10 / 10
滝ツ瀬と月子
しおりを挟む
「滝ツ瀬は死んだってことでいいのかな」
「呪いが解けたんでしょ」
「呪いって。そんなもんで片付けられる問題かよ」
「彼がそう言ってたんだからしょうがないじゃない」
「お前はいつから気づいてたんだ?」
「制服の名札と遺書に書いてあったのと一致してなかったのよ」
「あー……。物心ついた時からいたからさ。あれが普通だと思ってたんだよ。結局、いつから本物の妹としゃべってないのかわかんない。……何もかも、海洋のせいだ。あいつが妹を壊したんだ。わかってたら、ぶっ殺してたのに。太陽だってきっとあいつが」
「しっ!」
「……」
「今更、怒り狂ってもどうにもなんないでしょ。あたしもあまり深く考えたくないわ。……で、リハビリの予定は?」
「下半身がやばくてさ、車椅子生活になる。でも不随じゃないからいずれ歩けるようになるって。これって不幸中の幸いって言えんのかな……」
「そう」
「お願いがあるんだけどさ。妹の前ではオネエ口調やめといてほしんだよ。聞かれてさ、彼女いるのかなって」
「イヤよ」
「目覚めて早々、失恋なんて最悪じゃん」
「いいじゃない。あんな高いところから落ちても生きてたのよ? しかも病気まで自然治癒されつつあるってんだから。ずぶとく長生きするわよ、あの子。静かにしてればカワイイんだから、いくらでも男作れるわよ」
「やめろよ、人の妹に向かってそんな言い方。純粋なんだぞ」
「あら、ご免遊ばせ。田瀬大地、さ、ん」
〈了〉
「呪いが解けたんでしょ」
「呪いって。そんなもんで片付けられる問題かよ」
「彼がそう言ってたんだからしょうがないじゃない」
「お前はいつから気づいてたんだ?」
「制服の名札と遺書に書いてあったのと一致してなかったのよ」
「あー……。物心ついた時からいたからさ。あれが普通だと思ってたんだよ。結局、いつから本物の妹としゃべってないのかわかんない。……何もかも、海洋のせいだ。あいつが妹を壊したんだ。わかってたら、ぶっ殺してたのに。太陽だってきっとあいつが」
「しっ!」
「……」
「今更、怒り狂ってもどうにもなんないでしょ。あたしもあまり深く考えたくないわ。……で、リハビリの予定は?」
「下半身がやばくてさ、車椅子生活になる。でも不随じゃないからいずれ歩けるようになるって。これって不幸中の幸いって言えんのかな……」
「そう」
「お願いがあるんだけどさ。妹の前ではオネエ口調やめといてほしんだよ。聞かれてさ、彼女いるのかなって」
「イヤよ」
「目覚めて早々、失恋なんて最悪じゃん」
「いいじゃない。あんな高いところから落ちても生きてたのよ? しかも病気まで自然治癒されつつあるってんだから。ずぶとく長生きするわよ、あの子。静かにしてればカワイイんだから、いくらでも男作れるわよ」
「やめろよ、人の妹に向かってそんな言い方。純粋なんだぞ」
「あら、ご免遊ばせ。田瀬大地、さ、ん」
〈了〉
0
お気に入りに追加
2
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
ぐちょべちょラ/惨酷の定義
握夢(グーム)
ホラー
意識が戻った時に記憶が無かった。動けない。目も見えない。
ただいえることは、おれは、……喰われていた!?
なぜこんなことになったのか。―――そしておれは一体何者なんだ!?
15分で読める、ミステリーテイストの強い、怖さ&残酷描写が軽めのライトホラーです。
変貌忌譚―変態さんは路地裏喫茶にお越し―
i'm who?
ホラー
まことしやかに囁かれる噂……。
寂れた田舎町の路地裏迷路の何処かに、人ならざる異形の存在達が営む喫茶店が在るという。
店の入口は心の隙間。人の弱さを喰らう店。
そこへ招かれてしまう難儀な定めを持った彼ら彼女ら。
様々な事情から世の道理を逸しかけた人々。
それまでとは異なるものに成りたい人々。
人間であることを止めようとする人々。
曰く、その喫茶店では【特別メニュー】として御客様のあらゆる全てを対価に、今とは別の生き方を提供してくれると噂される。それはもしも、あるいは、たとえばと。誰しもが持つ理想願望の禊。人が人であるがゆえに必要とされる祓。
自分自身を省みて現下で踏み止まるのか、何かを願いメニューを頼んでしまうのか、全て御客様本人しだい。それ故に、よくよく吟味し、見定めてくださいませ。結果の救済破滅は御客しだい。旨いも不味いも存じ上げませぬ。
それでも『良い』と嘯くならば……。
さぁ今宵、是非ともお越し下さいませ。
※注意点として、メニューの返品や交換はお受けしておりませんので悪しからず。
※この作品は【小説家になろう】さん【カクヨム】さんにも同時投稿しております。 ©️2022 I'm who?
敗者の街 Ⅱ ― Open the present road ―
譚月遊生季
ホラー
※この作品は「敗者の街 ― Requiem to the past ―」の続編になります。
第一部はこちら。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/33242583/99233521
イギリスの記者オリーヴ・サンダースは、友人ロデリック・アンダーソンの著書「敗者の街」を読み、強い関心を示していた。
死後の世界とも呼べる「敗者の街」……そこに行けば、死別した恋人に会えるかもしれない。その欲求に応えるかのように、閉ざされていた扉は開かれる。だが、「敗者の街」に辿り着いた途端、オリーヴの亡き恋人に関する記憶はごっそりと抜け落ちてしまった。
新たに迷い込んだ生者や、外に出ようと目論む死者。あらゆる思惑が再び絡み合い、交錯する。
オリーヴは脱出を目指しながらも、渦巻く謀略に巻き込まれていく……
──これは、進むべき「現在」を切り拓く物語。
《注意書き》
※記号の後の全角空白は私が個人的にWeb媒体では苦手に感じるので、半角にしております。
※過激な描写あり。特に心がしんどい時は読む際注意してください。
※現実世界のあらゆる物事とは一切関係がありません。ちなみに、迂闊に真似をしたら呪われる可能性があります。
※この作品には暴力的・差別的な表現も含まれますが、差別を助長・肯定するような意図は一切ございません。場合によっては復讐されるような行為だと念頭に置いて、言動にはどうか気をつけて……。
※特殊性癖も一般的でない性的嗜好も盛りだくさんです。キャラクターそれぞれの生き方、それぞれの愛の形を尊重しています。
信者奪還
ゆずさくら
ホラー
直人は太位無教の信者だった。しかし、あることをきっかけに聖人に目をつけられる。聖人から、ある者の獲得を迫られるが、直人はそれを拒否してしまう。教団に逆らった為に監禁された直人の運命は、ひょんなことから、あるトラック運転手に託されることになる……
コルチカム
白キツネ
ホラー
都会から遠く、遠く離れた自然が多い田舎町。そんな場所に父親の都合で転校することになった綾香は3人の友人ができる。
少し肌寒く感じるようになった季節、綾香は季節外れの肝試しに誘われた。
4人で旧校舎に足を踏み入れると、綾香たちに不思議な現象が襲い掛かる。
微ホラーです。
他小説投稿サイト様にも掲載しております。
狼の仮面
YHQ337IC
ホラー
【監督】狼の仮面 ~狼出没中。あなたは無事生き延びられるか!?狼パニックムービー 狼のマスクを被った人間が狼を装って人を襲い金品を奪うという事件が起こった。被害にあった人間は全員死亡している。警察だけでは対応できないと判断が下され、政府は対策に乗り出した。しかしいくら待っても狼が現れる気配はない。これは政府が秘密裏に狼の駆除を行っていたのだ。
そんな中、とある男がネットオークションで狼に変身する薬を落札してしまう。…という映画が起こす怪事件。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる