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第13話 隔離
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「おい、時間だ出なさい」
(うん? もう朝かいつの間にか寝てしまったようだな。 この部屋とも今日でお別れで明日からは刑務所暮らしか。 まあ真面目に刑に服すフリさえしておけば刑も短くなるだろうしさっさと出てもう1度奴の居場所を探すとするかな)
拘置所の職員に急かされる様にしてAは判決を言い渡される裁判所に向かう為に拘置所の裏口の扉から外に出た瞬間だった。
ドスッ
(!?)
腹部に何か衝撃を受けるとその場所から徐々に激痛が走る、よく見るとそれは見覚えの有るナイフでそれを握っていたのは俺が刺して刑務所の服役を終えたらもう1度探そうと思っていた奴だった。
「て、てめえ。なんで、ここに・・・」
出血の為なのか徐々に意識が朦朧とし始める、その中で目の前に居る奴が何か話し始めた。
「何故俺がお前に指されなければならなかったんだ、何故お前に彼女が個人情報を晒されなければならなかったんだ。お前も同じだけの痛みや苦しみを味わえ!」
そこで意識が途切れ気が付くとそこは病院の集中治療室の中の様だった、口の中には血の味が広がっていてその味が数日経っても消えようとはしなかった。そして、一般病棟に移され食事を取ろうにも刺された腹部の痛みから思う様に食べる事が出来なかった。
やがて、判決の言い渡しが延期された事を告げられると再び拘置所の元の部屋に戻された。そうして再び判決の日が訪れ前回と同じ様に裏口から出ようとするが俺は何時襲われても良い様に何度も返り討ちにする為の方法を模索していたが杞憂だったみたいだった。裁判所に無事に到着し法廷に入ると今までと同じ様にマスコミ等に非公表で行われていた為か裁判長や検察官の他には誰も居なかった。
「判決を言い渡す前にあなたが刺した相手に言いたい謝罪などは有りますか?」
そんな事を裁判長が言ってきたので俺は思わずこう返答してしまった。
「俺はあいつらの所為で人生を狂わされた、更にはあの野郎は俺を刺してきやがった。絶対同じ目に逢わせないと気が済まない!」
それを聞いた裁判長は呆れた様にため息を吐くとこう言った。
「この者は同じだけの体験をしても反省といった態度は見られません、またPTSDといった症状も見受けられないので何度も身勝手な理由で同じ事を繰り返してこの罰を何回受けても矯正は難しいと判断します。被害者の言う通り隔離が妥当に思えます」
(隔離!? 何だそりゃ、刑務所じゃなくて精神病院にでも送るつもりなのか?)
そんな事を考えていると法廷の傍聴席の扉が開き中に俺の人生を狂わせる事をやった奴が入ってきた。
「おい総理、何でてめえがここに居る!? 俺の人生を狂わしやがって、てめえもいずれ同じ目に逢わせてやるからな!」
「ふむ、聖亜くんの言った通りだな。 同じ目に遭ったというのに、自分の罪の意識に気付く事も無く逆に今度は返り討ちにしようと考える。 確かにこのまま社会に置いておくといずれ人を躊躇い無く殺してしまうだろう」
「何勝手に人の事を犯罪者扱いしていやがる!? 俺を刺したあいつも早く裁判で懲役にでもしやがれ!」
「おいおい、まだ気付いていないのか? 幾ら我が国の医療技術が進んでいたとしても腹部の傷が完全に消える訳が無いだろう。 実際に腹部に傷を付ける事も無く同じ痛みを味わう方法に覚えは無いのかな?」
「ま、まさか!?」
「そのまさかだよ、きみは聖亜くんに刺されなどしていないし病院で入院もしていない。ただ、聖亜くんがきみに刺されて病院を退院するまでに味わったであろう苦痛などを体験してもらっただけだ」
「・・・そんな」
「昨晩の夕食に導眠剤を混ぜて眠ってもらい、VRヘッドセットを被せて約2週間分の仮想体験をしてもらった訳だが反省する事も無かったきみを野放しにしてしまうのは社会にとって大きなマイナスでしかない。だから隔離させてもらう事にするよ」
「隔離って精神病院で一生過ごさせるつもりかよ!?」
「矯正出来ないきみを精神病院で過ごさせるのは税金の無駄遣いでしかない、だから隔離した上できみには今後の罰の執行の為の被験者として一生を過ごしてもらう事とする」
「お、俺に何をするつもりなんだ!?」
「裁居田くん、わたしの代わりにきみが説明してあげたまえ」
「分かりました」
総理の後ろに控えていた男が淡々とした事務的口調で語りだした。
「あなたはこれから政府の研究施設に行ってもらい、24時間365日VRヘッドセットを装着した状態で生活して頂きます。 ログアウトで現実世界に戻る事は出来ません、文字通り仮想世界に隔離されます。点滴で栄養は補給されますので死ぬ心配はありません、ただし仮想世界であなたは今後行われる仮想現実で同じだけの苦痛を味わう罰を行う際の事前の被験者として協力して頂く事になります」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
「さいわい、あなたは1度刺されたくらいでPTSDにもならない位精神が他の方よりも異なるようですからまさに理想的な被験者という訳です」
「お、おい!お前ら言っている事が分かっているのか!? 人を人体実験のモルモットみたいに人権侵害だぞ!!」
「11兆350億円」
「!?」
「きみが国に与えた損害だ、その身で支払いたまえ。まあ、殺人などの体感時にはボーナス査定で1億円評価をするから110350回殺される経験をすれば社会に戻る事も可能だから頑張るのだよ」
いつの間にか背後に来ていた男達に両腕を押さえ込まれてAは裁判所から連れ出された、その後Aは社会に戻る事も無く仮想世界の中で一生を終える事となった・・・。だが彼のお陰でその後行われる仮想世界で同じ苦痛を味わう刑罰はより感覚が鮮明になり反省する者が増えたのも事実だった。
また一部では有るが彼と同じ様な被験者となる者も居た事も追記する。
隔離については公表される事は無かった、政府は非公開の内にこの事に関する法案を可決させ被害者に加害者に対する隔離への罪の意識を持たせない様に配慮した結果だった。だからこの事を聖亜や静流は知らない、総理や裁居田も伝えようとはしなかった。仮想現実での苦痛に対する人体実験・・・そう言えるかもしれない隔離が死刑を廃止していく国々の中における最上位の罰に位置する事になるのに時間はかからなかった。
ふたたび、聖亜と静流に話を戻すと2人は総理の私邸でいまだ居候状態が続いているが少しずつ変化が出てきた。私邸の庭に2人で出て野菜を育てたりしながら徐々に社会に戻れるかもしれない気配を見せている。
そして【フリーファンタジーオンライン~自由の幻想~】内においてはイセアとシズルの2人に新しい仲間が加わっていた、ソーリーとラッキー。安直なネーミングセンスだが総理とドジッタネこと戸地津 多音(こじつ たおん)の2人だ。
神がかりな強運を持つイセアとシズルに逆の意味で神がかり的なドジを起こすラッキーにソーリーが巻き込まれてGMのジャッジが頭を抱える日々が今日も始まろうとしていた・・。
(うん? もう朝かいつの間にか寝てしまったようだな。 この部屋とも今日でお別れで明日からは刑務所暮らしか。 まあ真面目に刑に服すフリさえしておけば刑も短くなるだろうしさっさと出てもう1度奴の居場所を探すとするかな)
拘置所の職員に急かされる様にしてAは判決を言い渡される裁判所に向かう為に拘置所の裏口の扉から外に出た瞬間だった。
ドスッ
(!?)
腹部に何か衝撃を受けるとその場所から徐々に激痛が走る、よく見るとそれは見覚えの有るナイフでそれを握っていたのは俺が刺して刑務所の服役を終えたらもう1度探そうと思っていた奴だった。
「て、てめえ。なんで、ここに・・・」
出血の為なのか徐々に意識が朦朧とし始める、その中で目の前に居る奴が何か話し始めた。
「何故俺がお前に指されなければならなかったんだ、何故お前に彼女が個人情報を晒されなければならなかったんだ。お前も同じだけの痛みや苦しみを味わえ!」
そこで意識が途切れ気が付くとそこは病院の集中治療室の中の様だった、口の中には血の味が広がっていてその味が数日経っても消えようとはしなかった。そして、一般病棟に移され食事を取ろうにも刺された腹部の痛みから思う様に食べる事が出来なかった。
やがて、判決の言い渡しが延期された事を告げられると再び拘置所の元の部屋に戻された。そうして再び判決の日が訪れ前回と同じ様に裏口から出ようとするが俺は何時襲われても良い様に何度も返り討ちにする為の方法を模索していたが杞憂だったみたいだった。裁判所に無事に到着し法廷に入ると今までと同じ様にマスコミ等に非公表で行われていた為か裁判長や検察官の他には誰も居なかった。
「判決を言い渡す前にあなたが刺した相手に言いたい謝罪などは有りますか?」
そんな事を裁判長が言ってきたので俺は思わずこう返答してしまった。
「俺はあいつらの所為で人生を狂わされた、更にはあの野郎は俺を刺してきやがった。絶対同じ目に逢わせないと気が済まない!」
それを聞いた裁判長は呆れた様にため息を吐くとこう言った。
「この者は同じだけの体験をしても反省といった態度は見られません、またPTSDといった症状も見受けられないので何度も身勝手な理由で同じ事を繰り返してこの罰を何回受けても矯正は難しいと判断します。被害者の言う通り隔離が妥当に思えます」
(隔離!? 何だそりゃ、刑務所じゃなくて精神病院にでも送るつもりなのか?)
そんな事を考えていると法廷の傍聴席の扉が開き中に俺の人生を狂わせる事をやった奴が入ってきた。
「おい総理、何でてめえがここに居る!? 俺の人生を狂わしやがって、てめえもいずれ同じ目に逢わせてやるからな!」
「ふむ、聖亜くんの言った通りだな。 同じ目に遭ったというのに、自分の罪の意識に気付く事も無く逆に今度は返り討ちにしようと考える。 確かにこのまま社会に置いておくといずれ人を躊躇い無く殺してしまうだろう」
「何勝手に人の事を犯罪者扱いしていやがる!? 俺を刺したあいつも早く裁判で懲役にでもしやがれ!」
「おいおい、まだ気付いていないのか? 幾ら我が国の医療技術が進んでいたとしても腹部の傷が完全に消える訳が無いだろう。 実際に腹部に傷を付ける事も無く同じ痛みを味わう方法に覚えは無いのかな?」
「ま、まさか!?」
「そのまさかだよ、きみは聖亜くんに刺されなどしていないし病院で入院もしていない。ただ、聖亜くんがきみに刺されて病院を退院するまでに味わったであろう苦痛などを体験してもらっただけだ」
「・・・そんな」
「昨晩の夕食に導眠剤を混ぜて眠ってもらい、VRヘッドセットを被せて約2週間分の仮想体験をしてもらった訳だが反省する事も無かったきみを野放しにしてしまうのは社会にとって大きなマイナスでしかない。だから隔離させてもらう事にするよ」
「隔離って精神病院で一生過ごさせるつもりかよ!?」
「矯正出来ないきみを精神病院で過ごさせるのは税金の無駄遣いでしかない、だから隔離した上できみには今後の罰の執行の為の被験者として一生を過ごしてもらう事とする」
「お、俺に何をするつもりなんだ!?」
「裁居田くん、わたしの代わりにきみが説明してあげたまえ」
「分かりました」
総理の後ろに控えていた男が淡々とした事務的口調で語りだした。
「あなたはこれから政府の研究施設に行ってもらい、24時間365日VRヘッドセットを装着した状態で生活して頂きます。 ログアウトで現実世界に戻る事は出来ません、文字通り仮想世界に隔離されます。点滴で栄養は補給されますので死ぬ心配はありません、ただし仮想世界であなたは今後行われる仮想現実で同じだけの苦痛を味わう罰を行う際の事前の被験者として協力して頂く事になります」
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「お、おい!お前ら言っている事が分かっているのか!? 人を人体実験のモルモットみたいに人権侵害だぞ!!」
「11兆350億円」
「!?」
「きみが国に与えた損害だ、その身で支払いたまえ。まあ、殺人などの体感時にはボーナス査定で1億円評価をするから110350回殺される経験をすれば社会に戻る事も可能だから頑張るのだよ」
いつの間にか背後に来ていた男達に両腕を押さえ込まれてAは裁判所から連れ出された、その後Aは社会に戻る事も無く仮想世界の中で一生を終える事となった・・・。だが彼のお陰でその後行われる仮想世界で同じ苦痛を味わう刑罰はより感覚が鮮明になり反省する者が増えたのも事実だった。
また一部では有るが彼と同じ様な被験者となる者も居た事も追記する。
隔離については公表される事は無かった、政府は非公開の内にこの事に関する法案を可決させ被害者に加害者に対する隔離への罪の意識を持たせない様に配慮した結果だった。だからこの事を聖亜や静流は知らない、総理や裁居田も伝えようとはしなかった。仮想現実での苦痛に対する人体実験・・・そう言えるかもしれない隔離が死刑を廃止していく国々の中における最上位の罰に位置する事になるのに時間はかからなかった。
ふたたび、聖亜と静流に話を戻すと2人は総理の私邸でいまだ居候状態が続いているが少しずつ変化が出てきた。私邸の庭に2人で出て野菜を育てたりしながら徐々に社会に戻れるかもしれない気配を見せている。
そして【フリーファンタジーオンライン~自由の幻想~】内においてはイセアとシズルの2人に新しい仲間が加わっていた、ソーリーとラッキー。安直なネーミングセンスだが総理とドジッタネこと戸地津 多音(こじつ たおん)の2人だ。
神がかりな強運を持つイセアとシズルに逆の意味で神がかり的なドジを起こすラッキーにソーリーが巻き込まれてGMのジャッジが頭を抱える日々が今日も始まろうとしていた・・。
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