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第56話 結婚式と別世界への旅立ち
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結婚式当日、各国の代表者達は祭壇で神父の代わりに正面に立っている白いローブを着た男が気になった。どこか飄々としている様だが自分達よりも遥かに威厳に満ちているその姿に言葉も出ない。
「あの方は、この世界の神だ。婿殿は非常識だから神父の代わりを神様本人にさせているのだ」
(神の代わりを神父がするのに、神父の代わりを神にさせるのは非常識過ぎます!?)
代表者達は危うく口に出そうになったが、神本人が喜ばしそうな顔をしているので文句を言うのは逆に非礼に思えた。
今回の式では中央の通路の左右で親族・知人席と来賓席を分けてある。左側は来賓席として各国の代表者が並び、右側の親族・知人席ではまず先頭にウィルの母親のミラ、次いでサチの家族が並び、その後ろにはリーンの母親ラーナとリーデガルド国王夫妻、その横にはレーメルの妹リスティーと闇の女王が座り、更に後列ではアリアの兄であるシャイカのエガリア帝王が座り、その後はカサッポの住人とジェイクとエシュリーさんが続く。そして孤児院の子供達も後ろの席で行儀良く座っていた。タツトとタツミは会場の隅で異常事態が起きた場合に備えて待機しているが、神様を神父の代わりに立たせている以上の異常事態が起きるとも思えないので2人で小声で歓談していた。
式自体はスムーズに和やかに進行した、中央をウィルが進みその両脇を新婦各2人は並んで歩く。すぐ左側をサチがフクを抱きしめながら、更に左にはアリアが立っている。右側はリーンとレーメルが並び、祭壇に着くと神様が神父の決まり文句を言いながらウィル達は誓いの言葉と口付けを交わしていく。このまま何事も無く終われば良かったのだが、きっとそうはならないだろうとウィルと接した事の有る誰もが考えていた。
そのまま新婚旅行に向かう事になっているウィル一行を見送る為に親族・知人と各国の代表者達は一足先にダンジョンから外に出た、そこで新郎新婦に浴びせるライスシャワーを手渡していたのは以前ウィルが米を分けてもらったリンザの村のアイーラとその両親だった。式には参列しなかったが、せめてライスシャワーだけでもウチで育てた米を使って欲しいと秘かにシェルナーグまで来ていたのだ。
あと今回の式に参列していないのは、もう2人居る。教会のニナ主教と総大主教のフィリアである。後継者としてお披露目したサチが懐妊して結婚する上に他の世界に行ってしまうので再びニナを総大主教とすべく、てんやわんやの日々を過ごしていた。教会はこれまでよりも明るい空気に包まれている、フィリアが何故主教以上の人間に婚姻や肉体関係が許されなかったのかを信者全員に打ち明けた上で自らも運命の相手を探していくつもりだと語った事で一気に恋愛話が加速した。これまで秘かに想いを寄せていた相手に告白やプロポーズしたりとサチがウィルと結ばれてからの教会は女性信者達が肉食系へと変わり身近に居る男性達が捕食される現象を生んだ。
出発の準備を終えたウィル達がダンジョンから出てくると皆が一斉にライスシャワーを浴びせた。リンザからわざわざ来てくれたアイーラ親子の姿を見たウィルは驚きながらも礼を述べる。アイーラの親父さんも結婚祝いの代わりにと特製の酒を用意して来てくれたのでウィルはそれを有難く受け取った。しかし、いざ新婚旅行へ出発という段になってようやく馬車が用意されていない事に参加者達は気が付いた。
「実は新婚旅行ってのは嘘でこのまま別世界に行くんです自分達」
ウィルの声で振り返るとウィル達一行は何時の間にか旅支度を整えてあり、その背後には別世界へと続く渦が作られていた。
「ウィル、いつかはこの世界に帰って来れるんだよね?」
ミラは大切な息子達との別れを惜しむ様に聞いてみる、しかしウィルの返した答えはこれまでの空気をぶち壊す。
「あ、言い忘れたんだけど神様が急に5日間だけ異世界に飛んで残る2日間はこちらの世界に帰れる様に手筈を整えてくれてあるから週末には帰って来るから安心して」
(どういう事それって?)
参加者達の視線が一斉に神様に向けられた、神様は自らの恥を隠し通せなくなった事を悟り全てを白状した。
「実は、他の世界の神々からウィルの受け入れを拒否されてしまいまして・・・。なので毎週月~金曜日はランダムで別の世界で過ごして週末だけ元の世界に帰る事となりました」
(何その週末は故郷でゆっくり過ごします的な異世界転移)
「それと・・・これはウィルにも内緒にしていたのだが、最初の転移先の世界で君の父上が暮らしているのだ」
「えっ、父ちゃんが!?」
「ウチの人が生きているのですか!?」
「ああ、実は勇者として召喚されて現地の魔王と男女の間柄となり罰が悪いので元の世界に戻るのを諦めていたのだ」
「なぁんですってぇ~!?」
ここで烈火の如く怒り出したのがミラだった。
周囲の人がドン引きする位の殺気を放っていたミラが急に猫なで声で神様にお願いを言い始めた。
「ねえ、神様~!つかぬ事をお聞きしますが、その渦には私も入る事が出来ますか?」
「あっ、ああっ!大丈夫、一緒に渦に入る事は可能だ」
「そうですか、良かった~♪・・・ウィル、最初の異世界だけはあたしも行くからね。文句は言わせないよ」
「うん・・・分かったよ母ちゃん」
姑同行の異世界新婚旅行・・・旅行先で舅が姑にボコボコにされる姿を見る事になりそうだ。急遽、姑のミラまで加わったウィル一行はウィルの父親の浮気先である異世界に向け呆然とする参列者達を残し出発したのだった。
「あの方は、この世界の神だ。婿殿は非常識だから神父の代わりを神様本人にさせているのだ」
(神の代わりを神父がするのに、神父の代わりを神にさせるのは非常識過ぎます!?)
代表者達は危うく口に出そうになったが、神本人が喜ばしそうな顔をしているので文句を言うのは逆に非礼に思えた。
今回の式では中央の通路の左右で親族・知人席と来賓席を分けてある。左側は来賓席として各国の代表者が並び、右側の親族・知人席ではまず先頭にウィルの母親のミラ、次いでサチの家族が並び、その後ろにはリーンの母親ラーナとリーデガルド国王夫妻、その横にはレーメルの妹リスティーと闇の女王が座り、更に後列ではアリアの兄であるシャイカのエガリア帝王が座り、その後はカサッポの住人とジェイクとエシュリーさんが続く。そして孤児院の子供達も後ろの席で行儀良く座っていた。タツトとタツミは会場の隅で異常事態が起きた場合に備えて待機しているが、神様を神父の代わりに立たせている以上の異常事態が起きるとも思えないので2人で小声で歓談していた。
式自体はスムーズに和やかに進行した、中央をウィルが進みその両脇を新婦各2人は並んで歩く。すぐ左側をサチがフクを抱きしめながら、更に左にはアリアが立っている。右側はリーンとレーメルが並び、祭壇に着くと神様が神父の決まり文句を言いながらウィル達は誓いの言葉と口付けを交わしていく。このまま何事も無く終われば良かったのだが、きっとそうはならないだろうとウィルと接した事の有る誰もが考えていた。
そのまま新婚旅行に向かう事になっているウィル一行を見送る為に親族・知人と各国の代表者達は一足先にダンジョンから外に出た、そこで新郎新婦に浴びせるライスシャワーを手渡していたのは以前ウィルが米を分けてもらったリンザの村のアイーラとその両親だった。式には参列しなかったが、せめてライスシャワーだけでもウチで育てた米を使って欲しいと秘かにシェルナーグまで来ていたのだ。
あと今回の式に参列していないのは、もう2人居る。教会のニナ主教と総大主教のフィリアである。後継者としてお披露目したサチが懐妊して結婚する上に他の世界に行ってしまうので再びニナを総大主教とすべく、てんやわんやの日々を過ごしていた。教会はこれまでよりも明るい空気に包まれている、フィリアが何故主教以上の人間に婚姻や肉体関係が許されなかったのかを信者全員に打ち明けた上で自らも運命の相手を探していくつもりだと語った事で一気に恋愛話が加速した。これまで秘かに想いを寄せていた相手に告白やプロポーズしたりとサチがウィルと結ばれてからの教会は女性信者達が肉食系へと変わり身近に居る男性達が捕食される現象を生んだ。
出発の準備を終えたウィル達がダンジョンから出てくると皆が一斉にライスシャワーを浴びせた。リンザからわざわざ来てくれたアイーラ親子の姿を見たウィルは驚きながらも礼を述べる。アイーラの親父さんも結婚祝いの代わりにと特製の酒を用意して来てくれたのでウィルはそれを有難く受け取った。しかし、いざ新婚旅行へ出発という段になってようやく馬車が用意されていない事に参加者達は気が付いた。
「実は新婚旅行ってのは嘘でこのまま別世界に行くんです自分達」
ウィルの声で振り返るとウィル達一行は何時の間にか旅支度を整えてあり、その背後には別世界へと続く渦が作られていた。
「ウィル、いつかはこの世界に帰って来れるんだよね?」
ミラは大切な息子達との別れを惜しむ様に聞いてみる、しかしウィルの返した答えはこれまでの空気をぶち壊す。
「あ、言い忘れたんだけど神様が急に5日間だけ異世界に飛んで残る2日間はこちらの世界に帰れる様に手筈を整えてくれてあるから週末には帰って来るから安心して」
(どういう事それって?)
参加者達の視線が一斉に神様に向けられた、神様は自らの恥を隠し通せなくなった事を悟り全てを白状した。
「実は、他の世界の神々からウィルの受け入れを拒否されてしまいまして・・・。なので毎週月~金曜日はランダムで別の世界で過ごして週末だけ元の世界に帰る事となりました」
(何その週末は故郷でゆっくり過ごします的な異世界転移)
「それと・・・これはウィルにも内緒にしていたのだが、最初の転移先の世界で君の父上が暮らしているのだ」
「えっ、父ちゃんが!?」
「ウチの人が生きているのですか!?」
「ああ、実は勇者として召喚されて現地の魔王と男女の間柄となり罰が悪いので元の世界に戻るのを諦めていたのだ」
「なぁんですってぇ~!?」
ここで烈火の如く怒り出したのがミラだった。
周囲の人がドン引きする位の殺気を放っていたミラが急に猫なで声で神様にお願いを言い始めた。
「ねえ、神様~!つかぬ事をお聞きしますが、その渦には私も入る事が出来ますか?」
「あっ、ああっ!大丈夫、一緒に渦に入る事は可能だ」
「そうですか、良かった~♪・・・ウィル、最初の異世界だけはあたしも行くからね。文句は言わせないよ」
「うん・・・分かったよ母ちゃん」
姑同行の異世界新婚旅行・・・旅行先で舅が姑にボコボコにされる姿を見る事になりそうだ。急遽、姑のミラまで加わったウィル一行はウィルの父親の浮気先である異世界に向け呆然とする参列者達を残し出発したのだった。
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