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九、十一
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「……営業してる?」
「節約ですよ、電気の」
「なんだか、ごちゃごちゃしてる」
「まあ、そうっスね」
店前には錨、ヤシの木、サーフボード、船首像……と、おっさん曰く南国風になっている。アジサイの細道はアサガオの細道に様変わり……いや、原理はわからないが今はすべてがヨルガオに変貌していて、純白に咲き誇っている。
「ウキョウ、スカイホー、ム……」
うろんに見上げて呟く松先輩。せっかく掲示してある物件はヤシの木で隠れているし、アサガオあるいはヨルガオの葉が看板に侵食して『ウキョウスカイホーム』になっているのが放置されている。『ウキョウスカイホー』になってしまうのも時間の問題で、不動産屋だとバレたくない疑惑が俺の中で膨れつつある。
これはリアル魔法使いの気まぐれだ。道楽なのだ。状態によってはサンシンが気づかず、俺は選ばれし契約者にならず、アコベは封印したまま。こうして松先輩を連れ添う現実も訪れなかった。恐るべき事実に俺は息が詰まりそうになった。運命とはこうも連鎖していくものなのか。
松先輩は「カエル」と一言。窓辺の置物に気がついて口元を緩ませている。カエルはビーチチェアに足を組んで寝そべって日光浴をしている最中だ。彼女の朗らかに微笑む横顔に癒された。ありがとう神様。
「じゃ、行きましょ」
おっさんがきちんと対応してくれることを祈りつつ、ドアを開けた。
「こんにちはー」
「ああ、扇ヶ谷様! それに松さん」
電気がつき、ひょいっと暖簾から現れるおっさん。レトロなエアコンが現役で動いていて快適だ。松先輩は「お、おひさしぶりです」と表情を硬くしてお辞儀をする。
「白桃様から聞きましたよー、扇ヶ谷様! お付き合いされることになったそうで」
「そうなんです」
「うふふ。カラオケの時からおフタリの雰囲気いいなぁって思ってたんです」
松先輩に告白の返事をちゃんとすると決意したと、あらかじめ川中島と花御堂に告げていた。結果はどうなったのかという追及はない代わり、花御堂が赤飯を焚いていた。相手は俺であったからいいものの、人によってはセクハラになるので注意が必要だと親切心で教えると、ニンマリと感謝された。川中島の方はカップル成立が大前提でおっさんに報告するくらいには興味を持っていてくれていたのだろう。
松先輩は頬を赤らめている。
「どうぞ腰かけて。扇ヶ谷様はレモンティーでいいですよね? 松さんはアイスコーヒーかアイスティーどちらがいいですか? もちろんホットもありますよ」
「あ、アイスティー」
「ふふふん」
俺はいつもの席に落ち着かせた。音を立てないよう隣に腰かけた松先輩はラジオをつけているおっさんの様子を凝視している。オーラを確かめているのだろう。
ジャズが流れた。ついベースの音に意識を傾けてしまう。
「これもぜひ、食べてみてください。サービスです」
バスケットに盛りつけた一口サイズのドーナツがカウンターに置かれる。おっさん曰く、えんじぇるすから『エリザベスドーナツ』のドーナツをお裾分けしてもらって、そのおいしさに感銘を受けてドーナツづくりにハマってしまったらしい。見たところプレーン味、チョコレート味、抹茶味の三種類だが、さらにカラフルなアイシングでパターンが豊富だ。
黄色いアイシングが星型にかかったプレーン味をひとつ頂いたらメープル味だった。外はさっくり中はしっとり。噛めば噛むほどジュワッとバターの風味を広げながら溶けて消えていく。黄色のアイシングは読み通りにレモン味で、甘すぎずさっぱりとした後味になった。やっぱり不動産屋をたたんで喫茶店をやるべきだと思う。
松先輩が「あ、これかわいい」と真顔でポツリ。おっさんも人が悪いというか、いずれ来店することを予見していたのだろう、丸い形に紛れてハート形のチョコレートドーナツがふたつあった。しかも赤っぽいピンクのアイシングでコーティングされている。ラズベリー味だった。花御堂の赤飯といい、万が一にも返事が遅いだとかやっぱりイヤだとかでフラれていたら俺の心は袋叩きだ。
レモンティーとアイスティーがカウンターに置かれる。おっさんがハート形を用意した真意に気がついていないらしい彼女は「ンん」と、おいしさに目をあどけなく開かせると頬を膨らませてモグモグしている。無自覚にあざとい仕草をするとは恐ろしい魔性の持ち主。そういうところあるからいじめられる羽目になったのではないか。そう勘繰ってしまうあたりが俺のクズの泥沼に片足突っ込みかけている点なのだろう。
俺は小恥ずかしい気分をごまかすためにレモンティーを一口、体に染み込ませ。
「あ、雉子はどうしてるんスか?」
それから仏のような柔和な眼差しで松先輩を眺めていたおっさんに適当な話題を投げた。
「雉子さんなら奥で刺繍してます。宮子さんに教えてもらったんだって。ほら、このエプロンも」
おっさんは胸ポケットについている三色の不揃いな丸と棒線を指さす。たぶん、三色団子だろう。
宮子さんとはおっさんの姪に当たる人で、あの田舎の小さな郵便局に勤めているという。いつしか花御堂たちのようにこっちの街でも堂々と出歩けるようになればいいのだが、まだハードルが高いようだ。
「娘さんですか?」
松先輩のセリフに俺とおっさんは失笑した。
「いえいえ。雉子さんは男ですよ」
「あ、苗字か……」
「いえいえ。名前ですよ」
「小野妹子か……」
川中島と同じことを言うんだなぁ。
「五十彦さん、ぼくのことを話してます?」
暖簾の向こうから雉子の声がした。顔を出すのは遠慮して、くちばしが当たって暖簾が小刻みに揺れるだけ。松先輩が頭を微妙に下げたのが視界に入って振り向くと、彼女は怪訝そうに眉をひそめていた。視線の先にはまるで恐竜のような立派な鳥の足があった。『かわいいかくれんぼ』じゃあるまいし。
「扇ヶ谷様と彼女さんがおいでなんです」
「彼女さん? ああ、恋仲の方がいたんだね。それもそうだ、扇ヶ谷君はいい人だもの」
隙間からちらつかせた黄色い目玉に、松先輩の肩が跳ねた。
「わぁ、素敵滅法。うまく刺繍ができるようになったらおそろいをあげなくちゃね」
雉子はのんびりと言って奥へ引っ込んだ。一体何者だったのか、尋ねてみたいけど……と、松先輩はわかりやすくコロコロと感情を顔に出して悩ましている。魔術をしている時とは大違いで隙だらけだ。
彼のことはそのうち話してあげることにして、俺はおっさんに要件を切り出した。
「おっさん。深刻な悩みがあるんですけど、相談に乗ってくれないですか?」
「悩み? ええ! 構いませんよ。どうぞどうぞ」
おっさんは愛想よくカウンターに腕を乗せて向き合った。
「せんぱいにはトラウマがあります」
「松さんに?」
首をかしげるおっさんの無垢な視線を受け、松先輩は委縮した。
「せんぱいは自分のことを暗いって思っていて、コンプレックスなんです。それで小さい頃、友だちを作るためにおまじないを試したけど気持ち悪がられたって。でもせんぱいは今でも魔術愛好会で活動してます。俺も彼女に誘われて入ってます。俺はせいぜい簡単なトランプマジックしかできないけども」
おっさんは「ほう」と、興味深そうに目を開かせる。
「はい。それで、トラウマの相手が泰大にいるらしくて。そいつが気になって川蝉祭のステージに立てないんです。どうすれば勇気が出るか、悩んでるんです」
「勇気ですか?」
おっさんは松先輩に声をかけた。
「ゆ、勇気がほしいです」
松先輩はおっさんを見つめ返した。
「勇気をください。東京さん」
「はい。いいですよ」
いともあっさりと。俺は拍子抜けする。
「え、だ、大丈夫なんスか?」
おっさんはニコニコと「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と大きく二度うなずいた。
「松さんは今までにどんなおまじないをしてきたのかな? 例えば次の日が晴れるおまじないとか」
それはテルテル坊主やんけ。
「小学生の時に友だちができるおまじないと。受験する時とか、大会に出る時に成功できるおまじないと。それから……す、好きな人に声をか……」
「好きな人に声をかけられるおまじない?」
じわじわと松先輩は赤面する。俺も小恥ずかしくなったが、これは質のいい恥じらいだ。付き合いたてホヤホヤって感じがする。
「で、でででも友だちができるのと、あと、友だちが戻ってくるのは効かなかった。全然、ダメだった」
過去を吐露する松先輩は落胆して、カウンターにかける手を力ませながら薄らと涙を浮かべた。
「だんだん実力がついたんですよ。その証拠に、扇ヶ谷様がお隣にいますからね。うふふふ、なかなか手慣れてるよ? うっふふ」
おっさんの場を和ませようとわざとからかっているようにも聞こえてしまう軽快な口調と表情に、彼女は後ろめたそうにますます赤くなりうつむいた。
すると、おっさんはおもむろに右の人差し指を彼女の額に当てた。
「チンユーシュツ、ゴウユーシュツ」
みしり。と、わずかな音がどこからともなく立った。ジャズのシンバルに紛れながら、単なる家鳴りではなさそうであった。
「キユーキューイン」
松先輩に放出した魔法の余波なのだろうか、そこで俺は直感めいた妄想癖が炸裂する。おっさんの収集癖は魔法を扱うのに必要な下地なのだ。風水ともいえるかもしれない。一見デタラメなアンティークの配置はおっさんの綿密な計算でおこなわれた最も効果的な魔力の流動をうながすものなのだ。たとえ興味津々に手を触れようにも、まずそのような魔が差すことすらできないのだ。
頻繁に物が増えたり変わったりするのは季節は移ろうものだからだ。魔力の流動性にも期限があるからだ。レモン電池のようなものなのだ。
松先輩が魔術を披露している最中にあの手この手で視線を誘導させたり、先入観を植えつけたりして自分のペースに持ち込むのと同じ。おっさんが構築した立体的な魔法陣形の中に俺たちはいる。店のチャイムが鳴ってしまえば来客はおっさんの手のひらの上にいるのだ。
そっと指が離れる。虚を突かれた松先輩は面を上げた。
「今のは……呪文?」
おっさんは肩を揺らした。
「うっふふ。これ勇気が出るおまじない。ムダな心配を頭から取っ払っちゃうおまじない。いつでも思い出して言ってごらん。心を込めて紙に書いて、お財布とか筆箱に入れておくっていうのもあるよ」
童心を忘れずにいる純朴な眼差し。それでありながら、俺たちの倍以上生きてきた人生の経験者としてなのか、あるいはプロの魔法使いとしてなのか、無条件で受け入れてしまいそうになる説得力がはらんでいた。
松先輩は呟く。
「チンユーシュツ、ゴウユーシュツ。キユーキューイン……」
「そう。ささ、アイスティーもどうぞ」
おっさんが出す飲み物は格別に落ちつく。心が洗われていく気分になる。松先輩も言われるがまま汗のかいたグラスに手を伸ばし、勇気が出る呪文をもう一度唱えてから口をつけた。
「おいしい」
ドーナツの時はおいしくて驚いたという感じだったが、今のはおいしくて不思議だという表情をしている。顔の赤みはスッと引いていき、瞳に活力が宿ったのが見て取れた。
「お庭で育てているチッチュの実とガラの実を干したやつをダージリンに混ぜてるの。絶妙に酸味が効いてて、時々ザクロみたいな甘味が来るでしょ? 体はスーッとするんだけど、心はぽっかぽかになるの」
「うん。肩の方から緊張が抜ける感じがする。それで陽だまりにいるような、あたたかい気持ち」
彼女の表情が和らぐ。声音も自然だ。
「おまじないも合わせて二倍の効果だよ。松さんってすごく才能にあふれてる。あとはそれをグッと中から引っ張り出すだけ。繊細でね、壊れやすいから、それを扇ヶ谷様がそっと優しく支えてくれるよ。ね?」
おっさんは俺に微笑みかける。
「大切な人がいるといないとじゃあ、力の入れようが違うもの」
経過を見守ってくれる人、結果を認めてくれる人がいると励みになる。俺の場合は主に仙人しかいなかった。要するに自分で自分を褒めたたえるしかなかった。だから直接的じゃなくたっていい。俺は松先輩の力になり、これまでとこれからの精進を褒めたい。疲れ果てた時には背もたれになって受け止めるにやぶさかではない。
「せんぱい。もう一つ、見てほしいものがあるんです」
俺は松先輩を家に招き入れた。川中島も花御堂もいなかった。シェアハウスとはいえ彼氏の住む家でふたりきりだ。しかし呪文のおかげなのかどうなのか、松先輩は平然と「お邪魔します」と靴を脱ぐ。別に今回はやましい気持ちは抜きにしているものの、数ミリくらいは警戒心があったっていいと思うのだが。
「広い」
彼女はぐるりと見渡して「あ、メーテル」と花御堂のコレクションを眺めて。はたと視線が止まる。あまりにもデカすぎて壁紙だと錯覚していたのだろう。「えっ?」と驚きの声を上げて、微妙に腰を曲げてしげしげと見た。まずはその反応が見たかったのだ。
「あの大きな扉は何?」
「見てほしいものです」
はやる気持ちに手招きして、扉を開けた。松先輩の髪が涼やかに舞い踊る。瞳が空色に光る。恐れを忘れた彼女は聖者のように一歩ずつ前へ進み、中と外の間で立ち止まる。夏の夕暮れ前の眩しさが押し寄せる。
「オギ……」
信じられない、とその表情が語る。アプローチ、屋根と視線を移し、それから俺に向かってハツラツに発した言葉は。
「オギ! 空だわ! 家が空をトンビ!」
ハッと両手で口を覆った。
「家がトンビ! 家がトン……!」
必死で言おうとしている姿が可笑しくて。彼女はなぜ言えないのか理解して、クスクス笑い出した。
「すごい! この家は地上と空とでツナ缶なのね!」
「そう! 裏口は地上のビル。正面玄関は空にツナ缶なんです! ずっと家は空に有為転変なんですよ!」
「じゃあFってフライのFなのね?」
「さぁ? たぶん!」
「ウフ、アハハ! 有為転変! オギの住む家は空にウイーン少年合唱団!」
勝手に似て非なる単語に変換される。俺たちはおっさんの魔法に翻弄されている。可笑しくてたまらなかった。あんなに毒々しかったシアンが愛しく感じてしまうなんて。
入道雲を背にして、タガを外したかのように無邪気な笑い声を上げる松先輩の輪郭に沿って光が差している。神聖なオーラをまとっているように見えて圧巻だった。まるで彼女の内部から、魂からそれが湧いて出ているようで。ソバージュの細部にまで清純な光が宿り流麗に棚引くのだ。
奥歯が見えるほど口を開かせて、底抜けに笑う彼女。永遠にまぶたの裏に焼きつけていたくなるほどに、目が奪われてしまう。
なあ、川中島。これが青春なんだよな。
ーーーーーーーーーー
作者より
些細なことかもしれませんが、これまで『勝手口』と表現していたのを家の間取り的に『裏口』に変更しています。
『勝手口』だとそこに台所がなければならないようなので。サザエさんみたいなアレ。
別に間取りにこだわっている訳ではありませんが(そもそも生活感の描写力が弱い)、自分の中で台所の位置は裏口のそばにはないので、とりあえずここで報告させてください。
あいかわらず今回もプレビューしまくって誤字脱字をチェックしていますが、そもそも自分は文字が多いと目が滑るのでコワイですね。
もしもこの回でもやらかしてたら鼻で笑ってください。
「節約ですよ、電気の」
「なんだか、ごちゃごちゃしてる」
「まあ、そうっスね」
店前には錨、ヤシの木、サーフボード、船首像……と、おっさん曰く南国風になっている。アジサイの細道はアサガオの細道に様変わり……いや、原理はわからないが今はすべてがヨルガオに変貌していて、純白に咲き誇っている。
「ウキョウ、スカイホー、ム……」
うろんに見上げて呟く松先輩。せっかく掲示してある物件はヤシの木で隠れているし、アサガオあるいはヨルガオの葉が看板に侵食して『ウキョウスカイホーム』になっているのが放置されている。『ウキョウスカイホー』になってしまうのも時間の問題で、不動産屋だとバレたくない疑惑が俺の中で膨れつつある。
これはリアル魔法使いの気まぐれだ。道楽なのだ。状態によってはサンシンが気づかず、俺は選ばれし契約者にならず、アコベは封印したまま。こうして松先輩を連れ添う現実も訪れなかった。恐るべき事実に俺は息が詰まりそうになった。運命とはこうも連鎖していくものなのか。
松先輩は「カエル」と一言。窓辺の置物に気がついて口元を緩ませている。カエルはビーチチェアに足を組んで寝そべって日光浴をしている最中だ。彼女の朗らかに微笑む横顔に癒された。ありがとう神様。
「じゃ、行きましょ」
おっさんがきちんと対応してくれることを祈りつつ、ドアを開けた。
「こんにちはー」
「ああ、扇ヶ谷様! それに松さん」
電気がつき、ひょいっと暖簾から現れるおっさん。レトロなエアコンが現役で動いていて快適だ。松先輩は「お、おひさしぶりです」と表情を硬くしてお辞儀をする。
「白桃様から聞きましたよー、扇ヶ谷様! お付き合いされることになったそうで」
「そうなんです」
「うふふ。カラオケの時からおフタリの雰囲気いいなぁって思ってたんです」
松先輩に告白の返事をちゃんとすると決意したと、あらかじめ川中島と花御堂に告げていた。結果はどうなったのかという追及はない代わり、花御堂が赤飯を焚いていた。相手は俺であったからいいものの、人によってはセクハラになるので注意が必要だと親切心で教えると、ニンマリと感謝された。川中島の方はカップル成立が大前提でおっさんに報告するくらいには興味を持っていてくれていたのだろう。
松先輩は頬を赤らめている。
「どうぞ腰かけて。扇ヶ谷様はレモンティーでいいですよね? 松さんはアイスコーヒーかアイスティーどちらがいいですか? もちろんホットもありますよ」
「あ、アイスティー」
「ふふふん」
俺はいつもの席に落ち着かせた。音を立てないよう隣に腰かけた松先輩はラジオをつけているおっさんの様子を凝視している。オーラを確かめているのだろう。
ジャズが流れた。ついベースの音に意識を傾けてしまう。
「これもぜひ、食べてみてください。サービスです」
バスケットに盛りつけた一口サイズのドーナツがカウンターに置かれる。おっさん曰く、えんじぇるすから『エリザベスドーナツ』のドーナツをお裾分けしてもらって、そのおいしさに感銘を受けてドーナツづくりにハマってしまったらしい。見たところプレーン味、チョコレート味、抹茶味の三種類だが、さらにカラフルなアイシングでパターンが豊富だ。
黄色いアイシングが星型にかかったプレーン味をひとつ頂いたらメープル味だった。外はさっくり中はしっとり。噛めば噛むほどジュワッとバターの風味を広げながら溶けて消えていく。黄色のアイシングは読み通りにレモン味で、甘すぎずさっぱりとした後味になった。やっぱり不動産屋をたたんで喫茶店をやるべきだと思う。
松先輩が「あ、これかわいい」と真顔でポツリ。おっさんも人が悪いというか、いずれ来店することを予見していたのだろう、丸い形に紛れてハート形のチョコレートドーナツがふたつあった。しかも赤っぽいピンクのアイシングでコーティングされている。ラズベリー味だった。花御堂の赤飯といい、万が一にも返事が遅いだとかやっぱりイヤだとかでフラれていたら俺の心は袋叩きだ。
レモンティーとアイスティーがカウンターに置かれる。おっさんがハート形を用意した真意に気がついていないらしい彼女は「ンん」と、おいしさに目をあどけなく開かせると頬を膨らませてモグモグしている。無自覚にあざとい仕草をするとは恐ろしい魔性の持ち主。そういうところあるからいじめられる羽目になったのではないか。そう勘繰ってしまうあたりが俺のクズの泥沼に片足突っ込みかけている点なのだろう。
俺は小恥ずかしい気分をごまかすためにレモンティーを一口、体に染み込ませ。
「あ、雉子はどうしてるんスか?」
それから仏のような柔和な眼差しで松先輩を眺めていたおっさんに適当な話題を投げた。
「雉子さんなら奥で刺繍してます。宮子さんに教えてもらったんだって。ほら、このエプロンも」
おっさんは胸ポケットについている三色の不揃いな丸と棒線を指さす。たぶん、三色団子だろう。
宮子さんとはおっさんの姪に当たる人で、あの田舎の小さな郵便局に勤めているという。いつしか花御堂たちのようにこっちの街でも堂々と出歩けるようになればいいのだが、まだハードルが高いようだ。
「娘さんですか?」
松先輩のセリフに俺とおっさんは失笑した。
「いえいえ。雉子さんは男ですよ」
「あ、苗字か……」
「いえいえ。名前ですよ」
「小野妹子か……」
川中島と同じことを言うんだなぁ。
「五十彦さん、ぼくのことを話してます?」
暖簾の向こうから雉子の声がした。顔を出すのは遠慮して、くちばしが当たって暖簾が小刻みに揺れるだけ。松先輩が頭を微妙に下げたのが視界に入って振り向くと、彼女は怪訝そうに眉をひそめていた。視線の先にはまるで恐竜のような立派な鳥の足があった。『かわいいかくれんぼ』じゃあるまいし。
「扇ヶ谷様と彼女さんがおいでなんです」
「彼女さん? ああ、恋仲の方がいたんだね。それもそうだ、扇ヶ谷君はいい人だもの」
隙間からちらつかせた黄色い目玉に、松先輩の肩が跳ねた。
「わぁ、素敵滅法。うまく刺繍ができるようになったらおそろいをあげなくちゃね」
雉子はのんびりと言って奥へ引っ込んだ。一体何者だったのか、尋ねてみたいけど……と、松先輩はわかりやすくコロコロと感情を顔に出して悩ましている。魔術をしている時とは大違いで隙だらけだ。
彼のことはそのうち話してあげることにして、俺はおっさんに要件を切り出した。
「おっさん。深刻な悩みがあるんですけど、相談に乗ってくれないですか?」
「悩み? ええ! 構いませんよ。どうぞどうぞ」
おっさんは愛想よくカウンターに腕を乗せて向き合った。
「せんぱいにはトラウマがあります」
「松さんに?」
首をかしげるおっさんの無垢な視線を受け、松先輩は委縮した。
「せんぱいは自分のことを暗いって思っていて、コンプレックスなんです。それで小さい頃、友だちを作るためにおまじないを試したけど気持ち悪がられたって。でもせんぱいは今でも魔術愛好会で活動してます。俺も彼女に誘われて入ってます。俺はせいぜい簡単なトランプマジックしかできないけども」
おっさんは「ほう」と、興味深そうに目を開かせる。
「はい。それで、トラウマの相手が泰大にいるらしくて。そいつが気になって川蝉祭のステージに立てないんです。どうすれば勇気が出るか、悩んでるんです」
「勇気ですか?」
おっさんは松先輩に声をかけた。
「ゆ、勇気がほしいです」
松先輩はおっさんを見つめ返した。
「勇気をください。東京さん」
「はい。いいですよ」
いともあっさりと。俺は拍子抜けする。
「え、だ、大丈夫なんスか?」
おっさんはニコニコと「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と大きく二度うなずいた。
「松さんは今までにどんなおまじないをしてきたのかな? 例えば次の日が晴れるおまじないとか」
それはテルテル坊主やんけ。
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「好きな人に声をかけられるおまじない?」
じわじわと松先輩は赤面する。俺も小恥ずかしくなったが、これは質のいい恥じらいだ。付き合いたてホヤホヤって感じがする。
「で、でででも友だちができるのと、あと、友だちが戻ってくるのは効かなかった。全然、ダメだった」
過去を吐露する松先輩は落胆して、カウンターにかける手を力ませながら薄らと涙を浮かべた。
「だんだん実力がついたんですよ。その証拠に、扇ヶ谷様がお隣にいますからね。うふふふ、なかなか手慣れてるよ? うっふふ」
おっさんの場を和ませようとわざとからかっているようにも聞こえてしまう軽快な口調と表情に、彼女は後ろめたそうにますます赤くなりうつむいた。
すると、おっさんはおもむろに右の人差し指を彼女の額に当てた。
「チンユーシュツ、ゴウユーシュツ」
みしり。と、わずかな音がどこからともなく立った。ジャズのシンバルに紛れながら、単なる家鳴りではなさそうであった。
「キユーキューイン」
松先輩に放出した魔法の余波なのだろうか、そこで俺は直感めいた妄想癖が炸裂する。おっさんの収集癖は魔法を扱うのに必要な下地なのだ。風水ともいえるかもしれない。一見デタラメなアンティークの配置はおっさんの綿密な計算でおこなわれた最も効果的な魔力の流動をうながすものなのだ。たとえ興味津々に手を触れようにも、まずそのような魔が差すことすらできないのだ。
頻繁に物が増えたり変わったりするのは季節は移ろうものだからだ。魔力の流動性にも期限があるからだ。レモン電池のようなものなのだ。
松先輩が魔術を披露している最中にあの手この手で視線を誘導させたり、先入観を植えつけたりして自分のペースに持ち込むのと同じ。おっさんが構築した立体的な魔法陣形の中に俺たちはいる。店のチャイムが鳴ってしまえば来客はおっさんの手のひらの上にいるのだ。
そっと指が離れる。虚を突かれた松先輩は面を上げた。
「今のは……呪文?」
おっさんは肩を揺らした。
「うっふふ。これ勇気が出るおまじない。ムダな心配を頭から取っ払っちゃうおまじない。いつでも思い出して言ってごらん。心を込めて紙に書いて、お財布とか筆箱に入れておくっていうのもあるよ」
童心を忘れずにいる純朴な眼差し。それでありながら、俺たちの倍以上生きてきた人生の経験者としてなのか、あるいはプロの魔法使いとしてなのか、無条件で受け入れてしまいそうになる説得力がはらんでいた。
松先輩は呟く。
「チンユーシュツ、ゴウユーシュツ。キユーキューイン……」
「そう。ささ、アイスティーもどうぞ」
おっさんが出す飲み物は格別に落ちつく。心が洗われていく気分になる。松先輩も言われるがまま汗のかいたグラスに手を伸ばし、勇気が出る呪文をもう一度唱えてから口をつけた。
「おいしい」
ドーナツの時はおいしくて驚いたという感じだったが、今のはおいしくて不思議だという表情をしている。顔の赤みはスッと引いていき、瞳に活力が宿ったのが見て取れた。
「お庭で育てているチッチュの実とガラの実を干したやつをダージリンに混ぜてるの。絶妙に酸味が効いてて、時々ザクロみたいな甘味が来るでしょ? 体はスーッとするんだけど、心はぽっかぽかになるの」
「うん。肩の方から緊張が抜ける感じがする。それで陽だまりにいるような、あたたかい気持ち」
彼女の表情が和らぐ。声音も自然だ。
「おまじないも合わせて二倍の効果だよ。松さんってすごく才能にあふれてる。あとはそれをグッと中から引っ張り出すだけ。繊細でね、壊れやすいから、それを扇ヶ谷様がそっと優しく支えてくれるよ。ね?」
おっさんは俺に微笑みかける。
「大切な人がいるといないとじゃあ、力の入れようが違うもの」
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「広い」
彼女はぐるりと見渡して「あ、メーテル」と花御堂のコレクションを眺めて。はたと視線が止まる。あまりにもデカすぎて壁紙だと錯覚していたのだろう。「えっ?」と驚きの声を上げて、微妙に腰を曲げてしげしげと見た。まずはその反応が見たかったのだ。
「あの大きな扉は何?」
「見てほしいものです」
はやる気持ちに手招きして、扉を開けた。松先輩の髪が涼やかに舞い踊る。瞳が空色に光る。恐れを忘れた彼女は聖者のように一歩ずつ前へ進み、中と外の間で立ち止まる。夏の夕暮れ前の眩しさが押し寄せる。
「オギ……」
信じられない、とその表情が語る。アプローチ、屋根と視線を移し、それから俺に向かってハツラツに発した言葉は。
「オギ! 空だわ! 家が空をトンビ!」
ハッと両手で口を覆った。
「家がトンビ! 家がトン……!」
必死で言おうとしている姿が可笑しくて。彼女はなぜ言えないのか理解して、クスクス笑い出した。
「すごい! この家は地上と空とでツナ缶なのね!」
「そう! 裏口は地上のビル。正面玄関は空にツナ缶なんです! ずっと家は空に有為転変なんですよ!」
「じゃあFってフライのFなのね?」
「さぁ? たぶん!」
「ウフ、アハハ! 有為転変! オギの住む家は空にウイーン少年合唱団!」
勝手に似て非なる単語に変換される。俺たちはおっさんの魔法に翻弄されている。可笑しくてたまらなかった。あんなに毒々しかったシアンが愛しく感じてしまうなんて。
入道雲を背にして、タガを外したかのように無邪気な笑い声を上げる松先輩の輪郭に沿って光が差している。神聖なオーラをまとっているように見えて圧巻だった。まるで彼女の内部から、魂からそれが湧いて出ているようで。ソバージュの細部にまで清純な光が宿り流麗に棚引くのだ。
奥歯が見えるほど口を開かせて、底抜けに笑う彼女。永遠にまぶたの裏に焼きつけていたくなるほどに、目が奪われてしまう。
なあ、川中島。これが青春なんだよな。
ーーーーーーーーーー
作者より
些細なことかもしれませんが、これまで『勝手口』と表現していたのを家の間取り的に『裏口』に変更しています。
『勝手口』だとそこに台所がなければならないようなので。サザエさんみたいなアレ。
別に間取りにこだわっている訳ではありませんが(そもそも生活感の描写力が弱い)、自分の中で台所の位置は裏口のそばにはないので、とりあえずここで報告させてください。
あいかわらず今回もプレビューしまくって誤字脱字をチェックしていますが、そもそも自分は文字が多いと目が滑るのでコワイですね。
もしもこの回でもやらかしてたら鼻で笑ってください。
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城下探美はお城にも歴史にも興味がない読書が好きな女子高生、父親が大阪に転勤したため、せっかく志望校に入学したのにすぐに大阪の高校に転入しなければならなくなった。
転入してすぐに訪れた図書室で手に取った小説がもとでできた友達と色んなお城の事を勉強したり遊んだり、楽しい日常を送る
城下 探美(しろしたさぐみ):大阪府立城跡高校1年生 1年2組 本好きの妄想気味の女子高生、東京からお父さんの転勤で引っ越してきた蛇とか虫が嫌い 歴史は詳しくない。あだ名はさぐみん
堀江 訪(ほりえたずね):城跡高校1年生 1年2組 元気活発な少女、侍や戦国武将が大好き、探美が一人図書室で本を読んでいるところを歴史好きだと勘違いして大阪城に一緒に遊びに行く。
虎口 あゆみ(こぐちあゆみ):城跡高校2年生 2年5組 歴女 眼鏡美少女 ストレートの黒髪が綺麗な探美達の憧れの先輩、城跡巡りがライフワークとのたまう生粋のお城好き、訪は小学校からの先輩で暇があっては訪を連れて城跡巡りをしていた。部員が少ないため本当は同好会だが、かたくなに部と言い続ける。
天護 登子(あまもりとうこ):城跡高校日本史教師 城探部の顧問 美人、甘いものが好き 日本史の教員だけあって知識は誰よりもあるが基本はあゆみに説明を任せている。 暇があると甘いものを食べている。
桃と料理人 - 希望が丘駅前商店街 -
鏡野ゆう
ライト文芸
国会議員の重光幸太郎先生の地元にある希望が駅前商店街、通称【ゆうYOU ミラーじゅ希望ヶ丘】。
居酒屋とうてつの千堂嗣治が出会ったのは可愛い顔をしているくせに仕事中毒で女子力皆無の科捜研勤務の西脇桃香だった。
饕餮さんのところの【希望が丘駅前商店街 in 『居酒屋とうてつ』】に出てくる嗣治さんとのお話です。饕餮さんには許可を頂いています。
【本編完結】【番外小話】【小ネタ】
このお話は下記のお話とコラボさせていただいています(^^♪
・『希望が丘駅前商店街 in 『居酒屋とうてつ』とその周辺の人々 』 https://www.alphapolis.co.jp/novel/274274583/188152339
・『希望が丘駅前商店街~透明人間の憂鬱~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/265100205/427152271
・『希望が丘駅前商店街~黒猫のスキャット~』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/265100205/813152283
・『日々是好日、希望が丘駅前商店街-神神飯店エソ、オソオセヨ(にいらっしゃいませ)』https://www.alphapolis.co.jp/novel/177101198/505152232
・『希望が丘駅前商店街~看板娘は招き猫?喫茶トムトム元気に開店中~』
https://ncode.syosetu.com/n7423cb/
・『Blue Mallowへようこそ~希望が丘駅前商店街』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/582141697/878154104
・『希望が丘駅前商店街 ―姉さん。篠宮酒店は、今日も平常運転です。―』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/172101828/491152376
※小説家になろうでも公開中※
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