異世界に飛ばされたら守護霊として八百万の神々も何故か付いてきた。

いけお

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第11話 気について学んでみた

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「それにしても元野盗の連中、凄い弓の腕をしていたよな」

(そうですね、私も驚きました)

翌朝、朝食を済ませて再びドードの町を後にした俺は天照と並んで歩きながらこんな会話をしていた。すると


『はあ!?あんた達、本気でそんな事を言っているの?』

「2人とも気付いて無かったのですか!?」

レミアとトリーに呆れた顔で言われてしまう。

「え、何に気付かなかったの俺たち?」

「ええとですね、ジン殿や町長殿は弓の腕もそうですが彼らの操気術の見事さに驚いていたのですよ」

「どういう事!?」

『彼らはね、まず眼に遠視の術を掛けた上に弓と矢にそれぞれ飛距離向上と精度上昇の合計3つもの操気術を同時に操って的に当てていたの。ジン以外の衛士達では絶対に太刀打ち出来ないわよ、弓の精鋭部隊をあなたはこの町にタダで紹介した様なものよ。あの人数をもしも常時雇おうとすれば、【拾萬園】金貨800枚前後が毎年必要になるでしょうね』

あいつらってそんな凄技の持ち主だったの!?あの町は文字通り難攻不落と化した事になるな。

「そういえば今頃になって聞くのもアレですが、天照さんって怪という訳では無さそうですし神族ともまた違う気配がしますが物凄く強い力を感じます。一体何者なのですか?」

「そうかトリーにはまだ言ってなかったね、天照は異世界の神様なんだよ」

「そうだったのですか、異世界の神様なら納得です・・・って異世界の神!?」

「実は俺がこちらの世界と偶然繋がった穴に落ちた際に心配になって仲間の神達と様子を見に来たけど穴を塞がれて元の世界に帰れなくなった。やる事が無いから、俺の守護霊になってくれている訳だ」

「なんか、急に言われても信じられない理由ですね」

「信じるも信じないも実際に俺と天照達は元の世界に帰る事も出来ずにこの世界で生きていく事になったのだから受け入れて貰うしかないな」

「じゃあ、昨日天照さんが呼んでいた方も?」

「集合住宅の神は八百万の神々の中から複数の神が融合して1人の姿で出てきてくれていたんだよ」

「融合ですか・・・この世界の神族だと絶対にしない行為ですね」

「この世界の神族っていうか神同士って仲があまり良くないの?」

「良くないってレベルじゃないですね。覆る事の決してない力の差は強者の驕りや傲慢さに繋がり弱い者を見下し無理やり従わせている様な状況です。魔族の方は逆に強い者が弱い者を支え守り導こうという意識が強いですね」

トリーの口調から、神族には極力関わりたくない印象を感じた。同族内でもこの状況なら他の種族にも同様の行いをしているのだろう。じゃあ、レミアが向かおうとしている教会はその神族を信仰しているのだろうか?

「ちょっと聞きたいのだけど、レミアが向かおうとしていた教会ってやっぱり神族を信仰しているのかな?」

『信仰とは少し意味合いが違うかな?神本人に祈りを捧げる所を見せて加護を貰うのが目的だから』

「加護?」

『教会の礼拝の目的は神の前で大勢の者が祈りを捧げる事で機嫌を良くさせて、農作物の豊作や疫病の防止等の加護を付与して貰う事。だから教会内の地位もより高位の神を呼んでお願いする事が出来る者程高くなるわね』

「じゃあ、機嫌をもしも損ねた場合はどんな事が起きるのかな?」

『酷いわよ、わざと飢饉を起こしたり水害を発生させたりして更に多い人数の祈りを求めたり中には美しい少女を差し出せとか言ってくる神も居る様だし・・・』

やりたい放題だな、こちらの世界の神達は。天照も怒りを我慢しているようだ。

「じゃあ、レミアはその礼拝で豊作か疫病防止みたいな加護を付与して貰う為に向かおうとしていたんだ?」

『そうよ、ほんのささやかな望みだけど天使の力でも住んでいた小さい村位なら皆が暮らしていけるだけの加護を付与して貰えるから呼べるだけの力をどうしても身に付けたかったのよ』

「それだけ村の為に尽くそうとしているのだから、きっと怪の姿であったとしても教会の人に分かってもらえると思うよ」

『そうありたいわね』

「話が逸れちゃったけど、さっき話していた操気術ってレミアも使えるの?」

『使えるも何もあなた達を道に迷わせてたのも操気術の1種よ。呪いと言った方が効果高そうでしょ?一定範囲内に存在する者の方向感覚を狂わせる効果が有ってじわじわと浸透するから気付かれにくいのよね。あなた達の場合は特に気を感知出来てなかった様だから浸透も早かったわよ』

「気を感知するにはどうすればいいのかな?教わっておかないと、今後命の危険もありそうだ」

『それじゃあ、このレミア先生が教えてあげましょう。まずは基本の気を感じる所から始めるわよ、3歳になった頃から皆学んでいる事だから今のあなた達は気に関してはまだ3歳児以下のレベルよ』

ガーン!!俺と天照はショックを受けた。そこまで低いのか・・・。

『じゃあ、まずは両方の手のひらを5cm位の距離を離して向かい合わせにするの。そして手のひらから温かい空気を反対側の手のひらに送るイメージをして頂戴。温かい空気の感じを覚えたら、まずは第1段階終了ね。何度も繰り返していく内に両手の間に何か透明の膜みたいな物が見える様になるわ、それがあなた自身が持つ気よ』

早速、試してみる。本当に微かだが温かい空気の様なものを感じたがこれが自分の気なのか実感が持てなかった。しかし、天照の方は・・・。

(ほ~これが気ですか?確かに透明の膜みたいな物が見えますね。我々が力を使う時に精神を練るのと同じ様な感じでやれば良さそうですね)

『もう見える様になったの!?飲み込み早いわね、あなたも自信無くさないでいいからね。見える様になるまで普通の人でも早くて1ヶ月は掛かるわ』

「毎日少しずつやっていくしかなさそうだな」

『その通りよ、1日頑張った程度ではダメ。見える様になるのは毎日の積み重ねが大事だから』

「教えてくれて有難う、レミア。この世界の住人に1歩近づけた気がするよ」

『じゃあ、お礼に今日も素敵なイギリス料理をお願いね』

「いや、そろそろアレ以外も食べてみようとか思わない?」

『食べる度に生きているって事に素晴らしさを感じられるのよ!まだまだ食い足りないわよ』

「ねえ、護さん。レミアさんの言っているイギリス料理ってそんなに素晴らしい料理なの?」

はい、極めると本当に素晴らしい不味さです。食べ物の神の出した究極のイギリス料理は魂さえ抜けかけます。

『トリーさんも宜しかったら、ぜひご一緒に如何ですか?あまりの素晴らしい味に魂さえ抜けそうになりますよ』

言い方1つで何で物凄く美味しそうに聞こえるのだろう?

「それならば、ぜひご一緒したい。護さん、私にもレミアさんと同じイギリス料理を出してもらえないか?」

「止めておいた方が身の為だよ?」

天照も俺の隣で首をブンブン勢い良く振る様に頷きながら肯定する。

「美味しい料理を秘密にしておこうだなんて、ずるいぞ2人共。仲間外れにしないで味わわせてくれ~!」

仲間外れの方が幸せなのだが、本人が強く希望する以上仕方ない。レミアとトリーにイギリス料理が振舞われた。

「なにやら不思議な見た目の料理だなイギリス料理とは。では、いただきま~す♪パクッ」

美味しそうに食べ始めるレミアの横で、トリーは口に入れた直後に固まりそのまま倒れた。

「だから、言わんこっちゃない」

(人の話を信用してくれれば、こんな事にはならなかったのに・・・)

『あら!トリーったらこんなに素晴らしい料理をもう残しちゃったの!?仕方ないわね、勿体無いから私が食べちゃうからね』

そう言いながら、トリーの残した分まで綺麗に平らげるレミア。その横ではトリーが未だに白目を剥いたままの状態で居た。

『ごちそうさまでした、またお願いするわね』

満足そうなレミアの横では、まだトリーが目を覚ましそうに無い。

「トリーの奴、大丈夫かな?」

(そうですね、ショックが強すぎたのかもしれませんね)

俺は横に立つ天照とそんな会話をしていると、レミアが何かに気が付いたらしく話しかけてきた。

『ねえねえ、今気が付いたんだけどさ。この前まで護さんの肩の辺りに浮いていた天照さんが何で普通に歩けている訳?』

俺と天照もようやくその事に気付く、彼女が徐々に実体化しようとしている証拠だった。
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