
ウィルは一瞬だけ悲しい顔になったが、それを隠す様に明るい声で答えを返した。
「父ちゃんも冒険者だったんだけど、俺が酒を飲める様になる前にモンスターに挑んで死んじゃった。だから、親父さんと飲むと父ちゃんと飲んでいる様な気分になって何だかとても嬉しいよ」
「嫌な事思い出させちまった様で済まなかったな」
「折角、こんな美味い酒を飲んでいるのに辛気臭い話は止しましょうよ。ほら、親父さんもさっきみたいに笑ってください」
ウィルが気にしない様に言うが、親父さんは申し訳無さそうな顔のままだった。しかし、見るに見かねたアイーラのお袋さんが間に入ってきてくれた。
「ウィルさんの言う通り、辛気臭い話はもうお終いになさい!あなたがその顔のままじゃ折角作ったご馳走の味まで落ちてしまいますよ?」
お袋さんに諭される様に言われ、親父さんはグラスの酒をしばらく眺めていたが手を伸ばし一気にそれを飲み干すと吹っ切れた様にウィルに向けてこう言った。
「よ~し、ウィルさん今日は飲むぞ!そして米と一緒に我が家の酒も何本か持っていってくれ」
「え、いいのですか!?」
「重い空気にさせちまった詫びと、来年以降もこの村に来て貰えるようにこの酒の虜にしないといけないからな!」
「それじゃあ、来年はきちんとお米とお酒を買わせて頂きますね」
「金など要るか!?アイーラの命の価値はこんなもんじゃねえぞ、お前が死ぬまで毎年村に来る度に米と酒を渡すから忘れずに取りに来るんだぞ!」
「なら、その時は一緒に夜通し飲んでくださいね。約束ですよ?」
親父さんと握手を交わし、来年以降も毎年この村を訪れる事を約束した。それからお袋さんが腕によりを掛けて作った料理の数々を頂いて夜遅くまで笑い声が絶える事は無かった。
そして翌日、お米50kgと酒の1升ビンを10本貰いリンザの村を後にした。来年ここを訪れる際はどんなお土産を持参して行こうかと既に考え始めている気の早いウィルであった。
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