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第一部
閑話
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カメイは背後の丘を仰ぎ見る。
曇り空に飛行機が飛び立っていく。
北に向かって飛んだ青銀は、騎士団副団長ルッボーの飛行機サイラスだろう。
「あいつも変わんねぇなぁ」
平民出身でありながら軍関係者だけでなく国王からも信頼を得ている氷の副団長は、しれっとした顔で「あなたに連絡したいときはどうすれば?」と聞いてきた。つまり、モルイワイルモとの伝手だ。
ミクラの圧力もあり、結局はベールルーベ王国内にある窓口を教えることになってしまった。
そのミクラには殴られた。
まあ、想定内だ。
そのあとで「生きていて良かった」と抱きしめられたのは、意外だった。
ミクラが気にしているとは思っていなかったのだ。栄えある飛行騎士団の団長として、意気揚々とやっていると思っていた。
「なんだ、気にしてたのか……」
「当たり前だ!」
もう一度殴られた。
――昨夜のことだ。
今朝はマーナベーナと話をし、やはり蹴られた。
マーナベーナはカメイを許さなかった。
「ハヤシさんはモルイワイルモをやめるつもりはないんでしょ?」
「そうだな」
「サリヤじゃないけれど……、ハヤシという男は死んだのよ」
マーナベーナはカッラ王子の事情を聞いたらしい。カメイは聞いてはいないが、だいたいは理解している。
カッラ王子――もといサリヤ王女から譲り受けた短剣を旅装のマントの上から叩く。魔法の鞘は人の手では抜けなそうだった。
いつか何かのときに彼女が呼んだなら、自分は彼女の剣になるだろう。
空に鮮やかな黄色の機体が舞っている。
マーナベーナにはまた会いに来ると約束したが、信頼できないと睨まれた。
空を見上げるカメイの頭を、大きな鷹が足蹴にする。モルイワイルモから伝言を持ってきた鳥だった。
「いって!」
んだよこら、と悪態をつくが鷹は気にしない。さっさと歩けとばかりにカメイを促す。
鷹を追い払うと、黄色の飛行機の後ろに白い飛行機が続いたのが見えた。
曇り空に飛行機が飛び立っていく。
北に向かって飛んだ青銀は、騎士団副団長ルッボーの飛行機サイラスだろう。
「あいつも変わんねぇなぁ」
平民出身でありながら軍関係者だけでなく国王からも信頼を得ている氷の副団長は、しれっとした顔で「あなたに連絡したいときはどうすれば?」と聞いてきた。つまり、モルイワイルモとの伝手だ。
ミクラの圧力もあり、結局はベールルーベ王国内にある窓口を教えることになってしまった。
そのミクラには殴られた。
まあ、想定内だ。
そのあとで「生きていて良かった」と抱きしめられたのは、意外だった。
ミクラが気にしているとは思っていなかったのだ。栄えある飛行騎士団の団長として、意気揚々とやっていると思っていた。
「なんだ、気にしてたのか……」
「当たり前だ!」
もう一度殴られた。
――昨夜のことだ。
今朝はマーナベーナと話をし、やはり蹴られた。
マーナベーナはカメイを許さなかった。
「ハヤシさんはモルイワイルモをやめるつもりはないんでしょ?」
「そうだな」
「サリヤじゃないけれど……、ハヤシという男は死んだのよ」
マーナベーナはカッラ王子の事情を聞いたらしい。カメイは聞いてはいないが、だいたいは理解している。
カッラ王子――もといサリヤ王女から譲り受けた短剣を旅装のマントの上から叩く。魔法の鞘は人の手では抜けなそうだった。
いつか何かのときに彼女が呼んだなら、自分は彼女の剣になるだろう。
空に鮮やかな黄色の機体が舞っている。
マーナベーナにはまた会いに来ると約束したが、信頼できないと睨まれた。
空を見上げるカメイの頭を、大きな鷹が足蹴にする。モルイワイルモから伝言を持ってきた鳥だった。
「いって!」
んだよこら、と悪態をつくが鷹は気にしない。さっさと歩けとばかりにカメイを促す。
鷹を追い払うと、黄色の飛行機の後ろに白い飛行機が続いたのが見えた。
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