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207話 戦略級爆裂魔法
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影剣さんと再会した翌日。
俺たちはモーディーンさんたちが護衛を務めるタンザスの村を囲う壁の外にて、日課となっている戦闘訓練を行っていた。
皆ウィッシュタニア城襲撃で思うところがあったのか、訓練の方向性が明確になった気がする。
「サモンエレメンタル・ヴァルキリー! クラウ・ソラス!」
リシアが光の上位精霊を呼び出すと、〝〈精霊召喚〉は同じ属性の下位精霊を無尽蔵に呼び出せる〟特性を利用し光の中級精霊〈ウィル・オー・ウィスプ〉を大量に召喚。
ソフトボールサイズの光る球体にまん丸2つと長円形で構成されたデフォルメ顔がリシアの手元に集約し、指向性散弾魔法〈クラウ・ソラス〉として放つ。
散弾として豆粒のように小さくなったウィスプがリシアの周りを旋回すると、その一部が前方に打ち出され、目に見えない敵を追い回すような動きを始めた。
シャドーボクシングのようなことを続ける間も光の精霊は集まり続け、リシアの姿が完全に光の繭の中に埋まってしまう。
俺がウィッシュタニアの玉座の間で当時の近衛騎士団長の最大攻撃を防いだ時の様だ。
リシア自身は近接戦闘を得意としていないことは、彼女の戦い方を見ていればわかる。
そこで目を付けたのが、俺の必殺魔法〈クラウ・ソラス〉を用いての攻防一体の戦闘方なのだろう。
しかも〈サモンエレメンタル〉はSP消費が激しいとはいえ、今の俺たちならば上位精霊1体を維持するくらい問題はない。
それを考えると、自分のMPだけで構築する俺のよりも、リシアの扱う精霊魔法Verのクラウ・ソラスの方がはるかに燃費が良い。
てかあの〈クラウ・ソラス〉、永久に持続出来るんじゃないか?
回復と補助に無くてはならないPT全体の要である彼女が、高火力殲滅と防御までこなすとあっては、俺の存在意義が揺らぐ。
迷宮でサモンエレメンタルを使って殲滅していた頃のリシアを思い出すなぁ。
そもそも家では料理以外の家事全般も彼女が取り仕切っているのだ、俺の立場なんて元からない。
ここは素直に「ウチのカミさんマジ神さん」と、常に感謝の気持ちと愛おしむ心で敬おう。
だが、サモンエレメンタルでのクラウ・ソラスにも1つ重大な欠点がある。
「リシアや、サモンエレメンタルからでは、魔法発動までにワンテンポ遅れてしまうえ」
俺が気付いていた問題を、近くで見ていたイルミナさんが本人に直接指摘する。
「近接職相手にその遅れは致命的じゃ。状況を見極め、従来のモノとの使い分けが必要じゃな」
「はい。けど、その見極めるが私には難しいのよね。とっさに出来るかどうか」
「こればかりは冒険者になってまだ間もないお主では詮無きことじゃが、そこはトシオのあみ出した〈精神加速〉で対処すればよかろう」
そうリシアにアドバイスをするイルミナさんは皆に魔法の指導を行いながらも、並行して〈グレイプニル〉をより細く練り上げたモノを複数射出し、周囲の大木を切断した。
鋼糸使いみたいでかっこいいなぁ。
本人は大雑把な性格なのに、繊細な魔法制御や魔法操作を苦も無くやってのけるものだから、弟子である陰キャエセエルフやエセマルモルとは正反対だ。
あと、巨大な魔力製の水瓶を高速で作り出す練習をしていた。
何に使うのか全く分からないので色々と謎である。
「すごいですお母さん……!」
白い肌をしたダークエルフが倒壊する大木をさらに輪切りにするイルミナさんを見て、実の娘を差し置いて母と呼び始めた。
齢300歳に近い最年長者であるイルミナさんは家では皆のお母さんなため、特に違和感なく受け入れてしまっているのが恐ろしい。
「これセシル、よそ見なんぞしておらんで練習に集中せんか」
「は、はい……」
叱られてシュンとなりながらも、セシルは胸元で向かい合わせにした両手に膨大な魔力を込め続ける。
繊細な魔法操作も機敏な動きも苦手なセシルは、大量のMPを消費して最大火力の魔法をより早く構築する練習を行っていた。
「フレズヴェルク……!」
膨大な魔力を宿した白き大鷲が上空に飛翔させ、ぶっ放したセシルがスカッと爽快な顔をした。
最近はよく笑う様になったとは言え常日頃からストレスを貯め込んでいるのかとセシルを心配していると、飛んでいく大鷲が下からの高エネルギー砲撃を受けて爆散した。
森の方から一頭分の馬の蹄音が響く。
射抜いたのはケンタウロスのユニスだ。
彼女は自分の戦闘スタイルを完全に速射砲台として捉え、今は森の中を駆け回りながら遭遇した魔物相手に弓を射ることで反応速度と速射能力の強化に努めていた。
その馬の背中には鞍が取り付けられ、妹分のハーピーが獲物を探知しては魔法であぶり出し、ユニスの修行を手伝っている。
「ユニスさんたちもしゅごいでふね」
「あの調子だと、ここらのモンスター根こそぎ刈り取られちゃうんじゃない?」
「だったらあたしらの仕事も無くなりそうね」
フィローラのつぶやきに復興中の村の護衛として滞在するヴァルナさんとマルグリットが応える。
フィローラもセシルと同じで反応速度的に素早い相手をどうこうするのが苦手だ。
自身の周囲にドーム状の防御魔法〈プロテクション〉と空間に反発力を発生させる〈フィールドプロテクション〉で守りを固め、最上位精霊魔法職〈ミュルクウィズ〉による広域範囲魔法で泥沼や黒い茨を生み出している。
泥沼に浸かり黒い茨が巻き付いた木々が根本から腐る様は、毒々しい以外に表現する言葉がない。
我が家で一番愛らしい女の子が一番おっかないことしてる……。
幼い顔立ちの少女顔の笑みが、一瞬この世のすべてを見下すような不穏なものに見えた気がした。
なんにしろ生態系を壊さない程度にオナシャス。
ライシーン五十階層以降元気のなかったククだが、ウィッシュタニア襲撃後は何やら自信を取り戻したかのように落ち着いて見えた。
彼女が扱う強固な防御スキル〈要塞壁〉も鉄壁さに磨きがかかり、挙句の果てにはシタデルウォールを用いての|〈大量魔法防壁はもう空いた口がふさがらないレベルで反則だった。
そりゃ自信も取り戻すわ。
ククを相手にスパーリング中のトトとメリティエは、その鉄壁さをどうにか崩せないかと悪戦苦闘中。
なんでも断ち切るトトのデタラメな攻撃力をもってしてようやくククのシタデルウォールに深々と刃が食い込むも、断ち切られる前に第二第三のシタデルウォールが出現しそれを阻む。
一撃の威力はトトの方が上だけど、一刀でシタデルウォールを砕けない時点でククに分があるな。
メリティエが神速の動きでかく乱を試みるもククは動じず。
思い切って突撃するもメリティエのデスタッチではククの防壁にヒビすら入らない。
単純に相性が悪いとしか言いようがないな。
よしのんは、モーディーンさんの指導の下〈マクマレート流〉の修行中。
チャドさんやモーディーンさんも習得しているマクマレート流の闘術は、〈グラディエイター〉や〈ナイト〉の〈オーラブレード〉や、〈ガーディアン〉の〈オーラシールド〉、〈モンク〉の〈気功〉を応用した流派で、この|闘気〈オーラ〉と呼ばれる生命エネルギーを用いたスキルの発展型が〈バトルマスター〉の身体強化スキル〈バトルオーラ〉だ。
よしのんはそれに〈勇者〉の固有スキル〈光刃〉を重ね掛けして威力UPをはかっていた。
オリジナルの魔法を構築するための必須スキルが〈マナロード〉の〈マナ感知〉と〈マナ操作〉であるように、近接職でのそれに当たるのが本来ならばバトルマスターのバトルオーラなのだが、マクマレート流はそれをもっと早い段階で使いこなそうとしてるのだから、モーディーンさんたちの師匠であるマクマレートさんはただ者ではないのだろう。
案外バトルマスターになってから「あれ、バトルマスターにならなくても使えるんじゃね?」と気付いたんだったりして。
イルミナさんはマナロードになる前からオリジナル魔法使えてたし。
そんなみんなの頑張りを眺めている俺はというと、チャドさんとの槍術訓練では魔法無しの近接戦闘を重点的に行っており、相変わらずコテンパンにされ地面に転がっていた。
「ったく、所々良くはなってきてはいるがまだまだだな。虚と実をもっと効果的に使え」
立ち上がろうとした俺へ、転がした張本人が呆れ交じりの言葉をかける。
おかしいなぁ、一応虚実織り交ぜてやってるのに全く通じないのなんなんだぜ?
そもそも教えてる本人に教えられた通りのことをして通じる訳がないんだよな。
だがそう言われるってことは、チャドさんには〝ここで虚を突けばどういう効果が得られるか〟が分かってるが、俺にはその感覚が掴めていないのだろう。
「どうやったら効果的に使えるようになります?」
「そんなものは自分で掴め。こうして戦い合ってれば、嫌でも分かって来るもんだ」
うちの師匠、アドバイス下手過ぎ問題。
チャドさん自身が天才肌なのだろう、自分が感覚的に出来ているだけに、それを他人に落とし込むことは苦手なようだ。
どっちにしろ近接戦闘の経験値が圧倒的に不足しているのは確かだし、チャドさんが超一流の槍使いなのに変わりない。
今はこれを続けることでコツを掴むと信じよう。
そしてチャドさんとの修行で改めて理解したことがもう1つ。
スラムの子供たちの指導はモーディーンさんに任せよう。
せっかくやる気を出した子供たちがボコボコにされてやる気をなくされても困るしな。
「つーか、あいつらみたく欠かさず筋トレしてるのか?」
そんな俺の内心を知らないチャドさんが顎で指した方を見ると、マルグリットさんとなぜか家に来たルージュが2人でラグビーのスクラムを組んで押し合っていた。
その近くでは昨日タンザスに到着したばかりのケインさんが、上半身裸で黙々と腕立てをしている。
モーディーンさんたちベテランPTの中では比較的若いケインさんの作り込まれた肉体は、何処となくレンさんを彷彿とさせる。
俺があんな筋肉質な体を手に入れるのはいつになるのやら……。
「筋トレはちゃんとやってますよ? けどそんなにすぐムキムキになれるなら、マルグリットさんの人生全否定でしょ」
「それもそうだな」
「まるであたしの人生が筋肉だけみたいな言い方やめてくれる?」
俺たちの声を聞き逃さなかったマルグリットさんが、スクラムを解いてこちらへ抗議してきた。
「違ったん?」
「違ったのか?」
「違うに決まってるでしょ! あんたら乙女に向かってどれだけ失礼なのよ!」
俺とチャドさんの声がハモると、筋肉系美少女の絶叫が森の中に木霊した。
〝乙女って〟と、更に失礼過ぎる言葉が脳裏をよぎるも、多くの嫁を抱える俺としてはそれをそのまま口走るようなヘマはしない。
しかし――
「お前さんが乙女ってタマかよ」
チャドさんが不精髭を手で撫でながら、言ってはならないことを言ってしまう。
「あー、言ったわねこの中年オヤジ! そんなデリカシーの無さも奥さんが逃げた原因の1つじゃないの?!」
「はおあっ!?」
マルグリットさんの痛烈な言葉のカウンターに、チャドさんを一発で轟沈させられた。
本当に逃げられてたんかい……。
「マリール、マーレル、頼むから戻って来てくれぇ……!」
40近いおじさんが、地面に両手を着いてボロボロと本気涙を流す様は、あまりにも無様で悲惨過ぎた。
奥さんに逃げられたくらいでどんだけ豆腐メンタルなんだよ。
いや、俺もリシアに逃げられたらこうなるかも……。
『お世話になりましたトシオ様、今日限りで実家に帰らせて頂きます』
『待ってくれリシア、話し合おう!』
『これからは他人です。今後一切話しかけないでください』
『リシアああああ!』
だめだ、脳内で繰り広げた想像だけで泣きそうになる。
ちょっとした妄想で心が悲鳴を上げ、両手で顔を覆い項垂れる。
「なんでアンタまでダメージ受けてんのよ……」
ヴァルナさんの呆れ混じりにツッコんだ。
後にマルグリットさんから聞いた話では、逃げられた原因は奥さん愛が強すぎたからだとか。
原因が酒や博打ならわかるけど、強すぎる奥さん愛ってなんだよ。
結婚後から奥さんの傍を離れたくないチャドさんが、近隣どころか1日~2日で自宅に帰ってこられるライシーン周辺の魔物退治や採取クエストしかやりたがらず、駆け出し冒険者並みの収入にまで落ち込んだそうだ。
これ程の腕を持つ将来有望な冒険者が、結婚してから低賃金になるとか、「奥さんに内緒で脱サラし、喫茶店を経営でスローライフを始めます」みたいな中年サラリーマンが一番やっちゃだめなことをしたのか……。
今はモーディーンさんたちの計らいでそこそこの収入を得るようになるも、奥さんに逃げられたショックから未だに立ち直れず、苦痛がフラッシュバックし寝る前のお酒が欠かせないのだとか。
俺の師匠は槍だけでなく人生を棒に振るのも達人級だった。
こうはなるまい……。
地面に泣き崩れる哀れな中年男を見ながら心に誓っていると、手持無沙汰になったルージュがこちらに近付いてくる。
相変わらずの敵意むき出し状態だ。
野良犬か何かかな?
「なぁ、いい加減あーしに仕掛けた爆弾解いてくんない? んでもってもう1回あーしとガチでやり合わね? あ、まさか女のあーしが怖いとか言わないよね?」
「……無視」
手すきになったルージュが挑発してくるが、そんな頭の悪い挑発に乗るつもりもない。
「無視すんなし!」
背後から本気のミドルキックが飛んできたのを衝撃波で吹き飛ばし、吹き飛んだところを上からの衝撃波で地面にたたきつけて黙らせた。
ついでにもう5発ほど衝撃波を叩き込み地面に埋没させてやる。
「こんなの、あーしには効かないし」
服に着いた土を払い、陥没した地面から這い出てくるルージュ。
殺傷力の高い攻撃でなければ傷1つ付かない近接職の頑強さは化け物すぎる。
だがダメージが無いだけで効果が無いわけではない。
ルージュの踏み出した右足が地面に着く直前、再び下からの衝撃波で打ち上げ続け、森の向こうへと弾き飛ばした。
しばらく帰って来なくていいぞっと。
「お、やっているでござるな」
遠くへ飛んでいくルージュを眺めていると、全身を黒装束に身を包んだ影剣さんが村の囲いを飛び越えてやってきた。
「おはよ――」
「ローザ殿に納屋のワープゲートからこちらに飛べると聞いて見に来たでござるが、どうかしたでござるか?」
何事も無く話す影剣さんの腕の中には、ピンク色の髪に子供用の水色フリフリドレスを着た3歳児くらいの女の子が抱えられていた。
背には純白の翼が生えていることから、〈鑑定眼〉で視るまでもなく昨日渡した天使の卵から孵化した物体である。
「はっや!? 孵化袋に入れてまだ半日なのにもう生まれたの?」
「くふふ、名はサクラと申す。テイムモンスターは主が得た経験値が流れ込み羽化と成長が早まるゆえ、手持ちの魔水晶を全部使ってやったでござるぞ」
「あぁ、だからうちのミネルバもあんなに成長が早かったのか」
今更ながら我が家のマスコット1号の成長速度に納得する。
「サクラ、こちらは拙者の主にして親友のねこ殿でござる」
影剣さんが腕に抱く天使の女の子(?)をこちらに向けて紹介する。
目と口調が完全に愛娘を溺愛する育児パパのそれである。
てか主言うな。
「サクラちゃん、俺は敏夫、よろしくね」
「あい、おじちゃまよろちくでしゅ!」
「お、おう……」
まだ24なのにおじさん呼ばわりは地味に心がえぐれる。
否定したいところではあるが、生まれたばかりの子に言ってもしょうがないのでぐっと堪えた。
「んで、何か進展はあったの?」
昨日は別れ際に色々と工作したり、彼の部下と話をつける的なことを言ってたので進捗を窺う
「部下の忍び衆は一族すべて拙者に付くことで話はまとまったでござる。移住先もアイヴィナーゼで世話になることが決まり申した」
「それは良かった」
ウィッシュタニアは国が金欠状態だし、一族全員ともなるとアイヴィナーゼしかないわなぁ。
てか2年やそこらで一族丸ごと付いてくるだけの人望もすごい。
「んじゃ、何かと要りようじゃない? これ良かったら使って」
そういうと、昨日もらったばかりの白金貨が入った小さな革袋を取り出し影剣さんにわたす。
ウィッシュタニアほどではないにしろ、戦争の準備でアイヴィナーゼもお金に余裕がある訳じゃない、妻たちの結婚指輪を買ってもまだ有り余るほどのお金がある俺が出費しても罰は当たらないだろう。
そういえば、注文した結婚指輪も取りに行かないとなぁ。
「こんなに良いのでござるか?」
「引っ越し祝いってことで」
「かたじけない」
ウィッシュタニアでもらった白金貨が、革袋ごと影剣さんの手に渡る。
「アイヴィナーゼと言えば、〈ダンジョンコア〉はどうだった?」
「問題なく使えるでござるぞ」
影剣さんの話によると、バラドリンドは影剣さんを呼び出すのに使ったダンジョンコアを複数人の信徒が神聖魔法の〈マナチャージ〉で強引に魔力をつぎ込み再利用を可能とした。
さらにそのダンジョンコアを暴走させることで得た莫大な魔力で例の6勇者を召喚したのだとか。
ちなみにそれらはすべて影剣さんの発案で、勇者の選定も「大学の構内ならば健康的な男をまとめて釣れるのではとやってみた」とのこと。
御し易さでは女性の方が良いだろうが、戦闘になる可能性を考えると無難な選定なのかもしれない。
「バラドリンドのダンジョンコアもそうでござったが、無理な充電で次に起動させるとおそらく二度と使い物にならなくなるでござるぞ」
「たとえ壊れてでも今使える方が良いよ」
ダンジョンコアはマジックアイテムの制作にも転用できると魔導書に書いてあった。
なら対6勇者の切り札になりそうなモノを作っておくべきだ。
どうせ負けたら今後の勇者召喚がなんて言えなくなるんだし。
「……拙者はこれからバラドリンドの教会最深部に潜入し、姫巫女殿の所在を探りに行くでござる。そこで、迷惑ついでと言ってはなんでござるがサクラをねこ殿のところで預かってほしいでござる」
「俺のとこで? 忍び衆のところじゃダメなの?」
「忍び衆は一族の移住で今は忙しいでござる。そのような状況で生まれたばかりのサクラを預けられぬでござるよ」
「ん~、でもこればかりはリシアたちに聞いてみないと――」
「お預かりします♪」
「うおっ!?」
いつの間にか真横に居たリシアが、すぐさま影剣さんからサクラを受け取り抱きかかえた。
「私はリシア。よろしくね、サクラちゃん」
「あい!」
元気の良い返事と共にリシアに抱き着くサクラ。
そのあまりの可愛さに、可愛いモノ好きのリシアの顔が蕩けきる。
「では奥方殿、サクラをお頼み申す」
「お任せください。サクラちゃん、私のことは本当のお姉ちゃんだと思っていいからね?」
「おねえちゃん……おねえちゃん!」
「えぇ、お姉ちゃんですよ。サクラちゃんはどんな遊びが好きかしら?」
「んーとねぇ、隠れんぼう!」
「隠れん坊か、じゃぁお姉ちゃんの家で隠れんぼうしましょうねー」
「あい!」
「トシオ様、お昼の支度もありますので戻りますね」
「うん」
「我らもそろそろ引き上げるとするかのう」
魔法の練習をしていたリシアたちが自宅へ引き上げるのを見送った。
……さてと、どうしたものか。
師匠は未だ戦闘不能だし、槍の練習はこのくらいにしておくか。
それにウィッシュタニアから頼まれていた問題もあるし、やらなければいけないこともあるからまとめて処理しよう。
「影剣さん、時間ってまだある?」
「潜入は日が暮れてから行くつもりでござるゆえ、問題ないでござるぞ」
「んじゃちょっと付き合ってくれる? ユニス、ミネルバ、出かけるから戻って来てー!」
森に向って呼びかけると、すぐに人馬の娘が姿を現す。
その後ろから目を吊り上げたルージュがユニス達を追い越して戻って来る。
思いのほかはやかったなぁ。
「何してくれてんのよー!」
帰って来るなり全力疾走からの全力グーパンチを繰り出されるも、ブリージンガメンによる物量防御でルージュの攻撃がこちらに到達する前にその威力をそぎ落とし無力化する。
「信じらんない! モンスターだらけの森に女の子を放り出すなんてマジアリエンティ!」
ここは師匠に倣って女の子ってタマかよというべきところか?
でも面倒くさいのでスルーしよう。
「あーはいはい悪かった悪かった。詫びに面白いのを見せてやるからお前も付いてこい」
「なにその言い方、謝る気無いっしょ! つーか、なんであーしが行かなきゃなんないのよ!」
「いいから黙って付いてこい、でないと後悔することになっても知らないからな?」
もっとも、後悔なんて感じる前に死体にならなきゃの話だが。
「後悔なんてしねーし」
「あたしはあたしは?」
「マルグリットさんも良いですよ」
「ほら、ルージュも行くよ。トシオに付いていけば絶対面白いものが見られるって、な?」
「むっ……まぁマルグリットが行くなら? あーしも別に行って良いけど?」
「なら決まりね!」
ルージュが不満気ながらもマルグリットさんの誘いは断れないといった感じで了承した。
昨日の今日なのになんでそんなに仲良いんだよ。
腑に落ちない気持ちのまま、一度ライシーンに戻りクラウディア王女とフリッツをそれぞれ回収すると、俺たちはウィッシュタニア魔法王国の首都から高速移動装甲魔法〈グリンブルスティ〉を用い1時間程かっ飛ばしたところにある山の山頂にやって来た。
山の周囲は木々が生い茂る森となっている。
「超気持ち良かったんですけど! マジテン上げっしょ!」
「チャドのおっさんが今の魔法で死にかけたって言ってわね」
「あの時は本当に酷い目に遭いました」
「ちー……」
やたらはしゃぐルージュとは対照的に、マルグリットさんの言葉で迷宮五十階層で天使の群れとの戦いを思い出したユニスとミネルバが項垂れる。
あれは事故やったんや……。
苦い記憶を思い出しつつ、遠くを見渡せる頂きの縁まで歩いていく。
「それでトシオ様、このような場所で何をされるおつもりですの? キャンプに来た訳ではないのでしょ?」
「あそこに村が見えるでしょ?」
ふもとの森からかなり離れたところをクラウディアに指し示すと、視力強化をもってしてもギリギリ見えるかどうかの距離に村らしきものがある。
闇魔法で長円錐の筒を出現させ水のレンズをハメて凍結、即席の望遠鏡を作り王女様に覗かせる。
「ありますわね」
「ホントだ、良く見えるわね」
「さっきの車もだけどこんなことも出来るんだ、魔法って超便利じゃん」
クラウディアが望遠鏡から離れると、今度はマルグリットさんとルージュが順番にを覗き込み、ミネルバも同じ魔法で望遠鏡を作ってユニスに渡す。
影剣さんも懐に設定しているであろう収納魔法から望遠鏡を取り出して確認すると、それを隣に居たフリッツに回す。
俺は複合索敵魔法〈フリズスキャールヴ〉があるため、望遠鏡が無くても10キロ離れた村の中の人の動きでも丸わかりだ。
「あの村はワイズナー伯爵領と首都を結ぶ街道の中継村として栄えていたのですが、現在は盗賊団のアジトになり果てており、ウィッシュタニア全土にはそのような村が確認されているだけで14ヵ所も存在しています」
フリッツが皆に説明する。
街道沿いの村の周囲は丸太を地面に突き刺した防壁で囲い、モンスターなどの侵入を防いでいる。
先程まで居たタンザスの村も同じ作りで、違いと言えば村の外に畑があるくらいだ。
「なるほど、その村を開放するのがねこ殿のお仕事という訳でござるな?」
「そういうこと。と言いたいんだけど、あそこはもうダメかな。村人が若い女性と子供しか居ない」
村の中で動いている男たちは、何かしらの犯罪的な〈称号〉を保有を保有していた。
それってつまり、男は全員殺されたか、何らかの方法で――
索敵魔法で村を隅々まで探っていると、外壁の外側に村人であろう男たちの白骨化した死体が打ち捨てられているのを発見してしまう。
白骨の中にはまだ幼い子供の骨も混じっていた。
「なんでそんなことまで分んのさ?」
「索敵魔法で調べれば、妨害されでもしない限りこの距離でも簡単にわかるんだよ」
胸クソの悪さを堪えながら、ルージュの疑問にわざわざ答える。
「んじゃ、ちょっと救出してくる」
1人ワープゲートを潜り、村の中の誰も居ない家の中に出る。
索敵魔法を駆使してのスニーキングミッションを開始して、村人全員とどこかで攫われてきたであろう女性たちを連れ出し、ウィッシュタニア王国に保護してもらう。
それが終わると白骨化した死体を魔法で地中深くに埋めて弔うと、先程の山頂に戻る。
行きがけの駄賃に片っ端から奴らの〈魔道具袋〉と金銭を頂いて。
このお金は村で回収した食器や家具なんかと共に、あとで保護した女性たちに渡すとしよう。
「村から女子たちが居なくなったことに気付いたようでござる。盗賊どもはどうするでござる?」
「当然今から処分するつもり」
エルネストからは「今は戦の準備で忙しい、捕えて裁きを下す時間すら惜しいから駆除してくれ」とのお達しだ。
村の男を殺し女を嬲ったのだ、更生なんて期待するより再犯を防ぐ意味でも命をもって償わせた方が世のためだろう。
「不満があるとすれば、罪に見合った苦痛を与えられないかもってことかな」
胸クソの悪さと怒りを押し込めながら、土操作魔法で塹壕を作り、手前に強固な魔法防壁を展開する。
「ずいぶんしっかりした防御陣地でござ――」
「まさか」
「みんな、危ないから早く穴に入って」
影剣さんとフリッツがこれから起こりえる可能性に勘づき素早く入ると、ユニスも青ざめた表情でミネルバを連れ塹壕に駆け込む。
ほかも塹壕に入り地面からひょっこり顔を出し、フリッツも〈記憶の水晶〉なる魔道具を取り出す。
ここに居るのは俺が絶対に守らなければならない家族と仲間、それに他国からの侵略に立ち向かうコミュニティに属する人間だ。
アイヴィナーゼやウィッシュタニアの人々に戦うための希望を与えるためにも、俺の力がどれほどのものかを彼らに見せ、それぞれのコミュニティの長に伝えてもらう必要がある。
それとルージュを連れてきたのは、裏切れば自分がどういう相手を敵に回すのかを分からせるためだ。
そのためにも盗賊どもの苦痛なんかより、見た目と威力重視の攻撃魔法を披露しなければならない。
さっそく魔力で楕円形の大型容器を成型すると、その内部を構築していく。
準備完了、発射シークエンス、スタート。
3……。
2……。
1……。
発射!
「戦略級爆裂魔法・スルト!」
炎の巨人の名を冠した魔力の塊が、ものすごい速度で空へと打ち上げられた。
カプセルが村の上空に到達するなり炸裂し、中に詰まっていた可燃性魔力が広域へ散布され、着火と共に大爆発が巻き起こる。
急激な気圧の変動と爆炎が膨れ、衝撃波が村を上から押し潰し、炎が膨大な熱と共に黒煙を引き連れキノコ雲となって空へと昇っていく。
猛烈な爆風は潰れた村を盗賊ごと吹き飛ばし、爆発の衝撃が恐ろしい速さで外に広がる。
ボワアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!
数舜後には爆発音が俺たちの元にまで轟き、衝撃と爆風が塹壕と魔法障壁を強く揺らす。
「これは凄まじいでござるな……」
揺れが収まったのを確認し、引っ込んでいた皆が再び塹壕から顔を出した。
「こ、これが1人で行使しうる魔法の威力ですの……!?」
「トシオ殿が常日頃より自身を〝後衛魔法使い〟と称する意味をようやく理解しました……」
「自分も凄まじい以外の言葉が出てきませんね……」
「「………」」
影剣さん、クラウディア、ユニスの声が震え、いつもにこやかな笑みを浮かべているフリッツですらその顔が蒼白なものとなっている。
マルグリットさんとルージュに至っては、更地どころかえぐれた爆心地を言葉も無く呆然と見つめていた。
ミネルバだけが、観察者の顔で状況を眺めている。
「ねこ殿、なんでござるか今の魔法は!?」
「〈気化爆弾〉を魔法で出来る限り再現してみたらこうなった。さすがに準核兵器と言われるだけはあるなぁ」
魔法の構築に利用したのは、火属性上級範囲魔法の〈ナパームフレア〉だ。
ナパームフレアは魔力を可燃物に変化させ、着弾と同時に火を着けることで対象を燃焼させる焼夷魔法である。
このナパームフレアを解析して可燃性魔力だけを再現し、〈魔力ガソリン〉と呼ぶべきモノを生み出した。
それを魔力で作った強固なカプセルに圧縮して閉じ込め、発射後に高温で加熱することでカプセルは熱で膨れ上がり魔力ガソリンに内側から強く圧迫され目標地点で穴を開け、気圧の変化を利用し魔力ガソリンが広域に散布される。
最後に薄く広がった魔力ガソリンを着火してやることで全方位から長時間の爆発による急激な気圧の変化を発生させた。
するとあら不思議、なんちゃって気化爆弾の完成である。
これがクレアルコ湖でダイナマイト漁をした爆裂魔法の正体だ。
クレアル湖では環境破壊を考慮し手加減したが、今回は実験もかねて全力で行ったため、クレアル湖での爆発とは比べ物にならない破壊力となった。
こんなものを人体で受けようものなら、普通の人間なら人としての形状を留めることすら不可能だ。
舞っていた村の残骸に紛れ、握りこぶしサイズのミンチが塹壕の前に張った魔法障壁にぶち当たる。
ピンポイントで俺の近くに降ってくんなよな……。
「手加減してもこの威力……」
「これで手加減!?」
ミネルバの不用意な発言にユニスがさらに驚く。
「まことでござるか?」
「あー、うん、まぁ、たぶん」
まぎれもなく全力ではあったので手加減というと語弊はあるが、ここからさらにカプセルの体積を増やして多弾頭化を行えば、爆発の威力と継続時間、効果範囲も爆上がりするはず。
それこそ核兵器並みかそれ以上になりかねない。
しかも魔力が続く限り飛距離を伸ばせるため、射程もおかしなことになること請け合いだ。
この世界には〝人以外はこの星の外から来られない〟ってルールがある以上、さすがに大陸間弾道ミサイルみたいなのは無理かもだし、そもそも索敵魔法の範囲外まで離れたら着弾地点を正確に決められない。
けど、バラドリンドの勇者情報を考えると、魔法という特殊な力ですべてを構築された〈スルト〉だと〈特殊能力無効化〉スキルを持つ例の勇者に消されかねないんだよなぁ。
気化爆弾の性質上、爆発した時点でその周囲の空気も根こそぎ奪えるから窒息死も狙らえると思うけど、どうも上手く行く気がしないのがなんとも。
なんとなくだこれは失敗するかもという予感を覚え、大きなため息を1つ付くと、先程の挽き肉が目に入いる。
人を殺した罪悪感が余り沸かなくなったのは、相手が悪人だからなのか慣れて来たからなのか……。
目の前で起こした爆発の威力がヤバ過ぎて、自分でもよくわからない。
「これでもまだあなたはお父様に敵意を向けるの……?」
「あ……あ……」
体長4メートルに巨大化したミネルバが瞳を大きく見開きルージュに問うと、ルージュは青ざめた顔で震えながら視線だけで異形の娘と俺とを交互に見続ける。
「お父様の使える魔法は私も使える……。もしあなたが裏切ったら、地の果てまで追いかけて今の魔法であなたを討つ……」
ミネルバの念押しに、ルージュは口元を震わせゆっくりと頷く。
思考する知性を持ち、自在に空を飛び回り、10キロ離れた場所からでも隠れた相手を見つける索敵魔法と一都市丸ごと吹き飛ばしかねない爆裂魔法を使う猛禽とか、絶対に敵に回したくないな……。
硬直してしまったルージュを見ながら、改めてミネルバのヤバさを痛感する。
ミネルバが言ったセリフは、本来は俺が言わなければいけないセリフだ。
「ミネルバ、ありがとね」
「ちー……」
代弁してくれたミネルバに、心の中で詫びながら感謝を告げる。
「ねこ殿、あの魔法はあまり他人に教えぬ方が良いでござるぞ」
「人に見せたのは今日が初めてだけど?」
いや、クレアル湖で偶然見た人が居たな。
常識が通じない魔族2人の顔を思い出す。
「……なるほど、魔物紋を受けた魔物を卵から育てると知識などを主と共有すると聞くでござるが、まことでござったか」
影剣さんのつぶやきに、彼が「他人に〝見せて〟教えない方が良い」という意味で言ったと早とちりしたことに気付くのと同時に、ミネルバが日本語を話せたりこっちの世界では知りえないような知識を持っていたりする理由が判明した。
まぁ知ったところで今更感はあるけど。
「用も済んだし引き上げようか」
皆を送り届けた後、俺は1人別の盗賊団アジトを襲撃し、切り札となるべき魔法を試みた。
それは2度の失敗を経て3度目にして成功し、盗賊団アジトの跡地に巨大なクレーターが生まれる結果となった。
これなら特殊能力無効化スキルにも対応できるかもしれない。
冷静に可能性を検討しながらも気化爆魔法よりもヤバイ魔法に恐怖を覚え、逃げるようにワープゲートで自宅に戻った。
「おかえりなさいトシオさん」
「ろぉざぁ~」
出迎えてくれた豊満な妻に速攻で抱き着くと、大きな胸と共にそのわがままなお腹のお肉を体の正面で堪能する。
豊満すぎる胸に胸よりも突き出たお腹と、背後に回した手が触れる腰からお尻にかけての柔らかさはまさに極上。
冷房で冷えた脂肪が炎天下の外から帰って来たばかりの俺には余計に気持ちいい。
「どうされましたの?」
「もうなんか色々としんどい~」
「あらあら、それは大変でしたわね」
優しい口調で頭を撫でてくれる彼女の肩に顔を埋め、巨大なお尻を揉みしだく。
「ふふふ、トシオさんは甘えん坊さんですね」
ローザのポッコリお腹も大きなお尻もさわり心地は大変素晴らしいが、さわっていて一番気持ちいい部位は何といっても極上の太ももだ。
さすがに玄関先で太ももを撫でまわす訳にもいかないので、今晩の楽しみに取っておこう。
代わりとばかりに手を上に移動させ、腰に付いたお肉を掴んでふにふにともて遊ぶ。
「はぁ~、ローザが気持ちいい」
「もう、そんなところを掴んで太っているのを分からせないでくださいまし」
「そんなつもりは無いんだけよ? ただ掴みやすい所に掴みやすくて気持ちの良いお肉があるからつい」
恥じらいながらたしなめるローザだが、その口調に怒気は一切含まれず、拒むような素振りすらない。
帰ってくるなり年下の嫁に泣きつく無様さでは、チャドさんのことをとやかく言えないなぁ。
だが、最近起きた出来事で精神的に病んでいる俺にとっては、特効薬レベルの精神安定剤となっている。
こうしているだけで安心感から泣きそうになっているのは秘密である。
そんなローザと手をつないでリビングに戻ると、かぼちゃを皮ごとぶつ切りにしているフリッツと目が合った。
「ははは、トシオ様は甘えん坊さんですね」
「に”ゃあああああ!?」
感知系魔法を常時発動しっ放しでこれなのだからぐう間抜け。
てかどんだけ精神的に余裕が無いんだよ。
あと、ローザが言ったセリフを野郎が言うな!
一部始終を知られた恥ずかしさで死にたくなる。
「てかもう戻って来てたんか」
「はい、それとエルネスト陛下からの伝言を預かっています。『魔法は見させてもらった。それと盗賊団の討伐報酬はツケにしておいてくれ』とのことです」
「さっきもう1つ潰しておいたけど。てか、一国の国王が一般人に行きつけの飲み屋みたく料金をツケ払いにすんなと。ところで、ルージュはどうしたの?」
「マルグリットさんとタンザスの村へ行かれましたので、あちらにいらっしゃるかと」
「そっか」
ショックを受けている様子だったし、アレならもうケンカは売ってこないだろう。
「影剣様もバラドリンドへ向かわれました、報告は以上です」
「わかった、お疲れさん」
「いえいえ、仕事ですから」
そう言いながらかぼちゃを切る手を止めないフリッツ。
かぼちゃ切りは絶対仕事じゃないだろ。
夕食に出されたかぼちゃの煮物は、ほどよい甘さでとても美味かった。
俺たちはモーディーンさんたちが護衛を務めるタンザスの村を囲う壁の外にて、日課となっている戦闘訓練を行っていた。
皆ウィッシュタニア城襲撃で思うところがあったのか、訓練の方向性が明確になった気がする。
「サモンエレメンタル・ヴァルキリー! クラウ・ソラス!」
リシアが光の上位精霊を呼び出すと、〝〈精霊召喚〉は同じ属性の下位精霊を無尽蔵に呼び出せる〟特性を利用し光の中級精霊〈ウィル・オー・ウィスプ〉を大量に召喚。
ソフトボールサイズの光る球体にまん丸2つと長円形で構成されたデフォルメ顔がリシアの手元に集約し、指向性散弾魔法〈クラウ・ソラス〉として放つ。
散弾として豆粒のように小さくなったウィスプがリシアの周りを旋回すると、その一部が前方に打ち出され、目に見えない敵を追い回すような動きを始めた。
シャドーボクシングのようなことを続ける間も光の精霊は集まり続け、リシアの姿が完全に光の繭の中に埋まってしまう。
俺がウィッシュタニアの玉座の間で当時の近衛騎士団長の最大攻撃を防いだ時の様だ。
リシア自身は近接戦闘を得意としていないことは、彼女の戦い方を見ていればわかる。
そこで目を付けたのが、俺の必殺魔法〈クラウ・ソラス〉を用いての攻防一体の戦闘方なのだろう。
しかも〈サモンエレメンタル〉はSP消費が激しいとはいえ、今の俺たちならば上位精霊1体を維持するくらい問題はない。
それを考えると、自分のMPだけで構築する俺のよりも、リシアの扱う精霊魔法Verのクラウ・ソラスの方がはるかに燃費が良い。
てかあの〈クラウ・ソラス〉、永久に持続出来るんじゃないか?
回復と補助に無くてはならないPT全体の要である彼女が、高火力殲滅と防御までこなすとあっては、俺の存在意義が揺らぐ。
迷宮でサモンエレメンタルを使って殲滅していた頃のリシアを思い出すなぁ。
そもそも家では料理以外の家事全般も彼女が取り仕切っているのだ、俺の立場なんて元からない。
ここは素直に「ウチのカミさんマジ神さん」と、常に感謝の気持ちと愛おしむ心で敬おう。
だが、サモンエレメンタルでのクラウ・ソラスにも1つ重大な欠点がある。
「リシアや、サモンエレメンタルからでは、魔法発動までにワンテンポ遅れてしまうえ」
俺が気付いていた問題を、近くで見ていたイルミナさんが本人に直接指摘する。
「近接職相手にその遅れは致命的じゃ。状況を見極め、従来のモノとの使い分けが必要じゃな」
「はい。けど、その見極めるが私には難しいのよね。とっさに出来るかどうか」
「こればかりは冒険者になってまだ間もないお主では詮無きことじゃが、そこはトシオのあみ出した〈精神加速〉で対処すればよかろう」
そうリシアにアドバイスをするイルミナさんは皆に魔法の指導を行いながらも、並行して〈グレイプニル〉をより細く練り上げたモノを複数射出し、周囲の大木を切断した。
鋼糸使いみたいでかっこいいなぁ。
本人は大雑把な性格なのに、繊細な魔法制御や魔法操作を苦も無くやってのけるものだから、弟子である陰キャエセエルフやエセマルモルとは正反対だ。
あと、巨大な魔力製の水瓶を高速で作り出す練習をしていた。
何に使うのか全く分からないので色々と謎である。
「すごいですお母さん……!」
白い肌をしたダークエルフが倒壊する大木をさらに輪切りにするイルミナさんを見て、実の娘を差し置いて母と呼び始めた。
齢300歳に近い最年長者であるイルミナさんは家では皆のお母さんなため、特に違和感なく受け入れてしまっているのが恐ろしい。
「これセシル、よそ見なんぞしておらんで練習に集中せんか」
「は、はい……」
叱られてシュンとなりながらも、セシルは胸元で向かい合わせにした両手に膨大な魔力を込め続ける。
繊細な魔法操作も機敏な動きも苦手なセシルは、大量のMPを消費して最大火力の魔法をより早く構築する練習を行っていた。
「フレズヴェルク……!」
膨大な魔力を宿した白き大鷲が上空に飛翔させ、ぶっ放したセシルがスカッと爽快な顔をした。
最近はよく笑う様になったとは言え常日頃からストレスを貯め込んでいるのかとセシルを心配していると、飛んでいく大鷲が下からの高エネルギー砲撃を受けて爆散した。
森の方から一頭分の馬の蹄音が響く。
射抜いたのはケンタウロスのユニスだ。
彼女は自分の戦闘スタイルを完全に速射砲台として捉え、今は森の中を駆け回りながら遭遇した魔物相手に弓を射ることで反応速度と速射能力の強化に努めていた。
その馬の背中には鞍が取り付けられ、妹分のハーピーが獲物を探知しては魔法であぶり出し、ユニスの修行を手伝っている。
「ユニスさんたちもしゅごいでふね」
「あの調子だと、ここらのモンスター根こそぎ刈り取られちゃうんじゃない?」
「だったらあたしらの仕事も無くなりそうね」
フィローラのつぶやきに復興中の村の護衛として滞在するヴァルナさんとマルグリットが応える。
フィローラもセシルと同じで反応速度的に素早い相手をどうこうするのが苦手だ。
自身の周囲にドーム状の防御魔法〈プロテクション〉と空間に反発力を発生させる〈フィールドプロテクション〉で守りを固め、最上位精霊魔法職〈ミュルクウィズ〉による広域範囲魔法で泥沼や黒い茨を生み出している。
泥沼に浸かり黒い茨が巻き付いた木々が根本から腐る様は、毒々しい以外に表現する言葉がない。
我が家で一番愛らしい女の子が一番おっかないことしてる……。
幼い顔立ちの少女顔の笑みが、一瞬この世のすべてを見下すような不穏なものに見えた気がした。
なんにしろ生態系を壊さない程度にオナシャス。
ライシーン五十階層以降元気のなかったククだが、ウィッシュタニア襲撃後は何やら自信を取り戻したかのように落ち着いて見えた。
彼女が扱う強固な防御スキル〈要塞壁〉も鉄壁さに磨きがかかり、挙句の果てにはシタデルウォールを用いての|〈大量魔法防壁はもう空いた口がふさがらないレベルで反則だった。
そりゃ自信も取り戻すわ。
ククを相手にスパーリング中のトトとメリティエは、その鉄壁さをどうにか崩せないかと悪戦苦闘中。
なんでも断ち切るトトのデタラメな攻撃力をもってしてようやくククのシタデルウォールに深々と刃が食い込むも、断ち切られる前に第二第三のシタデルウォールが出現しそれを阻む。
一撃の威力はトトの方が上だけど、一刀でシタデルウォールを砕けない時点でククに分があるな。
メリティエが神速の動きでかく乱を試みるもククは動じず。
思い切って突撃するもメリティエのデスタッチではククの防壁にヒビすら入らない。
単純に相性が悪いとしか言いようがないな。
よしのんは、モーディーンさんの指導の下〈マクマレート流〉の修行中。
チャドさんやモーディーンさんも習得しているマクマレート流の闘術は、〈グラディエイター〉や〈ナイト〉の〈オーラブレード〉や、〈ガーディアン〉の〈オーラシールド〉、〈モンク〉の〈気功〉を応用した流派で、この|闘気〈オーラ〉と呼ばれる生命エネルギーを用いたスキルの発展型が〈バトルマスター〉の身体強化スキル〈バトルオーラ〉だ。
よしのんはそれに〈勇者〉の固有スキル〈光刃〉を重ね掛けして威力UPをはかっていた。
オリジナルの魔法を構築するための必須スキルが〈マナロード〉の〈マナ感知〉と〈マナ操作〉であるように、近接職でのそれに当たるのが本来ならばバトルマスターのバトルオーラなのだが、マクマレート流はそれをもっと早い段階で使いこなそうとしてるのだから、モーディーンさんたちの師匠であるマクマレートさんはただ者ではないのだろう。
案外バトルマスターになってから「あれ、バトルマスターにならなくても使えるんじゃね?」と気付いたんだったりして。
イルミナさんはマナロードになる前からオリジナル魔法使えてたし。
そんなみんなの頑張りを眺めている俺はというと、チャドさんとの槍術訓練では魔法無しの近接戦闘を重点的に行っており、相変わらずコテンパンにされ地面に転がっていた。
「ったく、所々良くはなってきてはいるがまだまだだな。虚と実をもっと効果的に使え」
立ち上がろうとした俺へ、転がした張本人が呆れ交じりの言葉をかける。
おかしいなぁ、一応虚実織り交ぜてやってるのに全く通じないのなんなんだぜ?
そもそも教えてる本人に教えられた通りのことをして通じる訳がないんだよな。
だがそう言われるってことは、チャドさんには〝ここで虚を突けばどういう効果が得られるか〟が分かってるが、俺にはその感覚が掴めていないのだろう。
「どうやったら効果的に使えるようになります?」
「そんなものは自分で掴め。こうして戦い合ってれば、嫌でも分かって来るもんだ」
うちの師匠、アドバイス下手過ぎ問題。
チャドさん自身が天才肌なのだろう、自分が感覚的に出来ているだけに、それを他人に落とし込むことは苦手なようだ。
どっちにしろ近接戦闘の経験値が圧倒的に不足しているのは確かだし、チャドさんが超一流の槍使いなのに変わりない。
今はこれを続けることでコツを掴むと信じよう。
そしてチャドさんとの修行で改めて理解したことがもう1つ。
スラムの子供たちの指導はモーディーンさんに任せよう。
せっかくやる気を出した子供たちがボコボコにされてやる気をなくされても困るしな。
「つーか、あいつらみたく欠かさず筋トレしてるのか?」
そんな俺の内心を知らないチャドさんが顎で指した方を見ると、マルグリットさんとなぜか家に来たルージュが2人でラグビーのスクラムを組んで押し合っていた。
その近くでは昨日タンザスに到着したばかりのケインさんが、上半身裸で黙々と腕立てをしている。
モーディーンさんたちベテランPTの中では比較的若いケインさんの作り込まれた肉体は、何処となくレンさんを彷彿とさせる。
俺があんな筋肉質な体を手に入れるのはいつになるのやら……。
「筋トレはちゃんとやってますよ? けどそんなにすぐムキムキになれるなら、マルグリットさんの人生全否定でしょ」
「それもそうだな」
「まるであたしの人生が筋肉だけみたいな言い方やめてくれる?」
俺たちの声を聞き逃さなかったマルグリットさんが、スクラムを解いてこちらへ抗議してきた。
「違ったん?」
「違ったのか?」
「違うに決まってるでしょ! あんたら乙女に向かってどれだけ失礼なのよ!」
俺とチャドさんの声がハモると、筋肉系美少女の絶叫が森の中に木霊した。
〝乙女って〟と、更に失礼過ぎる言葉が脳裏をよぎるも、多くの嫁を抱える俺としてはそれをそのまま口走るようなヘマはしない。
しかし――
「お前さんが乙女ってタマかよ」
チャドさんが不精髭を手で撫でながら、言ってはならないことを言ってしまう。
「あー、言ったわねこの中年オヤジ! そんなデリカシーの無さも奥さんが逃げた原因の1つじゃないの?!」
「はおあっ!?」
マルグリットさんの痛烈な言葉のカウンターに、チャドさんを一発で轟沈させられた。
本当に逃げられてたんかい……。
「マリール、マーレル、頼むから戻って来てくれぇ……!」
40近いおじさんが、地面に両手を着いてボロボロと本気涙を流す様は、あまりにも無様で悲惨過ぎた。
奥さんに逃げられたくらいでどんだけ豆腐メンタルなんだよ。
いや、俺もリシアに逃げられたらこうなるかも……。
『お世話になりましたトシオ様、今日限りで実家に帰らせて頂きます』
『待ってくれリシア、話し合おう!』
『これからは他人です。今後一切話しかけないでください』
『リシアああああ!』
だめだ、脳内で繰り広げた想像だけで泣きそうになる。
ちょっとした妄想で心が悲鳴を上げ、両手で顔を覆い項垂れる。
「なんでアンタまでダメージ受けてんのよ……」
ヴァルナさんの呆れ混じりにツッコんだ。
後にマルグリットさんから聞いた話では、逃げられた原因は奥さん愛が強すぎたからだとか。
原因が酒や博打ならわかるけど、強すぎる奥さん愛ってなんだよ。
結婚後から奥さんの傍を離れたくないチャドさんが、近隣どころか1日~2日で自宅に帰ってこられるライシーン周辺の魔物退治や採取クエストしかやりたがらず、駆け出し冒険者並みの収入にまで落ち込んだそうだ。
これ程の腕を持つ将来有望な冒険者が、結婚してから低賃金になるとか、「奥さんに内緒で脱サラし、喫茶店を経営でスローライフを始めます」みたいな中年サラリーマンが一番やっちゃだめなことをしたのか……。
今はモーディーンさんたちの計らいでそこそこの収入を得るようになるも、奥さんに逃げられたショックから未だに立ち直れず、苦痛がフラッシュバックし寝る前のお酒が欠かせないのだとか。
俺の師匠は槍だけでなく人生を棒に振るのも達人級だった。
こうはなるまい……。
地面に泣き崩れる哀れな中年男を見ながら心に誓っていると、手持無沙汰になったルージュがこちらに近付いてくる。
相変わらずの敵意むき出し状態だ。
野良犬か何かかな?
「なぁ、いい加減あーしに仕掛けた爆弾解いてくんない? んでもってもう1回あーしとガチでやり合わね? あ、まさか女のあーしが怖いとか言わないよね?」
「……無視」
手すきになったルージュが挑発してくるが、そんな頭の悪い挑発に乗るつもりもない。
「無視すんなし!」
背後から本気のミドルキックが飛んできたのを衝撃波で吹き飛ばし、吹き飛んだところを上からの衝撃波で地面にたたきつけて黙らせた。
ついでにもう5発ほど衝撃波を叩き込み地面に埋没させてやる。
「こんなの、あーしには効かないし」
服に着いた土を払い、陥没した地面から這い出てくるルージュ。
殺傷力の高い攻撃でなければ傷1つ付かない近接職の頑強さは化け物すぎる。
だがダメージが無いだけで効果が無いわけではない。
ルージュの踏み出した右足が地面に着く直前、再び下からの衝撃波で打ち上げ続け、森の向こうへと弾き飛ばした。
しばらく帰って来なくていいぞっと。
「お、やっているでござるな」
遠くへ飛んでいくルージュを眺めていると、全身を黒装束に身を包んだ影剣さんが村の囲いを飛び越えてやってきた。
「おはよ――」
「ローザ殿に納屋のワープゲートからこちらに飛べると聞いて見に来たでござるが、どうかしたでござるか?」
何事も無く話す影剣さんの腕の中には、ピンク色の髪に子供用の水色フリフリドレスを着た3歳児くらいの女の子が抱えられていた。
背には純白の翼が生えていることから、〈鑑定眼〉で視るまでもなく昨日渡した天使の卵から孵化した物体である。
「はっや!? 孵化袋に入れてまだ半日なのにもう生まれたの?」
「くふふ、名はサクラと申す。テイムモンスターは主が得た経験値が流れ込み羽化と成長が早まるゆえ、手持ちの魔水晶を全部使ってやったでござるぞ」
「あぁ、だからうちのミネルバもあんなに成長が早かったのか」
今更ながら我が家のマスコット1号の成長速度に納得する。
「サクラ、こちらは拙者の主にして親友のねこ殿でござる」
影剣さんが腕に抱く天使の女の子(?)をこちらに向けて紹介する。
目と口調が完全に愛娘を溺愛する育児パパのそれである。
てか主言うな。
「サクラちゃん、俺は敏夫、よろしくね」
「あい、おじちゃまよろちくでしゅ!」
「お、おう……」
まだ24なのにおじさん呼ばわりは地味に心がえぐれる。
否定したいところではあるが、生まれたばかりの子に言ってもしょうがないのでぐっと堪えた。
「んで、何か進展はあったの?」
昨日は別れ際に色々と工作したり、彼の部下と話をつける的なことを言ってたので進捗を窺う
「部下の忍び衆は一族すべて拙者に付くことで話はまとまったでござる。移住先もアイヴィナーゼで世話になることが決まり申した」
「それは良かった」
ウィッシュタニアは国が金欠状態だし、一族全員ともなるとアイヴィナーゼしかないわなぁ。
てか2年やそこらで一族丸ごと付いてくるだけの人望もすごい。
「んじゃ、何かと要りようじゃない? これ良かったら使って」
そういうと、昨日もらったばかりの白金貨が入った小さな革袋を取り出し影剣さんにわたす。
ウィッシュタニアほどではないにしろ、戦争の準備でアイヴィナーゼもお金に余裕がある訳じゃない、妻たちの結婚指輪を買ってもまだ有り余るほどのお金がある俺が出費しても罰は当たらないだろう。
そういえば、注文した結婚指輪も取りに行かないとなぁ。
「こんなに良いのでござるか?」
「引っ越し祝いってことで」
「かたじけない」
ウィッシュタニアでもらった白金貨が、革袋ごと影剣さんの手に渡る。
「アイヴィナーゼと言えば、〈ダンジョンコア〉はどうだった?」
「問題なく使えるでござるぞ」
影剣さんの話によると、バラドリンドは影剣さんを呼び出すのに使ったダンジョンコアを複数人の信徒が神聖魔法の〈マナチャージ〉で強引に魔力をつぎ込み再利用を可能とした。
さらにそのダンジョンコアを暴走させることで得た莫大な魔力で例の6勇者を召喚したのだとか。
ちなみにそれらはすべて影剣さんの発案で、勇者の選定も「大学の構内ならば健康的な男をまとめて釣れるのではとやってみた」とのこと。
御し易さでは女性の方が良いだろうが、戦闘になる可能性を考えると無難な選定なのかもしれない。
「バラドリンドのダンジョンコアもそうでござったが、無理な充電で次に起動させるとおそらく二度と使い物にならなくなるでござるぞ」
「たとえ壊れてでも今使える方が良いよ」
ダンジョンコアはマジックアイテムの制作にも転用できると魔導書に書いてあった。
なら対6勇者の切り札になりそうなモノを作っておくべきだ。
どうせ負けたら今後の勇者召喚がなんて言えなくなるんだし。
「……拙者はこれからバラドリンドの教会最深部に潜入し、姫巫女殿の所在を探りに行くでござる。そこで、迷惑ついでと言ってはなんでござるがサクラをねこ殿のところで預かってほしいでござる」
「俺のとこで? 忍び衆のところじゃダメなの?」
「忍び衆は一族の移住で今は忙しいでござる。そのような状況で生まれたばかりのサクラを預けられぬでござるよ」
「ん~、でもこればかりはリシアたちに聞いてみないと――」
「お預かりします♪」
「うおっ!?」
いつの間にか真横に居たリシアが、すぐさま影剣さんからサクラを受け取り抱きかかえた。
「私はリシア。よろしくね、サクラちゃん」
「あい!」
元気の良い返事と共にリシアに抱き着くサクラ。
そのあまりの可愛さに、可愛いモノ好きのリシアの顔が蕩けきる。
「では奥方殿、サクラをお頼み申す」
「お任せください。サクラちゃん、私のことは本当のお姉ちゃんだと思っていいからね?」
「おねえちゃん……おねえちゃん!」
「えぇ、お姉ちゃんですよ。サクラちゃんはどんな遊びが好きかしら?」
「んーとねぇ、隠れんぼう!」
「隠れん坊か、じゃぁお姉ちゃんの家で隠れんぼうしましょうねー」
「あい!」
「トシオ様、お昼の支度もありますので戻りますね」
「うん」
「我らもそろそろ引き上げるとするかのう」
魔法の練習をしていたリシアたちが自宅へ引き上げるのを見送った。
……さてと、どうしたものか。
師匠は未だ戦闘不能だし、槍の練習はこのくらいにしておくか。
それにウィッシュタニアから頼まれていた問題もあるし、やらなければいけないこともあるからまとめて処理しよう。
「影剣さん、時間ってまだある?」
「潜入は日が暮れてから行くつもりでござるゆえ、問題ないでござるぞ」
「んじゃちょっと付き合ってくれる? ユニス、ミネルバ、出かけるから戻って来てー!」
森に向って呼びかけると、すぐに人馬の娘が姿を現す。
その後ろから目を吊り上げたルージュがユニス達を追い越して戻って来る。
思いのほかはやかったなぁ。
「何してくれてんのよー!」
帰って来るなり全力疾走からの全力グーパンチを繰り出されるも、ブリージンガメンによる物量防御でルージュの攻撃がこちらに到達する前にその威力をそぎ落とし無力化する。
「信じらんない! モンスターだらけの森に女の子を放り出すなんてマジアリエンティ!」
ここは師匠に倣って女の子ってタマかよというべきところか?
でも面倒くさいのでスルーしよう。
「あーはいはい悪かった悪かった。詫びに面白いのを見せてやるからお前も付いてこい」
「なにその言い方、謝る気無いっしょ! つーか、なんであーしが行かなきゃなんないのよ!」
「いいから黙って付いてこい、でないと後悔することになっても知らないからな?」
もっとも、後悔なんて感じる前に死体にならなきゃの話だが。
「後悔なんてしねーし」
「あたしはあたしは?」
「マルグリットさんも良いですよ」
「ほら、ルージュも行くよ。トシオに付いていけば絶対面白いものが見られるって、な?」
「むっ……まぁマルグリットが行くなら? あーしも別に行って良いけど?」
「なら決まりね!」
ルージュが不満気ながらもマルグリットさんの誘いは断れないといった感じで了承した。
昨日の今日なのになんでそんなに仲良いんだよ。
腑に落ちない気持ちのまま、一度ライシーンに戻りクラウディア王女とフリッツをそれぞれ回収すると、俺たちはウィッシュタニア魔法王国の首都から高速移動装甲魔法〈グリンブルスティ〉を用い1時間程かっ飛ばしたところにある山の山頂にやって来た。
山の周囲は木々が生い茂る森となっている。
「超気持ち良かったんですけど! マジテン上げっしょ!」
「チャドのおっさんが今の魔法で死にかけたって言ってわね」
「あの時は本当に酷い目に遭いました」
「ちー……」
やたらはしゃぐルージュとは対照的に、マルグリットさんの言葉で迷宮五十階層で天使の群れとの戦いを思い出したユニスとミネルバが項垂れる。
あれは事故やったんや……。
苦い記憶を思い出しつつ、遠くを見渡せる頂きの縁まで歩いていく。
「それでトシオ様、このような場所で何をされるおつもりですの? キャンプに来た訳ではないのでしょ?」
「あそこに村が見えるでしょ?」
ふもとの森からかなり離れたところをクラウディアに指し示すと、視力強化をもってしてもギリギリ見えるかどうかの距離に村らしきものがある。
闇魔法で長円錐の筒を出現させ水のレンズをハメて凍結、即席の望遠鏡を作り王女様に覗かせる。
「ありますわね」
「ホントだ、良く見えるわね」
「さっきの車もだけどこんなことも出来るんだ、魔法って超便利じゃん」
クラウディアが望遠鏡から離れると、今度はマルグリットさんとルージュが順番にを覗き込み、ミネルバも同じ魔法で望遠鏡を作ってユニスに渡す。
影剣さんも懐に設定しているであろう収納魔法から望遠鏡を取り出して確認すると、それを隣に居たフリッツに回す。
俺は複合索敵魔法〈フリズスキャールヴ〉があるため、望遠鏡が無くても10キロ離れた村の中の人の動きでも丸わかりだ。
「あの村はワイズナー伯爵領と首都を結ぶ街道の中継村として栄えていたのですが、現在は盗賊団のアジトになり果てており、ウィッシュタニア全土にはそのような村が確認されているだけで14ヵ所も存在しています」
フリッツが皆に説明する。
街道沿いの村の周囲は丸太を地面に突き刺した防壁で囲い、モンスターなどの侵入を防いでいる。
先程まで居たタンザスの村も同じ作りで、違いと言えば村の外に畑があるくらいだ。
「なるほど、その村を開放するのがねこ殿のお仕事という訳でござるな?」
「そういうこと。と言いたいんだけど、あそこはもうダメかな。村人が若い女性と子供しか居ない」
村の中で動いている男たちは、何かしらの犯罪的な〈称号〉を保有を保有していた。
それってつまり、男は全員殺されたか、何らかの方法で――
索敵魔法で村を隅々まで探っていると、外壁の外側に村人であろう男たちの白骨化した死体が打ち捨てられているのを発見してしまう。
白骨の中にはまだ幼い子供の骨も混じっていた。
「なんでそんなことまで分んのさ?」
「索敵魔法で調べれば、妨害されでもしない限りこの距離でも簡単にわかるんだよ」
胸クソの悪さを堪えながら、ルージュの疑問にわざわざ答える。
「んじゃ、ちょっと救出してくる」
1人ワープゲートを潜り、村の中の誰も居ない家の中に出る。
索敵魔法を駆使してのスニーキングミッションを開始して、村人全員とどこかで攫われてきたであろう女性たちを連れ出し、ウィッシュタニア王国に保護してもらう。
それが終わると白骨化した死体を魔法で地中深くに埋めて弔うと、先程の山頂に戻る。
行きがけの駄賃に片っ端から奴らの〈魔道具袋〉と金銭を頂いて。
このお金は村で回収した食器や家具なんかと共に、あとで保護した女性たちに渡すとしよう。
「村から女子たちが居なくなったことに気付いたようでござる。盗賊どもはどうするでござる?」
「当然今から処分するつもり」
エルネストからは「今は戦の準備で忙しい、捕えて裁きを下す時間すら惜しいから駆除してくれ」とのお達しだ。
村の男を殺し女を嬲ったのだ、更生なんて期待するより再犯を防ぐ意味でも命をもって償わせた方が世のためだろう。
「不満があるとすれば、罪に見合った苦痛を与えられないかもってことかな」
胸クソの悪さと怒りを押し込めながら、土操作魔法で塹壕を作り、手前に強固な魔法防壁を展開する。
「ずいぶんしっかりした防御陣地でござ――」
「まさか」
「みんな、危ないから早く穴に入って」
影剣さんとフリッツがこれから起こりえる可能性に勘づき素早く入ると、ユニスも青ざめた表情でミネルバを連れ塹壕に駆け込む。
ほかも塹壕に入り地面からひょっこり顔を出し、フリッツも〈記憶の水晶〉なる魔道具を取り出す。
ここに居るのは俺が絶対に守らなければならない家族と仲間、それに他国からの侵略に立ち向かうコミュニティに属する人間だ。
アイヴィナーゼやウィッシュタニアの人々に戦うための希望を与えるためにも、俺の力がどれほどのものかを彼らに見せ、それぞれのコミュニティの長に伝えてもらう必要がある。
それとルージュを連れてきたのは、裏切れば自分がどういう相手を敵に回すのかを分からせるためだ。
そのためにも盗賊どもの苦痛なんかより、見た目と威力重視の攻撃魔法を披露しなければならない。
さっそく魔力で楕円形の大型容器を成型すると、その内部を構築していく。
準備完了、発射シークエンス、スタート。
3……。
2……。
1……。
発射!
「戦略級爆裂魔法・スルト!」
炎の巨人の名を冠した魔力の塊が、ものすごい速度で空へと打ち上げられた。
カプセルが村の上空に到達するなり炸裂し、中に詰まっていた可燃性魔力が広域へ散布され、着火と共に大爆発が巻き起こる。
急激な気圧の変動と爆炎が膨れ、衝撃波が村を上から押し潰し、炎が膨大な熱と共に黒煙を引き連れキノコ雲となって空へと昇っていく。
猛烈な爆風は潰れた村を盗賊ごと吹き飛ばし、爆発の衝撃が恐ろしい速さで外に広がる。
ボワアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!
数舜後には爆発音が俺たちの元にまで轟き、衝撃と爆風が塹壕と魔法障壁を強く揺らす。
「これは凄まじいでござるな……」
揺れが収まったのを確認し、引っ込んでいた皆が再び塹壕から顔を出した。
「こ、これが1人で行使しうる魔法の威力ですの……!?」
「トシオ殿が常日頃より自身を〝後衛魔法使い〟と称する意味をようやく理解しました……」
「自分も凄まじい以外の言葉が出てきませんね……」
「「………」」
影剣さん、クラウディア、ユニスの声が震え、いつもにこやかな笑みを浮かべているフリッツですらその顔が蒼白なものとなっている。
マルグリットさんとルージュに至っては、更地どころかえぐれた爆心地を言葉も無く呆然と見つめていた。
ミネルバだけが、観察者の顔で状況を眺めている。
「ねこ殿、なんでござるか今の魔法は!?」
「〈気化爆弾〉を魔法で出来る限り再現してみたらこうなった。さすがに準核兵器と言われるだけはあるなぁ」
魔法の構築に利用したのは、火属性上級範囲魔法の〈ナパームフレア〉だ。
ナパームフレアは魔力を可燃物に変化させ、着弾と同時に火を着けることで対象を燃焼させる焼夷魔法である。
このナパームフレアを解析して可燃性魔力だけを再現し、〈魔力ガソリン〉と呼ぶべきモノを生み出した。
それを魔力で作った強固なカプセルに圧縮して閉じ込め、発射後に高温で加熱することでカプセルは熱で膨れ上がり魔力ガソリンに内側から強く圧迫され目標地点で穴を開け、気圧の変化を利用し魔力ガソリンが広域に散布される。
最後に薄く広がった魔力ガソリンを着火してやることで全方位から長時間の爆発による急激な気圧の変化を発生させた。
するとあら不思議、なんちゃって気化爆弾の完成である。
これがクレアルコ湖でダイナマイト漁をした爆裂魔法の正体だ。
クレアル湖では環境破壊を考慮し手加減したが、今回は実験もかねて全力で行ったため、クレアル湖での爆発とは比べ物にならない破壊力となった。
こんなものを人体で受けようものなら、普通の人間なら人としての形状を留めることすら不可能だ。
舞っていた村の残骸に紛れ、握りこぶしサイズのミンチが塹壕の前に張った魔法障壁にぶち当たる。
ピンポイントで俺の近くに降ってくんなよな……。
「手加減してもこの威力……」
「これで手加減!?」
ミネルバの不用意な発言にユニスがさらに驚く。
「まことでござるか?」
「あー、うん、まぁ、たぶん」
まぎれもなく全力ではあったので手加減というと語弊はあるが、ここからさらにカプセルの体積を増やして多弾頭化を行えば、爆発の威力と継続時間、効果範囲も爆上がりするはず。
それこそ核兵器並みかそれ以上になりかねない。
しかも魔力が続く限り飛距離を伸ばせるため、射程もおかしなことになること請け合いだ。
この世界には〝人以外はこの星の外から来られない〟ってルールがある以上、さすがに大陸間弾道ミサイルみたいなのは無理かもだし、そもそも索敵魔法の範囲外まで離れたら着弾地点を正確に決められない。
けど、バラドリンドの勇者情報を考えると、魔法という特殊な力ですべてを構築された〈スルト〉だと〈特殊能力無効化〉スキルを持つ例の勇者に消されかねないんだよなぁ。
気化爆弾の性質上、爆発した時点でその周囲の空気も根こそぎ奪えるから窒息死も狙らえると思うけど、どうも上手く行く気がしないのがなんとも。
なんとなくだこれは失敗するかもという予感を覚え、大きなため息を1つ付くと、先程の挽き肉が目に入いる。
人を殺した罪悪感が余り沸かなくなったのは、相手が悪人だからなのか慣れて来たからなのか……。
目の前で起こした爆発の威力がヤバ過ぎて、自分でもよくわからない。
「これでもまだあなたはお父様に敵意を向けるの……?」
「あ……あ……」
体長4メートルに巨大化したミネルバが瞳を大きく見開きルージュに問うと、ルージュは青ざめた顔で震えながら視線だけで異形の娘と俺とを交互に見続ける。
「お父様の使える魔法は私も使える……。もしあなたが裏切ったら、地の果てまで追いかけて今の魔法であなたを討つ……」
ミネルバの念押しに、ルージュは口元を震わせゆっくりと頷く。
思考する知性を持ち、自在に空を飛び回り、10キロ離れた場所からでも隠れた相手を見つける索敵魔法と一都市丸ごと吹き飛ばしかねない爆裂魔法を使う猛禽とか、絶対に敵に回したくないな……。
硬直してしまったルージュを見ながら、改めてミネルバのヤバさを痛感する。
ミネルバが言ったセリフは、本来は俺が言わなければいけないセリフだ。
「ミネルバ、ありがとね」
「ちー……」
代弁してくれたミネルバに、心の中で詫びながら感謝を告げる。
「ねこ殿、あの魔法はあまり他人に教えぬ方が良いでござるぞ」
「人に見せたのは今日が初めてだけど?」
いや、クレアル湖で偶然見た人が居たな。
常識が通じない魔族2人の顔を思い出す。
「……なるほど、魔物紋を受けた魔物を卵から育てると知識などを主と共有すると聞くでござるが、まことでござったか」
影剣さんのつぶやきに、彼が「他人に〝見せて〟教えない方が良い」という意味で言ったと早とちりしたことに気付くのと同時に、ミネルバが日本語を話せたりこっちの世界では知りえないような知識を持っていたりする理由が判明した。
まぁ知ったところで今更感はあるけど。
「用も済んだし引き上げようか」
皆を送り届けた後、俺は1人別の盗賊団アジトを襲撃し、切り札となるべき魔法を試みた。
それは2度の失敗を経て3度目にして成功し、盗賊団アジトの跡地に巨大なクレーターが生まれる結果となった。
これなら特殊能力無効化スキルにも対応できるかもしれない。
冷静に可能性を検討しながらも気化爆魔法よりもヤバイ魔法に恐怖を覚え、逃げるようにワープゲートで自宅に戻った。
「おかえりなさいトシオさん」
「ろぉざぁ~」
出迎えてくれた豊満な妻に速攻で抱き着くと、大きな胸と共にそのわがままなお腹のお肉を体の正面で堪能する。
豊満すぎる胸に胸よりも突き出たお腹と、背後に回した手が触れる腰からお尻にかけての柔らかさはまさに極上。
冷房で冷えた脂肪が炎天下の外から帰って来たばかりの俺には余計に気持ちいい。
「どうされましたの?」
「もうなんか色々としんどい~」
「あらあら、それは大変でしたわね」
優しい口調で頭を撫でてくれる彼女の肩に顔を埋め、巨大なお尻を揉みしだく。
「ふふふ、トシオさんは甘えん坊さんですね」
ローザのポッコリお腹も大きなお尻もさわり心地は大変素晴らしいが、さわっていて一番気持ちいい部位は何といっても極上の太ももだ。
さすがに玄関先で太ももを撫でまわす訳にもいかないので、今晩の楽しみに取っておこう。
代わりとばかりに手を上に移動させ、腰に付いたお肉を掴んでふにふにともて遊ぶ。
「はぁ~、ローザが気持ちいい」
「もう、そんなところを掴んで太っているのを分からせないでくださいまし」
「そんなつもりは無いんだけよ? ただ掴みやすい所に掴みやすくて気持ちの良いお肉があるからつい」
恥じらいながらたしなめるローザだが、その口調に怒気は一切含まれず、拒むような素振りすらない。
帰ってくるなり年下の嫁に泣きつく無様さでは、チャドさんのことをとやかく言えないなぁ。
だが、最近起きた出来事で精神的に病んでいる俺にとっては、特効薬レベルの精神安定剤となっている。
こうしているだけで安心感から泣きそうになっているのは秘密である。
そんなローザと手をつないでリビングに戻ると、かぼちゃを皮ごとぶつ切りにしているフリッツと目が合った。
「ははは、トシオ様は甘えん坊さんですね」
「に”ゃあああああ!?」
感知系魔法を常時発動しっ放しでこれなのだからぐう間抜け。
てかどんだけ精神的に余裕が無いんだよ。
あと、ローザが言ったセリフを野郎が言うな!
一部始終を知られた恥ずかしさで死にたくなる。
「てかもう戻って来てたんか」
「はい、それとエルネスト陛下からの伝言を預かっています。『魔法は見させてもらった。それと盗賊団の討伐報酬はツケにしておいてくれ』とのことです」
「さっきもう1つ潰しておいたけど。てか、一国の国王が一般人に行きつけの飲み屋みたく料金をツケ払いにすんなと。ところで、ルージュはどうしたの?」
「マルグリットさんとタンザスの村へ行かれましたので、あちらにいらっしゃるかと」
「そっか」
ショックを受けている様子だったし、アレならもうケンカは売ってこないだろう。
「影剣様もバラドリンドへ向かわれました、報告は以上です」
「わかった、お疲れさん」
「いえいえ、仕事ですから」
そう言いながらかぼちゃを切る手を止めないフリッツ。
かぼちゃ切りは絶対仕事じゃないだろ。
夕食に出されたかぼちゃの煮物は、ほどよい甘さでとても美味かった。
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