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第80話 その日は突然訪れた。

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護が倒れた。

心労が重なり体調を崩したのが原因だが、心労の元となっているのが天照とレミアなのは誰の目にも明らかだった。



天照だけでなくレミアまでSMGの虜となり気の力を弾丸に変えた特注のイングラムM10に持ち替えたのがほんの数日前、そして2人は護達の制止を振り切って自分達の方からわざわざ出向いて神を狩る様になっていた・・・。

日が昇り皆と朝食を済ませると2人はウキウキとした顔で

「「それでは行ってきます♪」」

っと、飛び立ち夕方になると全身をスパウダの神達の返り血で真っ赤に染めていた。心配になった護がヤミに1度だけ上空から様子を見に行かせた事が有ったが戻ってきたヤミは顔面蒼白でガタガタと震えていた。

「あれ・・・怖い。2人、途中から素手で神を切り裂き、引きちぎってた」

最初に2人は1分間だけ適当にイングラムを撃って弾をばら撒くとしばらくの間はそれを使って倒していたそうなのだが、その光景がまずシュール過ぎた。1090x4=4360発の弾丸が戦場を縦横無尽に飛び回り全方位から襲い掛かる。天照とレミアがそれぞれ2180個のファ○ネルを飛ばしている様なものだ、さすがの○ムロ・レイやシャ○・アズナブルでもまず勝ち目は無いだろう・・・。

それで隊長クラスの上級神だけ残すと2人は銃を腰に掛けて今度は武器を両手の手刀に変えて接近戦を挑んでいたそうだ。返り血を浴びながら神を細切れにしていく天照とレミア、ヤミは思わず

「切り裂き魔・・・」

っと口に出してしまった、すると遥か上空に居る筈のヤミに気が付いたのか2人がニッコリと血塗れの顔で微笑んだので怖くなって逃げ出したそうだ。

ベッドに横たわる護を介抱するトリー、それを見守るオッサンやチィ達も護の体調を心配する。

「護の奴は神経が図太いと思っていたのだが、そうでも無かったか・・・」

「護は周囲にそう見せようと演じてきただけです、時々自分が殺したスパウダの神達の顔が頭から離れなくて眠れない日を過ごす事も有りました。それを誤魔化す為に私達を抱いて野獣の印象を強くさせてたんです」

野獣化のし過ぎで徹夜していたのではなく、悪夢で寝る事が出来ないので妻達を抱いて護は周囲に悟らせない様にしていたのだ。その周囲の中に天照やレミアも含まれている・・・。

(最近の姉上は力を完全に取り戻した事で浮かれていた、足手まといになりかけていた所をレミアに救われた格好だが今の2人がしている事は護の立てていた予定から大きく逸脱している。スパウダの神を男女問わず根絶やしにするつもりなど護には無いのに毎日多くの神族を葬ってくるのを見れば心労で倒れるのも当然だ。誰かが姉上達を止めなくては!)



暴走状態となっていた天照とレミアを止めたのは意外な人物だった。

「護パパをこれ以上苦しめるなら、絶対に許さない」

満足そうな顔で戻ってきた天照とレミアの前にクロー達3人が立ち塞がったのだ。

『護さんを私が苦しめているって何を言っているのクロー?』

「とぼけないで!護パパはスパウダの神を全員殺すつもりなんて無かった、なのにあなた達は平気で皆殺しにしている。それがどれだけ護パパの心を傷つけ苦しめていたのか理解出来ないの!?」

「それじゃあ、今まで通りチマチマと進んで行くのが正解だったというのクロー?スパウダの連中の手によって多くの人達が苦しめられてきたわ。その罪の大部分は死をもって償うべき愚行がほとんどの筈、それでも生かしておくの?」

「それは・・・」

レミアからの問い掛けにクロー・クロニ・クロミの3人は上手い答えを返す事が出来ない。その3人の後ろから身体を引きずる様にして護が姿を現した。

『護さん、具合はどうですか?』

天照は手を差し出したが護はその手を払いのけた。

『護さん!?』

「天照・・・こっちの世界に飛ばされてきた俺を心配して付いてきた時からずっと見守り続けてくれて本当に感謝している。行き当たりばったりの俺の事を好きになってくれて妻にもなってくれた、俺は本当に幸せ者だと思う。だけど、最近のお前は出会ったばかりの頃とはすっかり人が変わってしまった。神を殺す事を楽しむ殺神鬼に等しい、俺はもうこれ以上そんなお前の姿を見たくも無いし一緒に居たいとも思えない・・・」

護は少しの間目を閉じて息を大きく吸うと天照に向け言い放つ。



「別れよう、天照。俺は今のお前をこれ以上愛せない」



ピシッ・・・天照の中で何かが崩れだした。

『冗談ですよね護さん?私の事、自分の女だって言ってくれたじゃないですか。今だって護さんの為にしているのに何でそれが駄目なんですか?』

「・・・何故駄目なのか分からないから、俺達は別れるしかないんだよ!!」

『私・・・護さんに要らないって言われちゃった・・・・』

急にそれまで明るかった空から光が徐々に失われていく。

『護さんの傍に居られないなら、私がこの世界に居る意味なんて無いわ』

天照が手を翳すと地面が割れ、岩で出来た洞窟が現れる。

『さようなら護さん、私はこの中であなたが許してくれる日が来るのを待ちます』

洞窟の中に天照が入ると巨大な岩戸が動き洞窟を塞いだ、そしてその瞬間すべての光が失われ世界が闇に包まれた・・・。




【スライムばかり食べてた俺は、今日から少し優雅な冒険者生活を始めます。 】という作品を新たに書き始めております。試しに読んで頂いて感想やご意見を聞かせてくださると今後の作品作りに活かせるので大変有り難いです。
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