スキルメーカー ~運命を変えた非常識なスキル~

いけお

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第11話 アズシエルの捕縛

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「おい、マクスハイト。何か様子が変じゃないか?」

「俺もそう思っていたところだ、タイトス。ここは引き上げるべきだろう」

騎士2人も流石に異変に気付いた様だ、手遅れだけどね。

「よ~お二人さん、わざわざ予定日よりも早く来てくれて助かったよ」

「き、貴様はギルド長のジェイク!ルトの村に向かった筈では!?」

「生憎と最初からここで待ち伏せする予定だったのさ、お前らが来るのをね」

マクスハイトとタイトスは剣を抜き構えを取る、騎士と呼ばれるだけあって並みの冒険者には無い威圧感を周囲に振りまいている。

「しかし、残念だったな!お前1人だけで我々と同時に戦って勝てるとでも思っているのか!?」

「それはこちらのセリフだよ、お前らこそ忘れていないか?俺は1人だけでルトの村に向かっていたのか!?」

2人は大事な事に気付き後ろを振り返る、だが既に背後に回っていたウィルは殺さない様に力を加減して2人の鳩尾に拳を叩き込んだ。

「「ぐおぅ!?」」

勇者と同等とさえ言われる騎士2人をいとも簡単に無力化してしまうウィルを見て、ジェイクは呆れていた。

「俺だと2人の相手は荷が重いのに、それをあっさりとこなしてしまうのだから君はやはり1つの国の枠に収まる様な冒険者じゃないよ」

「手加減する方が正直かなり難しいよ、力加減を間違えると肉片にしちゃうと思うから」

「肉片っておいおい!?」

ジェイクは外にまだ荷物運びが残っている事に気が付いた。

「そうだ、ウィル。外に居る荷物運びはどうした?」

「全員、こいつらが持ってきていた檻付きの荷車に乗って貰ってる。最初襲い掛かってきた男を誤って肉片にしちゃったら、残りの人達自分から進んで檻の中に入ってくれたよ」

(目の前で仲間がミンチにされたら、命惜しさに檻の中に逃げ込みたくもなるわな)

檻の中に入った残りの荷物運び達の心境をジェイクは理解出来た、これまでの罪状からもしかしたら死罪になるかもしれないが目の前の男に襲い掛かって肉片になるよりかは、まだ死なずに済む可能性が残る。

「さてと、これで盗賊達とアズシエルの配下の騎士達が繋がっていた現場を押さえた。あとはアズシエルの前にこの2人を突き出して罪を認めさせるだけだなウィル」

「ええ、だけど素直に罪を認めるとは思えませんけどね」

「ちょっと待て!?対策を考えてくれるのでは無かったのか?」

「対策は既に出来ています、俺が言いたかったのは対策を使う前に自ら罪を認めるとは思えないだろうって意味です」

「そうか、なら安心した。心臓に悪いから勘弁してくれよ、今頃シェルナーグは大騒ぎになっている頃だから」

「え、大騒ぎですか!?」

その後、ウィルが何度聞いてもジェイクはシェルナーグで何故大騒ぎが起きるのか教えてくれなかった。ウィルを驚かせようという魂胆なのだろう。悪事の証拠の騎士2人と荷物運び達を乗せた荷車を引く事2日、ようやくシェルナーグに戻ってきたが外から見る限り普段と変わらない様に見えた。しかし、アズシエルの屋敷に着いた時ジェイクが言っていた意味が分かった。屋敷の周囲を冒険者100人近くが取り囲み、誰1人逃げられない様にしていたのだ!

「流石はエシュリー、見事な手際だな」

「あなたの采配を近くで長年見てきましたからね」

ジェイクが指揮を執っていた受付の女性を褒めていた、受付の方の名前はエシュリーっていうのか。

「配下の騎士達が屋敷から深夜に出て行くのを確認した直後に、冒険者達に極秘招集を掛けて屋敷を囲ませました。鳩や犬を使って連絡を取ろうと試みてきましたが全て妨害してあります」

呼び戻そうと色々と連絡手段を変えてみたものの邪魔されたとあってはアズシエルって下級貴族は今頃焦っているだろう、だけどアズシエル本人の口から騎士達に命令した事を言わせない限り裁判になった時に無罪にされてしまう可能性が高い。

「ちょっと見てみろよ、あの人達は確かアズシエル殿に雇われている騎士じゃないのか!?」

「他にも屋敷で働いている連中が何人も居るぞ、何で檻の中に居るんだ?」

「屋敷を冒険者達が急に取り囲んだから何事かと思ったが、何か後ろめたい事でもやらかしたんじゃないのか!?」

この騒ぎを聞きつけたのか、街の住人達も大勢野次馬で見学している。ウィルは門の前まで荷車を運ぶと屋敷に向かい大声をあげた。

「アズシエル殿!2日程前、シェルナーグとリンザの間にある森で盗賊達と取引をしようとしていた配下の騎士達を捕らえました。あなたにもリンザの村の女性誘拐の主犯の疑いが掛けられています。素直に出てきて罪状の認否をすれば良し、無視する様であれば罪を認めた上で求めを無視していると判断し強制的に捕縛させて頂きます」

周囲が見守る中、数分後屋敷の扉が開き1人の男がこちらに向かい歩いてきた。どうやらこの男がアズシエルらしい。

「やあやあ、遠路遥々無駄足を踏ませてしまった様で申し訳ない。どうやら、この者達は私の目を盗んで卑劣な犯行に手を染めていたらしい。嘆かわしい限りだ、即刻契約を解除するのでその罪に見合う裁きを与えてやってくれ」

「あなたは一切関係無いと?」

「もちろんだとも!!私の様な貴族が何故村娘などを誘拐する必要が有るのだ?これ以上、犯人扱いをするのならば名誉毀損で訴えさせてもらいますよ」

アズシエルは顔色1つ変えずに返答してきた。

「何だ、結局この騎士達が勝手にしでかした事件なのかよ!?」

「一瞬、アズシエル殿も犯人なのかと疑ってしまったけど無実みたいね」

住人達の言葉を聞いてアズシエルは勝ち誇った顔をする、思った通りの人だったのでウィルは対策として考えてあったスキルを発動させる事にした。

「それじゃあ、もう1度質問しますので同じ様に答えられたら嘘は言っていないと判断し失礼をお詫びします。【真実の質疑応答】!」

ウィルはアズシエルをターゲットにしてスキルを発動させると、再度質問する。

「あなたがこの騎士達に指示して盗賊達に近隣の女性達を攫わせたり旅人を襲わせて金品を強奪させる行いをさせましたか?」

「先程も言っておろう!私は・・・確かにこの者達を連絡役にして金品の強奪や女性達の誘拐を盗賊達に行わせました」

(何だ、急に勝手に本当の事を喋り出したぞ!?)

「誘拐した女性達を一体どうしたのですか?」

「私自ら一通り味見した後は、薬漬けにして地下に秘密裏に立ててある娼館で娼婦として働かせています」

「女性達は全員無事ですか?」

「何人かは薬の使い過ぎで死にました、身元が分からない様に念の為顔を焼いた後に身包みを剥いで川に捨てました」

アズシエルの罪の告白を聞きながら、殺したい衝動を抑えるのに必死だった。アズシエルに使用したスキル【真実の質疑応答】は以下の様なスキルである。



スキル名 【真実の質疑応答】

スキルLV 1(質問に対し真実を話す回数99回)

効果 こちらの質問に対し嘘偽りの無い真実のみを話す。スキルLVが上がる毎に質問出来る回数が1つずつ増えていく。

備考 本人が話したく無い事でも、それが真実であれば強制的に話してしまう。スキルの使い方次第では、半ば強制的に恋愛感情を告白させる等の結果となるので扱いには十分注意して下さい。


気になる相手に誰が好きなのかを強制的に言わせる事も可能な即座に消したいスキルである。別の人が好きだった場合はお互いが傷付くし、両想いだったとしても強制的に告白させられて嫌いになってしまう事もあるだろう。

(ルトの村に居るサチの好みのタイプとか聞いておく位なら許されるかな?)

何故かウィルは以前出会った娘サチの事が気になっていたが、今はアズシエルに全てを話させないといけない。

「何故、地下に娼館を建てたのですか?」

「この街に住む有力者達を呼び込み、脅す材料を集める為だ。娼婦として働かしている女達から客に差し出させる飲み物の中に薬を混ぜて依存症にさせ中和剤と引き換えに金や利権を要求していた。中和剤も徐々に濃度を薄くしてより多い本数を買わせる様に仕向けた」

「今も地下に客が居るのか?」

「客は3人だけだが、いざという時の為に抱き込んでおいた憲兵隊の副長が薬漬けにまだしていない女達を犯して楽しんでいる最中だ」

こいつは憲兵隊の副長まで悪事に誘いこんでいたのか!?だが、この副長も誘惑に負けた以上許すべきでは無い。

「ジェイク、アズシエルの証言は証拠になる?」

「ああ!更に地下に居るという客と副長、娼婦にされている被害者達を見つければ誰も文句の言いようは無い」

「じゃあ、門を壊して突入しても大丈夫だよね?」

「もちろんだ」

ジェイクは周囲を取り囲む冒険者達に大声で指示を出す。

「アズシエルが己の罪状を告白したぞ!これより、アズシエルの屋敷の捜索を開始する。地下の娼館に繋がる入り口を見つけ出し中に居る被害者の女性達の保護はもちろんだが客と憲兵隊の副長は捕縛して事情聴取だ」

「ジェイク、アズシエルは最終的にやっぱり死罪?」

「情状酌量の余地が無いからな、死んだ女性の顔を焼いて捨てる行いを告白した時点で死罪確定だ」

「じゃあ、処刑が行われるまで逃げ出せない死の恐怖を味わい続けて貰う事にするよ」

ジェイクの返事を待たずに斬光で門を切って道を開くと、そのままアズシエルに近付き両手両足の腱を切った。これで縄を解く事も逃げ出す事も出来ずに死の瞬間が訪れるまで恐怖に震え続けるだろう。

その後冒険者達が屋敷内をくまなく探した結果地下の娼館から20人近い被害者の女性を保護し、3人の男性客と憲兵隊の職にありながら悪事に協力していた副長を捕らえる事に成功した。保護した女性達を薬漬けの状態から解放した後、心の傷をどうやって忘れさせるかがウィルにとって次に頭を悩ませる問題となった。
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