異世界で運無し男が手に入れた小さな城と城下町

いけお

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城主1年目

9月その1 魔法石と万能ポーション

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「っで、俺が試行錯誤しながら作った魔法石がこれらだ」

フミオはリン・シィリス・ルドガー・長老の4人の前に幾つかの石を並べた。



1、種火石 魔力を注ぐ事で小さな火を起こす事が出来、種火の代わりとなる。

2、灯り石 魔力を注ぐ事でわずかな距離ではあるが周囲を照らす光を放つ。

3、温熱石 魔力を注ぐ事で38度前後まで石が加熱され4時間近く温度が維持される。

4、吸熱石 魔力を注ぐ事で周囲の熱を吸収して半径30cmの範囲を10度前後まで温度を下げる。



「種火石や灯り石は分かるが、温熱石や吸熱石は使い道が本当に有るのか?」

ルドガーが後半の2つの石の効果に疑問を抱く、だがこれは凄く画期的な事なのだ。

「ふっ甘いなルドガー、温熱石を水桶に入れればお湯になるんだぞ。これさえ有れば、誰でも簡単に温かい風呂に入れる様になるかもしれないのだ」

「何~!?」

「吸熱石は野菜などをこの石の周りに置いておけば、多少保存出来る期間を延ばす事が出来る。夏場など食べ物が腐り易い時期に保存期間が延びるのは大きいと思わないか?」

「これは素晴らしい発明ですぞ王よ、傷みやすい食材の保存が可能となれば流通にも良い影響を齎すでしょう」

長老は吸熱石に強い関心を示した、家庭内での食料の保存だけでなく他の城下町へより新鮮な状態で運ぶ事が可能となるのだ。

「種火石は空いている時間を使って量産しておくから、領内の各家庭に1つずつ無償で配布するつもりだ。灯り石はまず衛兵に支給して、夜の見回りで使ってもらおうと思う。吸熱石は城内のメイド達に食料の保存で利用してもらい感想を聞く、温熱石は城内で排水設備のテストも兼ねて風呂を造ろうと思う」

「フミオ、何時頃お風呂に入れる様になるのですか?」

「おい、シィリス!フミオ殿を呼び捨てにするのは失礼だろ!?」

シィリスがお風呂に興味が有るのか聞いてきた、だが急に呼び捨てに変わっていた事に気付いたルドガーが注意する。

「いや、良いんだルドガー。今日ルドガーと長老を呼んだのは他でも無い、リンとの結婚式を終えてから時期を見て公表するがシィリスを俺の愛妾として迎えようと思う」

「神に仕える神官を妾にすると言うのですか!?」

「王には1人でも多くの子を早く作って頂かねばならぬ、それに神の恩恵を受けた王の子を産むのだ教えに背いたとは言えまいて」

ルドガーは驚いていたが、長老は動じずそれどころか賛成していた。

「常日頃から疑問を抱いておりました、神職に就く者が婚姻を結べなかったり子を作る事を禁忌と定められている事に。生命の輪廻は男女が結ばれ子孫を残さねば途絶えてしまいます、これまで誰も行おうとされなかった事を成し遂げようとする王に感服致します」

「ふむ、よくよく聞いてみると長老の言われる通りだな。フミオ殿には希実族の未来の為に領主を引き継ぐ子が必要だが、リン殿1人にその役目を押し付けるのは些か酷だ。シィリス、短絡的に注意しようとした俺を許してくれ」

「そこまで深く考えての事では無いのですから、重く受け止めないで下さいルドガーに長老様。実はフミオとリンさんの愛し合う様子を聞き耳立てていたのがバレてしまったのが原因ですから」

「「・・・・・」」

ルドガーと長老は黙り込んでしまった。

「シィリス」

「はい?」

「神官ともあろう者が出歯亀をするとは何事か、恥を知れ!!」

「は、はいっ!?」

その後、シィリスは呆れた長老も加わって2人から小一時間説教を受ける羽目になった。加えて愛妾という呼び方は対外的に良くないという事で、中国式の貴妃の呼び名を使う事も決まる。

この頃からフミオはシィリスの事をシィルと呼び始めた、少しずつ親密さを増していったと思わせる一面も有るがリンと同様にシィリスもシィルと呼んで欲しいと言ってきたのもある。



そして今日は石以外の物にも付与魔法の効果を発揮するのが有るのか調べ始めたのだがいきなり最初に大当たりを引き当てた、それは何と唯の水だ。水に回復系の魔法を付与出来る事が分かると更に試行錯誤をして呪いと石化を除くある程度の状態異常を解除しながら回復効果まで有る万能ポーションを作ってしまった。

「流石に言葉も出ませんね、これほどの効果を持つ聖水を作ろうとすれば様々な薬草を大量に用意しなければなりません。値段はとても付けられません」

「一応、レシピを作っておいたから回復魔法を使える人と付与魔法を覚える人さえ居れば安価に大量生産出来る筈だ」

「これを大々的に売り出せば新しい城もすぐに買えそうね、フミオ」

「元は唯の水だから原価は容器の代金だけだしね、けれど王国がこの万能ポーションの販売を黙って見ているとは思えないから何時呼び出されても良いだけの準備をしておこう」

容器を作るガラス職人達との交渉を無事に終えたフミオは万能ポーションの生産を開始した。そして最初の売り込み先は何と王都、シィルが所属していた聖教会の教皇だった。

「それじゃあ、行ってくるよ」

フミオは共に誰も伴わず、1人でサイハテを出立した。そして教皇との取り引きを成功させ戻ってきたフミオの口から手に入れた代金の内容を聞いたリンとシィルが泡を吹いて失神する事となる。
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