四人で話せば賢者の知恵? ~固有スキル〈チャットルーム〉で繋がる異世界転移。知識と戦略を魔法に込めて、チート勇者をねじ伏せる~

藤ノ木文

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241話 全員集合!

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「待たせたな、ねこさん」
「レンさん!?」

 上空の大きな影から降って来た人物は、この世界に同時に送られながらも俺とは星の裏側であろう距離に飛ばされたはずのおおとり煉夜れんやことレンさんだった。

 初めてリアルで会った時も思ったが、高身長ソフトマッチョイケメン眼鏡とか盛り過ぎだなこの人。
 しかも元の世界ではかなりの高給取りだったらしいのに、そんなのに未練なく冒険者したり国家運営に関わったりとこの世界を満喫してるあたり、頭の良い人は何処に行っても出来る人間なのホントねたましい。

 そして月明りと魔法で作られた疑似太陽に照らされた上空の影は、全長100メートルは有ろう帆船はんせんで、そこからさらに数十人単位の人影が上から降ってくる。

「お久しぶりですねこさん」
「いやホンマ待たせてすまんやで」

 最初に声をかけてきたのはまだ少年っぽさの残る顔立ちの中肉中背の高校生と、俺より少し背が低く横に太いながらも腕の筋肉がはち切れそうな渋い男。

「ええんやでってシンくんに大福さん! なんで――って、上のアレ魔法装甲車両グリンブルスティか!?」
「せや、そしてアレでワシらをここまで運んでもらったんがこの人や。ねこさん、誰やと思う?」

 大福さんがもったいぶったセリフで1人の女性を手で示す。
 大福さんたちと一緒に降りてきた数十人の内の3人の日本人顔。
 1人は中肉中背の何処にでも居そうなややくたびれた感じの男性で、1人はレンさんとそん色のないくらいの細マッチョの単髪男性。
 そして大福さんが示したもう1人は、複数の妖精猫ケット・シーを肩や頭に乗せたロン毛ぼさぼさ頭の魔法使い風女性だったためとりわけ目が行く。

「ど、同志ねこ氏よ、おいひゃ――こほん……、オイラが来た! ふひっ」
「……もしかしなくても、きにゃこさん?」
「正解ナリ」
「お、おう……」

 基本的に文字チャットでしか交流が無かった同じ猫ジャンキーのネトフレきにゃこさん。
 同志というだけあって彼女も猫過激派である。

 なるほど、大型魔法装甲リンドヴルムが戦闘用なら、グリンブルスティは移動に特化した空飛ぶ魔法の車。
 確かにMPが確保出来てれば、俺たちが合流出来ない道理はないか。
 共有しておいてよかった俺の魔法。

「きにゃこさんな、影剣と同じでワシらよりも前にこっちに飛ばされてたみたいで、Lvも1800超えてて一緒に来た中では断トツの高レベルや。あの船もねこさんの魔法を教えたら簡単に作ってまいよった」
「マジか、俺より高いって何やったらそんなレベルになるんだよ」
「へへへ、オイラのユニークスキル? のおかげで経験値が5倍貰えるナリ。で~、勇者のスキルにある経験値UPと重複ちょうふくしてなんかすぐ強くなれちゃって、後は人と会うの苦手だから基本的にずっとダンジョンに籠ってたナリ。でもダンジョンっていいよね! お風呂入らなくてもずっとキレイで居られるし! 食材とか落とすからご飯にも事欠かないんだもん! まさに新天地! まさに天国! でしょ?! でしょ?! でしょ?!」

 途中から鼻息荒くハイテンションでまくしたてるきにゃこさん。

 ダンジョンはモンスターや人間の死体なんかもきれいさっぱり粒子化する機能のせいで、汚れとかゴミの類も粒子化してくれるからなぁ。
 てか大福さんの居た場所にきにゃこさん目撃情報があったから、ルート的に星の裏側のはずのレンさんをまず回収してからシンくんを迎えに行ったのかな?
 まぁ今はそんなのどうでも良いか。

「人が苦手って割にはちゃんと話せてますやん」
「それはこの子たちのおかげナリ」
「お嬢はオレっちたちの命の恩人にゃ~」
「お嬢と居るとポカポカして気持ちいいにゃ~」
「三食昼寝付きにゃ~」
「うへへ、皆くすぐったいナリよ~」 

 きにゃこさんにしがみつくケット・シーたちが主に頬をり寄せ、主もデレデレの表情でそれを堪能する。

 くっ、俺がたどり着けない理想が目の前に有って正直すごく羨ましい!

 そうなってくると、このいかにも紹介待ちしてますって日本人男性2人に察しが付く。
 
「てことは2人はもしかして――」
「あ、初めましてねこさん、自分ぼちぼちぼっちです」
鬼灯ほおずきだ、よろしく。……チャットで話をしていただけにこうして改まっての挨拶は変な感じだな」
「あ、やっぱり。うわっ、初めまして。ってマジか……」

 感動で元々少ない語彙力が死んでしまった。
 彼らの他にも一緒に来ていたのは高身長筋肉ムキムキなオーガの美女や体高だけで2メートルは有ろう巨大な狼。
 ドワーフの美少女たちや美しい女騎士たち、厳つい男や亜人種の戦士が並ぶ。
 おそらく大福さんたちの奥さんや恋人、冒険者仲間であろう。

 レンさん狼飼ってるとか言ってたもんなぁ。

「……あっそうだ、影剣さんは今別のところで戦って――」
「呼んだでござるか?」
「に”ゃ!?」

 ここに居ないもう1人のネトフレのことを伝えたところに真後ろに開いたワープゲートから当の本人が現れ心臓が跳ねる。

「ねこ氏は本当に『に”ゃ』って驚くナリな、ふひひ」
「拙者もソレ思ったでござる、デュフフ」

 きにゃこさんと影剣さんが気持ち悪い笑いで共感しあう。

 他人のクセを笑うんじゃありません。

「影剣さん、後がつかえていますので」
「おっと、これは失礼致した奥方殿」

 その影剣さんが出てきたワープゲートから次に姿を見せたのは、アイヴィナーゼの城に居るはずのリシアだった。
 リシアを見た瞬間、俺は思わず彼女を抱きしめた。

「もう、今はこんなことをしている場合ではないのでしょ?」
「あ、うん……」

 はにかむ年下の嫁に諭されるカッコ悪い姿を、後から現れた嫁や冒険者仲間、リシア同様アイヴィナーゼ城で待機していたイルミナさんやベテラン冒険者たちにも見られてしまう。
 まさにオールスター大集結。
 まずはざっくりとだが「こちら大福さんレンさんシンくん~」「こちら俺の嫁と冒険者仲間~」と簡単な紹介を済ませる。
 大勢の仲間たちに囲まれたことで、先ほどまで抱えていた悲壮感が嘘のように抜け落ちていた。

「皆が来てくれて助かったよ」
「当然です、ミネルバからあなたがまた無茶をしようとしてるなんて聞かされれば尚更です。反省してください」
「……ごめん」

 リシアが怒った顔での訴えに素直に詫びる。

「いや~、奥方たちが来てくださったお蔭で動く鎧ディバイントルーパーの処理があっと言う間に片付いたでござる!」
「へー、お疲れ様。とりあえず色々と聞きたいことはあるけど、今はアレをどうにかしないとだ」

 俺が指さす先では動く肉の小さな山と化した高梨が暴れまわり、1キロは離れているにもかかわらず奴が動くたびに足元に振動が伝わる程だった。
 俺が指さしたことで高梨の存在に気付いた一部の方々がギョっとした表情をする。

「さっきから気にはなっていたが、遠近感がバグりそうなデカさだな」
「あわわわわ、いくらなんでもあんなの相手は無謀過ぎないか!?」
「なんだアレは、さすがにシャレにならんぞ」

 レンさんが不敵な笑みを浮かべると、正反対に慌てるぼっちさんと戦慄する鬼灯さん。

「アレを今からボコすんか、腕が鳴るで」
「ははは、一番槍は私のものだ!」
「あても行けるよー!」
「どうしてアレを見てやる気になれるの、ってかわよっ!?」

 コブシをボキボキと鳴らす大福さんとメリティエにトトが続くと、きにゃこさんがトトを見て釘付けになる。

 これだけ人が多いと話が脱線するなぁ。 

「とりあえず注目! これから高梨アイツの要点だけ言うね。アイツは高梨って名前の元勇者だ。魔力を吸ってレベルアップする方法があって、そのせいで後天的に魔族に成った挙句、勇者スキルの〈経験値UP〉が悪い方向で作用して急速に肥大化している状態だ」
「あぁ、前に言っていた魔素を取り込むと魔族化して凶暴な化け物になるって奴か」

 俺の説明にレンさんが頷く。

「そそ。そんでここからが奴の特性に関する注意点。1つ、魔法が利かないというか吸収されてデカくなる。2つ、物理的に斬った肉片は触手やら脚みたいなのを生やして襲ってくる。3つ、切断しなかった切り傷ならすぐ回復する。4つ、放っておいてもその辺の魔力を吸収してデカくなり続ける。5つ、臨界を迎えたら爆発してこの惑星ごと俺たちも消し飛ぶ。以上」
「「「「惑星ごと!?」」」」
「まてまてまて、あんなデカいのに魔法が利かん上に攻撃したら分裂しよんのか!?」
「それは困りましたにゃ」

 驚く大福さんに顎に手を添えて考える仕草をする猫頭のモーディーンさん。

 きにゃこさん、モーディーンさんが猫の頭してるからってキラキラした目で見つめない失礼でしょ。
 いや俺も初めて見た時同じ顔してたけど。

 多くの者から驚きの声が上がるなか、トトが頭にハテナマークを浮かべて俺の前に来た。

「トシオー、ワクセイってなに?」
「お、おう、そこからか……」
「そうだぞナオキ、ワクセイとはなんだ」

 トトの疑問に続いてエイダと言う名のオーガ女が傍にいたレンさんに問いただす。

「惑星というのは、俺たちが住むこの世界。そして足を踏みしめる大地からずっと海の向こうの果ての果てのことだ」
「ふ~ん……?」
「つまりどういうことだ?!」

 レンさんの説明に理解しているようには見えないトトが首を傾げ、エイダがきっぱりと言い切る。
 わからないなら普通は悩む素振りをするのだが、トトとエイダは「それで? 続きは?」と言わんばかりにレンさんを見詰め、見詰められたレンさんの方がどう説明すればわかってもらえるかを思案する。
 
 脱線が著しい、2人にはわからないままで居てもらおう。

「トトや、あの月を見てみよ。あそこにはたくさんの人が住んでおってな、月が無くなればそこに住む者は生きてはいけぬのじゃ」
「……おー!」
「月に人が住んでいるとは本当か!?」
 
 俺がトトを見放したところでイルミナさんが説明を引継ぎ、それに理解を示したトトが目を輝かせ、エイダが明後日の方向に驚いている。

 2人はイルミナさんに任せておこう。

「話を戻そう。……ちなみに魔法とはどんなものを使用したんだ?」
「荷電粒子砲。雷を縮退させたVerバージョンの方ね」
「それって前に兄さんが教えてくれた奴ですよね?! アレが効かないとなるとボクやねこさんが完全にオワコンじゃないですか!」

 シンくんが絶望感アリアリだ。

 てかオワコン扱いすな。

「ねこさん、魔力を吸って成長するならヤツの周囲から魔力を引き離せないのか?」
「それはもうやった。けどアイツの吸引力が強すぎて俺にゃぁ無理だ」
「ふむ、では臨界までのタイムリミットは?」
「知らない。高梨を魔族化に仕向けたタヌァって神はなにも言っていなかったから」
「あの大きさと膨張速度から察するに、おおよそ1時間と言ったところでしょう」

 レンさんの問いに皆に聞こえるよう声を張って応えると、リシアの背後から地母神の精神体であるレイティシアさんにタイムリミットを告げられた。

「一時間でアレをどうにかしないとならないナリ!?」
「ヤバイヤバイどうしよどうしよどうしよ!?」

 きにゃこさんとぼっちさんが慌てふためき、鬼灯さんが「俺、異世界に来てまだ2ヵ月も経ってないんだがなぁ」と遠い目。
 こっちの世界の仲間たちも不安でざわつく。

「皆落ち着け。ねこさん、そちらの御仁ごじんが例の?」
「うん、彼女がレイティシアさん、地母神の精神体」
「よしなに」

 レンさんが会釈えしゃくし、俺たちの話を聞いていたレンさんたちが連れてきたこの世界の人たちの多くが膝を付きこうべれる。

「顔御上げなさい子供たちよ。今はそのようなことをしている場合ではありません」

 神の御言葉に困惑と緊張の入り混じった顔をしながらも1人2人と立ち上がる。

 そう言えばこの世界って地母神信仰が最大勢力みたいなことリシアが言ってたなぁ。

「女神様、何か他に助言は頂けませんか?」
「トシオさん、神剣をこちらに」
「あ、はい」

 逃げる時に回収しておいた神剣を収納袋様から取り出すと、剣の束を握る人の腕が付いていたため固まってしまう。

「……あぁ俺の腕か、びっくりした。人間びっくりし過ぎると悲鳴も出ないんだな」
「俺の腕って、じゃぁあなたの腕は!?」

 リシアが魔法装甲に包まれた俺の両腕を交互に見る。

「右手が今魔法で複製した腕っぽいだけの魔力の塊」

 リシアの叫びに俺は魔法装甲エインヘリヤルを解除すると、二の腕から先が無くなった右腕をあらわにする。
 傷口はキレイに塞がってはいるが、やはり利き腕が無いのは違和感しかない。
 それを見たリシアの顔が蒼白となり、ふらっと倒れそうになったのを左腕で支える。

「大丈夫か!?」
「大丈夫じゃないのはあなたの方です!」

 リシアが蒼白だった顔を真っ赤にして俺の腕から神剣を奪い、腕を引っぺがして剣を脇に捨てた。
 そして右腕を傷口に合わせると両手をえ、白い光で包みこむ。
 傷口がムズムズとしたかと思ったら肉が盛り上がり、高梨に吹き飛ばされ足りなくなった二の腕から肘の部分が再生を開始した。
 
 今まで大怪我はしたけど四肢の切断ってのは無かったなぁ。
 てか肉が増殖してるみたいで気持ち悪っ。

 高梨の増殖する触手を思い出しながらリシアの回復を待っている間、レンさんたちが投げ捨てられた神剣を拾おうとするも、神剣が静電気を帯びたようにパチっと鳴ってそれを拒む。

 リシアは触れるのにレンさんじゃダメなんだ。

「それで、この剣で何を行えばよろしいので?」

 拾えないと悟ったレンさんが諦めてレイティシアさんに対策を尋ねる。

「肉の塊の中には肉の核になる彼の本体があります。その核となった部分をその剣で貫けば、タヌァが滅した際と同じ現象、存在の崩壊を引き起こすことでしょう」
「なるほど、てことはまずあの肉を核から引き剥《は》がさなあかんわけか。難儀なんぎな話やな」
「いやいや、魔法も効かないあんな大きなモノの中から核を潰すなんて無茶ですよ! 見てくださいよ、あんなのもう暴風、災害そのものじゃないですか!」

 レイティシアさんの助言に大福さんが攻略手順を言うと、シンくんが拒否反応を露わにする。

 その気持ちすごくわかる。
 だってシンくんも俺と同じ魔法使い、魔法で何とかしようと考えちゃうよなぁ。 

「どうせ核も小さいんでしょ?!」
「核となったのは人間ですから、同じ大きさかそれよりも小さいと思ってく頂いて差支えはありません」
「ほらやっぱり! あんな大きなヤツの中から小さな核を見つけるなんて無理じゃないですか!?」
「いや、案外何とかなるかもしれんぞ?」
「と言いますと、レンくんには何か策がありそうですにゃ」
「魔法が利かないのに魔族たちはアレをどう討伐しているのか、ねこさんが切り落とした肉片が~と言っていたように、恐らく物攻撃は有効です」

 モーディーンさんの問いかけにレンさんがきちんと敬語で返す。

 レンさんがモーディーンさん相手に俺のことをねこさん呼びするの、腕の治療以上にムズがゆい。

「いくら物理攻撃が効いてもあのデタラメな攻撃の中に入らなきゃなんて危険すぎるよ! それに切り落とした肉も襲ってくるって言ってたし!」
「だそうだが、皆はどう思う?」

 さらに食い下がるシンくんに、レンさんはこの場に居る全員へ話を投げかける。

「あれも無理これ無理と、ナオキの弟の癖にとんだ腰抜けだな。あんなものガー! っと行ってドガーン! とやってやりゃいいんだよ!」
「エイダ姐さんの言う通りだぜ!」
「そうだそうだ!」
「あてもあても!」
「ぶちかます」
「お前たちは少し黙っていてくれ」
「「「へ、へい」」」

 オーガの美女とイノシシやサメのような厳つい頭の獣人男たちがレンさんの一言でシュンとなる姿に少し萌えてしまった。
 トトとメリティエも混ざって吠えてたのは見なかったことにしよう。

「他にちゃんとした意見のある者は?」
「良いでですかにゃ?」
「頼みます」
「では、触手の動きは一見不規則なようでも所詮は振り回す腕の延長線上でしかないですにゃ。であるならば、アレに近付いて攻撃を加えるのは十分可能と判断しますにゃ」
「拙者も行けますぞ。物理攻撃でひたすら削り、斬った肉片は串刺しにして行動不能にすれば良いのではござらんか? ただし触手が独立して攻撃してくるパターンになるとちと厄介でござるが」
「つーかさぁ、本体とショクシュ? ってヤツの相手を最初から誰がするか決めて戦えばいんじゃね?」
「おぉ、ルージュ殿もたまにはちゃんとしたこと言うでござるな!」
「はぁ?! たまにってバカにすんなし!」
「照れなくても良いでござるぞデュフフ」
「照れてねーし! つーか気安く人ん頭撫でんな殺すぞおっさん! 死ね!」
「デュフフフフ」

 影剣さんのめ言葉にキレ散らかすルージュ。
 影剣さん本人は本気で褒めているつもりだから質が悪い。
 
「他は何かあるか?」
「……魔力の吸収を阻害すればアヤツの膨張を抑制出来るのじゃろ? トシオ1人では無理でもこの人数でそれだけに集中すればやれると思うがどうかえ?」
「確かに。戦闘しながらだとアレだったけど、それだけに集中出来れば何とかなるかも」

 イルミナさんの意見に俺も同意する。

「あの、さっき魔族が魔族に対抗する手段の話が出てましたが、もしかしたら魔族を封じるスキルや魔道具が存在してそれを使っているのかもです」

 引っ込み思案のよしのんが珍しく意見を上げた。

「確かにその線も捨てきれん、貴重な意見だ。……では他には? あるなら今の内に言っておけ」

 レンさんが更に意見を募り、皆があれやこれやと議論する。
 学生の時にはコミュ障をこじらせ出来なかっただけにすごく楽しい。
 だがそんな楽しい時間も長くは続かない。
 高梨という時限爆弾があるからだ。

「ヨシ、時間的にここまでだ。作戦だが俺に考えがある。これからある実験を行う。実験が成功したならそれをじくに作戦を組む。もし実験が失敗したならまた別の案で挑む。それで構わないか?」
「ナオキの考えならアタシはなんだって従うさ!」
「俺らもどんな無茶だって旦那に付いてくぜ! なぁ?」
「応!」

 まだ作戦内容も聞いていないのに、先ほどまでシュンとしていたレンさんの仲間たちが威勢よく応える。

「レンさんの作戦なら聞いてみる価値ありますぜ!」
「トシオがそう言うなら私たちも従うわよん。話しがトシオより全然まともだもの。ね、みんな?」
「我らも右に同じミギニオナジですにゃ」
「ららら~、女神様に導かれし英雄たち~一丸となり~~過酷な試練に~い~ど~む~~~~」

 レスティーにモーディーンさんが日本語を交えて頷き、アーヴィンがリュートを奏でる。
 出っ歯エルフの美声に彼に心酔しているエルフのカリオペさんがうっとりと見詰め。きにゃこさんがヒクヒクと肩を震わせ地面にうずくまった。

 ホントにこの子は……。
 てか俺さらっとレスティーにディスられた?

「よし、それでは説明を始める!」

 レンさんの説明後直ぐに俺もその実験に参加したと言うか俺が主軸メインの実験だった。
 そして実験は無事に成功してくれたことで、この場に居る全員による総力戦が開始された。
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