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第四章 聖女じゃない令嬢
ジュリエット
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ジュリエットにとってステラは救世主のような存在だった。
白髪赤目で生まれた兄トラヴィスの翌年にジュリエットは生まれた。
トラヴィスは容姿のせいで分家から次期当主にふさわしくないと難癖をつけられていた。
それで奮起すればいいのに、剣術に才があるのをいいことにしょっちゅう修行と称して外に逃げる。両親はトラヴィスには自由を許すのに、ジュリエットの婚約を勝手に進めてしまう。
トラヴィスが次期当主の自覚を持たないままだったら、ジュリエットはどこかの分家をそそのかして両親ごと兄を引きずり下ろしたと思う。
パターリス辺境伯領で刺客に襲われたトラヴィスは、帰ってきてから見違えるようになった。
――最初からそうしていれば良かったのに。
ジュリエットはため息をついたものだ。
ジュリエットだって別にトラヴィスを嫌いなわけではない。容姿のせいで余計な苦労があるのは理解できる。彼が努力するのであれば、ジュリエットは歓迎できた。
トラヴィスが変わったのはパターリアス辺境伯令嬢ステラのおかげだと聞いた。
ジュリエットがしつこくねだると、トラヴィスは辺境伯領で何があったのかぽつぽつと教えてくれた。
兄は彼女に恋心を抱いているようだし、家格的にも問題ないから、ステラが義姉になるのかもしれない。
そうして入学した学院で、ジュリエットはステラに出会った。
彼女は辺境伯領から出なかったらしく、王都の貴族家で行われた茶会では会ったことがなかった。
そのせいか、他の令嬢のように、ジュリエットをたてようと気を使ったり、ジュリエットにおもねって口論していたマーガレットを貶めたりすることがない。
それでいて転びそうになったジュリエットを助けてくれる。つまずいたのを見て嘲笑されたことはあっても、同年代の令嬢に支えてもらったことはなかった。
トラヴィスとの縁談が進んでいるなら、身内として助けてくれたのかしら、と理解できたけれど、トラヴィスとは連絡も取ってないらしい。
初対面の人間に対して、見返りもないのに親切にしてくれたステラにジュリエットは好感を抱いた。
兄とうまくいかなかったとしても、自分はずっと友だちでいたいと思った。
仲良くなってからは、アレクシスとの仲が改善するきっかけをくれたり、ドレスや眼鏡の件でも世話になった。
アレクシスとの婚約を嫌がらなくなったジュリエットに、両親はほっとしていたようだ。兄の立場を守るための意味もあったから、後ろめたく感じていたのかもしれない。
ジュリエットたちの前にステラが現れてから、なんだかすべてがうまく回るようになった気がした。欠けていた部品がはまったことで動かなかったものが動き出したような感じ。
魔獣の大発生が収束し、トラヴィスとステラは正式に証書を提出して婚約した。これで横やりをいれられることなく、ステラは公爵家に嫁いでくることができる、とほっとしていたときだ。
マルヒヤシンス聖国がステラを要求してきたのだ。
ミモザナ王国や同盟国での聖女認定会は成功と言えた。
ミモザナ王国では聖女が七人見つかった。
念のため、男性も認定会に参加できるようにしたから、女性の参加者に比べたら遥かに少ないが男性の参加者もいた。しかし男性の聖女は今のところ見つかっていない。
まだ国民全員が認定会に参加したわけではないので、今後もっと増えるかもしれない。
ミモザナ王国にも聖女庁が作られることになり、ジュリエットはその統括に立候補した。ムスカリラ王国では王妃が担っている役職だ。
アレクシスと婚約してから、王太子妃教育はずっと受けてきた。しかし、こうやって実際に執務に携わるのは初めてだ。今はまだ指導を受けながらの執務だが、これからどんどんできることを増やしていかなくては、と気合いが入る。
王妃が幽閉されたことはアレクシスから聞いた。表向きは病気療養とされている。もとより王妃は病弱設定になっていて、公式の場には全く出ていなかった。城内での行動範囲も制限されていたらしい。
そんな扱いで耐えられていたのが信じられない、とジュリエットは思う。自分なら無理だ。王妃は自分が枷に繋がれていたことにも気づいていなかった。
ジュリエットはアレクシスと婚約して長いが、実は王妃に会ったことがなかった。国王が禁じたのか、アレクシスが配慮してくれたのか、おそらく後者だとジュリエットは考えている。
ずっと相手にされていないと思っていたけれど、知らないところで守られていたようだ。
聖女庁の統括にジュリエットが志願したのは、もちろんステラのためでもあるけれど、王太子妃の責務から逃げたくはないと考えたからだ。アレクシスの妃になったあとの自分を見据えて努力したい。
やっとそう思えるようになってきた。
そういう気持ちをアレクシスに伝えたところ、ものすごくうれしそうな顔をされた。
この人が喜ぶと自分もうれしくなる。これからもこの人を喜ばせてあげたい。そう思った。
「あら? 殿下が見てらっしゃるわ」
ステラが突然そう言った。
城に与えられたジュリエットの執務室。側近候補としてステラも一緒に指導を受けている。
彼女は窓の外を見ていた。ジュリエットも同じ方を見てみるが、アレクシスがどこにいるのかはわからない。
「どこにいらっしゃるの? 私には探せないわ」
「秘密ですって」
ステラは唇の前に人差し指を立てる。それは隠れている場所じゃなくて、見ていること自体を秘密にしろって意味では?
「前から思っていたのだけれど、ステラはどうして殿下が盗み見しているのがわかるの? あなたはよく『視線を感じる』と言うけれど、見られているのは私なのに、私には全くわからないのよ」
「うーん、特訓の成果かしら?」
ステラはそう言って苦笑した。
辺境伯家の特訓は謎が多すぎるわね、とジュリエットは呆れた。
アレクシスはそれからすぐに執務室にやってきた。
ステラがお茶を淹れてくれ、三人でソファ席につく。
「聖国に訪問する日程が決まったよ。春季休暇に入って二日後だ。問題ないかな?」
アレクシスが尋ねるのに、ジュリエットたちはうなずく。
「うちと聖国の間にあるフルピナス王国とネモフィラーゼ共和国にも働きかけて、順調に進んでいるよ。ムスカリラ王国のジョージ司祭と聖女ローズが先行して、聖女の認定会がすでに行われているから、私たちが通るころには聖女が見つかっているかもしれないね」
「まあ!」
「ありがとうございます、殿下」
魔獣に悩まされている大陸西岸の聖女派の国々は、聖水や護符を教会から買っているため、政府と教会の距離が近い。マルヒヤシンス聖国の次代が過激な女神派になり、聖女派ひいては自国の教会が弾圧されることを望んでいない。聖女が見つかれば聖女の護符が楽に手に入る利点が大きいが、自国の教会を守る点も、西岸の国々に聖女制度を広める際に強調した。
逆に、フルピナス王国やネモフィラーゼ共和国は、教会は女神派かもしれないが、政府と教会に距離があるため、国自体は中立派だ。国主導で聖女制度を行うことで教会に対する影響力を持てる点を強調して、聖女制度に勧誘した。聖国の隣のネモフィラーゼ共和国は聖国に不満を持っていたため、彼の国に一泡吹かせてやりたいという思いもあったらしい。両国とも積極的に話を聞いてくれた。
「女神派って、結局のところムスカリラ王国の聖女が気に入らないってだけだからさ。教義に違いがあるわけでもないし、一般の信者はなんとも思ってないんだよね。敬虔な信者は、自分が女神に選ばれた聖女かもしれないって期待して、認定会に押し寄せてるみたい。聖国に近いほど参加者が多いっていうんだから皮肉だよね」
アレクシスはそう言って肩をすくめた。
そして、春。
マルヒヤシンス聖国への使節団が出発した。
ステラだけ行かせるつもりは毛頭なく、使節団の団長はアレクシス。ジュリエットも当然参加しているし、トラヴィスも近衛騎士見習いとしてついてきた。
ステラは恐縮しきりだったが、もうこの件はステラひとりの話ではないのだ。
聖女制度の宣伝も兼ねて、使節団は通過する大きな街では数日の滞在期間を設けた。
ステラを目立たせては本末転倒なので、使節団にはローズも加わってもらった。
彼女には教会で講演――というほど規模は大きくないが――をしてもらった。女神のお力を感じたことがある体験談などで、市民に聖女への憧れを持ってもらうためだ。また、話が得意な騎士に魔獣退治に聖女の護符がいかに役立っているかも語らせた。
なかなか盛況だったと思う。
会が終わり、隅で打ち合わせをしていると、ジュリエットは信者の子どもに呼びかけられた。王太子の婚約者なのでさりげなく間に騎士が入る。
「女神様!」
そう呼ばれて首を傾げる。
「私のことかしら?」
「そう。女神様、お話楽しかったです」
「ありがとう。でも、私は女神様じゃありませんわ」
愛想よく答えたジュリエットに、その子は、
「えー、でも、そっくりだよ」
と、祭壇の女神像を振り仰いだ。それから、親に呼ばれて走り去る。
ジュリエットも女神像を見る。大地の女神はふくよかな体型で描かれる。
「そっくりって、まさか体型のこと?」
愕然とするジュリエットに、隣にいたステラが、
「あなたのほうがすっきりしていると思うわ」
――それって多少は似ているってことよね?
「私はどんなジュリエットでも好きだよ」
アレクシスがジュリエットの手を取った。
「そういう話をしているのではございませんわ」
「またあのかわいい運動姿が見られるなんて楽しみだな」
「殿下に見せているつもりはないのですけれどっ!」
ジュリエットが気づかないうちに観察されているのだ。
ステラに頼んでパターリアス辺境伯家式の特訓を受けるべきか、ジュリエットは真剣に考えたのだった。
白髪赤目で生まれた兄トラヴィスの翌年にジュリエットは生まれた。
トラヴィスは容姿のせいで分家から次期当主にふさわしくないと難癖をつけられていた。
それで奮起すればいいのに、剣術に才があるのをいいことにしょっちゅう修行と称して外に逃げる。両親はトラヴィスには自由を許すのに、ジュリエットの婚約を勝手に進めてしまう。
トラヴィスが次期当主の自覚を持たないままだったら、ジュリエットはどこかの分家をそそのかして両親ごと兄を引きずり下ろしたと思う。
パターリス辺境伯領で刺客に襲われたトラヴィスは、帰ってきてから見違えるようになった。
――最初からそうしていれば良かったのに。
ジュリエットはため息をついたものだ。
ジュリエットだって別にトラヴィスを嫌いなわけではない。容姿のせいで余計な苦労があるのは理解できる。彼が努力するのであれば、ジュリエットは歓迎できた。
トラヴィスが変わったのはパターリアス辺境伯令嬢ステラのおかげだと聞いた。
ジュリエットがしつこくねだると、トラヴィスは辺境伯領で何があったのかぽつぽつと教えてくれた。
兄は彼女に恋心を抱いているようだし、家格的にも問題ないから、ステラが義姉になるのかもしれない。
そうして入学した学院で、ジュリエットはステラに出会った。
彼女は辺境伯領から出なかったらしく、王都の貴族家で行われた茶会では会ったことがなかった。
そのせいか、他の令嬢のように、ジュリエットをたてようと気を使ったり、ジュリエットにおもねって口論していたマーガレットを貶めたりすることがない。
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まだ国民全員が認定会に参加したわけではないので、今後もっと増えるかもしれない。
ミモザナ王国にも聖女庁が作られることになり、ジュリエットはその統括に立候補した。ムスカリラ王国では王妃が担っている役職だ。
アレクシスと婚約してから、王太子妃教育はずっと受けてきた。しかし、こうやって実際に執務に携わるのは初めてだ。今はまだ指導を受けながらの執務だが、これからどんどんできることを増やしていかなくては、と気合いが入る。
王妃が幽閉されたことはアレクシスから聞いた。表向きは病気療養とされている。もとより王妃は病弱設定になっていて、公式の場には全く出ていなかった。城内での行動範囲も制限されていたらしい。
そんな扱いで耐えられていたのが信じられない、とジュリエットは思う。自分なら無理だ。王妃は自分が枷に繋がれていたことにも気づいていなかった。
ジュリエットはアレクシスと婚約して長いが、実は王妃に会ったことがなかった。国王が禁じたのか、アレクシスが配慮してくれたのか、おそらく後者だとジュリエットは考えている。
ずっと相手にされていないと思っていたけれど、知らないところで守られていたようだ。
聖女庁の統括にジュリエットが志願したのは、もちろんステラのためでもあるけれど、王太子妃の責務から逃げたくはないと考えたからだ。アレクシスの妃になったあとの自分を見据えて努力したい。
やっとそう思えるようになってきた。
そういう気持ちをアレクシスに伝えたところ、ものすごくうれしそうな顔をされた。
この人が喜ぶと自分もうれしくなる。これからもこの人を喜ばせてあげたい。そう思った。
「あら? 殿下が見てらっしゃるわ」
ステラが突然そう言った。
城に与えられたジュリエットの執務室。側近候補としてステラも一緒に指導を受けている。
彼女は窓の外を見ていた。ジュリエットも同じ方を見てみるが、アレクシスがどこにいるのかはわからない。
「どこにいらっしゃるの? 私には探せないわ」
「秘密ですって」
ステラは唇の前に人差し指を立てる。それは隠れている場所じゃなくて、見ていること自体を秘密にしろって意味では?
「前から思っていたのだけれど、ステラはどうして殿下が盗み見しているのがわかるの? あなたはよく『視線を感じる』と言うけれど、見られているのは私なのに、私には全くわからないのよ」
「うーん、特訓の成果かしら?」
ステラはそう言って苦笑した。
辺境伯家の特訓は謎が多すぎるわね、とジュリエットは呆れた。
アレクシスはそれからすぐに執務室にやってきた。
ステラがお茶を淹れてくれ、三人でソファ席につく。
「聖国に訪問する日程が決まったよ。春季休暇に入って二日後だ。問題ないかな?」
アレクシスが尋ねるのに、ジュリエットたちはうなずく。
「うちと聖国の間にあるフルピナス王国とネモフィラーゼ共和国にも働きかけて、順調に進んでいるよ。ムスカリラ王国のジョージ司祭と聖女ローズが先行して、聖女の認定会がすでに行われているから、私たちが通るころには聖女が見つかっているかもしれないね」
「まあ!」
「ありがとうございます、殿下」
魔獣に悩まされている大陸西岸の聖女派の国々は、聖水や護符を教会から買っているため、政府と教会の距離が近い。マルヒヤシンス聖国の次代が過激な女神派になり、聖女派ひいては自国の教会が弾圧されることを望んでいない。聖女が見つかれば聖女の護符が楽に手に入る利点が大きいが、自国の教会を守る点も、西岸の国々に聖女制度を広める際に強調した。
逆に、フルピナス王国やネモフィラーゼ共和国は、教会は女神派かもしれないが、政府と教会に距離があるため、国自体は中立派だ。国主導で聖女制度を行うことで教会に対する影響力を持てる点を強調して、聖女制度に勧誘した。聖国の隣のネモフィラーゼ共和国は聖国に不満を持っていたため、彼の国に一泡吹かせてやりたいという思いもあったらしい。両国とも積極的に話を聞いてくれた。
「女神派って、結局のところムスカリラ王国の聖女が気に入らないってだけだからさ。教義に違いがあるわけでもないし、一般の信者はなんとも思ってないんだよね。敬虔な信者は、自分が女神に選ばれた聖女かもしれないって期待して、認定会に押し寄せてるみたい。聖国に近いほど参加者が多いっていうんだから皮肉だよね」
アレクシスはそう言って肩をすくめた。
そして、春。
マルヒヤシンス聖国への使節団が出発した。
ステラだけ行かせるつもりは毛頭なく、使節団の団長はアレクシス。ジュリエットも当然参加しているし、トラヴィスも近衛騎士見習いとしてついてきた。
ステラは恐縮しきりだったが、もうこの件はステラひとりの話ではないのだ。
聖女制度の宣伝も兼ねて、使節団は通過する大きな街では数日の滞在期間を設けた。
ステラを目立たせては本末転倒なので、使節団にはローズも加わってもらった。
彼女には教会で講演――というほど規模は大きくないが――をしてもらった。女神のお力を感じたことがある体験談などで、市民に聖女への憧れを持ってもらうためだ。また、話が得意な騎士に魔獣退治に聖女の護符がいかに役立っているかも語らせた。
なかなか盛況だったと思う。
会が終わり、隅で打ち合わせをしていると、ジュリエットは信者の子どもに呼びかけられた。王太子の婚約者なのでさりげなく間に騎士が入る。
「女神様!」
そう呼ばれて首を傾げる。
「私のことかしら?」
「そう。女神様、お話楽しかったです」
「ありがとう。でも、私は女神様じゃありませんわ」
愛想よく答えたジュリエットに、その子は、
「えー、でも、そっくりだよ」
と、祭壇の女神像を振り仰いだ。それから、親に呼ばれて走り去る。
ジュリエットも女神像を見る。大地の女神はふくよかな体型で描かれる。
「そっくりって、まさか体型のこと?」
愕然とするジュリエットに、隣にいたステラが、
「あなたのほうがすっきりしていると思うわ」
――それって多少は似ているってことよね?
「私はどんなジュリエットでも好きだよ」
アレクシスがジュリエットの手を取った。
「そういう話をしているのではございませんわ」
「またあのかわいい運動姿が見られるなんて楽しみだな」
「殿下に見せているつもりはないのですけれどっ!」
ジュリエットが気づかないうちに観察されているのだ。
ステラに頼んでパターリアス辺境伯家式の特訓を受けるべきか、ジュリエットは真剣に考えたのだった。
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