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178話 ウィッシュタニア動乱
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ワープゲートを抜けた先は、ウィッシュタニアの王都内のとある裏路地。
時間的には夜の10時頃なため、辺りは闇と静寂が支配していた。
以前ウィッシュタニアからワープゲートで帰還する際、人目の無い場所として選んだのがここだった。
「おや、ここに出たのですか」
「知ってる場所?」
「えぇ、丁度あそこに自分の行きつけのお店が有りまして、そこの生姜焼き定食が絶品でしてね」
「生姜焼きか、そういえばこの世界に来てから食べてないなぁ」
「よろしければ今度食べに行きませんか?」
「いいね-、こっちの生姜焼きってどんな味がするのか楽しみだわ」
「トシオ」
フリッツと生姜焼き定食に想いを馳せていると、腹部の高さからメリティエが非難の眼差しを向けてくる。
「一体何をしにここに来たのだ?」
「悪い悪い。んでフリッツ、次はどうするんだ?」
「まずは新冒険者ギルドに置いてある軍服を手に入れます。着用後は城内にてエルネスト殿下に会って頂き、作戦の打ち合わせを予定しております」
フリッツの主人である第三王子に会ったところで、俺のすることは変わらない。
家にならず者を送ってくれた報いを受けさせてやるだけだ。
「んじゃ案内を頼む」
「こちらです」
フリッツの後ろを付いて行くと、ほどなくして大通りを渡り再び裏路地を進む。
深夜と言って差支えの無い時間帯なため人通りは一切なく、民家や商店の明かりすら無いため、まるでゴーストタウン。
索敵魔法フリズスキャールヴに因る索敵にも、屋外では人っ子1人引っかからない。
月明かりと遠くに見える純白の城だけが、周囲を映す光源となっていた。
「夜なのに酒場まで店閉めてるのか」
「大通りの付近は旧冒険者ギルド所属の者達に荒らされ、軒並み閉店を余儀なくされていますから」
「なにそのならず者集団、そんなの憲兵使ってさっさと取り締まれよ」
「それが旧冒険者ギルドは第二王子の私兵集団の様なものでして、憲兵が逆に罰せられる事案が起きましたので」
「マジで? てか治安維持能力が機能してないとか、国として終わってない?」
「認めたくはありませんが終わっていますよ。昼ですら商人が店を閉めておりますし、人々、特に若い女性は堂々と表を出歩けません」
「あ~、そういえば前に来た時も、大通りなのに寂びれてたもんなぁ」
歩いていた住が皆ビクビクと周囲を警戒していたのを思い出した。
それからは深夜と言うこともあり念話で交信をしつつ、裏路地を駆使して街中を歩くこと30分程。
「あそこが新冒険者ギルドです」
そう言ってフリッツが指さしたのはウィッシュタニア王都の南門近く、大通りに面した新冒険者ギルドと思われる建物の残骸だった。
酒瓶を抱えて横たわる酔っ払いが1人居るくらいで、ここも周囲の人家に明かりがなかった。
「見事に焼け落ちてるね」
「殿下からは何も聞いていませんが、これは一体……」
不可解な状況にフリッツが第三王子に向けて念話を飛ばすも、返事は一切帰ってこない。
「……罠の可能性があります、ここは一旦アイヴィナーゼに戻りましょう」
「もう遅いぞ」
フリッツの進言にメリティエが大通りのど真ん中を指さした。
示された先でワープゲートが開くと、中から冒険者風の男女がワラワラと現れた。
どれもこれも如何にもやさぐれてますって顔をしてやがる。
やさぐれ冒険者の出現を見ていた酔っ払いが、しっかりとした足取りで素早く物陰に身を隠した。
どうやらあの酔っ払いがここを見張っており、俺達が来たことを報告したのだろう。
たとえ敵の手の者としても、敵意のない人間が反応しないのはサーチエネミーの弱点であり、そこをうまく付いてくる辺りボーナススキルのことをよく理解していて実にいやらしい。
「全員ジョブがバトルマスターやマナロードでレベルも100超えとは、不味い事態になりましたね」
「あぁ……」
フリッツが腰の剣を引き抜きながら、状況の厳しさを口にする。
数十人規模の超級ジョブ持ちに囲まれては、俺も苦笑いを浮かべるのが精いっぱいだ。
てかなんだ、この歓迎ぶりは、まるで俺達がここに来ることを予測していたかの様じゃないか。
いや、予測していた様なんてモノじゃない、これは俺の計画が完全にバレていて、その上で計画されたモノだ。
実際第三王子派の中にアネットってスパイが居たのだ、色々と情報が筒抜けでもおかしくはない。
一体どこからが奴らが蒔いた餌で、どこまでが奴らの罠なのか。
……今は考えても仕方がない、罠なら罠で食い破るまでだ。
そんな中、踏破者級ジョブLv100が俺が持つベースLvで大体400であることを、最後に現れた2人の内の1人が教えてくれた。
「待ちくたびれたぜ」
「まさか本当に来るなんて……」
〈暴君〉マルケオス・フォン・ウィッシュタニア
人 男 24歳
バトルマスターLv133
マナロードLv98
フォン・ウィッシュタニア……、間違いない、王族だ。
長身で均整の取れた筋肉、オリハルコン製の全身鎧に両刃の大剣。
肩幅に足を広げて堂々と立ち、冒険者ギルドの床に剣を突き立て柄頭に手を置いた。
強面だが神話に登場する英雄の様な美男子だ。
連れている冒険者崩れから察するに、こいつが旧冒険者ギルドを私物化したと噂の第二王子なのだろう。
だが問題はもう1人だ。
〈勇者〉トモノリ
人 男 16歳
ベースLv421
マナロードLv121
バトルマスターLv87
ローブ姿のぽっちゃり気味の男子高校生と思しき少年は、オドオドした様子でこちらを見ていた。
時間的には夜の10時頃なため、辺りは闇と静寂が支配していた。
以前ウィッシュタニアからワープゲートで帰還する際、人目の無い場所として選んだのがここだった。
「おや、ここに出たのですか」
「知ってる場所?」
「えぇ、丁度あそこに自分の行きつけのお店が有りまして、そこの生姜焼き定食が絶品でしてね」
「生姜焼きか、そういえばこの世界に来てから食べてないなぁ」
「よろしければ今度食べに行きませんか?」
「いいね-、こっちの生姜焼きってどんな味がするのか楽しみだわ」
「トシオ」
フリッツと生姜焼き定食に想いを馳せていると、腹部の高さからメリティエが非難の眼差しを向けてくる。
「一体何をしにここに来たのだ?」
「悪い悪い。んでフリッツ、次はどうするんだ?」
「まずは新冒険者ギルドに置いてある軍服を手に入れます。着用後は城内にてエルネスト殿下に会って頂き、作戦の打ち合わせを予定しております」
フリッツの主人である第三王子に会ったところで、俺のすることは変わらない。
家にならず者を送ってくれた報いを受けさせてやるだけだ。
「んじゃ案内を頼む」
「こちらです」
フリッツの後ろを付いて行くと、ほどなくして大通りを渡り再び裏路地を進む。
深夜と言って差支えの無い時間帯なため人通りは一切なく、民家や商店の明かりすら無いため、まるでゴーストタウン。
索敵魔法フリズスキャールヴに因る索敵にも、屋外では人っ子1人引っかからない。
月明かりと遠くに見える純白の城だけが、周囲を映す光源となっていた。
「夜なのに酒場まで店閉めてるのか」
「大通りの付近は旧冒険者ギルド所属の者達に荒らされ、軒並み閉店を余儀なくされていますから」
「なにそのならず者集団、そんなの憲兵使ってさっさと取り締まれよ」
「それが旧冒険者ギルドは第二王子の私兵集団の様なものでして、憲兵が逆に罰せられる事案が起きましたので」
「マジで? てか治安維持能力が機能してないとか、国として終わってない?」
「認めたくはありませんが終わっていますよ。昼ですら商人が店を閉めておりますし、人々、特に若い女性は堂々と表を出歩けません」
「あ~、そういえば前に来た時も、大通りなのに寂びれてたもんなぁ」
歩いていた住が皆ビクビクと周囲を警戒していたのを思い出した。
それからは深夜と言うこともあり念話で交信をしつつ、裏路地を駆使して街中を歩くこと30分程。
「あそこが新冒険者ギルドです」
そう言ってフリッツが指さしたのはウィッシュタニア王都の南門近く、大通りに面した新冒険者ギルドと思われる建物の残骸だった。
酒瓶を抱えて横たわる酔っ払いが1人居るくらいで、ここも周囲の人家に明かりがなかった。
「見事に焼け落ちてるね」
「殿下からは何も聞いていませんが、これは一体……」
不可解な状況にフリッツが第三王子に向けて念話を飛ばすも、返事は一切帰ってこない。
「……罠の可能性があります、ここは一旦アイヴィナーゼに戻りましょう」
「もう遅いぞ」
フリッツの進言にメリティエが大通りのど真ん中を指さした。
示された先でワープゲートが開くと、中から冒険者風の男女がワラワラと現れた。
どれもこれも如何にもやさぐれてますって顔をしてやがる。
やさぐれ冒険者の出現を見ていた酔っ払いが、しっかりとした足取りで素早く物陰に身を隠した。
どうやらあの酔っ払いがここを見張っており、俺達が来たことを報告したのだろう。
たとえ敵の手の者としても、敵意のない人間が反応しないのはサーチエネミーの弱点であり、そこをうまく付いてくる辺りボーナススキルのことをよく理解していて実にいやらしい。
「全員ジョブがバトルマスターやマナロードでレベルも100超えとは、不味い事態になりましたね」
「あぁ……」
フリッツが腰の剣を引き抜きながら、状況の厳しさを口にする。
数十人規模の超級ジョブ持ちに囲まれては、俺も苦笑いを浮かべるのが精いっぱいだ。
てかなんだ、この歓迎ぶりは、まるで俺達がここに来ることを予測していたかの様じゃないか。
いや、予測していた様なんてモノじゃない、これは俺の計画が完全にバレていて、その上で計画されたモノだ。
実際第三王子派の中にアネットってスパイが居たのだ、色々と情報が筒抜けでもおかしくはない。
一体どこからが奴らが蒔いた餌で、どこまでが奴らの罠なのか。
……今は考えても仕方がない、罠なら罠で食い破るまでだ。
そんな中、踏破者級ジョブLv100が俺が持つベースLvで大体400であることを、最後に現れた2人の内の1人が教えてくれた。
「待ちくたびれたぜ」
「まさか本当に来るなんて……」
〈暴君〉マルケオス・フォン・ウィッシュタニア
人 男 24歳
バトルマスターLv133
マナロードLv98
フォン・ウィッシュタニア……、間違いない、王族だ。
長身で均整の取れた筋肉、オリハルコン製の全身鎧に両刃の大剣。
肩幅に足を広げて堂々と立ち、冒険者ギルドの床に剣を突き立て柄頭に手を置いた。
強面だが神話に登場する英雄の様な美男子だ。
連れている冒険者崩れから察するに、こいつが旧冒険者ギルドを私物化したと噂の第二王子なのだろう。
だが問題はもう1人だ。
〈勇者〉トモノリ
人 男 16歳
ベースLv421
マナロードLv121
バトルマスターLv87
ローブ姿のぽっちゃり気味の男子高校生と思しき少年は、オドオドした様子でこちらを見ていた。
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