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第7話 魔王ウォールと勇者オーネストはお互いの立場を交代したい

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ガラガラガラ
大将「へい、らっしゃい!」女将「いらっしゃいませ」

ザンニクス「こんばんわ~! エリスはまだ来てない様だね。 じゃあ、とりあえずビールお願い!」

大将「へい、まいど! 2人の式の日取りはもうそろそろ決まりそうかい?」

ザンニクス「そうそう、式の日取りなんだけどウルスラさん達を真似してエリスの誕生日の日に式を挙げる事にしたよ」

大将「ビールお待ち! じゃあ、まだ式まで結構日にち有りますね。 ゆっくり準備出来そうで良かったじゃないですか」

ザンニクス「ところが、案外そうでも無かった。 エリスの国の王やお偉方達はどうせ国民にバレているなら思い切り派手にやってしまえって開き直っちゃって、都の大通りを閉鎖してリハーサルや演出の試行錯誤に余念が無い(笑) もう何度あちらに呼ばれて白のタキシード着て式場までのパレードのコース歩いた事か・・・・」

大将「それは目立ってますね~エリスさんももしかして・・・?」

ザンニクス「もちろん彼女もウェディングドレスで何度も歩いてる、結婚式前にバージンロードを何十回も歩く花嫁は見物かもしれないな」

ガラガラガラ
大将「へい、らっしゃい!」女将「いらっしゃいませ」

エリス「大将、女将さんこんばんわ。 ザンニクス、もう着てたのね。 大将! また奥の座敷借りるわね。 ザンニクス、ねえ聞いて! 大通りを歩く際にドレスが擦れて教会に到着する頃に傷付いていると困るから、当日は大通りの中央に白のカーペットを敷いてそこを通って教会まで歩く事になったからね」

ザンニクス「どんどん派手になるけど、既に自分達の予算じゃとても無理だからって王様達に伝えて反応はどうだった?」

エリス「国の内外から来賓を呼んだり、後世にまで残る歴史的な出来事だから既に今年度の国家予算に追加予算として組み込んだって・・・。 それでも沿道沿いに出店を出そうとする人達から出店料を、更に売り上げをかなり上げた所からは税も徴収するみたいだからそこら辺は抜け目が無さそうよ」

ザンニクス「出店料だけで、追加の予算以上の国の収入になりそうだね。 派手にすればする程、人も集まりそれだけ出店を出そうって人も増えるから」

エリス「あたし達の結婚をちゃっかり国の財源確保に利用しちゃうんだから、商人の気質有るわよ王様達。 あら、いけない! 店の入り口で長話をしていたら大将に迷惑掛けちゃうわ。 早く奥に行きましょう!」

言うが早いかエリスはザンニクスの腕を引っ張り足早に奥の座敷に消えていった。

大将「ザンニクスさん、早くもエリスさんの尻に敷かれ始めちゃったかな?」

女将「まあ、いいじゃないですか。 それよりも、かなり大掛かりな結婚式になりそうですね。 アイオンさんが大喜びで飛び入り参加しそうになる位の」

大将「あいつは無駄に大きい騒ぎに首を突っ込みたいだけだ(笑)」

ガラガラガラ
大将「へい、らっしゃい!」女将「いらっしゃいませ」

魔王ウォール(以降ウォール)「こんばんわ、オーネストの奴はもう着てる?」

大将「奥のテーブル席の方におりますぜ、ほらあそこ」

勇者オーネスト(以降オーネスト)「ウォール、こっちこっち!」

ウォール「ああ、今行くよ! 大将、ワインとビールにあと枝豆もお願い!」

大将「へい、まいど! 先に1人ビール頼まれてたの忘れてたからそれを届けてから持っていきますね」

ウォール「大将が注文を忘れるって珍しいな。 分かった、急がなくても大丈夫だからね」

大将「へい!」

ウォール「オーネストすまなかったね、待たせた様で」

オーネスト「いや、いいって。 それにしても2人でここで飲む様になって大分経つよな・・・」

ウォール「ああ、1度手合わせした後数日してここでばったり出くわすんだから奇妙な縁だよな、たしかに」

大将「お待たせしやした! ワインとビール、あと枝豆になります」

ウォール「ははは、急がなくたって良いって言ったのに。 それにしても大将が注文忘れるって何かトラブルでも有ったのかい!?」

大将「いえ、トラブルじゃないんですがね。 今、奥の座敷で2つの世界と勇者と魔王が結婚式の打ち合わせをしているんですが・・・」

オーネスト「別々の世界の勇者と魔王が結婚!? それ、初めてのケースじゃないのかい?」

大将「いえ、2組目です。 1組目がその逆の組み合わせで、1組目の結婚式の2次会の余興を頼まれてウチに来たのが縁で結婚する運びとなったんです」

オーネスト「二重で目出度い話だが、それで何故注文を忘れる話に?」

大将「それが花嫁の勇者の国で式を挙げる予定なんですが、その国のお偉方が国家予算まで組んで大掛かりな結婚式にして、それを利用して国の財政の臨時収入を得ようとしてるみたいな話をされてたので・・・話に聞き耳立てていたら注文の品届けるの忘れてたって次第で」

オーネスト「盗み聞きしちゃ駄目だよ~大将。 まあ、勇者と魔王が世界を跨いで結婚するんだ、利用しない手は無いわな俺も多分同じ様に派手にして人をより多く集めようと考えるし」

ウォール「やっぱりお前、こっちの世界じゃ魔王向きだって。 俺は逆に勇者向きだと思う訳だし」

オーネスト「立場変えたいよな~! 魔族の方じゃきっちり予算を組んで無駄な出費の軍事費は抑えてその分を社会福祉に使いたいっていち早く侵略はしないって名言してるのに、うちの国ときたら(お金は多分なんとかなると思うから、とりあえず魔族を攻めろそれでついでに領土も取って来い)なんて脳筋ばっかだからイヤになっちまうよ」

ウォール「俺はその脳筋型だから、そっちの方が分かりやすい(笑) 同じ様な命令したら、側近達に(出兵に伴う支出がこれだけ、出兵して得られると思われる収入がこれだけ。 支出の分と同じだけの収入が見込めない以上無駄な出費をする余裕は有りません! その分を高齢の魔族や小さな孤児の魔族達の為の社会福祉に予算を回します)って言われて魔王で1番偉い筈なのに1番お馬鹿さんの扱いを受けているから魔王の座を捨ててそっちのヒト族で勇者をやってみたいと真剣に考えたくなる」

オーネスト「無駄なお金は使わないのが当然だろ!? 俺だったら社会福祉は少し後に回しておいて、まずは道の整備などを行い国内の流通網を豊かにして経済活動を活発化させるわ。 それで増えた分の税収を社会福祉に回せば、無駄な出費をせずに社会福祉の分の税収を増やした事になるからな」

ウォール「ワン モア プリーズ?」

オーネスト「ええい!? この脳筋に何度言ったって分かるものか。 おい、飲むぞ! お互い飲まなきゃやってられないんだ!? お互いの立場を変える相談はいずれマジでしよう」

ウォール「それじゃ、脳筋とあきんどの今日の仕事も何とか無事に終わった事を祝して・・・」


ウォール&オーネスト「「乾杯!」」

その後、オーネストの国は財政破綻して魔族の国に吸収合併されるのだがオーネストはウォールの下でその才能をいかんなく発揮して財務のトップに上り詰めウォールを怒鳴りつけながらも国の発展に大いに貢献する事となる。
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