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第4話 小さな出会いと意見交換会
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今日もログインすると、俺は【始まりの村】の周りに居るラビットを倒し始める。色々な武器を試しているがまだしっくりくる武器と出会えていない為、村の先へ進むのを止めているからだ。このゲーム内ではHPやダメージ等をはっきりと数値で表示をしないが、少しずつだが力が付いた事を実感出来る。ラビットを倒すまでに最初の内は4発攻撃を入れないといけなかったのが、3発にそして2発に攻撃回数が減る事で力が付いた事を自覚する。数値で表示されない事が逆に励みになり、毎日ゲーム内で筋トレを行う様にもなった。
剣・短剣・斧・槍・刀・弓・杖・鈍器とこれまで8つの武器を試してみるが、まだ手に馴染む物は無かった。多分、何かきっかけが有れば自分の目指すプレイや武器が見つかるのかもしれない。そんな事を考えながら、次のラビットを攻撃しようと探していると少し離れた場所から若い女性の悲鳴が聞こえてきた。
「きゃああああ!」
見ると、その女性は2匹のラビットに追われていた。所々燃えた様な痕が有り彼女が杖を持っているのが見えたので、おそらく魔法を撃った際に隣に居たラビットまで巻き込んでしまったのだろう。2匹に追われた事に動揺しているのか、反撃をしようともせずに逃げ回っていた。このままだといずれ追いつかれてしまう。そう考えていた矢先、彼女はつまずいて転倒してしまった。
「あぶない!?」
俺はとっさに弓を取り出すと、2匹のラビットに向け2発矢を放つ。1発は運良く命中して倒す事が出来たが1発はもう1匹のすれすれに刺さり外れてしまう、すると残ったラビットは彼女から俺にターゲットを変えた様でこちらに向かい突っ込んできた!
急いでインベントリに手を入れるとロングソードがすぐ手元にあったので、急いで持ち替えて振り向くとラビットはもう目の前まで来ていた。
「うわあああ!?」
死の恐怖から、ロングソードを無我夢中で振り抜く。右手に鈍い感触がするのでよく見ると、何とかラビットを斬る事が出来た様だ。
「助けて頂きどうもありがとうございました」
背後で声がするので振り向くと逃げていた彼女が立っていた。黒髪のやや幼い印象を持つが見た目は20歳前後だろうか?そして修道服とは少し違う青色のローブに身を包んでいる。
「いや・・・目の前で誰かが死ぬ姿を見るのが嫌だっただけだから助ける事が出来て良かったよ」
「攻撃魔法を強化しようと思いフレイムボールを撃ってみたら、背後に隠れていたのにまで当たってしまい逃げていたんです」
「そうだったんですか。今度から、背後に隠れている可能性にも気を付ける様にすれば同じ過ちはしないで済むでしょう」
「はい、そういたします。ところで、助けていただいた方の名前を知らないのは失礼なので教えてもらってもいいですか?」
「はい、俺はイセアって言います」
「イセア・・・・あ、あなたがあのイセアさんだったんですね。わたしはシズルと言います」
「シズルさんですね、名前とよく合っているアバターを選ばれてますね」
そう言うと、シズルさんは頬を赤く染める。
「先日の事件で人も少なくなっていますので、よろしければフレンド登録しませんか?」
「いいですよ、何か有ったら声を掛けてください」
「はい、ありがとうございます」
この日はシズルさんとフレンド登録を終えるとそのままログアウトした、けれど頭の中では今日の出来事を思い返し、1つの武器に拘ろうとするのは間違いだったかもしれないと思い始めていた。
(剣だけに拘ると離れた場所に居る敵を攻撃出来ない、だが弓などの間接攻撃に拘ると近づかれた際にピンチになってしまう。剣と弓の組み合わせが今の自分のプレイに合っているのかもしれないな)
そう考えながら眠りについた。
翌日、会社に行くと何故か社長室に呼ばれてしまう。何もトラブルや失敗は起こしていない筈だが、もしかしてリストラされてしまうのか!?っと不安を覚えたが社長の第一声は予想していなかったものだった。
「泉くん、君に明日から1週間の有給休暇を与える」
「はい!?」
「そんなに驚かなくても大丈夫だよ。昨晩、私の自宅に首相官邸から電話が掛かってきた」
「え! 首相官邸からですか!?」
「ああ、そして詳しく話を聞いてある事を知った。君は例のお仕置き事件で、PKによる擬似的な死亡体験をさせられた被害者だったのだね?」
「はい・・・」
「だが、君はその事を隠して出勤していた。そこで官邸サイドから被害者救済の一環として1週間の休暇を与える事が出来ないか打診された訳だ」
「そうだったんですか・・・」
総理はあの事件の被害者の事をしっかりと考えていたのか、色々と賛否の多いゲームだがもしも被害に遭ってもきちんと対応がされるのなら不満は起こらない。
「あと、1週間の休暇を与えるのにもう1つ理由が有るんだ」
「一体何でしょうか?」
「実はその官邸から2人ずつ計10組の被害者を呼び、お仕置きをしたGMを交えて現実の場で会って意見の交換を行いたいそうだ」
直接官邸に呼び出してしまうとマスコミに嗅ぎ付けられて、いらぬトラブルを引き起こす可能性が有るからと都内のホテルのロビーで待ち合わせをする事となった。もう1人の人も自分と同じく今日が都合良かったらしく、ホテルに到着すると既に先に着いていて部屋に案内されていた。数分ほどロビーで待っていると迎えの方がやってきた。
「お待たせしてすいませんでした、自分があの時お仕置きを行ったGMのジャッジこと裁居田 清純(さいいだ きよすみ)です。もう1人の方は先に案内しましたので、一緒に参りましょう」
俺は裁居田さんの後に続いてエレベーターに乗る。するとエレベーターは地下に降り始め表示されている階よりも更に下の階に進み、そしてB7階の表示でエレベーターは止まった。
「この施設は大切な聞き取りを行う際に、しつこい記者達が追って来れない様になっています。君達の個人情報が漏洩しない様に今後も気を付けていくので安心して欲しい」
エレベーターから降りると正面に豪華な扉があった、GMが暗証番号を入力しカードキーを差し込むと扉はゆっくりと開いた。部屋の中は結構広い応接室になっていて、中央のソファーには1人の女性が座っていた。
「これで2人とも揃いました、改めて自己紹介させて頂きます。自分はGMのジャッジこと裁居田 清純。確認の為にキャラクターのネームと本人の名前を教えてください」
裁居田さんが自分に右手を差し出して、自己紹介を促してきた。
「俺は・・・キャラクターネーム、イセアこと泉 聖亜と言います」
「え、あなたがイセアさんですか!?」
隣の女性が驚いた声を上げた、そしてすぐに恥ずかしそうに顔を赤くすると彼女の方も自己紹介を始める。
「わたしはキャラクターネーム、シズルこと竹森 静流(たけもり しずる)と言います。 イセアさん。いえ、せいあさん先日は助けて頂きありがとうございました」
しずるさんは俺の方を向きながら、頭を下げる。現実世界で会ったシズルさんはかなり値段の高そうな和服を着た清楚で美しい女性でした。そして3人で意見の交換を始めるのだが、この後俺とシズルさんの2人も予想していなかった方々も参加する事になった・・・。
剣・短剣・斧・槍・刀・弓・杖・鈍器とこれまで8つの武器を試してみるが、まだ手に馴染む物は無かった。多分、何かきっかけが有れば自分の目指すプレイや武器が見つかるのかもしれない。そんな事を考えながら、次のラビットを攻撃しようと探していると少し離れた場所から若い女性の悲鳴が聞こえてきた。
「きゃああああ!」
見ると、その女性は2匹のラビットに追われていた。所々燃えた様な痕が有り彼女が杖を持っているのが見えたので、おそらく魔法を撃った際に隣に居たラビットまで巻き込んでしまったのだろう。2匹に追われた事に動揺しているのか、反撃をしようともせずに逃げ回っていた。このままだといずれ追いつかれてしまう。そう考えていた矢先、彼女はつまずいて転倒してしまった。
「あぶない!?」
俺はとっさに弓を取り出すと、2匹のラビットに向け2発矢を放つ。1発は運良く命中して倒す事が出来たが1発はもう1匹のすれすれに刺さり外れてしまう、すると残ったラビットは彼女から俺にターゲットを変えた様でこちらに向かい突っ込んできた!
急いでインベントリに手を入れるとロングソードがすぐ手元にあったので、急いで持ち替えて振り向くとラビットはもう目の前まで来ていた。
「うわあああ!?」
死の恐怖から、ロングソードを無我夢中で振り抜く。右手に鈍い感触がするのでよく見ると、何とかラビットを斬る事が出来た様だ。
「助けて頂きどうもありがとうございました」
背後で声がするので振り向くと逃げていた彼女が立っていた。黒髪のやや幼い印象を持つが見た目は20歳前後だろうか?そして修道服とは少し違う青色のローブに身を包んでいる。
「いや・・・目の前で誰かが死ぬ姿を見るのが嫌だっただけだから助ける事が出来て良かったよ」
「攻撃魔法を強化しようと思いフレイムボールを撃ってみたら、背後に隠れていたのにまで当たってしまい逃げていたんです」
「そうだったんですか。今度から、背後に隠れている可能性にも気を付ける様にすれば同じ過ちはしないで済むでしょう」
「はい、そういたします。ところで、助けていただいた方の名前を知らないのは失礼なので教えてもらってもいいですか?」
「はい、俺はイセアって言います」
「イセア・・・・あ、あなたがあのイセアさんだったんですね。わたしはシズルと言います」
「シズルさんですね、名前とよく合っているアバターを選ばれてますね」
そう言うと、シズルさんは頬を赤く染める。
「先日の事件で人も少なくなっていますので、よろしければフレンド登録しませんか?」
「いいですよ、何か有ったら声を掛けてください」
「はい、ありがとうございます」
この日はシズルさんとフレンド登録を終えるとそのままログアウトした、けれど頭の中では今日の出来事を思い返し、1つの武器に拘ろうとするのは間違いだったかもしれないと思い始めていた。
(剣だけに拘ると離れた場所に居る敵を攻撃出来ない、だが弓などの間接攻撃に拘ると近づかれた際にピンチになってしまう。剣と弓の組み合わせが今の自分のプレイに合っているのかもしれないな)
そう考えながら眠りについた。
翌日、会社に行くと何故か社長室に呼ばれてしまう。何もトラブルや失敗は起こしていない筈だが、もしかしてリストラされてしまうのか!?っと不安を覚えたが社長の第一声は予想していなかったものだった。
「泉くん、君に明日から1週間の有給休暇を与える」
「はい!?」
「そんなに驚かなくても大丈夫だよ。昨晩、私の自宅に首相官邸から電話が掛かってきた」
「え! 首相官邸からですか!?」
「ああ、そして詳しく話を聞いてある事を知った。君は例のお仕置き事件で、PKによる擬似的な死亡体験をさせられた被害者だったのだね?」
「はい・・・」
「だが、君はその事を隠して出勤していた。そこで官邸サイドから被害者救済の一環として1週間の休暇を与える事が出来ないか打診された訳だ」
「そうだったんですか・・・」
総理はあの事件の被害者の事をしっかりと考えていたのか、色々と賛否の多いゲームだがもしも被害に遭ってもきちんと対応がされるのなら不満は起こらない。
「あと、1週間の休暇を与えるのにもう1つ理由が有るんだ」
「一体何でしょうか?」
「実はその官邸から2人ずつ計10組の被害者を呼び、お仕置きをしたGMを交えて現実の場で会って意見の交換を行いたいそうだ」
直接官邸に呼び出してしまうとマスコミに嗅ぎ付けられて、いらぬトラブルを引き起こす可能性が有るからと都内のホテルのロビーで待ち合わせをする事となった。もう1人の人も自分と同じく今日が都合良かったらしく、ホテルに到着すると既に先に着いていて部屋に案内されていた。数分ほどロビーで待っていると迎えの方がやってきた。
「お待たせしてすいませんでした、自分があの時お仕置きを行ったGMのジャッジこと裁居田 清純(さいいだ きよすみ)です。もう1人の方は先に案内しましたので、一緒に参りましょう」
俺は裁居田さんの後に続いてエレベーターに乗る。するとエレベーターは地下に降り始め表示されている階よりも更に下の階に進み、そしてB7階の表示でエレベーターは止まった。
「この施設は大切な聞き取りを行う際に、しつこい記者達が追って来れない様になっています。君達の個人情報が漏洩しない様に今後も気を付けていくので安心して欲しい」
エレベーターから降りると正面に豪華な扉があった、GMが暗証番号を入力しカードキーを差し込むと扉はゆっくりと開いた。部屋の中は結構広い応接室になっていて、中央のソファーには1人の女性が座っていた。
「これで2人とも揃いました、改めて自己紹介させて頂きます。自分はGMのジャッジこと裁居田 清純。確認の為にキャラクターのネームと本人の名前を教えてください」
裁居田さんが自分に右手を差し出して、自己紹介を促してきた。
「俺は・・・キャラクターネーム、イセアこと泉 聖亜と言います」
「え、あなたがイセアさんですか!?」
隣の女性が驚いた声を上げた、そしてすぐに恥ずかしそうに顔を赤くすると彼女の方も自己紹介を始める。
「わたしはキャラクターネーム、シズルこと竹森 静流(たけもり しずる)と言います。 イセアさん。いえ、せいあさん先日は助けて頂きありがとうございました」
しずるさんは俺の方を向きながら、頭を下げる。現実世界で会ったシズルさんはかなり値段の高そうな和服を着た清楚で美しい女性でした。そして3人で意見の交換を始めるのだが、この後俺とシズルさんの2人も予想していなかった方々も参加する事になった・・・。
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