「あなたと私なら都合のいい結婚ができるんじゃない?」~魔術契約士の契約再婚~

神田柊子

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新しい魔術契約士

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 事務所で仕事をしていると久しぶりにブラッドから連絡があった。
 会話ができる通信魔道具だ。
『やあ、おめでとう』
「ん? 何かあったか?」
『あれ? まだ知らなかったのか?』
 参ったな、とブラッドは困った声だ。
『クラリスさんが君を驚かせるつもりだったなら、謝っておいてくれ』
 そう断ってから、ブラッドは続けた。
『魔術契約士の国家試験の合格者が発表されたんだが、クラリス・フォーグラフの名前があったよ』
「ええっ!」
 クラリスが受験したのもハリーは知らなかった。
 魔術の勉強をし直しているのは聞いていたが、それだけだ。
 魔術契約士の勉強はいつやっていたのだろう。現役の自分が質問を受けることは一度もなかった。
 独学で? ハリーの蔵書を読んだだけで合格したのか。
「さすがだな」
『今度また招待するよ。祝いはそのときに』
「ああ、ありがとう。伝えておく」
 通信を切ると、ハリーは夕刊を手に取る。
 ブラッドは勤め先の王立魔術院経由で知ったのかもしれないが、国家試験の合格者は新聞にも載っているはずだ。
「所長、お客様です」
 そこで秘書のドリスが声をかけた。
「事務所で働きたいとおっしゃっています」
 顔を上げると、受付カウンターの向こうにクラリスがいた。
 ドリスは笑って「奥様が」と付け加えた。
 こちらに向かって手を振るクラリスの薬指には、変わらず指輪が二つ。
 お互いの結婚契約の指輪は一年経った今でも色を保っていた。


終わり
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みんなの感想(1件)

asagiyamagenta
2024.12.30 asagiyamagenta

訳アリ(婚姻歴あり)同士ですが、いい夫婦!良いお話でした。
ご両人、燃え上がるような恋はなくても穏やかに愛を育んで、仲良く老いてゆくような気がします。
或いは、ひょっこり子宝を授かったり……?

2024.12.30 神田柊子

感想ありがとうございます。

解除

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