四人で話せば賢者の知恵? ~固有スキル〈チャットルーム〉で繋がる異世界転移。知識と戦略を魔法に込めて、チート勇者をねじ伏せる~

藤ノ木文

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141話 元気な病人

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「我が良いと言うまで絶対安静じゃ。退屈じゃからと魔法の練習なんぞしようものなら、命の保証はせんから覚悟しやれ!」

 自宅に帰還した俺は、超絶美人ドクターイルミナさんにそう強く言い渡されてしまう。
 イルミナさんにしては珍しく、目が本気だったのでめちゃくちゃ怖い。

 というか命の保証ってなに!?
 そんなにヤバイ状態なの!?

 イルミナさん達が部屋を出て1人寝室に取り残されると、手持無沙汰となり布団から寝室を隅々まで見渡した。
 遮光カーテンで閉ざされた寝室は、昼にも拘わらず薄暗くて不気味だった。
 家具も布団とタンス、それと最近取り付けられたばかりの冷房魔道具くらいしかなく、殺風景なので不気味さが増長される。
 部屋の隅の暗がりに目を向けると、何かがこちらを見ているような気がして急に怖くなる。

 暗がりって、幽霊が居るんじゃないかってつい思っちゃうんだよなぁ。

 些細な事でもリシア達にだけは幻滅されたくはない俺としては、この悪癖を知られる訳にはいかない。
 さっさと寝てしまえばいいのだが、先程まで気を失っていたせいもあり完全に眠気が飛んでいる。
 先程セシルが起動させた冷房魔道具が送風音を鳴らし、静寂を破ってくれるのだけが唯一の救いだ。

 エルフ……クーラー……巨乳エルフ型クーラー〈セシル〉新発売!
 色違いで褐色カラーのダークエルフVerもあるよ!
 エルフとは思えないこれ程の肉感美女、大ヒット商品になること疑い無し無しの無し。
 どう考えてもエルフ凌辱系の薄い本にありそうな、エルフとダークエルフが競売にかけられエロい事される流れにしか思えない。フシギ!
 
 バカなこと考えたおかげか、先程感じていた恐怖が幾分和らぐ。
 
 所詮この手の怖さって妄想力の産物だし、気の持ちようなんだよな。
 でも、怖くはなくなったが非常に暇だ。
 せめて誰か傍に居てくれないかなぁ……。
 
 傍に居て欲しい人として、自然とリシアの顔が浮かんだ。
 度重なるMP酔いで心まで弱っているせいか、誰かに甘えたい衝動に駆られているのだとも自己分析する。
 だが寂しいから傍に居て欲しいなど、それこそ恥ずかしくて言い出せない。

 イルミナさんになら甘えても許されるかな?
 というか彼女自身が他人から甘えられることに喜びを感じる人だし、ここは素直に頼るべきだろうか。
 そういえば、オギャリプレイはイルミナさんを救出した日にやったきりだなぁ。
 流石に皆が居る前でやれるほど、俺の精神力は強くない。
 精神力が強い人間がオギャリプレイを所望するとはとても思えないけど。
 個室の一つを防音にして、2人きりで愛し合える場所も欲しい所だ。
 
 体を横向きにして自宅の改修プランを練っていると、L字型のドアノブが動き、入り口の上枠辺りからアンニュイな表情の赤毛の美女が顔を出した。
 唐突に現れた美女の顔の位置があまりにも不自然であったため、先程の恐怖が蘇り身が竦む。

 こわっ!? 本当に出た!?

 昨日ブレーメン状態だったイルミナさんを彷彿とさせる存在を目の当たりにし、体を硬直させ部屋に入って来た美女を凝視する。
 しかし、よく見るまでも無くその顔には馴染んだ少女の面影があった事に安堵する。
 美女の正体に気付いたところで、女の全身も露わになった。
 それは胴体の胸元から尾びれにかけて橙の羽毛が敷き詰められ、背部から翼、そして尾羽に群青に覆われた猛禽だった。

「ってやっぱりミネルバか」

 しかし、以前のミネルバとは明らかに形状が異なっていた。
 美少女形態では胸部と頭が人間のそれであったのに対し、今は猛禽の首元から腕の無い美女の上半身が生えた形となっており、1メートル50センチ程だった全長も倍の3メートルにまで達した。
 羽毛に隠れた足は意外と長いはずなので、まっすぐ立てばもっと大きくなるはずだ。

 大体総排泄腔があの辺りだから、エッチする際キスは出来ないかも。

 体積自体は羽毛で膨らんでいるだけで割と細いため、何とかドアを通り抜けられた。
 しかし、大きくなっても歩くのが苦手なままなのか、ひょこひょこと歪な足取りで部屋の中へと進み、魔法で風を操って扉を閉めた。
 カバーの外れた鋭い爪が、俺の先端恐怖症を刺激する。
 
 肉食恐竜かな?(冷汗)

「お母様が傍に付いてる様にと……」
「リシアが?」

 ミネルバが頷く。

 心細さと暇を持て余していたところにこの配慮と来ては、妻の心遣いにただただ感謝するしかない。
 
「そっか。来てくれてありがとね」
「ちー……」

 枕元に来てうずくまるミネルバの頭を撫でて感謝を告げる。

 後でリシアにもお礼を言わないとだな。
 それにしても――

 覆うものが無いたわわに実った肌色の果実が、目の前でたゆんと揺れた。

「大きくなったなぁ」
「胸を見ながら言わないで……」
 
 俺の視線から逃れる様に、恥ずかしがりながら翼で胸を隠されてしまった。
 大きさで言えばリシアよりは小ぶりだが、形の整った美乳である。
 今までのミネルバなら恥じらうことは無かっただけに、その仕草は新鮮だった。
 
「ごめんごめん。一段と綺麗になったからつい見とれてしまって」
「ちー……」

 素直な感想を伝えると、ミネルバが嬉しそうに小さく鳴く。
 そしてずいずいと近付いてきたかと思うと、俺に覆いかぶさり直に胸を押し付けて来た。
 浮世離れした美しい顔が至近に迫り、魅力的な唇が俺の唇や頬をついばむ。
 押し付けられた乳圧も見事なモノで、こちらの欲情を掻き立てる。
 愛しい娘であり妻でもある女性にそんなことをされて、下半身が反応するなと言うのは無茶な話だ。

「こんな化け物に迫られて喜ぶなんて、お父様は変態ね……」
「そんな変態に好んで迫ってくるミネルバには負けるよ」
「その言い方は卑怯……」

 自虐を含んだ挑発にお道化て言い返と、美しい御尊顔を膨らませた。
 拗ねたミネルバも可愛いな。

「それで、ミーちゃんはナニをしてくれるのかな?」
「お父様が望むならなんでも……と思ったけどもうしてあげない……」
「じゃぁ勝手にやらせてもらうよ」

 拗ねてそっぽを向くミネルバに様子を見せたので、抱き寄せ唇を奪う。

「それも卑怯……」

 卑怯と罵りながらも、半人半鳥の美女は翼を腕の様に見立てて強く抱きしめ縋りついた。
 ミネルバは基本的には大人しく、このように積極的に絡んでくることはない。
 美しく成長した彼女の頭と背中に手を回して抱え込み、顔や唇にねぶる様な口づけをする。
 ミネルバもそれに答えて啄みを再開し、互いの舌が激しく絡まるにつれ、息遣いに淫らさが混ざる。

「んっ……、キスもいやらしくてちゅぱっ……本当に変態みたい……んんっ!?」

 体の上下を入れ替えながら荒々しい口づけと並行して胸への愛撫を開始すると、指がその頂に触れた途端、美鳥の体が大きく跳ねた。
 唇をすすり胸を揉みしだき、正常位へと移行する。
 俺の顔がギリギリ彼女の胸があるため、そこから下のふかふか羽毛が全身を包む。
 彼女を抱きしめてわかったことは、頭から尾羽の付け根にかけての長さは大体2メートル程。
 美少女形態の時もそうだったが、その体は翼や尾羽で膨張しているため、実体部分は見た目ほど大きくはない。
 胴体が妙に長い女性といった感じである。
 足は思いのほか長く、腿は人間と同じくらいの太さもあり、羽毛を纏った肉の柱はなめらかで、触り心地は満点。
 抱き心地最高ランクである。
 背中に回された翼も暖かく、冷房で冷えた体が温められた。

「なんだか変なの……。この大きさになると、ますますお父様が恋しくて……。だから……」

 肉体的に成長したからなのか、男女の触れ合いを積極的に求めてくるミネルバ。
 そんな淫らな声でおねだりされては、求めに応じずにはいられない。
 美しく成長した愛鳥に快楽を与え、欲望のままに貪った。

 純度100パーセントの生きた羽毛布団は格別でした。



 行為を終え、少女形態に縮んだミネルバの頭を抱き寄せる。
 柔らかな紅色の髪を撫でると、美鳥が嬉しそうにちーちーと鳴いて頬をすり寄せてくれた。
 肌を重ね愛し合ったばかりの少女の可愛い仕草に、愛しさが溢れて止まらない。
 心地よい疲労感の中、甘えるミネルバの額や頬に軽めの口づけで愛情を伝え続ける。
 そんな後戯をしながらピロートークでは、ミネルバが巨大化について聞くことが出来た。
 なんでも巨大化できるようになったのは、ジョブに〈ミネルバ〉をつけたことが原因だそうだ。
 この世界の魔物はジョブによってその特徴を大きく変化する。
 ミネルバやクク達からすれば毎度のことで、変化の結果に驚くことはあっても変化自体に驚きはない。
 不思議な事に変わりなく、人外スキーな俺にとってはとても神秘的で魅力的な現象である。
 それを解明するのは神秘性が損ないかねないので深く考えないようにしている。

 マナ万能説をもってすれば、〝マナに含まれる魔素がモンスターに影響を与えてうんたらかんたら〟で説明出来そうなのがなんか嫌なんだなぁ。
 人間知らない方が良い事だってあるのだ、ここは敢えてぼかしておきたい。 

 謎のこだわり部分だと苦笑したところで、寝室の扉が勢いよく開かれた。

「なかなか楽しそうなことをしておるのう。体調は良くなった様でなによりじゃ」

 冷笑を浮かべたイルミナさんが仁王立ちする姿に、幸せ気分が吹き飛び凍り付く。
 後ろには、モリーさん親子を除く我が家の奥さん’sの姿も。
 唐突過ぎる登場と浮気現場を押さえられたかのような心境に、鼓動が不整脈でも起こしたかのように跳ね回る。

 浮気した訳ではないのに心臓が痛い。

「トシオ様、絶対安静を言い渡されてましたよね? よね? なのにこれはどういうことです? トトにもわかるように説明して頂けますでしょうか?」

 眉を吊り上げ怒るリシア。

 なんだよトトにわかるようにって、不可能にも程があるわ!
 理不尽ここに極まれりである。

「どうやらお主は命が要らぬようじゃのう」
「いや、その、ごめんなさい……」
「ミネルバもミネルバよ。そばに居てあげてとは言ったけど、こういうことをさせる為に行かせたんじゃないのよ?」
「ちー……」

 リシアとイルミナさんによる説教に、平謝りしてやり過ごすしか術のない俺とミネルバ。

「ごめん、俺から誘ったんだ。ミネルバを責めないで上げて」
「もう、トシオ様はミネルバに甘いのですから」

 頬を膨らましたリシアが俺を窘めるも、声の様子からも起こっていないことは明らかだった。
 そんな俺達をよそに、空気が読めないセシルが唐突に服を脱ぎ始めると、何事もないかのように布団に潜り込んできた。

「パパ、次は私……ね?」

 いつの間にか幼児退行のスイッチが入っていたセシルが、体を密着させ上目遣いでおねだりする。
 そのエロ可愛さが天元突破し、俺の股間を直撃する。

 鎮まれ、鎮まりたまえ!
 さぞや名のあるオパーイ様が、なぜこのように破廉恥なのか!
 いや、鎮めたいのはこの状況とパニックってる俺の頭だ!
 
 いきなりの修羅場に脳の処理能力が追い付かず、手汗がにじみ出る。

 手に汗握るとはこの事だ!
 だが絶対に違うとささやくの、俺のファントムが。

 思考が支離滅裂な方向に飛びまくり、上手い言い訳が思いつかない。 
 状況に耐えられなくなったのか、ミネルバが幼鳥サイズに縮んで布団にもぐってしまった。
 
 俺もそうしたい……。

 だが布団にもぐり切れておらず、もこもこの鳥っケツが出ちゃってるのがコミカルで愛らしい。

「……はぁ、しょうがないですね」

 リシアが呆れ交じりの溜息を洩らしながら笑みを浮かべると、ミネルバを布団から取り出す。
 そしてユニスに手渡してそのまま座り、両手で俺の顔に触れ瞳を親指で開き覗き込む。

「大丈夫そうですね」
「診断なんて出来たんだ」
「簡単なものですがね」

 次に自ら衣服を脱ぐと、今度はセシルに顔を向ける。

「セシル、順番は守らないとダメでしょ?」
「ほれセシル、こっちに来やれ。母と共に順番待ちじゃ」
「うん……♪」

 幼児化したセシルをリシアが撫でながら諭すと、イルミナさんもセシルの背後に回って抱き寄せる。
 抱き締められたセシルが聞き分けよく素直に頷いた。
 とても穏やかな笑みを浮かべて。
 
「ではトシオ様の治療を開始します」

 リシアが悪戯っぽくそう言うと、俺を抱きしめ唇を重ねる。

 昼食前の御馳走は、世界中のどんな料理よりも俺の舌をとろけさせた。


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