四人で話せば賢者の知恵? ~固有スキル〈チャットルーム〉で繋がる異世界転移。知識と戦略を魔法に込めて、チート勇者をねじ伏せる~

藤ノ木文

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147話 消滅魔法

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 ライシーン第五迷宮四十九階層。
 ザァラッドさんのPTをお迎えしての四十九階層では、〈セーフリームニル〉なる体長4メートル程の大猪が現れた。

 知らない名前だな。

 猪なだけはありその突進力は油断ならないものではあったが、前衛の〈キャッスルウォール〉が突き破られることは無かった。
 しかし、そのタフネスぶりがすさまじく、ハラワタをぶちまけようが脳天を射抜かれようが、すぐさま再生してはまた突進攻撃を繰り出してきた。

 目玉や臓物をぶちまけた状態で向かってくるとかグロ過ぎな上に狂気そのものだな……。
 
 肉体があるから再生するんだと、シャイニングブラストやフレアブラストなどで全身を溶解させ、跡形もなく消滅させることで対処した。

 猪肉ゲットだぜ!

 ちなみにフレアブラストなどの炎属性が超高温の熱波で相手を溶解or炎上させるのに対し、シャイニングブラストなどの光属性は対象物を消滅させる効果があることが、マナ感知とマナ操作を複合させた解析魔法でスキャニングした結果判明した。
 判明したと言ってもマナが謎粒子に変化する過程を把握できただけで、変化した後は圧縮などの操作は受け付けるがなぜ対象を消滅させるのかまでは全く理解できなかった。
 
 まさか知らない内に消滅魔法を使っていた事に驚きだ。
 けど魔法防御力で対抗できるし防御魔法も有効だから、問答無用で消滅してくれる訳でもないのな。
 それでもクラウ・ソラスの様に高圧縮をかければそれすらも一瞬だが。
 
 それからも道中では様々な実験を行い、MP容量の最大値が〝自分自身をマナの容器に見立て、マナを閉じ込めるための器の強度を上げることで容量が増える〟ことや、MP回復の原理が〝外のマナを吸収するだけでなく、生物なら自然と生み出すモノである〟ことと、昨日俺が作った〈マナバッテリー〉と同じで〝内側にマナが向かう流れが発動している〟ことが分かった。
 それらもスキャン中にスキルのON/OFFを繰り返すことで確認できたため理解度が爆速で上がりし、一部を除いてその大半を魔法で再現できるようになった。
 それと魔法攻撃力に関わる〈魔力上昇系スキル〉の方だが、これは同じMPを消費してもより効率よく火力に変換する力であると判明した。

 つまり、MP1を消費しても、魔法に変換する過程で余計な消費があったってことか。

 そしてマナロードの魔法攻撃力を上昇させる〈マキシマイズマジック〉は、周囲のマナを取り込み攻撃魔法に上乗せする圧縮機コンプレッサーの役割を担っていたことも判明する。
 
 道理でこの手のスキルにMPを消費しない訳だ。
 でもマキシマイズマジックは周囲のマナをごっそりと消費してしまう〈マナ消失〉と相性わすそうだなぁ。
 ジョブシステムから離れても性質上当てにしない方が良いかも。

 そんな事をしている間にボス部屋に到着した俺達を出迎えたのは、〈グリンブルスティ〉というセーフリームニルの倍近い巨体を誇る黄金色の大猪だった。
 その毛はトリートメントでもしているかのような光沢を放つ。

 あ、こいつは知ってる。
 北欧神話に出てくる猪の魔物だ。
 神様の乗り物だから神獣や聖獣の類だけど。

 巨体に似合わずセーフリームニル以上の速度で突進してくる巨大質量に、防壁スキルごと押し込まれる事態に陥るも、神経が鋭敏だとされる猪の鼻に攻撃を集中して怯ませた。
 間髪入れずに動きが止まったところをクラウ・ソラスで全身を削り取りあっさりと撃破させてもらう。
 
 消滅魔法やべぇな……。

 粒子散乱した後には、畳8枚分は在りそうな金色の毛皮が出現した。

〈グリンブルスティの毛皮〉

 毛皮か、獣系のモンスターに多いドロップアイテムだ。

 拾い上げた毛皮の肌触りは流石は神様の乗り物と言うべきか、エアレーの毛皮よりも滑らかで心地の良いものだった。

 この肌触り、猫の毛に勝るとも劣らない――が、

「俺の猫贔屓《ひいき》判定により、猫の毛には劣るものと断定する」
「トシオ殿の猫好きにはいつもながら感心します」
「ありがとう!」

 呆れるユニスに真っ直ぐな瞳で感謝を述べる。

「褒めてません」
「またまた御冗談を~」
「今の流れでどうして誇らしげな顔でいられるのですか……」
「ユニス、こやつの猫狂いは筋金入りじゃ。リシアが居らねば今頃家はケットシーで埋め尽くされておるえ」
「うっ、イルミナ殿の仰る情景が容易く脳裏に浮かびます……」

 2人の会話に他の人達も納得とばかりに頷き合う。

「まるで精神病患者みたいな目で見るのやめてくれる?」
「まるでもなにも、まんまじゃないのん」
「イノシシを止めた際の指示は素晴らしかったのにな……」

 ホモカップルにまで言われてしまった。

 解せぬ……。

「どうしてこんなのがモテるんだ?」
「それが分からない内はあんたに恋人なんて出来ないわね」
「馬鹿な!?」

 DT丸出しのユーベルトに、同じ犬耳獣人のカーチェがカラカラと笑いながら揶揄い絶望を与えた。
 
 安心しろユーベルト、カーチェは揶揄いたいだけだと思うぞ。
 それに俺がモテてるんじゃなくて、嫁達が必要としている条件を満たしていたのが俺だっただけだ。
 経緯はどうあれ、幸いなことに家に迎え入れてからは相思相愛な関係を構築出来ているけれど。

「こらこらお前達、ここは迷宮、何が起こるか分からんのだぞ」
「〝討伐直後のボス部屋と油断していた奴らが突然湧いたモンスターに襲われた〟なんて話もあるからな」

 ベテラン冒険者のザァラッドさんとチャドさんが年長者として注意を促し、寡黙な巨漢リザードマンのワトキンさんが頷く。

 迷宮は規則的な反面、異常個体などの不測事態が稀に起こる。
 規則的だからこそ、油断からそういった状況に対応が遅れる事だって十分にあり得るのだ。
 
 油断、ダメ、絶対!

 休憩がてらこの階層での反省点等を話し合うと、五十階層へと足を運んだ。


―――――――――――――――――――――――――――――

 五十階層突入!


 また書き下ろしになるため投稿が遅れます。
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