27 / 30
第四章 「政略結婚は……?」「熱愛の始まり!」
エピローグ
しおりを挟む
夜会も終わり、領地に帰ってきた。
アニエスはいつもと同じ時間に目が覚めた。
目の前には壁がある。
髪を撫でられる感触も毎朝のことだ。
温かい腕の中で、アニエスは今日の予定を考える。
(午前は離れに行って、報告官育成の進捗の確認。それから執務。午後は、手つかずの客室の内装の検討ね)
「あ!」
アニエスが声を上げると、フィリップが「おはよう」とアニエスの額に口づけを落とす。――フィリップもアニエスの寝起きに驚かなくなっていた。
「おはようございます」
「今日は何を思いついたんだ?」
「乗馬です、乗馬。フィリップ様が教えてくださるって」
「ああ、晴れたらという約束だったな」
主寝室のカーテンの隙間から明るい光が差し込んでいる。
「フィリップ様の今日の予定は?」
「朝は鍛錬。午後は何か書類確認があると昨日アンドレが言っていた気がする」
「私は午後に時間があると思うのですが、お忙しいですか?」
アニエスが見上げると、フィリップは「うっ」と言葉に詰まったあと、
「いや、書類なんていつでも確認できる。アニエスの予定に合わせよう!」
「良かった。ありがとうございます!」
アニエスが笑顔を浮かべると、フィリップは再度胸を押さえた。
結婚から三年後、ペルトボール辺境伯夫人は任期付きの議席を得る。
女性の議員は夫人が初めてだった。
オパール鉱山による領地の活性化、収支報告書の統一規格を周知させるための報告官育成の功績が認められた結果だ。また、結婚前の王太子筆頭補佐官の経験、実家マネジット伯爵領の観光業の成功も、議員当選への大きな後押しになった。
宰相やカラエラ侯爵のほか、大臣や議員の多数も、夫人を歓迎した。
議会の会期中、ペルトボール辺境伯は夫人を毎日馬車で送迎していた。
辺境伯と話すときに夫人が笑顔を浮かべることがあり、夫人の文官時代を知っている者は皆驚いたという。
終わり
----
最後までお付き合いありがとうございました。
アニエスはいつもと同じ時間に目が覚めた。
目の前には壁がある。
髪を撫でられる感触も毎朝のことだ。
温かい腕の中で、アニエスは今日の予定を考える。
(午前は離れに行って、報告官育成の進捗の確認。それから執務。午後は、手つかずの客室の内装の検討ね)
「あ!」
アニエスが声を上げると、フィリップが「おはよう」とアニエスの額に口づけを落とす。――フィリップもアニエスの寝起きに驚かなくなっていた。
「おはようございます」
「今日は何を思いついたんだ?」
「乗馬です、乗馬。フィリップ様が教えてくださるって」
「ああ、晴れたらという約束だったな」
主寝室のカーテンの隙間から明るい光が差し込んでいる。
「フィリップ様の今日の予定は?」
「朝は鍛錬。午後は何か書類確認があると昨日アンドレが言っていた気がする」
「私は午後に時間があると思うのですが、お忙しいですか?」
アニエスが見上げると、フィリップは「うっ」と言葉に詰まったあと、
「いや、書類なんていつでも確認できる。アニエスの予定に合わせよう!」
「良かった。ありがとうございます!」
アニエスが笑顔を浮かべると、フィリップは再度胸を押さえた。
結婚から三年後、ペルトボール辺境伯夫人は任期付きの議席を得る。
女性の議員は夫人が初めてだった。
オパール鉱山による領地の活性化、収支報告書の統一規格を周知させるための報告官育成の功績が認められた結果だ。また、結婚前の王太子筆頭補佐官の経験、実家マネジット伯爵領の観光業の成功も、議員当選への大きな後押しになった。
宰相やカラエラ侯爵のほか、大臣や議員の多数も、夫人を歓迎した。
議会の会期中、ペルトボール辺境伯は夫人を毎日馬車で送迎していた。
辺境伯と話すときに夫人が笑顔を浮かべることがあり、夫人の文官時代を知っている者は皆驚いたという。
終わり
----
最後までお付き合いありがとうございました。
2,746
お気に入りに追加
4,042
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
【完結】用済みと捨てられたはずの王妃はその愛を知らない
千紫万紅
恋愛
王位継承争いによって誕生した後ろ楯のない無力な少年王の後ろ楯となる為だけに。
公爵令嬢ユーフェミアは僅か10歳にして大国の王妃となった。
そして10年の時が過ぎ、無力な少年王は賢王と呼ばれるまでに成長した。
その為後ろ楯としての価値しかない用済みの王妃は廃妃だと性悪宰相はいう。
「城から追放された挙げ句、幽閉されて監視されて一生を惨めに終えるくらいならば、こんな国……逃げだしてやる!」
と、ユーフェミアは誰にも告げず城から逃げ出した。
だが、城から逃げ出したユーフェミアは真実を知らない。
前世と今世の幸せ
夕香里
恋愛
幼い頃から皇帝アルバートの「皇后」になるために妃教育を受けてきたリーティア。
しかし聖女が発見されたことでリーティアは皇后ではなく、皇妃として皇帝に嫁ぐ。
皇帝は皇妃を冷遇し、皇后を愛した。
そのうちにリーティアは病でこの世を去ってしまう。
この世を去った後に訳あってもう一度同じ人生を繰り返すことになった彼女は思う。
「今世は幸せになりたい」と
※小説家になろう様にも投稿しています
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
【本編完結】私たち2人で幸せになりますので、どうかお気になさらずお幸せに。
綺咲 潔
恋愛
10歳で政略結婚させられたレオニーは、2歳年上の夫であるカシアスを愛していた。
しかし、結婚して7年後のある日、カシアスがレオニーの元に自身の子どもを妊娠しているという令嬢を連れてきたことによって、彼への愛情と恋心は木っ端みじんに砕け散る。
皮肉にも、それは結婚時に決められた初夜の前日。
レオニーはすぐに離婚を決心し、父から離婚承認を得るため実家に戻った。
だが、父親は離婚に反対して離婚承認のサインをしてくれない。すると、日が経つにつれ最初は味方だった母や兄まで反対派に。
いよいよ困ったと追い詰められるレオニー。そんな時、彼女の元にある1通の手紙が届く。
その手紙の主は、なんとカシアスの不倫相手の婚約者。氷の公爵の通り名を持つ、シャルリー・クローディアだった。
果たして、彼がレオニーに手紙を送った目的とは……?
どうして私にこだわるんですか!?
風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。
それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから!
婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。
え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!?
おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。
※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す
おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」
鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。
え?悲しくないのかですって?
そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー
◇よくある婚約破棄
◇元サヤはないです
◇タグは増えたりします
◇薬物などの危険物が少し登場します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる