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第32話 先代勇者の来訪
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ヴェルドを殺してから、1週間ほど経とうとしていた。ヴェルドに人質として連れて来られたサーラの母親は、今度フローディアに利用されてもまずいので俺達の家でサーラと共に過ごしてもらっている。
デウスには邪神を祀る最後の神殿を破壊してもらい、続けてフローディアを匿っていると思われる先代の勇者を探してもらっているがデウスの網に一向に掛からない。死んでいる訳では無い様なのだが、誰かを人質にまた来るかもしれないから不気味だ。
「ただいま戻りました、人族の世界をほぼ回りましたがあちらの世界では反応を感じませんでした」
「デウス、それじゃなにか? その先代勇者はこちらの魔族領にに入っているというのか!?」
「そう考えていた方が良いかもしれませんね」
「デウス今日はもう休んで、明日からは魔族領内を改めて探索してくれ。俺達もそろそろ店を閉めて晩飯にするからさ」
『ごめんください、探索の必要は無いですよ』
「聞き耳立てるのは感心しないな、失礼ですがどちら様ですか?」
『先代勇者をしていた、ロベルトっていう者だ。よろしくな』
「何しに来た? 答え次第じゃ今すぐ殺すぞ」
『おいおい!? 丸腰の人間を殺せるのかよ!?』
「悪いが丸腰だろうと、俺には関係無い。 敵対する意思が有るならガキだろうと構わず殺す」
『それくらいじゃなければ、邪神ヴェルドを殺すなんて事は成し遂げられないか。 とりあえず、俺はお前達と敵対する意思は無い。 俺もフローディアから逃げてきた身だからな」
フローディアだと!? 俺はロベルトの首ねっこを掴むと締め上げた。
「今、フローディアと言ったな!? 吐け! あいつは今ドコに居る!?」
『ま、待て、落ち着け! 説明するから!?』
俺は掴んでいた手を離した、だがガングミールを取り出すとロベルトに向ける。
「まどろっこしい長話は嫌いだ、とっとと話せ。 出ないとこの槍でお前を殺す」
『俺があいつの元から逃げ出した時は、まだ俺の住んでいる家に居たが今はどうしているのか・・・』
「デウス、こいつの家にも行ったのか?」
「ええ、行きました。 ただ、濃い気配が無かったので数ヶ月は立ち寄っていないと思われます」
「おい、お前嘘を付いているだろ」
『そんな筈はない!? だってあいつが俺の所に来たのは丁度1週間前だぞ!』
「どうしてお前があいつの元を逃げ出したのかを含めて、もう少し説明しろ」
『ああ、あいつはな邪神ヴェルドが殺されて、残る討伐対象が自分だけになった時に慌てて俺の家に来てな。 事もあろうに大急ぎで子を作らないとならないから子種を寄越せと、俺の目の前で股を開こうとするんだぜ!? 流石にドン引きしたから、隙を見て逃げ出してきた訳だ』
「おい、フローディアの奴はなんで子を作ろうとするんだ?」
『あいつの考えではな、子を生んだらその子に魂の半分を与えておいて自分が殺されてもその子の魂を奪い元の生活に戻るつもりのようだ』
「あいつにとっては、自分の産む子すら自分が助かる為の道具でしかないのか!?」
『死がすぐ近くまで迫っているのを自覚したのならば、俺やお前だって同じ事をしていたかもしれないんだ。 俺が逃げた事で状態がもっと悪化しているかもしれないから注意が必要だ』
「悪化って何かしてくるのか?」
『あいつ、俺に逃げられてもはや形振り構っていられないとなると、街中に下りて誰でも構わずに種付けしてもらおうと股を開くかもしれないぞ』
「だが、どうせ1人か2人だろ? そんなに気にする必要は無いだろ」
『必要大アリだ、もしも生まれた子が男だったらどうする!? 色んな女に受胎させる形で更に魂を分割させておいて、タイミングを見て一斉に魂を奪えばフローディアは無数の人間の森の中に消えてしまうぞ』
「そこまでして助かりたいのか、あいつは!?」
『初めは俺も助けようと思ってた、だがな誇りもプライドも捨てて股を開こうとする神を見れば間違いだと嫌でも思い知らされる。 だから俺は家をそのままにして逃げてきたんだ。 俺だって今更死にたくも無い』
「1週間も経っているとなると、今頃お前の家の中は乱交会場になっているだろうなきっと」
『おそらくそうなっているだろう、乱交騒ぎの噂も街中にすぐ流れる筈だから、もはやあの街に帰る事も出来ない。 片が付いたら、この城の門番でも衛兵でもいいから雇ってくれないか? 魔族領で出来れば過ごしていきたい』
「それは何とかしよう、だが片が付くまではお前に見張りを1人付けさせてもらうぞ」
『いいぜ、誰が付くんだ?』
「おい、誰かセレスを呼んできてくれないか!?」
『セレス? どこかで聞いた名だな』
「ミツクニ様、わたしに何か用? ・・・ってあなた、何でここに!?」
『お前は魔王!? 生きていたのか!?』
「はいはい、ストップストップ! こちらの魔王セレスさんは死んだ後にデウスによって再生させられてダンジョンでポップするモンスターの一部にされていたんだ」
『なんだと!?』
「そして、偶然だが複数の魔王と合体する事で力を上げて今はお前よりも強くなってる筈」
『その様だ、今戦えば今度はこっちが殺されるな。 じゃあ片が付くまでの間、こいつに謝っておかないとならない事が有ったりするからどこか空いている場所で話をする事にするよ』
「なんの話をするつもりだ?」
『あの時は何も知らずに子供と離れ離れにさせてすまなかった・・・とかだな』
「!?」
『魔王を倒した後に知ったんだ、子供が居た事や俺が城に入るタイミングで逃がしていた事もな。 だから、いつかどこかで会えるかもしれない。 その時は謝ろうと思って、この世界に残っていたんだ。 ようやくその機会が訪れた様だ、 済まないが彼女を借りるよ』
「今すぐ話をするのか!?」
『ああ、話は早い方がいい。 あと、面倒ついでに酒を少し貰えないか? お互いの間で殺したり殺されたりした仲間達を弔う酒を2人で捧げようと思う』
俺は地下に置いてあった、1番上等な酒をくれてやった。 2人で酒を捧げる機会なんて、これが最初で最後かもしれない。 無粋な事はしない。 ロベルトとセレスはその日の晩、お互い語り合いながら共に謝罪して、失った仲間や友の冥福を祈り酒を酌み交わしていた。
デウスには邪神を祀る最後の神殿を破壊してもらい、続けてフローディアを匿っていると思われる先代の勇者を探してもらっているがデウスの網に一向に掛からない。死んでいる訳では無い様なのだが、誰かを人質にまた来るかもしれないから不気味だ。
「ただいま戻りました、人族の世界をほぼ回りましたがあちらの世界では反応を感じませんでした」
「デウス、それじゃなにか? その先代勇者はこちらの魔族領にに入っているというのか!?」
「そう考えていた方が良いかもしれませんね」
「デウス今日はもう休んで、明日からは魔族領内を改めて探索してくれ。俺達もそろそろ店を閉めて晩飯にするからさ」
『ごめんください、探索の必要は無いですよ』
「聞き耳立てるのは感心しないな、失礼ですがどちら様ですか?」
『先代勇者をしていた、ロベルトっていう者だ。よろしくな』
「何しに来た? 答え次第じゃ今すぐ殺すぞ」
『おいおい!? 丸腰の人間を殺せるのかよ!?』
「悪いが丸腰だろうと、俺には関係無い。 敵対する意思が有るならガキだろうと構わず殺す」
『それくらいじゃなければ、邪神ヴェルドを殺すなんて事は成し遂げられないか。 とりあえず、俺はお前達と敵対する意思は無い。 俺もフローディアから逃げてきた身だからな」
フローディアだと!? 俺はロベルトの首ねっこを掴むと締め上げた。
「今、フローディアと言ったな!? 吐け! あいつは今ドコに居る!?」
『ま、待て、落ち着け! 説明するから!?』
俺は掴んでいた手を離した、だがガングミールを取り出すとロベルトに向ける。
「まどろっこしい長話は嫌いだ、とっとと話せ。 出ないとこの槍でお前を殺す」
『俺があいつの元から逃げ出した時は、まだ俺の住んでいる家に居たが今はどうしているのか・・・』
「デウス、こいつの家にも行ったのか?」
「ええ、行きました。 ただ、濃い気配が無かったので数ヶ月は立ち寄っていないと思われます」
「おい、お前嘘を付いているだろ」
『そんな筈はない!? だってあいつが俺の所に来たのは丁度1週間前だぞ!』
「どうしてお前があいつの元を逃げ出したのかを含めて、もう少し説明しろ」
『ああ、あいつはな邪神ヴェルドが殺されて、残る討伐対象が自分だけになった時に慌てて俺の家に来てな。 事もあろうに大急ぎで子を作らないとならないから子種を寄越せと、俺の目の前で股を開こうとするんだぜ!? 流石にドン引きしたから、隙を見て逃げ出してきた訳だ』
「おい、フローディアの奴はなんで子を作ろうとするんだ?」
『あいつの考えではな、子を生んだらその子に魂の半分を与えておいて自分が殺されてもその子の魂を奪い元の生活に戻るつもりのようだ』
「あいつにとっては、自分の産む子すら自分が助かる為の道具でしかないのか!?」
『死がすぐ近くまで迫っているのを自覚したのならば、俺やお前だって同じ事をしていたかもしれないんだ。 俺が逃げた事で状態がもっと悪化しているかもしれないから注意が必要だ』
「悪化って何かしてくるのか?」
『あいつ、俺に逃げられてもはや形振り構っていられないとなると、街中に下りて誰でも構わずに種付けしてもらおうと股を開くかもしれないぞ』
「だが、どうせ1人か2人だろ? そんなに気にする必要は無いだろ」
『必要大アリだ、もしも生まれた子が男だったらどうする!? 色んな女に受胎させる形で更に魂を分割させておいて、タイミングを見て一斉に魂を奪えばフローディアは無数の人間の森の中に消えてしまうぞ』
「そこまでして助かりたいのか、あいつは!?」
『初めは俺も助けようと思ってた、だがな誇りもプライドも捨てて股を開こうとする神を見れば間違いだと嫌でも思い知らされる。 だから俺は家をそのままにして逃げてきたんだ。 俺だって今更死にたくも無い』
「1週間も経っているとなると、今頃お前の家の中は乱交会場になっているだろうなきっと」
『おそらくそうなっているだろう、乱交騒ぎの噂も街中にすぐ流れる筈だから、もはやあの街に帰る事も出来ない。 片が付いたら、この城の門番でも衛兵でもいいから雇ってくれないか? 魔族領で出来れば過ごしていきたい』
「それは何とかしよう、だが片が付くまではお前に見張りを1人付けさせてもらうぞ」
『いいぜ、誰が付くんだ?』
「おい、誰かセレスを呼んできてくれないか!?」
『セレス? どこかで聞いた名だな』
「ミツクニ様、わたしに何か用? ・・・ってあなた、何でここに!?」
『お前は魔王!? 生きていたのか!?』
「はいはい、ストップストップ! こちらの魔王セレスさんは死んだ後にデウスによって再生させられてダンジョンでポップするモンスターの一部にされていたんだ」
『なんだと!?』
「そして、偶然だが複数の魔王と合体する事で力を上げて今はお前よりも強くなってる筈」
『その様だ、今戦えば今度はこっちが殺されるな。 じゃあ片が付くまでの間、こいつに謝っておかないとならない事が有ったりするからどこか空いている場所で話をする事にするよ』
「なんの話をするつもりだ?」
『あの時は何も知らずに子供と離れ離れにさせてすまなかった・・・とかだな』
「!?」
『魔王を倒した後に知ったんだ、子供が居た事や俺が城に入るタイミングで逃がしていた事もな。 だから、いつかどこかで会えるかもしれない。 その時は謝ろうと思って、この世界に残っていたんだ。 ようやくその機会が訪れた様だ、 済まないが彼女を借りるよ』
「今すぐ話をするのか!?」
『ああ、話は早い方がいい。 あと、面倒ついでに酒を少し貰えないか? お互いの間で殺したり殺されたりした仲間達を弔う酒を2人で捧げようと思う』
俺は地下に置いてあった、1番上等な酒をくれてやった。 2人で酒を捧げる機会なんて、これが最初で最後かもしれない。 無粋な事はしない。 ロベルトとセレスはその日の晩、お互い語り合いながら共に謝罪して、失った仲間や友の冥福を祈り酒を酌み交わしていた。
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