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城主1年目
9月その2 交渉
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教皇との謁見はフミオの予想よりも早く実現した、大主教数人も同席する形では有るが1人で考え込まれるよりは結論はすぐに出るだろう。
「それで?本日は私達にどの様なご用件なのですかな?」
試作品を見せているのだから用件は既に分かっている筈なのに、形式に沿った会話をしないとならないのは中々面倒臭い。
「用件は先程渡した試作品で承知していると思っていたのですが、ご理解頂けないのでしたら回収して邪教扱いしている宗教の教祖にでも話を持って行きますよ?」
これについては嘘だ、より高く売るのが目的なので俺の気分を害すると後悔する事になると暗に示したに過ぎない。
「こちらが悪かった許して欲しい、それでそちらが開発したという万能ポーションなる品物を我々に見せてどうするつもりなのだ?」
「ええ、これをそちらに買い取って頂こうと思いまして」
「買い取る?何故、我々が買い取らねばならないのだ?」
「ああ、これは失礼。それは俺達が町で売り出す予定のポーションです、教会で買い取って頂きたいのはこちらになります」
フミオはガラス職人の手で装飾されたガラス瓶を1つ目の前に置いた、するとその瓶の中身に気が付いた教皇が驚愕する。
「な、何だその魔法薬は!強回復だけでなく様々な状態異常の解除効果まで併せ持つだと!?それで・・・これを我らに幾らで売ろうと言うのだ?」
「それは俺の話の続きを聞いてから決めて下さい」
「話の続き?」
「ええ、俺達は最初に見せた軽回復と毒消しの効果を持つポーションを安価で販売する予定です。しかし、今お見せした物に関しては安売りすべきでは有りません。更に付加価値を加えて売り出すのが最良です」
「付加価値とは一体何だ!?」
じれてきた大主教の1人が声を荒げる、その大主教を睨み付けながらフミオはその付加価値の正体を明かした。
「教皇の祈りを込めた奇跡の水として売るのです」
「奇跡の水だと!?」
「はい、まず俺達があの安価のポーションを先に売り出します。そして存在が知れ渡った所で教皇が姿を現して祈りを捧げると回復と状態異常の解除効果まで強化された物へと変化していた。教皇の祈りが奇跡を起こしたと錯覚した信者のみならず裕福な者達がこぞって手に入れようとするでしょう」
「それでは詐欺ではないか!?」
「ではこの話は無かった事にしますか?」
教皇達は一斉に考え込み始める、詐欺に近いかもしれないがこのポーションの効果は破格だ。多少高くても持っておいて損は無い、教皇の評判もついでに上げられる。
「それでこのポーションをどれ位持ち込めるのだ?」
「毎月100本を20年間教会に収めるってのはどうでしょう?」
「それだけの量をどうやって作り出せるのだ!?」
「そこは企業秘密って事で」
「良かろう、全て我々が買い取ろうではないか。それで幾らで売り出してその内のどれだけの金額を渡せば良いのだ?」
「金額はそちらで決めて頂いて構いません、あと得たお金は全て教会の物にして下さい。本当のお代は王国から回収しますので」
フミオの言葉の意味を大主教達は分からなかったみたいだが、教皇だけはすぐに気付いた様だ。
「少しの間、この者と2人きりで話をしたい。お前達は私が呼ぶまで部屋から退出していなさい」
大主教が部屋を出て行くと、教皇の顔があからさまに変わった。
「それでお主は教会を買収して何を王国から手に入れるつもりなのだ?これだけの品を贈ってくれた以上は私も協力を惜しむつもりは無い、遠慮せずに申してみよ」
「俺は新しい城と城下町を手に入れたいのです」
「ほう、城と城下町とな?」
「俺は王国から魔族と呼ばれ死ぬまで城造りに酷使される者達を王国と戦わない方法で救おうと考えております。その方法が爵位を高め、新しい城と城下町ごと城造りに携わる魔族を領民として受け入れるやり方です。教皇には国王から新しい爵位と領地を頂ける様にお力添えをして貰いたいのです」
「確かに王国に歯向かおうとした者達を魔族と蔑み、奴隷以下の扱いをしている事には私も疑問を抱いていた。それがお主の望みであれば喜んで力を貸そう、では約束を違えない証として万能ポーション100本と芝居用の2本を来週までに持ってくる様に。確認出来次第、私から国王にこの功績を伝えお主に褒美が届く手筈を整えよう」
フミオは教皇と握手を交わして、この日は王都からサイハテの町に帰還する。そして1週間後、約束通りの本数を届けると教皇は早速国王と面会する為に出向いていった。2日後、教皇から呼ばれたフミオは国王から預けられた褒美を手渡された。
(男爵級の新たな城と金貨1000枚だったら御の字だろう)
当初フミオはリンの父である魔王を討伐した時と同じ位の褒賞だろうと考えていた、しかし教皇はフミオが思っていた以上のやり手だったらしい。
【この度の功績によりフミオ・ウンナシ男爵の爵位を1つ上げ子爵とする、また領土としてトオスギルの地と子爵級の空き城1つに城造りに携わっていた魔族達を領民として引き渡す。更に支度金として金貨3000枚も与える】
「・・・・これ、本当に貰って良いのですか?」
「構わぬ、それにお主とは今後とも良い付き合いをしてゆきたいからな。何か面白い物が出来たら相談にも乗ろうではないか」
教皇は面会で国王とどんな話をしたのか教えてはくれなかった、だが予想以上の成果となったのでフミオはリンやシィル達に急いで報告する為にサイハテへと戻るのだった。
「それで?本日は私達にどの様なご用件なのですかな?」
試作品を見せているのだから用件は既に分かっている筈なのに、形式に沿った会話をしないとならないのは中々面倒臭い。
「用件は先程渡した試作品で承知していると思っていたのですが、ご理解頂けないのでしたら回収して邪教扱いしている宗教の教祖にでも話を持って行きますよ?」
これについては嘘だ、より高く売るのが目的なので俺の気分を害すると後悔する事になると暗に示したに過ぎない。
「こちらが悪かった許して欲しい、それでそちらが開発したという万能ポーションなる品物を我々に見せてどうするつもりなのだ?」
「ええ、これをそちらに買い取って頂こうと思いまして」
「買い取る?何故、我々が買い取らねばならないのだ?」
「ああ、これは失礼。それは俺達が町で売り出す予定のポーションです、教会で買い取って頂きたいのはこちらになります」
フミオはガラス職人の手で装飾されたガラス瓶を1つ目の前に置いた、するとその瓶の中身に気が付いた教皇が驚愕する。
「な、何だその魔法薬は!強回復だけでなく様々な状態異常の解除効果まで併せ持つだと!?それで・・・これを我らに幾らで売ろうと言うのだ?」
「それは俺の話の続きを聞いてから決めて下さい」
「話の続き?」
「ええ、俺達は最初に見せた軽回復と毒消しの効果を持つポーションを安価で販売する予定です。しかし、今お見せした物に関しては安売りすべきでは有りません。更に付加価値を加えて売り出すのが最良です」
「付加価値とは一体何だ!?」
じれてきた大主教の1人が声を荒げる、その大主教を睨み付けながらフミオはその付加価値の正体を明かした。
「教皇の祈りを込めた奇跡の水として売るのです」
「奇跡の水だと!?」
「はい、まず俺達があの安価のポーションを先に売り出します。そして存在が知れ渡った所で教皇が姿を現して祈りを捧げると回復と状態異常の解除効果まで強化された物へと変化していた。教皇の祈りが奇跡を起こしたと錯覚した信者のみならず裕福な者達がこぞって手に入れようとするでしょう」
「それでは詐欺ではないか!?」
「ではこの話は無かった事にしますか?」
教皇達は一斉に考え込み始める、詐欺に近いかもしれないがこのポーションの効果は破格だ。多少高くても持っておいて損は無い、教皇の評判もついでに上げられる。
「それでこのポーションをどれ位持ち込めるのだ?」
「毎月100本を20年間教会に収めるってのはどうでしょう?」
「それだけの量をどうやって作り出せるのだ!?」
「そこは企業秘密って事で」
「良かろう、全て我々が買い取ろうではないか。それで幾らで売り出してその内のどれだけの金額を渡せば良いのだ?」
「金額はそちらで決めて頂いて構いません、あと得たお金は全て教会の物にして下さい。本当のお代は王国から回収しますので」
フミオの言葉の意味を大主教達は分からなかったみたいだが、教皇だけはすぐに気付いた様だ。
「少しの間、この者と2人きりで話をしたい。お前達は私が呼ぶまで部屋から退出していなさい」
大主教が部屋を出て行くと、教皇の顔があからさまに変わった。
「それでお主は教会を買収して何を王国から手に入れるつもりなのだ?これだけの品を贈ってくれた以上は私も協力を惜しむつもりは無い、遠慮せずに申してみよ」
「俺は新しい城と城下町を手に入れたいのです」
「ほう、城と城下町とな?」
「俺は王国から魔族と呼ばれ死ぬまで城造りに酷使される者達を王国と戦わない方法で救おうと考えております。その方法が爵位を高め、新しい城と城下町ごと城造りに携わる魔族を領民として受け入れるやり方です。教皇には国王から新しい爵位と領地を頂ける様にお力添えをして貰いたいのです」
「確かに王国に歯向かおうとした者達を魔族と蔑み、奴隷以下の扱いをしている事には私も疑問を抱いていた。それがお主の望みであれば喜んで力を貸そう、では約束を違えない証として万能ポーション100本と芝居用の2本を来週までに持ってくる様に。確認出来次第、私から国王にこの功績を伝えお主に褒美が届く手筈を整えよう」
フミオは教皇と握手を交わして、この日は王都からサイハテの町に帰還する。そして1週間後、約束通りの本数を届けると教皇は早速国王と面会する為に出向いていった。2日後、教皇から呼ばれたフミオは国王から預けられた褒美を手渡された。
(男爵級の新たな城と金貨1000枚だったら御の字だろう)
当初フミオはリンの父である魔王を討伐した時と同じ位の褒賞だろうと考えていた、しかし教皇はフミオが思っていた以上のやり手だったらしい。
【この度の功績によりフミオ・ウンナシ男爵の爵位を1つ上げ子爵とする、また領土としてトオスギルの地と子爵級の空き城1つに城造りに携わっていた魔族達を領民として引き渡す。更に支度金として金貨3000枚も与える】
「・・・・これ、本当に貰って良いのですか?」
「構わぬ、それにお主とは今後とも良い付き合いをしてゆきたいからな。何か面白い物が出来たら相談にも乗ろうではないか」
教皇は面会で国王とどんな話をしたのか教えてはくれなかった、だが予想以上の成果となったのでフミオはリンやシィル達に急いで報告する為にサイハテへと戻るのだった。
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