四人で話せば賢者の知恵? ~固有スキル〈チャットルーム〉で繋がる異世界転移。知識と戦略を魔法に込めて、チート勇者をねじ伏せる~

藤ノ木文

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169話 世界を見渡す高座

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「話があるってのは嘘で、実は家に暗殺者の集団が向かって来ている」
「また急な話ですね」
「全くもって急な話だ」
「それで、私に何を見せて頂けるので?」

 庭に出たところでそう切り出すとも、フリッツは驚いた様子も見せず、それどころか好奇の眼差しをこちらに向けて来た。

「あっさり簡単お手軽暗殺者クッキング?」
「それはまた楽しそうなもよおしですね」
「24年間戦争死闘とは無縁だった人間がいきなり暗殺者に狙われる時点で楽しさなんて欠片も無いんですが」
「なら楽しそうな顔して言わない方がよろしいかと」

 少し苦笑い気味に指摘されたことで、安全に排除できると踏んでいるからこそ、余裕が顔に出てしまったのだと自覚する。

「んじゃ、まずはこの魔法を共有してもらおうか、〈世界を見渡す高座フリズスキャールヴ〉」

 発動させたのはボーナススキルの〈索敵スキルサーチエネミー〉〈魔法探知スキルサーチマジック〉〈構造解析スキルアナライズ〉を解析して魔法化、更に〈魔念動力〉に因る接触感知を薄く展開して〈マナ感知〉で感覚として理解し、それを周囲のマナに浸透させ広域に拡大したものだ。
 その範囲はライシーンの都市内部に限定したが、理論上は空間にマナが存在する限りどこまでだってその範囲を広げられる。
 そして指定した対象にもこの魔法の恩恵を付与できる。

「これは凄い、意識した場所にある草木や砂の一粒ですらも、明確に認識できるとは……」

 冗談以外で笑顔を崩さないフリッツが、今回は本気で驚いた表情を見せた。

「だからって、全てを頭に入れて理解しようとはしない方が良いよ、人間の脳が耐えられるか非常に怪しいから」
「そのような危険がお在りなら、魔法を使う前に仰ってください」
「悪い悪い」

 再びにこやかな表情に戻って抗議されたので、こちらも笑いながら軽く謝っておく。

「んで、あっちに赤い光点が幾つか見えるだろ?」
「12個ありますね。更にその奥にも3つ、それとあちらに3つと、あちらに4つ……は距離と方角からして〈光の福音亭〉でしょうか?」

 フリッツが方角を指さし知らせてくれる。
 光の福音亭はバラドリンド教国の諜報活動拠点だ。

 まだ存在するのかよ福音亭、領主様ビレーデン仕事しろ。

「たぶんそうやね」
「向かってくる集団の奥にある反応ですが、恐らく彼らの活動拠点ではないでしょうか」
「あー、そうかも。でも離れたところにある3つの反応はなんだろ? 心当たりある?」
「いえ、存じかねます」

 フリッツが知らないと首を横に振る。

「ま、今はこれくらいか」
「この索敵魔法に〈鑑定〉を乗せられれば、利便性の向上が見込めるかと」
「あ、ホントだ。今度乗せられるか試してみるわ」

 フリッツから更なるVerUPプランを進言してもらったところで、全員とっ捕まえるための行動を開始した。

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