詞詩集

鳥丸唯史(とりまるただし)

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世紀末ロボット

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ようやく抜け出したね はがねの国
それはあなたの力 わたしじゃない
出来損ないでした 非力でした
見つめているだけでした 苦しむ姿

あなたを励ます言葉も出なけりゃ
あなたを抱きしめる腕もありゃしない

このたび欠陥品を与えたこと
心よりお詫びを申し上げます
役立たずでした 愚かでした
聞き流すだけでした むせぶ声を

あなたに同情する涙も出なけりゃ
あなたと共にゆく脚もありゃしない

わたしのことなどさっさと置いてかまわない
生まれつき不具合なわたしなど 卑屈なわたしなど
おお、あなたはたくましい あなたは美しい
当然ひとりでも生きてゆけるはずさ ねえそうでしょう

どす黒い土煙にもまれ 赤錆びた火器をけっ飛ばし
光る風が祝う国へ 花笑う国へと
おお、あなたは勇ましい あなたは奥ゆかしい
当然ひとりでも生きてゆけるはずさ ねえそうでしょう
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