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出会いから告白まで
2話 日常
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教室に入り自分の席に着く。
早めに登校したこともあり、
生徒はほとんどいない。
読書をしようと本を取り出す。
だが内容があまり頭に入ってこない。
優里ちゃんかぁ、
可愛い子だなー。
今でも滅茶苦茶可愛いのに、
将来は真矢さんによく似た、
綺麗な女性になるんだろうな。
ぼけーと本を開いたまま想像していると、
涼がきた。
「おはよう、
昨日はどうだった?」
朝から爽やかな笑顔で聞いてくる。
「大変だったよ」
昨日の事情を説明する。
「へー。そんな事になったのか」
「ああ、あんな奥様みたいな人を家に呼ばなきゃならん。
ここら辺じゃ特別でかくもなく、普通の家なのにさー」
「まあ話を聞く感じ上品な人みたいだし、
気にしないでいいんじゃないか?」
「そうだと思うけど
家の両親もthe平凡だし緊張するよ。
母さんは美容室行かなきゃとか、
父さんはスーツを新調するってはりきってるし」
「いい家族じゃないか?
昔遊びに行った時も
優しい人達だったよ?」
確かに家族の仲はよく、
幸せな一家であるという自信はある。
「ありがとう。
なんとかなる気がしてきたよ」
「それは良かった」
にこりと笑う涼。
本当にこいつが友達で良かった。
唯一の難点は女子の嫉妬と好奇の目だけだ。
どっちが受けで攻めとか聞こえてくるが、
取り敢えず忘れておこう。
キンコンカンコーン
始業のベルが鳴り響く。
涼も席に着き、
教師が入ってくる。
さあ苦行の始まりだ。
教師達の念仏を聞き終わり
苦行から解放される
ふぅーとため息をつくと、
荷物をまとめ帰宅の準備をする。
涼にお疲れーと声をかけ、
帰路につく。
坂を降りていると凜が待っていた。
凜は水泳部なのだが、
室内プールの点検、清掃で
休みになったそうだ。
なので昨日の夜に、
一緒に帰ってゲームをする約束をしていた。
「兄ちゃん、遅いー」
膨れっ面で睨んでくる。
「悪い、悪い」
謝り、一緒に帰路につく。
他愛ない話をしながら帰宅する。
「ただいまー」
と一緒に声かける。
「おかえりー」
いつも呑気な声か返ってくる。
そして2階にあがり、
着替えて一緒にゲームをした。
今日はレースゲームをしたが、
アイテムなど不運が重なり負け越してしまった。
「私の勝ちー!」
「なんだと・・・」
ショックを隠しきれない俺に、
ドヤ顔でにやける凜。
「まだもう一回だ!」
せめて引き分けには持ち込みたい。
しかし、
「ただいまー」
父さんが帰宅した。
我が家のルールでは、
父さんが帰宅したらゲームは、
終了しなくてはならない。
「はい。終わりー!」
勝ち誇った凜の顔を見る。
まあ悔しいが楽しかったし、
可愛い笑顔を見れた分で
良しとするか。
俺は凜の頭をなでなでし、
「可愛くなったな」
凜は顔を真っ赤にして、
ローキックをしてきた。
「いでーーー!」
水泳部の鍛えた筋力から
繰り出される威力抜群の一撃にもだえた。
「ばーか!ばーか!」
怒って部屋を出ていった。
子供扱いし過ぎたかと反省する。
順番に風呂に入り、
夕食を皆で食べるときに
母さんの髪が綺麗になっている事に気づいた。
いつもは白髪が少し入った
普通のおばさんといった感じだったのだが、
白髪染めをし少しくせ毛だった髪はストレートになっていた。
そのお陰か少し若く見える。
「いやぁ母さん見違えたよ」
父さんが少し興奮気味に話す。
「ふふっ。惚れ直したかしら?」
「ああ、昔を思い出すよ!」
両親のイチャイチャを眺め食事を終える。
気まずいので
さっさと自分の部屋に戻り、
課題を済ませ、睡眠につく。
水曜日の朝。
やはり早めに目が覚めてしまった。
俺は優里ちゃんに会いたいのか?
いやいや相手は小学生だ。
悶々とした頭をはっきりさせ、
準備をし登校する。
(今更だが凜は遅刻ギリギリまで寝ている)
いつもの場所に行くと優里ちゃんがいた。
「おはよう」
声をかけるが反応がない。
気まずい雰囲気の中
「一緒に行く?」
と聞くと、コクンと頷いた。
少し歩いていたがどうも元気がない。
「体調悪いの?」
ぶんぶんと首を振る。
学園が近づくにつれて初めて優里ちゃんが声をかけてきた。
「昨日、一緒に、女の子と、
帰ってましたよね?」
うつむいたまま問いかけてくる。
「昨日?」
「はい」
「ああ、妹の凜だよ。
優里ちゃんと違って全然女の子らしくないけどね」
笑いながらそういうと、
うつむいた顔がこっちを見上げてくる。
「妹さんですか?」
「そうだよ」
そう答えると、
優里ちゃんは安堵の表情をうかべ笑顔になる。
やはり可愛いな優里ちゃん。
しかし俺は心の中で
相手は小学生だと
何度も唱え平常心をたもつ。
しかし、さらに追い打ちがきた。
「お兄さんには、
彼女、とか、いますか?」
真っ赤な顔で問いかけてくる。
「い、いや、いないよ」
情けない。
小学生相手にどもりながら答える。
「本当ですか!?」
強い語気に戸惑いながらも
「本当だよ」
優里ちゃんは
また少しうつむくと小さな声で
良かった・・・。
と言ったような気がした。
そうしている間に学園に到着する。
優里ちゃんはお辞儀をして小学校へと走って行った。
ドキドキしながらも、
相手は小学生と何度も唱え、
平常心を取り戻していく。
桜の花も散りはじめ、
すこし寂しく思いながら
自分の教室へと向かう。
そして、
涼やほかのクラスメートと話している内に始業のベルがなる。
しかし授業には身が入らず、
朝の優里ちゃんの様子だけが浮かんでくる。
「犬飼!」
教師に呼ばれはっとなる。
「ちゃんと聞いてるのか?
今何ページを説明していた?」
「分かりません・・・」
「全くたるんどるぞ!
集中しなさい!」
「すいません」
そして授業に戻った。
昼休みになり、
いつも通り涼と学食で昼食をとる。
「今日なんだか様子がおかしくない?」
昼食が終わり、
中庭のベンチでジュースを飲んでいると涼が話しかけてくる。
さすがに気づかれるか。
「いや最近この前話した子と
一緒に登校するようになったんだけど」
「優里ちゃんだっけ?」
「そうそう。
どうも好意を持たれてるみたいなんだ」
朝の出来事を話す。
「うーん。
それは間違いなく好かれてるんじゃないか?」
「やっぱりそう思う?」
「凜ちゃんを彼女と間違えて落ち込んで、
彼女の有無を聞いていないとわかればほっとしてるしね」
「うぬぼれじゃないよな?」
「僕も女の子じゃないし、
分からない部分もあるからなぁ。
ちょっと聞いてみるよ」
「はぁ?」
涼は近くにいた女子グループに声をかけ、
話をしている。
きゃあきゃあ話をし、
恋ばなに盛り上がっている
コミュニケーション能力高過ぎだろ。
今更親友の能力に驚きを隠せなかった。
「ただいまー」
そういい戻ってくる涼。
「凄いな涼・・・」
「ん、何が?」
何の話か分からない涼。
「やっぱり女の子の意見も、
絶対気があるよ!
っていってたから間違いないんじゃない?」
「そうか・・・」
「君はどう思ってるんだい?」
「可愛いし、
素直に嬉しいとは思っている。
だけど相手は小学生だぜ」
「恋に年齢は関係ないよ。
それに女の子の精神年齢は、
実年齢よりも高い傾向がある。
適切な関係を保っていればいいんじゃないか?」
論破されてしまった。
何も言い返せない。
「ありがとう。
少し気が晴れたよ」
「それは良かった」
にこりと笑う涼。
春の暖かい空気が心地好く思い、昼休み終了まで雑談をした。
気を入れ換えた俺は、
しっかりと苦行を乗り越え
放課後となった。
帰宅の準備をし、
クラスメートに挨拶をして
帰宅する。
自分の部屋に着くと
真矢さんに連絡をしていない事に気づいた。
最初の面会の時に、
都合がついたら連絡してください。
と言われていたのだった。
交換した連絡先から、
真矢さんの携帯へと連絡する。
何回かのコール音の後に、
「はい。もしもし」
上品な声で応答される。
「犬飼ですが、
いま大丈夫でしょうか?」
「犬飼くん。大丈夫ですよ」
「次の日曜日ですが、
いつでも大丈夫と、
両親から答えてもらったのですが」
「ありがとうございます。
では2時でどうでしょうか?」
「分かりました。
伝えておきます」
「車で伺いたいのですが
大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
来客用の駐車スペースはある。
「詳しい場所が分からないので、
案内をしていただきたいのですが大丈夫ですか?」
「では2時前に学園で待ち合わせでどうですか?
車なら数分の距離ですし」
「分かりました。
よろしくお願いいたします」
「いえいえこちらこそ。
それでは失礼します」
そういい電話を切った。
「疲れたー」
緊張が一気に溶けて、
ベッドに倒れ込む。
そうして、
いつも通りの時間を過ごし眠りについた。
木曜日の朝
もう日課になってしまっている優里ちゃんとの登校。
今日は今までが嘘の様に色々質問された。
「趣味はなんですか?」
「ゲームと読書かな?
優里ちゃんは?」
「アニメを見るのが好きです。
あとは私も本を読むのが好きです」
「へーどんなの見るの?」
「・・・」
黙ってしまった。
「どうかした?」
「子供ぽいとか思わないですか?」
「全然、
妹がいるから少女アニメや漫画も見るし、
逆に俺の方がちょっと恥ずかしいな」
そういい笑う。
「そんな事ないですよ。
じゃあいいますけど
魔法少女ものとか
わんにゃん物語です」
わんにゃん物語は
犬と猫が喧嘩したり
遊んだりするアニメだ。
「それなら俺も見てるよ。
かわいいよね。
魔法少女は色々あるけど妹も好きで一緒にみてたよ」
凜は男の子ぽい趣味が多いが、
アクションの多い魔法少女はよく見ている。
「本当ですか!?私もわんにゃん物語はだいすきで飼い主さんを取り合って甘えたり、いたずらしたり、ほのぼのしててたまらないんですよね!喧嘩ばっかりしてるとおもったら一緒に寝たりおんなじオモチャであそんだりでたまらないんですよ!魔法少女は確かに色々ありますけど私は魔法少女と魔法騎士love・girl・knightが大好きでして魔法少女に目覚めた女の子を守るために魔法騎士に目覚める男の子の話で同級生なんですけど女の子は騎士が誰か分からずに男の子は女の子を守るために戦うんですよ!そして女の子は片思い中の男の子が騎士だとわかって嬉しいけど傷だらけの男の子をみて泣いちゃうんですよ!なんでそんなに守ってくれるの?と聞いた彼女に男の子は好きな女の子を守るのに理由がいるか?っていって最後の敵に向かって攻撃をするんですよ!女の子の心はときめいて最強の攻撃魔法を唱えるんですよ!そして敵は負けて消えちゃうんです。そこで魔法の力は失われちゃうんですけど気持ちは通じあって恋の魔法は解けてないよっていって抱きしめて終わるんですよ!最高じゃないですか!?」
早口で語られ呆然としていると、
優里ちゃんは真っ赤になり、
「あの変ですよね・・・。
すいません」
しょぼんと落ち込む彼女に、
「そんなに好きなことが話せる優里ちゃんはすごいね。
全然変じゃないよ」
さらさらな黒髪の頭をなでなですると、
「んーーーーーー!」
顔を真っ赤にし、
こっちを見上げて猛ダッシュで走って行った。
「はやっ・・・」
呆気にとられたが、
通学を再開し教室まで到着する。
クラスメートや涼に挨拶をし、
またしても苦行が始まる鐘がなる。
昼休み
昼食もおわり涼に今日の朝の出来事を話す。
「優人が悪いよそれは・・・」
「なぜに!?」
「いいかい想像してごらん?
好きな女の子に自分の性癖を知られたとする。
この時点で相当恥ずかしいのに、
相手に頭をなでられ大丈夫だよ。
男の子だもんね?
とかいわれてみてよ?」
「ぎゃあーーーー!
死にてーーー!」
俺は恥ずかしい気持ちでいっぱいになった。
「でしょ?
悪気のない善意が人を傷つけることもあるんだから。
気を付けて」
「わかったよ・・・」
深く反省した気持ちになった。
凜のローキックも同じ理由だったのだろう。
「涼はよく人の気持ちがわかるよな」
「そうかな?」
「羨ましいよ」
「そうでもないよ?
人の気持ちが分かることは
相手の好意もわかるかもしれないけど、
悪意も感じとることがあるんだよ」
「あっ・・・」
「そう僕を利用したり、
嫉妬や羨望といった気持ちも少しだけどわかってしまう。
でもね優人はそんな気持ちを
好意でしか感じない素直なんだよね。
だから優人が好きなんだ」
照れくさそうに笑う涼。
「なんだか恥ずかしいな。
でもありがとう」
「どういたしまして」
きゃあきゃあ騒いでいる女子が、いるような気がするが、
ほっとこう。
そうして午後の苦行も終わり帰宅する。
明日は謝らなくちゃなと思いながら、
いつものことを済ませ睡眠する。
金曜日の朝
もはやいつも通りとなった時間に登校する。
今日はいてくれるだろうか?
そう思ったがいてくれた。
「おはよう」
「おはようございます・・・」
元気なく答える優里ちゃん。
「昨日はごめんね」
そう話すとびっくりした顔で、
優里ちゃんはこっちを見上げる。
「そんなお兄さんが、
謝ることじゃないです!」
「恥ずかしい思いをさせちゃったなって思ってね」
「私が勝手にそうなっただけですから」
「それに少し嬉しかったですし・・・」
最後の方があまり聞こえなかったがもう大丈夫そうだ。
「じゃあ行こうか?」
「はい!」
優里ちゃんはにこやかな笑顔で答えた。
他愛ない話をしながら
楽しく登校している途中、
優里ちゃんは意を決したような顔で、
「お兄さんの好きなタイプの女の子はどんな子ですか?」
こちらを見上げて真っ直ぐな瞳で問いかけてくる。
「急にどうしたの?」
「いいですから!
答えてください!」
「うーん。
そうだな優しくて一緒にいて楽しい子がいいかな?
ちょうど優里ちゃんみたいな子がいいな。
可愛いし趣味も合うしね」
「んーーーーーーーーーー!」
昨日と全く同じ反応で、
顔を真っ赤にして走って行った。
「はやっ・・・」
またしてもやってしまったようだ。
また涼に聞くか。
そう思い登校する。
そして昼休み
いつも通り昼食をすませ、
中庭でまったり過ごしている内に、
今日の朝の出来事を話す。
「優人・・・。
きみは馬鹿なのか?」
涼から容赦ない罵倒がきた。
「なぜに!」
「はあ・・・」
あきれた顔で話す涼。
「また想像してごらん」
俺は目をつむる。
「君には好きな子がいる。
二人だけの教室で
思いきってその子に好きな男性のタイプを聞いてみた」
ふんふんと頷き想像する。
「そうだなあ。
君みたいな人がタイプかな?
優しいしかっこいいしっていわれてみてよ?」
「んーーーーーーーーーー!」
顔が真っ赤になる。
ヤバい破壊力が半端ない。
「わかった?
ほとんど好きなのは君っているんだよ」
「わかった・・・」
「多分まだ優里ちゃんの事を
子供だと思ってるんだろうけど、前にも言ったけど女の子の精神年齢は実年齢より高いんだよ?」
返す言葉もない。
「素直なところは美徳でもあるけど出しすぎだね。
今度からは同い年の感覚で話してみなよ」
「了解・・・」
「しかし君達の関係は面白いね」
「何がだよ?」
「うーんどう表現すればいいか分からないけど、
話を聞いてると
ほほえましいというのかな?」
笑いそう答える涼。
「結構いじわるだな涼・・・」
「あれ今頃気づいたの」
お互いに笑いながら、
また他愛ない雑談に戻る。
「尊い・・・」
どこからか聞こえた気がするが幻聴だろう。
そして午後の苦行も終わる。
明日は休みだ。
優里ちゃんに会えないのは残念だが、
日曜日にはまた会える。
その日を楽しみにしよう。
早めに登校したこともあり、
生徒はほとんどいない。
読書をしようと本を取り出す。
だが内容があまり頭に入ってこない。
優里ちゃんかぁ、
可愛い子だなー。
今でも滅茶苦茶可愛いのに、
将来は真矢さんによく似た、
綺麗な女性になるんだろうな。
ぼけーと本を開いたまま想像していると、
涼がきた。
「おはよう、
昨日はどうだった?」
朝から爽やかな笑顔で聞いてくる。
「大変だったよ」
昨日の事情を説明する。
「へー。そんな事になったのか」
「ああ、あんな奥様みたいな人を家に呼ばなきゃならん。
ここら辺じゃ特別でかくもなく、普通の家なのにさー」
「まあ話を聞く感じ上品な人みたいだし、
気にしないでいいんじゃないか?」
「そうだと思うけど
家の両親もthe平凡だし緊張するよ。
母さんは美容室行かなきゃとか、
父さんはスーツを新調するってはりきってるし」
「いい家族じゃないか?
昔遊びに行った時も
優しい人達だったよ?」
確かに家族の仲はよく、
幸せな一家であるという自信はある。
「ありがとう。
なんとかなる気がしてきたよ」
「それは良かった」
にこりと笑う涼。
本当にこいつが友達で良かった。
唯一の難点は女子の嫉妬と好奇の目だけだ。
どっちが受けで攻めとか聞こえてくるが、
取り敢えず忘れておこう。
キンコンカンコーン
始業のベルが鳴り響く。
涼も席に着き、
教師が入ってくる。
さあ苦行の始まりだ。
教師達の念仏を聞き終わり
苦行から解放される
ふぅーとため息をつくと、
荷物をまとめ帰宅の準備をする。
涼にお疲れーと声をかけ、
帰路につく。
坂を降りていると凜が待っていた。
凜は水泳部なのだが、
室内プールの点検、清掃で
休みになったそうだ。
なので昨日の夜に、
一緒に帰ってゲームをする約束をしていた。
「兄ちゃん、遅いー」
膨れっ面で睨んでくる。
「悪い、悪い」
謝り、一緒に帰路につく。
他愛ない話をしながら帰宅する。
「ただいまー」
と一緒に声かける。
「おかえりー」
いつも呑気な声か返ってくる。
そして2階にあがり、
着替えて一緒にゲームをした。
今日はレースゲームをしたが、
アイテムなど不運が重なり負け越してしまった。
「私の勝ちー!」
「なんだと・・・」
ショックを隠しきれない俺に、
ドヤ顔でにやける凜。
「まだもう一回だ!」
せめて引き分けには持ち込みたい。
しかし、
「ただいまー」
父さんが帰宅した。
我が家のルールでは、
父さんが帰宅したらゲームは、
終了しなくてはならない。
「はい。終わりー!」
勝ち誇った凜の顔を見る。
まあ悔しいが楽しかったし、
可愛い笑顔を見れた分で
良しとするか。
俺は凜の頭をなでなでし、
「可愛くなったな」
凜は顔を真っ赤にして、
ローキックをしてきた。
「いでーーー!」
水泳部の鍛えた筋力から
繰り出される威力抜群の一撃にもだえた。
「ばーか!ばーか!」
怒って部屋を出ていった。
子供扱いし過ぎたかと反省する。
順番に風呂に入り、
夕食を皆で食べるときに
母さんの髪が綺麗になっている事に気づいた。
いつもは白髪が少し入った
普通のおばさんといった感じだったのだが、
白髪染めをし少しくせ毛だった髪はストレートになっていた。
そのお陰か少し若く見える。
「いやぁ母さん見違えたよ」
父さんが少し興奮気味に話す。
「ふふっ。惚れ直したかしら?」
「ああ、昔を思い出すよ!」
両親のイチャイチャを眺め食事を終える。
気まずいので
さっさと自分の部屋に戻り、
課題を済ませ、睡眠につく。
水曜日の朝。
やはり早めに目が覚めてしまった。
俺は優里ちゃんに会いたいのか?
いやいや相手は小学生だ。
悶々とした頭をはっきりさせ、
準備をし登校する。
(今更だが凜は遅刻ギリギリまで寝ている)
いつもの場所に行くと優里ちゃんがいた。
「おはよう」
声をかけるが反応がない。
気まずい雰囲気の中
「一緒に行く?」
と聞くと、コクンと頷いた。
少し歩いていたがどうも元気がない。
「体調悪いの?」
ぶんぶんと首を振る。
学園が近づくにつれて初めて優里ちゃんが声をかけてきた。
「昨日、一緒に、女の子と、
帰ってましたよね?」
うつむいたまま問いかけてくる。
「昨日?」
「はい」
「ああ、妹の凜だよ。
優里ちゃんと違って全然女の子らしくないけどね」
笑いながらそういうと、
うつむいた顔がこっちを見上げてくる。
「妹さんですか?」
「そうだよ」
そう答えると、
優里ちゃんは安堵の表情をうかべ笑顔になる。
やはり可愛いな優里ちゃん。
しかし俺は心の中で
相手は小学生だと
何度も唱え平常心をたもつ。
しかし、さらに追い打ちがきた。
「お兄さんには、
彼女、とか、いますか?」
真っ赤な顔で問いかけてくる。
「い、いや、いないよ」
情けない。
小学生相手にどもりながら答える。
「本当ですか!?」
強い語気に戸惑いながらも
「本当だよ」
優里ちゃんは
また少しうつむくと小さな声で
良かった・・・。
と言ったような気がした。
そうしている間に学園に到着する。
優里ちゃんはお辞儀をして小学校へと走って行った。
ドキドキしながらも、
相手は小学生と何度も唱え、
平常心を取り戻していく。
桜の花も散りはじめ、
すこし寂しく思いながら
自分の教室へと向かう。
そして、
涼やほかのクラスメートと話している内に始業のベルがなる。
しかし授業には身が入らず、
朝の優里ちゃんの様子だけが浮かんでくる。
「犬飼!」
教師に呼ばれはっとなる。
「ちゃんと聞いてるのか?
今何ページを説明していた?」
「分かりません・・・」
「全くたるんどるぞ!
集中しなさい!」
「すいません」
そして授業に戻った。
昼休みになり、
いつも通り涼と学食で昼食をとる。
「今日なんだか様子がおかしくない?」
昼食が終わり、
中庭のベンチでジュースを飲んでいると涼が話しかけてくる。
さすがに気づかれるか。
「いや最近この前話した子と
一緒に登校するようになったんだけど」
「優里ちゃんだっけ?」
「そうそう。
どうも好意を持たれてるみたいなんだ」
朝の出来事を話す。
「うーん。
それは間違いなく好かれてるんじゃないか?」
「やっぱりそう思う?」
「凜ちゃんを彼女と間違えて落ち込んで、
彼女の有無を聞いていないとわかればほっとしてるしね」
「うぬぼれじゃないよな?」
「僕も女の子じゃないし、
分からない部分もあるからなぁ。
ちょっと聞いてみるよ」
「はぁ?」
涼は近くにいた女子グループに声をかけ、
話をしている。
きゃあきゃあ話をし、
恋ばなに盛り上がっている
コミュニケーション能力高過ぎだろ。
今更親友の能力に驚きを隠せなかった。
「ただいまー」
そういい戻ってくる涼。
「凄いな涼・・・」
「ん、何が?」
何の話か分からない涼。
「やっぱり女の子の意見も、
絶対気があるよ!
っていってたから間違いないんじゃない?」
「そうか・・・」
「君はどう思ってるんだい?」
「可愛いし、
素直に嬉しいとは思っている。
だけど相手は小学生だぜ」
「恋に年齢は関係ないよ。
それに女の子の精神年齢は、
実年齢よりも高い傾向がある。
適切な関係を保っていればいいんじゃないか?」
論破されてしまった。
何も言い返せない。
「ありがとう。
少し気が晴れたよ」
「それは良かった」
にこりと笑う涼。
春の暖かい空気が心地好く思い、昼休み終了まで雑談をした。
気を入れ換えた俺は、
しっかりと苦行を乗り越え
放課後となった。
帰宅の準備をし、
クラスメートに挨拶をして
帰宅する。
自分の部屋に着くと
真矢さんに連絡をしていない事に気づいた。
最初の面会の時に、
都合がついたら連絡してください。
と言われていたのだった。
交換した連絡先から、
真矢さんの携帯へと連絡する。
何回かのコール音の後に、
「はい。もしもし」
上品な声で応答される。
「犬飼ですが、
いま大丈夫でしょうか?」
「犬飼くん。大丈夫ですよ」
「次の日曜日ですが、
いつでも大丈夫と、
両親から答えてもらったのですが」
「ありがとうございます。
では2時でどうでしょうか?」
「分かりました。
伝えておきます」
「車で伺いたいのですが
大丈夫ですか?」
「大丈夫です」
来客用の駐車スペースはある。
「詳しい場所が分からないので、
案内をしていただきたいのですが大丈夫ですか?」
「では2時前に学園で待ち合わせでどうですか?
車なら数分の距離ですし」
「分かりました。
よろしくお願いいたします」
「いえいえこちらこそ。
それでは失礼します」
そういい電話を切った。
「疲れたー」
緊張が一気に溶けて、
ベッドに倒れ込む。
そうして、
いつも通りの時間を過ごし眠りについた。
木曜日の朝
もう日課になってしまっている優里ちゃんとの登校。
今日は今までが嘘の様に色々質問された。
「趣味はなんですか?」
「ゲームと読書かな?
優里ちゃんは?」
「アニメを見るのが好きです。
あとは私も本を読むのが好きです」
「へーどんなの見るの?」
「・・・」
黙ってしまった。
「どうかした?」
「子供ぽいとか思わないですか?」
「全然、
妹がいるから少女アニメや漫画も見るし、
逆に俺の方がちょっと恥ずかしいな」
そういい笑う。
「そんな事ないですよ。
じゃあいいますけど
魔法少女ものとか
わんにゃん物語です」
わんにゃん物語は
犬と猫が喧嘩したり
遊んだりするアニメだ。
「それなら俺も見てるよ。
かわいいよね。
魔法少女は色々あるけど妹も好きで一緒にみてたよ」
凜は男の子ぽい趣味が多いが、
アクションの多い魔法少女はよく見ている。
「本当ですか!?私もわんにゃん物語はだいすきで飼い主さんを取り合って甘えたり、いたずらしたり、ほのぼのしててたまらないんですよね!喧嘩ばっかりしてるとおもったら一緒に寝たりおんなじオモチャであそんだりでたまらないんですよ!魔法少女は確かに色々ありますけど私は魔法少女と魔法騎士love・girl・knightが大好きでして魔法少女に目覚めた女の子を守るために魔法騎士に目覚める男の子の話で同級生なんですけど女の子は騎士が誰か分からずに男の子は女の子を守るために戦うんですよ!そして女の子は片思い中の男の子が騎士だとわかって嬉しいけど傷だらけの男の子をみて泣いちゃうんですよ!なんでそんなに守ってくれるの?と聞いた彼女に男の子は好きな女の子を守るのに理由がいるか?っていって最後の敵に向かって攻撃をするんですよ!女の子の心はときめいて最強の攻撃魔法を唱えるんですよ!そして敵は負けて消えちゃうんです。そこで魔法の力は失われちゃうんですけど気持ちは通じあって恋の魔法は解けてないよっていって抱きしめて終わるんですよ!最高じゃないですか!?」
早口で語られ呆然としていると、
優里ちゃんは真っ赤になり、
「あの変ですよね・・・。
すいません」
しょぼんと落ち込む彼女に、
「そんなに好きなことが話せる優里ちゃんはすごいね。
全然変じゃないよ」
さらさらな黒髪の頭をなでなですると、
「んーーーーーー!」
顔を真っ赤にし、
こっちを見上げて猛ダッシュで走って行った。
「はやっ・・・」
呆気にとられたが、
通学を再開し教室まで到着する。
クラスメートや涼に挨拶をし、
またしても苦行が始まる鐘がなる。
昼休み
昼食もおわり涼に今日の朝の出来事を話す。
「優人が悪いよそれは・・・」
「なぜに!?」
「いいかい想像してごらん?
好きな女の子に自分の性癖を知られたとする。
この時点で相当恥ずかしいのに、
相手に頭をなでられ大丈夫だよ。
男の子だもんね?
とかいわれてみてよ?」
「ぎゃあーーーー!
死にてーーー!」
俺は恥ずかしい気持ちでいっぱいになった。
「でしょ?
悪気のない善意が人を傷つけることもあるんだから。
気を付けて」
「わかったよ・・・」
深く反省した気持ちになった。
凜のローキックも同じ理由だったのだろう。
「涼はよく人の気持ちがわかるよな」
「そうかな?」
「羨ましいよ」
「そうでもないよ?
人の気持ちが分かることは
相手の好意もわかるかもしれないけど、
悪意も感じとることがあるんだよ」
「あっ・・・」
「そう僕を利用したり、
嫉妬や羨望といった気持ちも少しだけどわかってしまう。
でもね優人はそんな気持ちを
好意でしか感じない素直なんだよね。
だから優人が好きなんだ」
照れくさそうに笑う涼。
「なんだか恥ずかしいな。
でもありがとう」
「どういたしまして」
きゃあきゃあ騒いでいる女子が、いるような気がするが、
ほっとこう。
そうして午後の苦行も終わり帰宅する。
明日は謝らなくちゃなと思いながら、
いつものことを済ませ睡眠する。
金曜日の朝
もはやいつも通りとなった時間に登校する。
今日はいてくれるだろうか?
そう思ったがいてくれた。
「おはよう」
「おはようございます・・・」
元気なく答える優里ちゃん。
「昨日はごめんね」
そう話すとびっくりした顔で、
優里ちゃんはこっちを見上げる。
「そんなお兄さんが、
謝ることじゃないです!」
「恥ずかしい思いをさせちゃったなって思ってね」
「私が勝手にそうなっただけですから」
「それに少し嬉しかったですし・・・」
最後の方があまり聞こえなかったがもう大丈夫そうだ。
「じゃあ行こうか?」
「はい!」
優里ちゃんはにこやかな笑顔で答えた。
他愛ない話をしながら
楽しく登校している途中、
優里ちゃんは意を決したような顔で、
「お兄さんの好きなタイプの女の子はどんな子ですか?」
こちらを見上げて真っ直ぐな瞳で問いかけてくる。
「急にどうしたの?」
「いいですから!
答えてください!」
「うーん。
そうだな優しくて一緒にいて楽しい子がいいかな?
ちょうど優里ちゃんみたいな子がいいな。
可愛いし趣味も合うしね」
「んーーーーーーーーーー!」
昨日と全く同じ反応で、
顔を真っ赤にして走って行った。
「はやっ・・・」
またしてもやってしまったようだ。
また涼に聞くか。
そう思い登校する。
そして昼休み
いつも通り昼食をすませ、
中庭でまったり過ごしている内に、
今日の朝の出来事を話す。
「優人・・・。
きみは馬鹿なのか?」
涼から容赦ない罵倒がきた。
「なぜに!」
「はあ・・・」
あきれた顔で話す涼。
「また想像してごらん」
俺は目をつむる。
「君には好きな子がいる。
二人だけの教室で
思いきってその子に好きな男性のタイプを聞いてみた」
ふんふんと頷き想像する。
「そうだなあ。
君みたいな人がタイプかな?
優しいしかっこいいしっていわれてみてよ?」
「んーーーーーーーーーー!」
顔が真っ赤になる。
ヤバい破壊力が半端ない。
「わかった?
ほとんど好きなのは君っているんだよ」
「わかった・・・」
「多分まだ優里ちゃんの事を
子供だと思ってるんだろうけど、前にも言ったけど女の子の精神年齢は実年齢より高いんだよ?」
返す言葉もない。
「素直なところは美徳でもあるけど出しすぎだね。
今度からは同い年の感覚で話してみなよ」
「了解・・・」
「しかし君達の関係は面白いね」
「何がだよ?」
「うーんどう表現すればいいか分からないけど、
話を聞いてると
ほほえましいというのかな?」
笑いそう答える涼。
「結構いじわるだな涼・・・」
「あれ今頃気づいたの」
お互いに笑いながら、
また他愛ない雑談に戻る。
「尊い・・・」
どこからか聞こえた気がするが幻聴だろう。
そして午後の苦行も終わる。
明日は休みだ。
優里ちゃんに会えないのは残念だが、
日曜日にはまた会える。
その日を楽しみにしよう。
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