スキルメーカー ~運命を変えた非常識なスキル~

いけお

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第9話 許す事の出来ない奴

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リンザの村を目指し歩き始めて2日目に入った、途中森の中で道に迷いそうになったが【地域安全安心MAP】のお陰ですぐに正しい道を見付ける事が出来た。最近人があまり通らないらしく、小さな雑木が生えて道を隠していたのだ。

「何でリンザへ行く人が少なくなっているんだろう?」

ウィルは不思議に思った、カサッポの町でもリンザで収穫される米の評判は上々でリンザの米を使う食堂は周りの店よりも1割程値段が高いにも関わらずいつも満席に近い混み具合だった。それなのにシェルナーグからリンザへの道がこの有様なのだ、きっとリンザに行きたくても行けない理由が有るのだろう。そう考えながら長い森の道を抜けると小高い丘の上に出た、眼下には見渡す限りの稲田が続いており稲田の先に集落が見えた。MAPで確認するとリンザの村で間違い無かった。

「あれがリンザの村か!?」

ウィルは早足で向かおうとしたその時、MAPからウィルにだけ聞こえる小さな音でアラームが鳴り出した。

『左後方から盗賊と思われる5人が接近中、森の中から様子を伺い襲う事を決めた模様です』

MAPを確認すると、背後の森の間を縫う様に赤い点が5つ近付いてくるのが見えた。おそらく森の中で俺を見付けて様子を見ていたが1人だけの様だから今日の獲物に決めたのだろう。本来は5km先から反応する筈なのにここまで近付けているのは俺を襲う決心をするまでは敵性反応と認識されなかったのだろう。

ガサガサガサ・・・。茂みの中から5人の男が姿を現した、やはり盗賊の様だ。

「少しばかり運が悪かったなあんた、有り金と水と食料全て置いていって貰うぜ」

「置いていけば見逃してくれるの?」

見逃すつもりが無いのはこちらの方だが、一応確認で聞いておく。相手がこちらに殺意を抱いてないのに人を殺したりするとお尋ね者になる上に冒険者の正式登録まで抹消される場合も有るからだ。冒険者が人を殺して許されるのは正当防衛と認められた場合と、国同士の戦争で兵士の1人として出た場合に限られる。

「ああ、見逃がしてやるよ。ただし逃げる先はあの世になっちまうがな!」

男の声を合図に盗賊達は一斉に剣を抜いてきた、正当防衛はこれで成立するだろう。ウィルも斬光を静かに鞘から抜いた。

「その剣、良い代物だな。アジトに捕らえてある女共と合わせてアズシエル殿が高く買ってくれるに違いない!?」

(アズシエル?この盗賊達が奪った物を買っている奴が居るのか、しかも攫われた女性達まで買うとは何て下衆野郎なんだ!?)

ウィルは衝動的に5人を殺したくなったが、今全員殺してしまってはアジトに捕らえられている女性を救う事が出来ない。道案内役を1人だけ生かしておく必要が有った。

「聞きたい事が幾つか有るから、とりあえず1人だけ残して後は皆正当防衛って事で殺させて貰うね。今までに犯してきた罪は死んで償って」

ウィルはさっきから不機嫌にさせる言葉を吐いていた男に近寄ると受け止めようとした剣ごと男を唐竹割りにした、目の前で真っ二つになる男を見て残りの4人は一斉に散らばって逃げようとするがウィルはまず最後に逃げ出した男に詰め寄ると胴薙ぎで斬り捨てる。残る3人を交互に見て簡単に全部話してくれそうな奴を見定めるとその他の2人を袈裟斬りと刺突で始末する。最後に残された1人がウィルに命乞いを始める。

「た、助けて。命ばかりはお許しを」

「なら、お前らのアジトに連れて行け。そして捕らえている女性達を解放するんだ」

「わ、分かりました!こ、こちらになります」

男はヘコヘコと頭を下げながらアジトまで案内してくれた、そして奥まで進むと3人の女性が鎖に繋がれていた。

「大丈夫か、助けに来たぞ!」

声を掛けるが女性達の目は虚ろで返事も無い。

「おい!彼女達に何かしたのか!?」

「抵抗するもんだから、ちょいと薬を嗅がせて大人しくさせているだけですよ。3人にはまだ手を出してません」

「本当だな?」

「本当ですよ!俺達が先に手を付けた女なんてアズシエル殿は絶対に買ってくれませんから」

「さっきからお前らが言っているアズシエルって奴は一体何者だ?」

「シェルナーグの街の北に構える屋敷の主です、下級貴族ではありますが騎士を2人雇っています。その騎士が代理人としてこのアジトまで奪った品や女達を受け取りに来るんです」

「次に来るのは何時だ!?」

「・・・10日後の深夜」

(10日もあれば、女性達を村まで送り届けた後にシェルナーグまで戻る事も十分に出来るな)

「こ、これで見逃してもらえるのですよね!?」

「約束通り、見逃してあげるよ。ただし行き先は仲間達が先に待っている地獄だけどね」

男の返答を待たずに首を刎ねた、そして鎖を壊し捕らえられていた女性を全て解放すると一旦アジトの外まで連れ出した。彼女達に男の死体を見せる訳にいかなかったからだ。

「完治の光!」

スキルを使って彼女達を正気に戻す、意識が回復した3人は慌てて逃げ出そうとするが盗賊達を既に片付けた事と村まで送り届ける旨を伝えると村に帰れる喜びで3人とも泣き始めた。盗賊の仲間達が他に潜んでいたらマズいので、臨戦態勢のまま彼女達を連れて森を抜ける。幸い盗賊達は奴ら5人だけだった様でその後村に着くまでMAPのアラームが鳴る事は無かった。

日が暮れて村に明かりが点き始める頃、ようやくウィルと捕まっていた3人の女性はリンザの村に到着した。行方が分からなくなって心配していた女性達の両親は無事を喜び抱きしめあう。本当はこの村に米を買いに来た筈だが、先にどうしても済ませておかないとならない事が出来てしまった。

(急いでシェルナーグに戻り、ジェイクに今回の件を報告しなければ。10日後の晩にアズシエルに雇われた騎士が受け取りにくればそれが証拠になるだろう。もしも騎士に責任を擦り付けようとしても大丈夫な様に増えたスキル枠で何か考えておくとしよう)

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