異世界に飛ばされたら守護霊として八百万の神々も何故か付いてきた。

いけお

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第30話 新たな怪との遭遇

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マルトさんの山小屋を出て半日、日も暮れ始めてきたので今日は山道を下りきるのを諦め途中の広い場所に例の家を出して泊まる事にした。マルトさんの防具を待つ1週間の間にほぼ定着したルールとして、皆で夕食を食べてから各自が順番に風呂に入り居間でしばし談笑してから寝室に戻り眠るという流れになっていた。

レミアは基本的に風呂は必要無いので問題無いが、オッサンのタオル1枚腰に巻いただけの姿は論外だ。しかし、残り3人の服装には少々目のやり場に困っている。

天照は薄桃色の寝巻き浴衣を着ており帯もピンクに合わせているが、湯上りの上気した顔と風呂上りの濡れた髪に時折見えるうなじが妙に艶っぽい色気を醸し出している。

トリーは半袖のネグリジェを愛用している、しかし胸元を広めにしている所為で胸の谷間が気になって仕方が無いのと生地が少しだけ透けているので微かに下着が見えている。

ヤミの場合は、健康的過ぎて逆に困るパターンだ。ヤミはなんと当初、下着を身に着ける事を知らなかったのだ。天照とトリー更にはレミアにまで叱られてようやく反省し、天照が衣類(下着含む)の神を呼び出してヤミ用の下着とチャイナ服以外の私服を用意する事となった。そこでヤミが選んだのはスポーツブラとスパッツなのだが、肌色に近いのを選択し尚且つ居間で過ごす際は何度皆から注意されてもその格好でうろつくので裸で歩かれているみたいで1番目のやり場に困る存在だ。私服に関しては、いずれ紹介出来ると思う。

っとまあ、こんな感じで今日も居間で談笑してそろそろ寝る頃合と思っていた時に突如家の中に警報が鳴り響くと同時に入り口のドアが物凄い勢いで叩かれた!

ドンドンドンドンドンドン!!

「頼む、早く中に避難させてくれ!お願いだ、助けてくれ!?」

カメラで確認すると1人の男が全身傷だらけで血を流しながら助けを求めてきていた。

「まずい、急いで中に入れてあげるんだ!」

結界の神に頼み、まずは男の周りをバリアーで囲み男がこれ以上襲われない様にすると俺とレミアの2人で家の中に出迎える。俺はパジャマ姿だしレミアも服装が変わる事が無かったので出迎える事が出来たが他の4人は相応しくないので普段着に着替えさせに戻らせた。

「しっかりしろ、大丈夫か!?」

俺は何とか家の中に入れた男に声を掛ける、すると男はレミアを見て再度大きな声を上げた。

「ひ、ひぃ!?また別の怪が出たああ!!」

慌てて家の外に逃げ出そうとする男を背後から抑える、パジャマが血まみれになってしまったが仕方ない。この男を冷静にさせるのが先だ。

「落ち着け!こいつは確かに人の怪だが襲ったりしないから安心しろ」

「嘘だ!さっきの奴の仲間だろうお前らも!?」

さっきの奴?もしかして怪に襲われたとでもいうのか!?

「仲間だったら、お前を家の中に入れたりなんてしないだろう?まずはお前の治療が先だ、話は治療が済んでからゆっくり聞かせてくれ」

いつもの巫女服に着替えてきた天照に癒しの神を呼んでもらい、男の傷を癒した。怪我を治してもらった事でやっと男は冷静さを取り戻し大人しく会話が出来る様になった。

「先程は取り乱してすまなかった、命からがらやっと逃げてきたのにまた別の怪に襲われると思ったら混乱してしまった」

「状況が状況だと思うから、気にしなくていいよ。ところであなたはレミアを【さっきの奴の仲間】と言っていたが、もしかして怪に襲われたのか?」

「ああ、そうだ。ここをもう少し下った森の中を歩いていたら突如襲われた。この上の山小屋まで水と食料を運ぶ為に来たのだが仲間達は全てやられてしまった。俺は松明を持っていたお陰かもしれないが火の明かりを奴は怖がっている様だった。だが、森の中を逃げる内に松明が消えかけ明かりの当たらない場所を噛まれ始めて死を覚悟した時にこの家を見つけたんだ。奴はこの家の明かりでそれ以上近づこうとはしなかった」

行動を聞く限りだと、夜行性の獣に近いな。

「とりあえず着替えを用意するから新しい服にするといい、食料も出すからしっかりと食べて空いてる部屋で寝るんだ。明日になったら俺達も一緒に森へ行くからもしも残されているなら仲間達の遺体を埋葬しよう」

「すまない、何から何まで」

衣類の神を呼び男の着替えと新しい俺のパジャマも用意して貰った。しかし俺の身に着けていた下着も血で汚れていたらいけないからと心配するふりをしながら懐にしまい込もうとする天照とトリーは、マルトさんから頂いたスリッパで再び頭を叩かれる羽目になる。

翌朝、朝食を済ませると男が襲われたという森まで案内して貰う事にした。もしもの場合を考えて結界の神にバリアーを張ってもらっているが、それは俺の皮膚の表面と助けた男の周囲だけだ。今回、俺はマルトさんに作ってもらった防具で実際に攻撃を喰らってみる様にオッサンから言われている。

『いいか!結界の神に任せっきりだと問題が発生した時に自分だけでは何も出来ない状態に陥りかねない。だから、まずは防具の性能を信じて森に潜む怪に襲われた時はまず何もせず防具の上から噛まれてみろ。実際に防具がどの程度の性能を持っているのか知っておく事で余裕を取り戻せたりもするからな』

一理有るような無いような・・・。噛まれるのは滅茶苦茶怖いんだけど、だからといって棄権するのはどうやら許して貰えないらしい。

「怪を無事退治出来たら、改めて水と食料を買ってマルトさんに届けに行かないとな」

どうやら、この男の人は定期的にマルトさんの山小屋まで水と食料を運んでいる様だ。じゃあ、事が済んだら両方とも出してあげて山小屋まで届けてもらおう。そんな事を考えていると、1時間もしない内に森に到着した。早速森の中に入ってみると道を外れると途端に茂みが生い茂る足元の見通しが悪い状態だった。

『たしかにこれだけ足元の見通しが悪い場所で、暗闇からいきなり襲われたらひとたまりも無いですね』

天照は冷静に状況を判断している。

「しっ!みんな少し静かにして」

トリーが急に喋るなと言うので、話すのを止めると茂みの中からスーハースーハーと徐々に荒い息が近づいてきているのが分かった。

「ちょ、ちょっとこれって!?」

「護は静かにして!防具の性能テストも兼ねているのよ、もうちょっと囮らしくしなさい」

俺って囮だったのね・・・ちくしょう覚えていろよ。

すぐ近くまで息が迫ってきたのが分かったので、少しだけ後ずさりを始めたその時とうとう俺は黒い犬の様な怪に襲われた!

ガルルルル・・・

足が何故か6本もある黒い犬は、俺の顔の前で涎を垂らしている。そして、よく見ると犬の牙には血の痕が残っていて少し前まで男の仲間の遺体を食べていたのかもしれない。

「おい、話せば分かる。俺はきっと美味しくないぞ。だから、噛むのは止めて心と心を通じ合わせよう」

自分でも何を言っているのかよく分かっていない、噛まれたくないから必死だ。けれど、そんな俺の必死な思いも虚しく俺は兜の上から怪に今まさに噛まれようとしていた・・・。
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